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世界1位

 家のベットに寝転がりながらツイートを眺めている。

 最近の俺のおすすめツイートには『rex』関連のものが流れるようになっていた。

 どうやら今はプロシーンでいらさんが活躍しているようだ。

 今回のアジア公式大会は日本で開催されているので例年に比べて日本の熱量が凄い。

 そんなことを考えているとスマホの上部に清水陽斗という名前と共に音楽が流れる。

 右側の緑色の電話マークを押す。

「おっすー、やろー」

「うい」

 それだけを話して電話を切る。

 これまでに何回も同じやり取りをしているので何を言いたいのか理解できる。

 俺は軽くなった体を起こしてパソコンに電源をつける。

 ここの所陽斗とゲームをできていなかったので舞い上がっているらしい。

 俺はいつも使っている通話サーバーに入る。


「蓮今ランクなんぼ?」

 パーティー招待されたので陽斗のロビーに入る。

「ダイア」

「全然やってないな」

「そういう陽斗は?」

「ダイア」

「人のこと言えねー」

 そんなくだらない事を話しながらランクを回す。

 配信外でゲームをすることが無くなりつつあったので新鮮な気持ちだ。

「今日出かけたんでしょ?」

 何でお前が知ってるんだと言いたくなる。

 まあどうせ由香里に聞いたのだろう。

「珍しいね」

「凛から誘われたからねー」

「デート?」

「うん」

「は!?」

 俺の鼓膜を破りに来ているのではないかと思う声量を出す。

 そんな大声出すとまた海ちゃんに怒られるぞと心配しているとゴンと壁が殴られる音が聞こえる。

「え、デートって……マジ?」

 気を付けて小声で語りかけてくる。

「うん。男女が日時を決めて会う事を言うらしいぞ」

「ああ、そういう事ねよかったよかった」

「よかったって何?俺の恋愛対象は女だぞ」

「ちげーわ!そういう意味じゃねーよアホ!!」

 勿論誤解だという事は知っている。

 もし本当に陽斗が俺の事好きだったら……うわ、吐きそう。

 想像しただけで朝食やポップコーンがのどまで上がってくるのを感じる。

 俺がそんな吐き気と戦っている時陽斗はまた海ちゃんに怒られていた。

 こいつ学ばな過ぎる。

「それで?由香里とも会ったんだろ?修羅場だった?」

「いや別に。なんか俺がトイレから戻ったら凛いなくなってたし」

「その時に何かあったのか」

 何の意味があるのかそんなことを考察する。

 ただそれに脳のリソースを使っていてもオーダーはできるようで俺たちは安地内に入る。

「あ!ナニかあったのか」

「黙れよ」

 ありえない方向に話が進んでいく。

 相変わらず思考回路がイカレている。

 くだらないことを考えてる陽斗をよそに俺は周りに敵がいないか見る。

 丁度安地に追いかけられるように走ってきていた敵部隊を見つけたのでついでに倒しておく。

「さっさと結婚して息子の顔を見せてくれ」

「お前はどの立場なんだよ」

「あ、次ここ行くぞー」

 陽斗がマップにピンを指す。

 安地ギリギリで敵から撃たれないところを走ってピンが指されたところに向かう。

 俺は凛と由香里の話で思い出したことがあった。

「友達としてか恋愛としてかの好きの違いって分かる?」

「俺の事好きってこと?ごめん恋愛対象は女なんだ」

 半笑いでここぞとばかりに煽ってくる。

 俺は無言の圧力で抵抗する。

「いやごめんて。まあ……likeかloveの違いかな」

「日本語分かるか?」

「likeとliveって英語なんだけどな」

「あ?」

「スミマセン」

 ふざけたことばっかり言っているので少し威圧すると裏声で謝ってくる。

 後ろを振り向いて陽斗を撃とうかと思ったが野良に怒られそうなのでやめておく。

 その代わりと言っては何だがスタングレネードを当てる。

「おいえぐいって!!」

 スタングレネードの効果は視界不良と移動速度低下。

 敵に狙われたら1秒も経たずに死んでしまうが生憎陽斗のルート取りは完璧で敵の誰からも撃たれることは無かった。

 爆笑する俺の前に少し遅れて陽斗が来る。

 無言で俺に銃を撃つ。

「ごめんごめん」

 笑い過ぎて言葉が途切れ途切れになる。

 そんな時画面の端にもの凄く小さくはあるがスナイパーを持った敵が見えた。

 俺は陽斗を殴りノックバックで遮蔽に隠した後俺もすぐに隠れる。

 俺のさっきいた場所に弾が通り過ぎる。

「あっぶねー。ていうか今のチェスターか?」

「あ、確かに」

 このランク帯でウィンチェスターを持つ人に会うとは思わなかった。

 敵と俺達との距離はスナイパーにはもってこいの距離だった。

 今のポジションは相手の方が強いだろう。

 まあ()()だ。陽斗がここを取ったのなら最終安地でこの場所が1番強くなるのは分かっている。

「ちょっとプライドバトルしてくるわ」

「ん?ああオッケーオッケー」

 陽斗はまるで手のかかる子供に語り掛けるように半笑いで言う。

 敵に射線が通るのはさっき弾が通った窓しかないのでそこから顔を出す。

 少しずつ顔を出しては引っ込めてを繰り返して敵の居そうなところをつぶしていく。

 そして3度目の顔を出した時敵の位置は見えなかったにもかかわらず俺はダウンする。

「は?」

「お~相手強いな」

 周りを見ていた陽斗がすぐに蘇生してくれる。

「蓮が負けるなんて珍しいね」

「相手マジで強いんだけど」

 今の正直な気持ちを話す。

 最近ではスナイパーの打ち合いで負けることなんて久しくなかったので動揺してしまう。

 相手もウィンチェスターという事で俺の負けず嫌いが発動してしまう。

 蘇生された俺はもう1度勝負を仕掛ける。

 今度は敵がいたであろう場所を1発で見る。

 そしてまたダウンする。

「はぁ……ああああああああああ」

「もううるさいってえ」

 さっき叫んだことを棚に上げて言う。

 陽斗はまだ近くにいたのですぐに蘇生してくれる。

「あいつ強いよー」

「いやマジで強いな」

 お互いに信じられないというような声を出す。

 そして陽斗は今のキルログを見てから納得する。

「あ、相手今世界1位の人だ」

「そうなの?」

 もし本当だとしたらあの強さにも合点がいく。

「本当本当。今のプロシーン見てない?韓国人の世界最強で大会でもウィンチェスター使ってる人」

「何で韓国の人なのに日本鯖いるの?」

「大会で日本来てるんだよ」

 そういえばそんなことを見た気がする。

 ウィンチェスターを大会で使っていることで親近感と対抗心が同時に芽生える。

「絶対勝つわ」

「現世界1位に勝ってくれ」

 そういうオーダーが出たなら絶対に勝たなければならない。

 陽斗はその人ができないことは言わない。

 つまり陽斗は俺が勝てると思っているという事だ。

 これは期待ではなく信頼。

 それのおかげで俺は気負うことなくプレーできる。

「ただ倒すならもうちょっと待って。後30秒後。相手安地外だから入ろうとするはず」

「分かった」

 俺はミニマップの下に映る時間で30秒計算する。

 その間にどうやったら勝てるかを考える。

 さっきと同じことをしてもまた負けるだけだろう。

 最悪の場合ここに責めてきた敵に人数差で負けることになる。

 俺はいい作戦を思いついた。

 30秒後、アンチ収縮が始まる。

 俺は顔を出さずサブ武器に持っていたハンドガンをさっきまで顔を出していた窓から見えるように落とす。

 そのハンドガンは綺麗に撃たれ後ろに飛んでいく。

 その弾の軌道を見て壁を撃つ。

 キルログが流れる。

「勝ったあああああ!!」

「はいー、クリップ行きでーす」

 敵視点だとチータにしか見えない倒し方になっただろう。

 世界1位を倒すプラス久々の壁抜きヘッドショットで気持ちよくなる。

 通常武器の壁抜きで1発で倒せるのはウィンチェスターだけなのだ。

 俺がウィンチェスターを使う理由の1つだ。

 さっきまで10部隊もいた敵は最終安地でどんどん減っていき俺が勝利の余韻に浸っている間に1位になっていた。

「ポイント盛り盛りだわ。はいーマックスポイントいただきましたー」

 リザルトを見ると俺も40ポイントもらえていた。

 4キルと俺としては不服な数字だが世界1位を倒したという事実がそれを帳消しにしていた。

「もう俺満足だわ」

 まだ1試合しかしていないのにそんなことを言う。

 俺がさっきのクリップをツイートしている間に陽斗は抜ける。

 俺としてはまだやり足りないので配信をつけるとツイートする。

 

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