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ダンジョン3

59 ダンジョン3






 作戦会議の翌日から、ギルバートとエリーとケルはグレイヴァル周辺の領地を回り始めた。

 

 ダンジョンの情報を入手する為だ。


 ゼクストフィール王国の民であれば、「地揺れ」はダンジョンが生れた時か、死んだ時に起こるもの、という事は子供でも知っている。

 

 そして、そういう常識の中で育ってきた、ゼクストフィール王国の冒険者達の間では、「ダンジョンは魔物である」という「ダンジョン魔物説」が定説となっていた。

 

 不思議と、王国の外では地揺れとダンジョンを結びつける事は無いと言う。

  

 その是非はともかく、そうしたゼクストフィール王国の環境が生んだ、この王国独自の職人が「ダンジョンシーカー」である。

 

 大小含めれば数多あるダンジョンを探す事を生業とする者達であり、彼らは地揺れや地形を頼りに、日夜、新しいダンジョンを探している。

 

 特に有益なダンジョンを発見した場合や、金払いの良い金主の依頼であった場合など、巨額の情報料を得られることもあるという。

 

 さらに、既に発見されているダンジョンに潜り、内部の特徴や生息している生物、魔獣などといった基本情報を調査して、位置情報と共に販売したりもする。

 

 彼らの大半は当然、その情報を一番欲している、冒険者達の拠点、冒険者ギルド周辺にいることが多い。

 

 

 この日、ギルバート達はグレイヴァルの遥か西の大都市、リオール領の領都リオーリアに居た。

 

 念のため、と言うか初めてきた街で、わざわざ自分から「魔法使いです」などと、存在をアピールしたい訳もないギルバート達は、いつも通り、街から少し離れた場所に着地し、歩いてリオーリアの街門をくぐった。

 

 ギルバートはケルを左肩に乗せ、左手でエリーと手を繋いで目抜き通りを歩き、そのまま冒険者ギルド会館に乗り込んだ。 

  

 グレイヴァルでは割と有名になった三人だったが、リオーリアでは全くの無名である。

 

 当然ここは、変わったデカい鳥を連れて、綺麗な服を着た、品の良い少年少女が、手を繋いでイチャつきながら訪れるような場所ではなかったので、さっそく品の無いオラついた男達を呼び寄せてしまった。


 だがギルバートは、ニヤニヤと話しかけてくる男達を完全に無視した。

 

 速攻でブチ切れたオラつき男達が、すぐさまギルバートに何かを言おうとしながら腕を伸ばす。

 

「てめぇ!この……っ!?」


「いい度胸してんじゃねぇか、てめ……っ!?」


「女の前だからって……かっ!?」

  

 ギルバートがその腕を、一人二人と次々に軽く払いのけた瞬間、オラつき男達は一回二回と空中を回転しながら、何故か人が居ない床に叩きつけられた。

 

「ぐはっ!?」


「うげっ!?」


「ぷぎゃっ!?」

 

 

 呻きながらも飛び起きようとするオラつき男達へ、ギルが一発ずつ蹴りを入れていくと、またしても一回二回と空中を回って、壁際の空いている床に叩きつけられ、今度は声もなく失神してしまう。

  

  

 それを見た者達は、その見知らぬ少年が触れてはいけない相手だと瞬時に理解し、それ以降、ギルバート達の周りには目に見えない壁があるかのように、常に一定の空間が空けられるようになった。



 もちろんそれは、ギルバートの示威行為であり、当然、ケルが「念動」の魔法で協力していたのだった。

 

 ギルバート自身の「身体強化」の魔法でも、多分同じような事は出来るが、その場合、エリーから離れる事になるし、必要以上に怪我をさせる可能性もあった。

 

「身体強化」の魔法は強い事は強いが、人間相手だと意外に使いづらい場面も多い。その点で、「念動」魔法は実に使い勝手が良かった。

 

 

 何にせよ、冒険者というのは職業柄、言っても分からない者が殊の外、多い。

 

 その為、最初に「カマす」のが有効な場合も多いと、短い経験で身についたギルバートなりの経験則だった。

 

 最初はギルバートも、目立たない様に行動することを考えたが、そもそもの話、ケルが居るので目立つのは仕様と言える。

 

 その上、何だかんだ言ってもギルバートは貴族だったので、平民の視線に鈍感な所があり、早々に、自分にはお忍びや隠密行動は難しいと結論付けていた。


 ケルから聞いた話を基に、ギルド会館のホール内を見回すと、それらしい人間があちこちで自分を見ていた。

 

 ギルバートはとりあえずその中の一人を選び、歩み寄って声をかけた。



「あなたはダンジョンシーカーですか?」


「……どうしてそう思う?」


 

 何だコイツ、面倒くさいな、とギルバートは思った。



「聞いていた通りの『感じ』なので……違うなら別に構いません。さようなら」


「待て待て」


 ギルバートが速攻で切り捨て、次へ行こうとすると、目の前の、ずんぐりとして筋肉質で背が低い、髭もじゃの男が、すぐに制止した。


「ワシはお前が言う通りダンジョンシーカーだ。少年、お前がそこそこ使えるのは分かったが、ちっと気が短すぎるんじゃないか?」


「そうですか?それで話を聞いてもらえるので?」


「仕事の話だろ?ああ、いいぞ。こっちで話そうや」


 男はそう言うと、ギルバート達を奥まった場所にあるテーブルへと案内し、さっさと座ってしまった。

 

「……完全に、とはいかないが、ここなら立ち聞きもしづらかろうよ。で、用件はなんだ?」 

 

 たしかに、ギルド会館の正面ホールの動線から離れているので、聞き耳を立てているとすぐ分かる。

 

「気を使ってもらったようで、すみませんね。別に内密ってわけじゃないんですけどね」 

 

 そう言いつつ、ギルバートとエリー、ケルはテーブルを囲む椅子に座った。

 

 

 

「……『火蜥蜴』の出現が確認されているダンジョンをご存じありませんか?」 

 


************************************************

本日、4話目です。念のため


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次回予定「ダンジョン4」

読んでくれて、ありがとうございました♪

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