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推しから

前話少しだけ変えました。

 はあ、俺最近緊張しすぎな気がする。

 こんなことがこれからも続いたら早死にしそうだ。

 

 それよりも何で舞希さんは俺のこと知ってるんだと疑問に思う。

 俺は自他ともに認める底辺配信者だ。

 いや最近はレミアさんとcladem(クラデム)さんとコラボしたおかげでちょっとはチャンネル登録者が増えたかもしれないが基本それを見ないので真偽は分からない。

 だがどんな理由であれ推しに認知されているということはオタクとしてはとてもうれしいことだ。

 クラデムさんに認知されていることを知った時も嬉しかったが今回は相手が推しなのでその時の比ではないくらい心が高ぶっている。


 突如目の前が見えにくくなる。

 涙が目に溜まり零れ落ちてきた。

 如何やら自分の思っている以上に感動していたようだ。

 ゲームばっかりで使うこと無く溜まり続けていた涙が今全て出てくる感覚がする。

 正直今すぐにでもゲーム内vcをつけて舞希さんと話したかったが舞希さんにもそのリスナーにも迷惑がかかるのでvcはやめておく。

 

「あー。やばい。嬉しすぎる。涙止まらないんだけど」


 意図していなかったが自分の口から心情がこぼれる。

 こうなったらもう本気で舞希さんをキャリーしなければ。

 服の首回りで涙を拭きいつの間にか出ていた手汗をズボンにこすりつける。

 

 一通り漁って物資が潤った俺たちは戦闘をするため敵を探している。

 1位を目指すなら戦わない方がいいのかもしれないがそれだとただのお散歩ゲーになってしまうのでやめる。

 今俺はめちゃくちゃ集中している。

 それこそチャンピオン帯をやっているとき以上に。

 いつもは魅せプとか考えているが今の俺の脳はそんなことを考えるリソースは残っていない。

 それほどに負けられないのだ。

 この1戦しかないのだ。

 元々FPSをやっていなかった舞希さんが大会に出て勝つためにこうしてうまくなろうとしているのだ。

 勝つためにやることを否定しているわけではないし何なら良いことだとすら思う。

 だが俺はこのゲームの楽しさを知ってほしいのだ。

 いやもう知っているかもしれないがそれでももっとだ。

 これはただのオタクのちょっとした願いだ。

 

 そんなことを考えていると敵を見つける。

 ピンを指し皆に知らせる。

 正直このマッチにいる敵位なら俺1人でも勝てるだろう。

 たぶん……

 だがそれだとだめだ。

 舞希さんが楽しめないから。

 舞希さんが楽しむこと。これがこのマッチでの俺の第一優先事項だ。


 ではどうしたらいいだろう。

 やはりこのゲームの醍醐味は敵を倒すことだろう。

 俺はすぐさま舞希さんにキルを取らせるムーブに変える。

 今までずっと俺がキルを取るムーブをしてきたのでできるか不安だったが昨日プロレベルのを身近で見たのだ。できるだろう。


 まずは正面で撃ち合う。

 敵が塀の裏に隠れたので射線が通る位置に俺が移動する。

 もう1人の味方も俺の動きに合わせて動いてくれる。

 俺達に気づいても敵が動かなかったのでグレネードを投げて敵が動くようにする。

 本来なら敵が動かなかった時点で俺が倒しているのだが今回の目的は舞希さんにキルを取らせることなのでグレネードを投げた。

 塀の裏から出てきた敵の1人を舞希さんが倒す。

 だが初心者なこともあり残り2人を倒せなかったようだ。


 まあ、このゲームのリコイル難しいからしょうがないよね!

 敵1人倒したしめちゃくちゃうまいよね!


 舞希さんがリロードしているタイミングで敵が舞希さんを撃とうとしていたので俺が頭に弾丸を打ち込んでおく。

 推しを傷つけさせるわけないだろ。

 残った敵は舞希さんが倒せるように俺と味方で時間を稼いでおく。

 リロードを終え舞希さんが残りの敵を倒す。

 1対1をした時に被弾したようで、舞希さんの体力が減っていたので目の前で俺の持っている回復を全て落とし味方と一緒に漁夫が来ないか周りを見る。


『回復ありがとうございます』


 あああああ、耳がああああ、癒されるううううう。

 や、やばい。こんなこと考えてる場合じゃない。

 このゲームはすぐ死ぬから油断できないのだ。

 周りを見た限りでは漁夫は来ていないようだ。

 とりあえず一安心だ。


 アンレートマッチはポイントの増減がないので大体の敵が多く戦闘をするので部隊の減りが早い。

 このマッチも例外ではなくまだ1回しか戦闘していないのにもう残り8部隊だ。

 まだまだ戦闘したいので安地内に入るついでに敵を探すことにする。


 安地内に入り敵を見つけた頃には残り3部隊まで減っていた。

 敵を見つけた俺はいつもの癖で敵の頭を抜いてしまう。

 

「ああああ、抜いちゃったああ」

 

 やばい、いつもの癖で脊髄反射で撃ってしまった。

 舞希さんも味方も俺が1ダウン取ったことで詰める。

 舞希さんは俺が倒してしまったときに学んだのかしっかり遮蔽を使って詰めている。


 いや、偉すぎないか?

 初心者じゃないだろ。


 俺も一緒に詰めて敵部隊を全滅させることができた。

 その後残り3部隊だったこともあって残り1つの部隊が詰めてきた。

 2人とも気づいたのか遮蔽に隠れる。

 相手が甘えて詰めてきていたので倒そうかと思ったがやめることにした。

 俺はすぐに舞希さんがキルを取りやすくなるように場所を変える。

 大体あの木の裏でいいだろうと思い走り出す。

 走りながらも敵と味方をチラチラ見ていると舞希さんが甘えて詰めてきた敵を倒す。

 チャンピオン帯で俺が舞希さんを倒した時を追懐させるようなキルだった。

 1ダウン取ったことでうろたえていた敵を舞希さんと味方が倒して1位を取ることができた。


「よっしゃーー!!1位だああああ」


 大歓喜である。

 昨日人生で1番大きな声を出したのに今のでもう記録が更新された。

 ロビーに戻った俺はルールを守りロビーから抜ける。

 椅子の背もたれに体重をかけリラックスする。

 何とか1位を取ることができて俺の心は安堵で埋め尽くされている。

 緊張で疲れた心を癒すために目を閉じる。

 イヤホンをつけたままだったので突然音が流れてきて少しびっくりした。

 聞きなれないが昨日も聞いた音。

 モニターを見てみると舞希さんからのフレンド申請。

 うーん。この既視感(デジャブ)

 マッチを終えたことで落ち着きを取り戻した心臓がまた動きを速め始めた。

 

 

 

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