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帰還2

41 帰還2






 絶体絶命の状況がギルバートの精神を追い詰め、それが肉体の疲弊を加速させていく。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」 


 二つの魔法の同時使用で、魔力がいつもより早く消耗していく。 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」  

 

 そんな中、ギルバートは、相も変わらず自己嫌悪に陥っていた。

 

 ……魔獣が群れだと分かった時、すぐに逃げるべきだった

 

 ……成長していない。何度やっても、何度反省しても同じ失敗を繰り返す

 

 ……エリーを死ぬほど怖がらせてしまった

 

 ……守るとは、いったい、なんだったのか

 

 ギルバートは自嘲気味に笑おうとして、それすら失敗した。

 

 ……とにかく、魔力が切れるまでに何とかしないと

 

 だが、考えようとしても、出てくるのは後悔ばかりだった。

 

 ……何とかして、あのボス猿を

 

 一瞬視線を外して、あの巨大猿を瞬時に倒して、また手下猿共に視線を戻せれば、あとは一匹ずつ、短剣で止めが刺せる。

 

 問題は、巨大猿をどうやって一瞬で倒すか、だが、当然のようにギルバートは何も思いつかなかった。

 

 先ほどからエリーが黙り込んでいて、息遣いしか聞こえない。

 

 巨大猿は相変わらず攻撃を試み続けている。そのせいで、魔力がどんどん減っている。

 

 ギルバートとエリーはまさにジリ貧だった。

 

 

 

「ホギュアアアアアアアアアアァッ!」


 

 

 その時、巨大猿が絶叫と共に、突然狂ったように腕を振り回して魔法の盾を連打してきた。

 

 魔法の盾が防御力維持のため、急激にギルバートの魔力を吸い出していく。


 

 そして、気が付くとギルバートは膝をついていた。


 

 顔には熱くて濡れた感覚がある。触って確かめると、それは鼻血だった。

 

 緩めてはマズい、と分かっているのに魔法石への魔力注入が緩んでしまう。


 

 ……しまっ!?


 

 「しまった」と感じた瞬間、魔力注入が止まっていた。

 

 巨大猿は自分の拳が空を切り、虚を突かれて固まってしまった。

 

 手下猿達は、拘束が解けたことを一瞬、理解できない様にキョロキョロしている。

 

 

「ハァッ!ハァッ!ハァッ!」  

 

 

 ……魔力を!

 

 ……集中して魔力を!


 

 ギルバートの視線が僅かに揺らぎ、次の瞬間、視界の端で、巨大猿が笑った、ように見えた。

 

 ギルバートは今度こそ絶望した。

 

 

『結界だ!主殿!』 

 

 

 その時、ケルの声が脳に響いた。ギルバートは何も考えず、エリーに覆いかぶさりながら、自分とエリーを囲う、半球状の魔法の盾を成型した。


 その魔法の盾に間一髪で、巨大猿が先ほどを超える強力な連打を打ち付けてくる。

 

 反射する魔法の盾の破裂音が幾重にも重なって爆音になる。



 ギルバートの魔力が急激に吸い出されていく。だが、いくら何でも急激すぎる。魔力がグングン減っていく。


 

 

 そして、唐突に音が消えた。

 

 

 魔力の流出も止まっていた。

 

 

 ギルバートは以前よりもひどい魔力欠乏によって、恐ろしい程の虚脱感におそわれながら、必死で視線だけを持ち上げた。



 すると、そこには首から上のない巨大猿の死体があった。

 

 ギルバートの思考が止まる。

 

 無理やり上体を起こし、振り向くと手下の猿型魔獣達が這う這うの体で逃げ散ってゆく最中だった。



 ……何が、起きたかを、確認、しなくては、駄目、だ……

 

 

 

 そう思いながら、ギルバートは意識を失った。



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本日、1話目。3話更新予定です。

楽しんでもらえると嬉しいです。


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次回予定「帰還3」

読んでくれて、ありがとうございました♪

もし続きを読んでも良いと思えたら、良かったらブックマークや評価をぜひお願いします。

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