プロローグ
1 プロローグ
夜半。少年は自室のベッドに仰向けに寝転がり、自然と顔を天井へ向けていたが、何も見てはいなかった。
少年の頭の中は、自分ではどうにもならない、少年にとって重大な、ある一つの悩みで埋め尽くされていたからだ。
短めの髪は濃いめの茶色で、瞳は琥珀色、細目の吊り目気味で、細身ながらそれなりに鍛えられた筋肉質な身体。
貧乏男爵家であるフォルダー家の一人息子で、名はギルバート・フォルダーという。
ギルバートは、あとほんの数か月で、成人を迎える。
そうなれば、たとえ貧乏貴族でも、結婚しなくてはならない。ギルバートは嫡子なので嫁取りだ。
いかに名ばかりとは言え、貴族である以上、結婚相手は当主である父親が決めるのが当然であり、少なくともフォルダー家ではその「当然」が覆る要素は無かった。。
運よく縁談が複数あれば、もしかしたら選ばせてもらえるかもしれない。
と言うかむしろ、家柄的に、結婚出来るだけ有難いと思うべきなのかもしれない。
だが問題は、ギルバートには既に十何年来、心に決めた娘がいる、と言う事だった。
その娘以外との結婚なんて、考えられない。
それなのに、数か月後には多分、ギルバートは家の為に、自分の知らない女と結婚しているのだ。
神様に真面目に祈ったことなど一度もないのに、ギルバートは祈らずにはいられなかった。
……ああ、神様、どうかエリーと結婚させて下さい!
☆
悩んでいるうちにウトウトしてしまっていたギルバートは、ふと、自分の身体が細かく揺れているのを感じた。
窓際に目を向ければ、数少ない粗末な家具や吊ってある普段着がゆらゆらと揺れていた。
……割と近いかな?
窓越しに見える街並みを見ながらギルバートは街周辺の森に思いをはせる。
地揺れは、ダンジョンが生れた時と死んだ時に起きる、というのはこの辺りでは子供でも知っていることだ。
そして今の揺れは結構大きかったような気がする。
……明日、エリーと探しに行ってみようかな
ギルバートは寝返りをうって壁の方を向くと、再び眠りに落ちた。
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今日は5話、明日は4話、明後日からは毎日1話ずつ投稿する予定です。
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