表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/130

ダンジョン2

58 ダンジョン2






 作戦会議の結果、とりあえずギルバートが今、既に、無い事で不便と不安を感じている、「念動」の魔法石を獲りに行こう、と決まった。

 

 ただ、ケル曰く、「念動」の魔法石は意外に入手難度が高い、との事。

 

 その理由は、持っているのが魔獣ではなく魔物だからだった。

 

 魔獣は、謂わば獣型の魔物だ。ゆえに魔物とは「魔石を持っている生命体」という、より大きな括りを意味する。

 

 よって、魔獣と違い、「魔物」の存在形態は様々であり、中には奇天烈な存在も多い。

 

 「念動」の魔法石を持っている魔物はまさにそのタイプだった。

 

 

「……つまり?」 

 

『「念動」の魔法石を持っているのは、「霊」系統の魔物なのだ。つまり、物理攻撃が全くの無効となる』 

 

 

 ケルによれば、霊系統の魔物が肉体を持つ生物を拘束するための魔法が「念動」なのだと言う。

 

 つまり、良く聞く金縛りとかそういう力の正体が、霊による「念動」魔法と言う事だろうか。 

 

 そう聞いてギルバートは、散々、便利に使い倒してきた「念動」の魔法をちょっと不気味に感じてしまった。

 

 とは言え、あの便利さは他のモノでは代用出来ない。

 

 

「……物理攻撃無効って事は、オレにはどうしようもないって事か……?」 

 

『そうだな。ただし、「現状では」というだけの事だ。霊系統に有効な攻撃手段となる魔法石を、先に入手すればよいだけの事だ』 

 

 ギルバートが諦め顔でポツリと漏らすと、ケルがいつものようにサラッと助言した。

 

 

「……有効な攻撃って?」


『左様、「物理攻撃」がダメなら「魔法攻撃」と言うのが、こういった場合のセオリーというものだな』 

 

 ケルが言うには、魔法や魔力という力は、本来、ギルバート達が存在するこの世界とは「違う世界」に属するモノだが、霊系統とは「同じ世界」に属する力なので、魔法攻撃であれば霊系統の魔物に干渉できるのだ、と言う。

 

 だが、ギルバートはイマイチ良く分からなかったので、とりあえずその説明を中断してもらった。

 

「……その解説は、いずれ聞かせてもらうとして……魔法攻撃ってことは、「魔法で攻撃する」って事で良いのか?つまり、「重力視」の魔法とかなら通用するって事?」

 

 ギルバートがケルの、回りくどくて分かりにくい解説を、何とか噛み砕き、飲み込もうとする。

 

『概ね、その理解で良いのだが、魔物それぞれの個別の事情もある。「重力視」の魔法は霊系統には効きが悪い。全く効かぬわけではないのだが、実体を持たぬ魔物相手では圧倒的に決定力に欠ける』


「でも、オレは他に攻撃に使える魔法は持ってないぞ?「身体強化」の魔法は物理系だろ?」 


『分類するなら物理系と言えるだろうが、「身体強化」の魔法も全く効かぬわけではない。魔力を身体に巡らせ、漲らせるので霊系統に対する干渉力はある。ただ、その場合、武器を持ってしまうと干渉力が活きないので、生身の肉体で攻撃することになってしまう。リスクが高すぎるのだ』

 

「リスクって?」


『霊系統の魔物に触れられると、生命力を吸収され、奪われる。実体を持つ生物にとって、最も危険な攻撃だ』 

 

 

 ……確かにそれじゃあ、良くて相討ちってことか……

 

 

 アレもダメ、これもダメと言われ、ギルバートはまた絶望的な気分になってきた。

 

「……つまり、結局どうすればいいんだ?」 

 

『すぐに考えることを放棄するのは、ギルの悪いところだぞ』 

 

 目の前の鳥型魔獣が、デカい翼の根本を肩の様に竦めて、「ヤレヤレ」のポーズを取る。

 

 ギルバートは考え疲れて、ちょっとイラッっとした。

 

 そんなギルバートの心を知ってか知らずか、ケルがくちばしを開き、「念話」で話し始めた。

   

 

『簡単なことだ。手持ちの魔法石に有効なものが無ければ、新たに適する魔法石を獲れば良いだけの事であろう?』

 

 言われて、ギルバートも気が付いた。

 

 

 ……そう言えば、もともとそんな話をしてたんだったな

 

   

 ギルバートは、さんざんたらい回しにされた後の様に、何だか物凄く疲れてしまった。

  

 見ればエリーは、二人が話し込んでいる間に、いつの間にかコックリコックリと、舟を漕いでいる。

 

 エリーにも関係なくはないのだが、やはり魔法の事となると、つい、ケルと二人だけで話を進めてしまいがちだ。



 ギルバートはそっと近づくと、エリーをベッドに横たえ、念のため、身体に布を被せた。春とはいえ、朝晩はまだ冷える日もある。



「エリーも魔法が使えたらなぁ……」



『試してみれば良いではないか。……まあ、可能性は限りなく低いと思うが』



 ボソッ……と、ほぼ独り言のレベルで呟いたギルバートに、ケルが律義に返答を返してきた。


 ……なるほど、そう言われたらそうだな

 

 灯台下暗し。試してみれば良い、か。本当にその通りだった。

 

 

「……そうだな。エリーが起きてるときに、聞いてみようかな。エリーがやりたそうならやってみよう」 


『良いと思うぞ。新しく魔法石を手に入れるたびに試せばよい』




 なるほど、それは良いな、と頷くギルバートであった。



************************************************

本日、3話目です。念のため


************************************************

次回予定「ダンジョン3」

読んでくれて、ありがとうございました♪

もし続きを読んでも良いと思えたら、良かったらブックマークや評価をぜひお願いします。

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ