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王城封鎖

122 王城封鎖






「警備隊長!報告を!」


「はっ!」



 魔法具による被害が止まった後、しばらくすると、王城から王宮騎士団の分隊が到着した。


 警備隊長は王宮騎士団の分隊長に対して背筋を伸ばし、即座に塔が出現して以降の状況を詳細に報告し始めた。

 

 王宮騎士団は、王城と王都全域の警備任務を兼任する警備兵と違って、王族だけを守る王族専用の騎士団であり、一人一人が各騎士団から選抜された選り抜きの実力を持つ騎士達だ。

 

 王宮騎士団こそ、ゼクストフィール王国において、格、実力ともに最高最強の騎士団であった。

 

 その王宮騎士団の騎士達が塔に近づくと、またしても塔の頂上付近から多数の魔法具がばら撒かれた。

 

 だが王宮騎士達は警備隊長の報告を参考に、炎を盾で防ぎ、魔法具を一刀両断にしていった。

 

 両断された魔法具は中身をバラまき、その機能を停止した。魔法具の中には魔石らしきものが埋められており、無事だったものは王宮騎士達によって回収された。

 

「ふむ、種が割れておれば、然程危険な物ではないな」


「ハッ!不意打ちであり、初見であったからこそ、と言ったところでしょうか」


 王宮騎士の分隊長と隊員が魔法具について感想を話し合っているのを聞き、警備隊長は感心していた。

 

 仮令たとえ、自分の報告があったとはいえ、彼らは飛来する魔法具を速やかに両断し、討ち漏らして発動した魔法具の魔法にも的確に対処していった。警備兵とは一人一人の練度が違い過ぎる。


「……どうやら、もう落ちてこないようだな?」


「ハッ!」


「では、誰か、塔の壁に一当てしてみよ」 

「ハッ!では私が」


 そう言うと、王宮騎士の分隊長と話していた隊員が、工兵から鶴嘴を借り受けると、全力で壁に打ち付けた。

 

 だが塔の壁には傷一つ付かない。それを確認しすると、工兵に鶴嘴を返し、今度は自分の剣を抜いて構える。

 

「ィヤアアァッ!」


 裂帛の気合と共に剣が撃ち下ろされ、「ギィンッ!」と金属同士がぶつかるような摩擦音が王家の森に響き渡った。 

 

「……どうだ?」


 隊員が自らの斬りつけた塔の壁を見分すると、壁には一筋の浅い切れ目が残っていた。 

 

「……不壊の壁という訳ではなさそうだが、これは時間がかかるな」


 警備隊長は、自分達が破壊しようと散々打ち付けても傷一つ付かなかった塔の壁に、一撃で傷がついたことに目を丸くした。

 

「分隊長、どうします?」


「とりあえず、外壁を登るのは上で何があるかわからぬ。壁を抜けるかどうか、全員でやれるだけやってみよ」

 

「ハッ!よし、全員、一撃入れて交代だ!」


「オウッ!」

 

 隊長の命令が下ると、王宮騎士達が代わる代わる、壁の一点を目掛け、剣を振り下ろして行く。

 

 暫し「ギィンッ!」「ギィンッ!」という音が途切れなく続く。

 

 その音がやんでみると、斬りつけ続けた壁の一点には斧を打ち込んだように深い切り傷があったが、まだ壁を貫通しておらず、一方で王宮騎士達の剣の剣先は完全に潰れていたのだった。


「……これでは埒が明かぬな」


「ハッ!替えの剣があれば、夜までには何とか貫通させる事は出来るかもしれませんが……人が通れるほどまで拡げるにはどれほどかかることか」


「そうだな……これは一度戻り、報告と装備の交換、補充をすべきか……」


 王宮騎士の分隊長がそう言葉を濁した時だった。王城の方から伝令の兵が走り寄ってきた。

 

「伝令!現在、王城が謎の敵襲を受けている模様!警備隊、王宮騎士分隊は直ちに城に戻れ!繰り返す!」


 その伝令を聞き、その場の全員が、この塔が敵の陽動だったことを悟った。


「直ちに城へ帰還する!」


 王宮騎士分隊長は直ちに分隊を纏め、城へ向かって進み始めた。

 

 遅れて警備隊長も警備兵を集めて城へと戻り始める。

 

 

 

 警備隊長は、結局敵の陽動に右往左往した挙句、怪我人を量産しただけだったな、と独り苦虫を噛み潰すのであった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 十分過ぎるほど高くなった塔の天辺から地上を見ていたギルバートは、一際練度の高そうな集団がやって来たのを見て、一瞬、塔の外壁を溶かして魔法具をバラまき、また外壁を成型した。

 

 ギルバートは、「沼化」の魔法と「土」の魔法、「硬化」の魔法を交互に使い、窓を開け閉めするように、一瞬で塔の外壁を開け閉めできるまでに熟練していた。

 

 だが、ばら撒いたあと、前回は散々に響き渡った悲鳴や怒号が一切聞こえない。

 

 少しだけ外壁に覗き穴を開けて、塔の周囲を見てみると、騎士の集団が魔法具を解体、回収してまわっていた。

 

 

 ……強そうなのが来た。陽動はここまでかな

 

『了解だ。こちらは順調に王城を封鎖分断中だ。速やかに合流してくれ』


 ……了解!

 

  

 ギルバートはケルに「念話」の魔法で報告すると、一階層まで急いで降りた。

 

 一階層には酷い騒音が響き渡っていた。どうやら外から塔の壁を破ろうとしているようだ。

 

 竜ですら、四本中、一本しか折れなかったのだ。まさか、貫通されることは無いと思うが、ギルバートは念のため、一階層の壁を二倍ほどの厚さに増設した。

 

 そして地下一階層へ降りると、松明に火をつけ、ケルが作った地下通路を急いで駆け抜けた。

 

 地下通路の終点の壁には、土や石材が溶けたような大きな穴が開いており、穴の向こうは石造りの地下通路になっていた。

 

 ギルバートが「沼化」出来るのはせいぜい小石程度までで、これ程大きな石材を「沼化」することは出来ない。

 

 地下通路に入って壁を見ると、ケルが極少範囲を「沼化」することで残した矢印があった。

 

 

 

 さすがだな、と思いつつ、ギルバートはケルとエリーとの合流を目指して地下通路を急ぎ、進んで行ったのだった。



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本日、2話目、ラストです。

楽しんでもらえると嬉しいです。ありがとうございました。


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次回予定「王城封鎖2」

読んでくれて、ありがとうございました♪

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