エリザベスの気持ち
17 エリザベスの気持ち
ギルバートは、エリーの涙で濡れた目が、大きく見開かれるのを、間近で見ていた。
……ああ、エリーはどんな表情でも綺麗だ……でも、出来れば笑っていて欲しいよ
それはギルバートの心から自然と溢れてきた偽らざる本音だった。
だが、今、この瞬間ならエリーに望まれて結婚できるのではないか?チャンスなのでは?……とも、ギルバートは、ちょっとだけ思ってしまった。
自分の容姿がエリーとは全く釣り合わない事は、もちろんギルバートも分かっているし、当然、容姿以外だって欠点だらけなのも自覚している。
だが今は、ギルバートは魔法使いだ。
そして、エリーは危機に瀕している。
今なら、自分を必要としてくれるのではないか?……そんなことを、ギルバートは考えてしまった。
……弱ってるエリーに、つけこもうとするなんて、最低だな……
ギルバートの心も千々に乱れていた。
「……どうして?……わたしが可哀想だから?」
エリーに笑顔はなかった。だが、その真剣な瞳を、ギルバートから逸らさない。
「同情で結婚してもらうなんて、いや……それにそんな事をしたら、ギルがモータル子爵に目を付けられるわ……」
エリーの両目からまた涙が溢れ出す。
「同情じゃない。同情なわけないよ!子供のころから、ずっとエリーが好きだったよ。こんな事が起こらなきゃ、気持ちを告げる勇気もなかったけど……オレはエリーの事が大好きだ。本当だよ。エリーはオレが守るから……だからもう、泣かないで」
それでも、エリーの涙は、止まらなかった。
だが、口元はこらえきれないように笑っていた。
「……じゃ、いいよ。ギルと、結婚したげる♪」
そう言うと、エリーはギルバートをギュッと抱きしめる。
……おぉおおおおおおおおおぉっ!?
……えぇええええええええええええええっ!?
……ほ、ホントに……?
……いいよって!?エリーがいいよって!!
ギルバートも満面の笑みを浮かべたまま、エリーの背中に両腕を回して抱擁を返した。
できたばかりのカップルは、お互いを抱きしめながら、顔を真っ赤に染め、幸せと慣れない恥ずかしさに内心、身もだえるのだった。
☆
……ギルが……ギルが、ず、ずっと、好きだったって!
エリザベスは、これは夢かしら、と思った。そしてすぐに、夢でありませんようにと願った。
……だ、大好きだって……ま、守るって!ギルが?わたしを?
絶望しかなかったエリザベスの心の中には、今、祝福の嵐が吹き荒れていた。
……ダメだわ、感情が馬鹿になったみたい
自然と口角が上がって行くのが止められない。
抵抗してもニヨニヨと笑いの形に歪んでしまう。
そして今度は喜びの涙が止まらない。エリザベスはもう、諦めて全て放置する。
……みっともないけど、しょうがない。こんなわたしを、ギルが好きって言ったんだから!
「……じゃ、いいよ。ギルと、結婚したげる♪」
……こ、こんな恥ずかしいこと、今この瞬間しか言えない!
エリザベスはあまりの恥ずかしさに、ギルを抱きしめた。
涙でグシャグシャになった上、リンゴみたいに真っ赤っかで、みっともない笑顔を晒しているであろう、自分の顔をギルから隠す。
なのに、ギルからも強く抱きしめられると、ますます恥ずかしくなってゆく。
エリザベスは恥ずかしさのあまり、このまま死ぬんじゃないかと思った。
そして、ギルのことが大好きだと思ったのだった。
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本日、2話目、ラストです。
楽しんでもらえると嬉しいです。ありがとうございました。
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次回予定「報告」
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