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余談

余談






 神は世界を作ったりはしない。世界を管理したりもしない。ただ、見守っている、というより、ただ、見ているだけだ。

 

 それでも時折、その見ている世界に手を出すこともある。

 

 ある時、神は地上に桁外れの才能を持つ人間が生れたことを知り、観察を開始する。

 

 その少年は平民の孤児で、親を知らず、明日をも知れぬ苦しい暮らしの中、必死で冒険者の荷物持ちを務め、彼らが狩った魔獣を解体し、魔石を手にする。

 

 余程珍しい色でない限り、魔石の宝石としての価値は低く、魔石屋に二束三文で買い叩かれるのが常であり、冒険者たちの中には報酬の一部を、魔石を渡す事で誤魔化す者もいたのだ。

 

 だが少年は魔石が気に入り、二束三文で売るよりも、肌身離さず持っていた。平民の孤児でも出来るコレクションだった。

 

 ところが、ある日、魔石とつながった感覚を得た少年は、その感覚を研ぎ澄まし、いつの間にか魔力を扱うコツを得た。

 

 そしてその時の魔石が「火」の魔法石だった。

 

 少年は「火」の魔法を練習し、熟練し、冒険者として登録すると様々な魔獣を倒し、数々の魔法石を手に入れ、どんどん頭角を現した。

 

 不思議な事に、手に入れる魔法石全てに対して適正があり、相性も抜群という異常事態で、すぐに貴族の目に留まった。

 

 度々、貴族や商人から魔法石を売って欲しいと言われた少年だったが、これを全て断った。

 

 そして、お金のない人達からの指名依頼を格安で受けて人助けを続けた。

 

 少年の名声は轟き、国王は魔法使いに関する特別法を作り、少年に伯爵位を与えた。

 

 少年は国に大いに感謝し、伯爵の権力と国王のお気に入りの立場を活かして、救貧院を建て、冒険者としてたくさんの魔獣を狩り、貧しい人々に格安で、時には無償で配ることで命を救った。

 

 いつしか王都に広がっていた貧民街は消え去り、少年は青年となり、大魔法使いと呼ばれ、民衆から尊敬され慕われる存在となった。

 

 国王はそんな青年を手に入れたいと思い、王女を弟子として育てて欲しいと大魔法使いに頼み込む。

 

 青年は快く引き受け、魔法を教え、適正を判定し、適正のある魔法石を獲りに行くのを手伝った。

 

 魔法石を獲った後も指導を続け、魔法の熟練による効果、応用などを教えた。

 

 次第に青年は王女を弟子として以上に気に掛けるようになった。

 

 だが、王女の報告で魔法の秘密を知った国王は、王女に適性が有った僅かの魔法では満足できなくなり、青年の持つ魔法石を手に入れたくなった。

 

 国王は王女に命じ、酒に薬を混ぜて青年を眠らせ、魔法石を全て取り上げた。

 

 塔の牢獄で目覚めた青年は、訳が分からず王女の名を呼び続けたが王女とは二度と会えなかった。

 

 やがて何が起きたかを悟った青年は絶望し、魔法石を入れるために自分で縫い付けた内ポケットに残っていた僅かな魔法石と、独自に開発した応用魔法を使って従魔の鳥型魔獣に魂を乗り換えた。

 

 そして、青年は自らの遺体を残し、塔の明り取り用の小窓から飛び去った。

 

 それを知った王女は自ら命を絶った。

 

 国は荒れ、国王は倒され、粛清の嵐が吹き荒れた。

 

 

 そこまで見て、神は嘆息した。

 

 せっかく、稀少で清い魂を持つ青年に恩寵を与えたというのに。

 

 穢れた魂が余計な事をしたおかげで予定が狂ってしまった。

 

 神が与えた恩寵は、青年が人生を全うした後、才能と記憶を持ったまま生まれ変われることだった。

 

 ところが、死んだのは身体のみ。転生したのも身体のみ。

 

 数十年後、大魔法使いの才能をそのまま受け継いだ赤子が生れる。その時、魂が受けるはずだった恩寵は霧散しかけたが、僅かに同じ日に生まれた赤子に宿った。

 

  

 神は続きを見る。

 

 青年は鳥型魔獣として数十年を生き、やがて少年と出会った。

 

 少年は神が与えた恩寵を持っていた。

 

 少年の隣の家には少女が住んでいた。彼女は神が与えた恩寵の欠片を持っていた。


 

 ……なるほど。やはり人界に手を出すのは難しい

 

 神は独り言ちた。

 

 

 

 ……だが、やはり人界は面白い



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本日、3話目、ラスト、これにて完結です。


設定していたけど流れ優先で入れなかった話や

脇役たちとの交流や色んな寄り道なども書きたかったですが、

とにかく初作品なので、完結させることを優先しました。


今後、執筆活動を続けるかどうかは未定ですが、

もう一つ、書いてみたいジャンルがあるので

@1本だけは、その内、書いてアップすると思います。

その時は、良ければまた、読んでいただけると嬉しいです。


最後まで読んでもらえた方、ありがとうございました。


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読んでくれて、ありがとうございました♪

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