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報告

18 報告






 エリーを連れて帰るのは「飛行」の魔法があるので簡単だった。

 

 夕方の時と同じく、街の門衛から見えるかどうか、というところまで低空で飛び、そこからは徒歩で街へ戻った。

 

 森を出る前に、ギルバートは一応、戻ってからの自分の行動予定をエリーに伝えた。

 

 まずしたい事は、ギルバートの魔法使いとしての証明と登録。これによってたとえ名目上だけだとしても、ギルバートは上級貴族扱いになる。

 

 次にギルバートとエリーの婚姻届け。早い者勝ちで公的に既成事実を作り、後は身分で押し切るためだ。

 

 最も急ぎなのはこの二つ。その次に急ぐのは出来る限り早く、残り三つの魔法石を集め、最低限、自己防衛のための戦力を整える事。

 

 たとえ上級貴族扱いになろうが、どれだけ綺麗ごとを言おうが、襲われるときは襲われる。当然その場合は撃退する必要がある。

 

 あとは暇を見て、お互いの家族への報告。そのくらいだろうか。

 

 エリーは全て聞くと、うなずいた。

 

 ギルバートがエリーと予定を合わせる必要があるのは婚姻届けと家族への報告くらいで、急ぐ必要があるものは婚姻届けだけだ。

 

 これは明日、朝一番で行こうという事になった。

 

 

 

 街門を抜ける時、門衛達に色々聞かれて少し手間取ったが、森に取り残されていたエリーを救助してきた、と真実のなかの当たり障りのない部分を抜粋して伝えて、最終的には事なきを得た。

 

 むしろ、別に悪い事は何もしていないのだから、あれこれしつこく聞かないで欲しいものだ、と感じてギルバートは少々、不機嫌になった。

 

 一方エリーは、どうしてこんな時間まで二人だけで?などと聞かれるたびに、顔を赤くしていた。

 

 そんなエリーがとてもに可愛いので、ギルバートはエリーの前に立って門衛共の視線から隠す。

 

 すると門衛共が調子に乗ってしつこさを増し、ギルバートがますます不機嫌になるという悪循環が構築されてしまい、二人は街門で随分と無駄な時間を費やした。

 

 家に帰り着くと、まずエリーをアローズ家に送り届け、東の森で救助した事実のみを簡単に伝え、ギルバートは自宅に戻った。

 

 この後、かなり怒られるだろうが、そこはエリーが頑張るしかない。婚姻届けも報告もまだなのに、ギルバートが夫気取りで出しゃばるわけにもいかない。

 

 ただ、一応おじさんに、エリーがとても疲弊しているので、あまり怒らないであげてほしい、とだけお願いし、一応の了承を得た。

 

 ギルバートが去り際に、小声で頑張れとつたえると、エリーは笑って頷いた。

 

 何だか、ものすごく幸せな気分がまだ続いていて、頭も体もふわふわしているような感じだった。

 

 自宅でも父と母から質問攻めにあったが、知らぬ存ぜぬで押し切り、強引に自分の部屋に戻って速攻で眠りについた。

 

 ギルバートが寝入る直前、ケルの『おめでとう』という声が聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 翌朝、ギルバートは背中と腰の猛烈な痛みで目が覚める。

 

 両肩の傷が痛くて寝返りがうてなかったので、一晩中上を向いて寝たせいだろう。

 

 だが、よたよたと、ベッドから起き出して、裏庭に出て体を動かすうちに背中と腰の痛みは解消した。

 

 肩の傷も戦った直後はかなり深いと思っていたが、朝の光の下で見ると、そこまででもなかった。

 

 もちろん痛いものは痛いが、さっさと消毒して、包帯を巻きなおして終了だ。

  

 ある程度傷が塞がるまでは、軽い体操のみにしておこうと決め、身体を動かしていると、今朝もエリーが起きてきた。

 

「ふぁあ~~ぁ。おぁよぉギル~」


「おはよ、エリー」


 昨日までと違う関係になったはずだが、エリーの様子は全く変わらないままだった。

 

 ……だが、そこがいい

 

 ギルは横目でちらっとエリーを見てから、また視線を戻して運動に集中する。

 

 エリーは頭が起きてきて、しばらくすると今朝も家に戻っていく。それを確認してギルバートも自宅に戻る。

 

 いつもの変わらない朝だった。 






 やがて、街門が開く時間になり、平民街が騒めきだした。

 

 その後、しばらくすると貴族街でも朝の動きが出始める。

 

 ギルバートはさっさと用事を済ませたかったが、急いだところで城の門が開くまでは待つ以外、どうしようもなかった。

 

 平民の結婚には、当事者と家族、友人、知人で事足りる。

 

 あとは教会と、場合によっては酒場や地方の名士のような世話役が関わっているくらいだ。

 

 だが貴族の結婚は王、または領主へ届け出て、許可を得なくてはならない。

 

 とは言え、王や領主から直接、許可を取り付けるという訳ではなく、身分ごとに適当な文官に処理されることになる。

 

 

 ギルバートとエリーは家の外で落ち合うと、一緒に城に出向いた。

 

 城門が開くと同時に下級文官達の執務室へ向かい、まだアローズ男爵もフォルダー男爵も居ないことを確認する。

 

 別に、居ても良いのだが面倒なので、家族への報告は出来れば一度にまとめて済ませたかった。

 

 ギルバートは魔法石を手に入れたので魔法使いとしての証明と登録を行いたいと告げる。

 

 同時に、結婚を報告し、許可を申請した。

 

 

 

 活気無く、緩んでいた下級文官の執務室の空気が一変し、ギルバートとエリーの周囲は俄かに騒めき始めたのだった。



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本日、1話目。2話更新予定です。

楽しんでもらえると嬉しいです。


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次回予定「証明と登録」

読んでくれて、ありがとうございました♪

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