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舞希王

 ネカフェでゲームをしたりと時間まで遊んで再度スタジオに入る。

 さっきよりも人が多くあわただしい印象がある。

 今度は待合室ではなく撮影するところに行く。

 スタッフの人だろうかかなりの人が集まっている。

「舞希ちゃーん」

 数人で固まって話していた内の1人が手を振ってこちらに小走りで近づいてくる。

 すぐにそれが天外さんだとわかる。

 さっき話していたのはスタッフさんだ。

 またやってるよという様に笑みをこぼし話を続けている。

 凪咲ちゃんと慶さんはリアルで初めて会ったのか各々自己紹介をしている。

 当然俺も会うのは初めてな訳で、

「ていう事は君がロータスさんだね」

 そう言って1歩前に出て俺に近づく。

 両手でギュッと俺の頬を掴みグリグリと動かす。

「かわいいねー」

 まるで犬を撫でているかのように遊ばれていると舞希がぺしっと軽くおでこを叩く。

 俺の頬から手が離れたすきに後ろから抱き着いてくる。

「蓮君で遊ばないの~」

 物足りなさそうにする天外さんをよそに俺の体はどんどん体温を上げていく。

 ネカフェでも同じことがあったが今回は少し状況が違う。

 さっきは座り方の関係上舞希が立ち膝になっていたので上に頭があったのだが今回は身長の関係で俺の肩から舞希が顔を出している。

 つまり何が言いたいかというと……当たってるんだよあれが、そうあれが。

 背中の真ん中あたりに押し付けられている柔らかなあれに意識が持っていかれそうになるのをぐっとこらえる。

 泊まった時の由香里と言い今日の舞希と言いどうしてこうもとても柔らかい武器で俺の心臓を刺してくるのだろうか。

 

 スタッフさんの合図で配信が始まる。

 これまで見てきた公式の配信に出ているという事実に挙動不審になってしまう。

 初めて関わるvtuberがリアルというのも違和感が凄い。

「どうもー今日司会を担当する、これくちお2期生テア・アルミノアでーす」

 いつもは舞希が司会なのだが企画の趣旨的に舞希だとやりずらいので今日はテアさんがやる。

 凪咲ちゃん、慶さん、天外さん、そして初めて絡むカレン・ローズ・ルディックさん。

 カレンさんはこの中だと1番新人で、舞希とは歌ってみた等でコラボしてから仲良くなったことを覚えている。

「という事で今回の企画はタイトルに書いてある通り『舞希王』という事で舞希ちゃんに関するクイズに早押しで答えてもらいます」

 台本通りに司会を進めていく。

 普通のこういう企画とちょっと違うのは答え合わせがVTRではなく直接ここで舞希がすること。

 ただ答えは事前に用意しているとさっき言っていた。

 各々の前に置いてあるコメント欄が映されたタブレットでは俺の配信では一生経っても見れないようなスピードでコメントが流れている。

 不意に見えた同接7万の文字。

 え、7万?なんだ7万って。

 ありえない数に呆然としている間にもテアさんは司会をしている。


「じゃあ第1問。舞希ちゃんの誕―」

 俺はすぐにボタンを押す。

 さすがに1問目は簡単だろうと思い決め押ししたのが正解だった。

 丁寧な編集で配信画面では俺の机の下が光っている。

「はい、蓮さん」

「8月4日」

 そう言うとピンポーンという音と共に舞希が答えの書いたフリップをひっくり返す。

「という事でまずは蓮さんが1点獲得~」

 ・おおおおお

 ・押すの早すぎて笑う。

 ・オタク君強いな

 ・さすがあ

 ・若干いつもよりテンション高いなw

 ・そりゃあそうだろ

「第2問。最近舞希ちゃんがハマっている物―」

 また少し早めに押す。

 ただ俺のボタンは反応しなかった。

 代わりに光ったのは天外さん。

 天外さんもこの戦法に気づいたようで早く押していた。

「えーっと、ハマってる物かあ……あ!ロータスさん!」

「何言ってんだ?」

 斜め上の回答についツッコんでしまう。

 ・草

 ・草

 ・正解だろ

 ・天外さん分かってるな

 ・これには俺もにっこり

 ブーっと不正解と知らせる音が鳴る。

「ええ~違うの~」

 不服そうな顔をする。

「違うよ」 

 舞希がジト目で天外さんを睨んでいる。

「何でよ!」

「物じゃない」

「あ……もしかして私たちいない方がよかった?」

 ・あ

 ・あっ

 ・タイトルれんと舞希のイチャコララブコメ生活とかしとく?

 ・一旦てぇてぇか

 ・キマル~ 

 ・ヤクかなんかだと思ってる?

 これがもし物という括りじゃなかったら何と答えるのか気になったが心のうちに留めておく。

 天外さんの下の光が消えたので俺はすぐにボタンを押す。

 正直さっきまで答えが分からなかったが最近配信外で舞希と話していたことが頭をよぎる。

「アニメ鑑賞……?」

 さっきと違い自信がないため疑問形になってしまう。

 そんな俺を安心させるようにピンポーンとなる。

「あれ?ほんとに私たちいらないんじゃね?」

 

 段々と難易度が上がっていき15問中14問が終わった頃には皆の点数が均等になっていた。

 だが俺の点数が最低でも2点以上差が開いているので最後の問題を正解しても俺が優勝する。

「それで最後は何点なんですか?」

「まさか1点な訳ないよね~?」

 カレンさんと天外さんが期待の眼差しを向ける。

 そうするとテアさんが待ってましたと言わんばかりにドヤっとする。

「最後は~3垓点でーす」

「「おおおおおお」」

 意味不明なほど大きい桁に呆気にとられる。

 ・草

 ・おおおお

 ・点数がバカw

 ・お約束

 ・シッテタ

「ガイって何?」

 凪咲ちゃんが首を傾げる。

「桁だよ」

「一十百千万億兆垓ってこと?」

「……はあ」

 慶さんがガックリと頭を落とす。

 物凄く疲れているように見える。

「最終問題!2シーズン連続日本1位で舞希ちゃんの事が大好きなオタクでこの配信が始まる前に胸を押し付けられて顔を赤くしていた舞希ちゃんの大好きな人ってだーれだ。」

 ・あ

 ・うーん

 ・そんなん1人しかいないよなあ

 ・むね……? 

 ・そりゃあやることやってるだろ!

 ・運営よくやった

 ・公式でもいじられるんか

 俺の方をガン見しながら問題文を読む。

 スタッフの誰かがストーブを付けたのだろうか急に体が熱くなる。

「誰だろうなあ、蓮ちゃん分かる?」

 隣にいる凪咲ちゃんがニヤニヤしている。

「…………わかんないです」

「へー」

 凪咲ちゃんが俺のボタンを押す。

「自分の名前言ってみてよ」

「………………れん」

 思っていたよりも声が出ない。

 俺と舞希を除くこの場にいる全員がニヤニヤしている。

 おい、これくちお公式!お前らグルだったのか!

「せいかーい。という事で舞希王は蓮さんに決まりましたー」

 テアさんがパッと笑う。

 視界の端に映った舞希は俯いて顔が真っ赤になっていた。

 まあ俺も人のこと言えないだろうが。

 

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