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転機

 俺は震える手でフレンド申請を許可する。

 レミアさんとcladem(クラデム)さんの時は許可するのに時間がかかったが今回は早くフレンドになりたい欲の方が勝った。

 幸いパーティー招待は来なかったのでギリギリ俺の心臓は生きている。

 もしパーティー招待まで来てたら絶命していた自信がある。

 

 参加型を終え役割を失った俺は舞希さんの配信を見る。

 如何やらもう2マッチ目をやっているようだ。

 同接は3万人。

 自分の同接は見ないが推しの同接は見る。

 実際に参加しようとしている人は少ないだろうがよくこの人数の中から1番目に入れたなと思う。

 激強回線様様だ。

 

 こうして配信を見ていると昨日とは比べ物にならないくらいうまくなっている。

 昨日の配信からレベルが12から21まで上がっているので裏でやっていたのだろう。

 この位上げるのに大体20マッチ位やらないといけないので相当やっていたのだろう。

 こういうところが推せるんだよな。

 

 2戦目が終わり結果は3キル4位だった。 

 戦闘のきっかけも舞希さんが作っていて戦闘後のポジション取りも良くて見ているこっちが嬉しくなる。

 子を見る親というか芸を覚える犬を見る飼い主のような気持になる。

 関係性は全然違うけど……


 マッチ終了後2戦目の反省をしている。

 相手よりもポジションが良かったのになぜ負けたのか。

 どうしたら良かったのか。

 戦闘中の味方との連携の仕方。

 本当にさっきのポジションで良かったのか。

 コメント欄では


 ・味方のカバーよりも回復優先した方が良かったのかな


 とか


 ・後ろの岩の裏なら勝てたかも


 とか言われているが俺は違うと思う。

 いや自分の考えが本当に正しいのかは分からないが一応チャンピオン帯まで行ったのだ。

 参考になるかもとコメントを打とうとするが途中まで打ったコメントを全て消す。

 理由は特にない。

 あるとすれば勇気が出なかったのだろう。

 自分でも気持ちを理解できないが多分「読んでもらえなかったらどうしよう」とか「リスナーから調子に乗りすぎとか言われたらどうしよう」とか思ったんだと思う。

 もし名指しで聞かれたら答えればいいだろう。

 まあ、そんな未来はないと思うけど。

 そんなことになれば本当に俺の心臓が壊れてしまう。


 その後3時間ほどやってこの配信を終えた。

 この配信を、だ。

 枠を立て直してすぐにソロランクの配信を始める。

 ソロランクを少しした後大会メンバーでランクをするらしい。


 まだ舞希さんはランクを始めたばかりなので今はシルバー1だ。

 ランク帯は下からブロンズ、シルバー、ゴールド、クォーツ、ガーネット、ダイヤ、チャンピオン、となっているため舞希さんのランクは下から2番目と言う事になる。

 チャンピオン帯以外は1、2、3と数字が付くのでそういう意味では下から4番目になる。

 

 ソロランクでも着実にポイントを上げていき2時間ほどでシルバー2の終盤まで上げていた。

 このペースなら1か月後にはチャンピオン帯くらいうまくなっているんじゃないだろうか。

 まあ、そんな甘くないのがこの『rex proelii』っていうゲームなんだけどね。

 

 そんなこんなで大会メンバーの南凪咲(みなみなぎさ)さんと葉楚炉埜慶(はそろのけい)さんと合流した。

 この2人は舞希さんと同じ事務所『これくちお』に所属する女性と男性のvtuberだ。

 舞希さんの後輩にあたる。


 2人ともランクがダイヤなのでそれに引っ張られて舞希さんもダイヤ帯に入れられる。

 明らかにさきほどよりも敵の動きが洗練されていて体感だが5倍くらい弾を当ててくる。

 いくら2人がダイヤ帯だからと言って初心者を抱えながら勝つのは至難の業だ。

 

 なかなかポイントが盛れず3戦目が終わる。

 ロビーに戻ってきたタイミングで俺はダッシュでトイレへ向かう。

 本当は3戦目が始まった時から行きたかったのだが舞希さんの活躍を見逃すわけにはいけず我慢していたのだ。


『ほんとごめんね。私が足引っ張っちゃって』


『いやいやしょうがないですって。相手がうまいのも原因ですから』


『そうそう逆に初心者でそこまで動ける方が私たちはびっくりですよ』


『うーん、ありがとう。でもほんとどうしたらいいのかなあ』


『そうですねえ、大会のコーチでも見つかればその人に教えてもらえばいいんですけど』


『大会のコーチか……こんな早くからコーチしてくれる人いるのかなあ?』


『そうだなあ……あ、いるかも』


『え、本当ですか?』


『いやまだ確定じゃないよ。迷惑になるかもだからちょっと聞いてみるね』


 急いでトイレから戻ってきてイヤホンをつける。

 まだマッチは始まってなかったようで安心する。

 メインモニターに見慣れないものが映っている。

 自分のロビーだとチャットってこういうふうに出てくるんだなあと現実を見たくない俺はそう考える。

 うーん、何故だ。

 数秒フリーズした後コメントをスクロールして何があったか見てみる。

 俺にコーチになってほしいとのこと。 

 チャットに書いている内容と一緒だ。

 まあ、推しが困ってたら助けるしかないよね。

 コーチできますという内容のチャットを送る。

 速報、俺の心臓終了のお知らせ。

 この2日間で俺の寿命10年くらい減ったと思う。

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