その頃、お留守番のエリザベスは
51 その頃、お留守番のエリザベスは
ギルと共に鍛冶屋の自宅を訪ね、エリザベスは鍛冶屋の老婦人に預けられた。
まるで子供の様だと思ったが、立場的にはまさに同じ扱いだった。
要するに、思いっきり戦うため、人質になったりしてギルの足手まといにならないために残されたのだ。
そう考えると、ちょっと凹んでしまうエリザベスだったが、事実だし、今はまだ、そんな風に扱われても仕方がないと諦めていた。
……せめて、もうちょっと弓の腕が上達したらなぁ
そうしたら、ギルも少しは頼ってくれるだろうか?それよりもまず、人質にならないための逃げ脚?隠れる技術?それよりはやっぱり、一緒に戦える力?
どれもそう簡単に身に着くものではない。それはエリザベスも分かっている。
……だめだわ。落ち込んじゃいそう
エリザベスは危険信号を感じ、一旦、思考を中断した。
……まあ、焦っても仕方ないわ
そしてエリザベスは、意識的に悩みを遠くへ追いやり、別の思索テーマを探す。
代わりに考える事と言えば、最近の、ギルの変化についてだろう。
ちょっと前までのギルは、仲良しだけどお堅くて少し頼りない感じだった。
その分、弟みたいで可愛かったけど。
ところが今のギルは、とにかく何か凄いし、カッコイイし、突然、グイッと距離を詰めてくる時があってドキドキさせられる。
昨日なんて暴漢に殺されかけたのに、今朝だって、その暴漢達がまだ傍に転がっていたのに、ギルはエリザベスの事を綺麗だと言って、まっすぐに目を見つめてきた。
……かっ…………こよかったわ!
エリザベスは鍛冶屋のおばさんに借りてる客間のベッドでジタバタと身悶えた。
……ギルってば、目が細いから、じっと見つめられると……
……きゃぁああああぁっ♪
……そ、そう言えば最近、手とか肩とか……首とかもがっしりしてきたのよね……
……~~~~~~~~っ♪
声にならない悲鳴を上げながらエリザベスはジタバタを繰り返す。
「はぁ……はぁ……はぁ」
「エリー?何か言ったかい?」
マズい。おばさんにまで暴れている音が聞こえてしまったようだ。
「ご、ごめんなさい。なんでもないの」
「そうかい?」
エリザベスは落ち着くため、ベッドに座りなおして深呼吸をする。
……この想像も、危険だわ
エリザベスはふと、先日の朝に見た、ギルの艶ッつやのお肌を思い出した。
あのお肌の原因は、ギルがいつも使ってくれているお掃除魔法なのだが、アレを自分に使われるのは乙女として、相当の抵抗があるのだ。
何せ、汚れをツルンと剥がしてしまうので、家でも家具でも人間でも、もの凄く綺麗にはなるのだが、最後に剥がした汚れの塊が、ギルの手の中に残ってしまう。
アレさえなければ、むしろ毎日でもお願いしたい。
多分、ギルはそんな事、気にもしないだろう。だけど、だけど!乙女として!
……ハッ!?これも結局、堂々巡りね……
エリザベスは結局、一人で考えていると色々マズい感じになってしまうと悟り、客間を出ておばさんのところへ行った。
「おばさん、なにか手伝うことないですか?」
「別に休んでてもいいんだよ?」
「いいの。これでも一応、ギルの奥さんだもの。色々覚えたいわ」
「あれまぁ、こりゃギルは良い奥さんをもらったねぇ♪」
「そうでしょ?」
二人は笑いあうと、おばさんの指示のもと、お昼ご飯を作り始めた。
エリザベスはおばさんに聞かれるままに、ギルの小さかった頃の話や、最近カッコよくなってきたギルの話などを話した。
おばさんも鍛冶屋の夫が若かったころの、冒険者としての武勇伝を話してくれたりした。
そんなこんなで、お昼ご飯を作りながら、二人は色々な雑談に勤しみながら、午前の時間を楽しんだのであった。
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本日、2話目、ラストです。
楽しんでもらえると嬉しいです。ありがとうございました。
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次回予定「ケルに聞く「体調」の話」
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