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王都へ2

37 王都へ2






 ギルバートとエリーは王都の門をくぐると、早速、宿を探した。

 

 通常、高位の貴族に約束を取り付けてから実際に会えるまでは二~三日かかる。

 

 特に面会を希望する側の位階が低ければ、より長くかかることも珍しくない。まして、面会を希望する相手が王ともなると推して知るべし、である。

 

 一応、木っ端貴族の子弟であるギルバートとエリーは知識としては知っていたので、まずは城からの応えを待つ拠点の宿を探すことにしたのだった。

 

 例によって、目抜き通りの宿をいくつか回ると、宿の状態と宿泊価格が出そろった。


 バスーラより全体的にやや高目の価格設定の宿が並ぶ中で、バスーラで利用したのと同じ程度の価格の宿を発見した。

 

 王都でこの価格ならバスーラで泊った宿より格は下がるだろうが、条件はほぼ同じの、鍵付き個室、朝食付きだったのでギルバートとエリーは此処に即決した。


 今度は数日泊る可能性があり、その場合、昼と夜は外食になるという事だ。

 

 一応、魔獣を売ったお金があるとはいえ、それほど長期間は持たないだろう。下手をすれば面会を待つ間、王都でも仕事をする必要が出てくるかもしれない。

 

 二人がすぐに出来る事と言えば狩りだが、土地鑑のない狩場では満足いく成果を出せるとも限らない上、危険度も格段に増す。

 

 宿を決めたギルバートとエリーは、そのまま街に出て屋台でパンとスープを買い、人波を眺めながら昼食を済ませた。


 その後、すぐに王城へと赴き、門衛に用件を告げ、面会を申請して宿に引き返した。

 

 ところが、ギルバートとエリーがゆっくりとあちこちを見ながら宿への帰路を歩いていると、つい先ほど話をした門衛が走って二人を追いかけてくる。


 門衛はギルバートとエリーに追いつくと、息を切らしながら二人に戻るように言った。

 

「異例中の異例ではあるが、国王陛下と宰相閣下が今すぐお会いになるそうだ。悪いがすぐに一緒に来てくれ」


 こんなにすぐに?と、ギルバートとエリーは戸惑ったが、すぐに会えるなら文句はない。

 

 二人は門衛に連れられて王城に戻り、今度は中に招き入れられた。

 

 広い庭を通り抜け、城内に入ると案内役は宮廷貴族が引き継いだ。

 

 宮廷貴族は衛兵を引き連れており、城内の警備は彼らに引き継がれた。

 

 広く、華美な廊下を応接室まで案内されると、ギルバートとエリーは中に招き入れられ、そこで待つように言われる。

 

 その際、ギルバートとエリーは露骨な身体検査などはされなかったが、短剣は衛兵に預けるよう言われ、無論、従った。


 応接室も当然のように、豪華の上にも豪華であり、二人が見たこともないような美しい装飾品や家具、照明、壁紙などで煌めいていた。

 

「……お城の中って、何処も彼処も凄く豪華ね……もしかしなくても、わたしたちって相当、場違いなのじゃないかしら……?」


 エリーが自分の服を見下ろして落ち着かな気に呟いた。

 

「まあ……オレ達は貴族の子弟だから、親の爵位より下の扱いになるわけで、男爵の下って言うと、準男爵とか騎士爵とか……まあ王城の貴族からすれば、平民と大差ないと思うよ」


 ギルバートも居心地悪そうに頷く。 


『まあ、そう固くなるな、主殿、御内儀殿。華やかに見えてもここは下級貴族を待たせるための部屋だろう。ごく普通の対応だ』


 ケルが目に見えて固くなっている二人の緊張を解す為か、そんな事を言う。


『ただ、申請してその日の内に面会の希望が叶うなど、貴族的にあり得ないほど異例ではあるがな』


 ……それ程、魔法使いが珍しいという事か?

 

 ……五十年ぶりというから、そうなんだろうけど


 ……あまり良い感じはしないが、まあ、さっさと叙爵してもらって、さっさと帰ろう

 

 ギルバートは心配するのをやめて、エリーに注意を向けた。

 

「エリー、もし旅の汚れが気になるなら、魔法でさっと取り除こうか?」

 

 ギルバートはそう言って手を横に動かし、「集塵」の魔法を使う仕草をする。

 

「えっ、ギルのアレ?……ありがたいし便利だけど、ほら、こう……目に見えて、何と言うか、塊が出るじゃない?」 

 

「ん?ああ、うん、出るね」


 ギルバートはキョトンとして、それが?という表情になった。 


「いくらギルでも、衣装とか身体から直接、ああいうのがアレするのを見られちゃうと、アレじゃない……?」


「……つまり?」


『……主殿、つまり夫婦であっても、お互いに見られたくないものはあるという話ではないか?』


 ギルバートがエリーを見ると、顔を赤く染め、視線が泳いでいる。そこで初めてギルバートは己の失態に気が付いた。

 

「あー……ごめん、エリー。オレ、気が付かなくて……」


「あ、謝らないで。ギルが心配して言ってくれたのは分かってるわ」


 二人がぎくしゃくとそんな話をしていると、コンコンとドアがノックされる音がした。

 

「ど、どうぞ!」


 ギルバートが少し焦り気味に応えを返す。


 カチャッとドアの開閉音が響き、男が一人、護衛らしき武官を引き連れて応接室に入ってきた。

 

 男はさっさと歩いて来ると、二人の正面のソファーに腰を下ろした。武官は自然に彼の後ろに直立している。




「やあ、お待たせしたね。私はビスマルクス。国王陛下からは宰相の職責を賜っている。早速だが、今日はどういった用件でいらしたのかな?」



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本日、2話目、ラストです。

楽しんでもらえると嬉しいです。ありがとうございました。


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次回予定「王都へ3」

読んでくれて、ありがとうございました♪

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