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期末試験が近づいてきましたよと

「期末試験も近づいてきたので皆さんちゃんと勉強してくださいね」

 先生の言葉に皆嫌なことを思い出したように顔をしかめる。

 期末試験が近づいてきたことで部活活動が無くなり学校が終わると生徒全員が帰路に就く。

 段々人が少なくなってくる教室で少し遅れて俺も帰る準備をする。

「蓮、この後皆でテスト勉強しない?」

 SHRが終わるなりすぐにどこかに消えていた陽斗が俺の前に立って言う。

 顔を上げると陽斗だけでなく由香里と綾さん、そして拓がいた。

 クラスの超豪華メンツに胃が痛くなる。

「ええ……威圧感で殺そうとしてる?」

「威圧感なんて出してないだろ」

「存在から溢れ出てる」

「死ねって言ってるか?」

 極端すぎることを言う。

 それよりも陽斗がテスト勉強をするなんて珍しいにも程がある。

 これから星が降るのだろうか。


 さっきのメンバーで俺の家に来る。

 テスト勉強と言っていたのに家に来るときに近くのコンビニに寄っていたので雲行きは怪しい。

「やっぱ1人暮らしっていいよなあ」

「でも家事とかめんどくさいと思うよ」

 羨ましそうに言う拓に正論で殴る綾さん。

 確かに家事はめんどくさいのだろうが俺はやってもらっているだけで何もやっていないのでちょっと申し訳なくなる。

 人数が多いのでソファーとダイニングテーブルに分かれて座る。

 ソファーの前には新しく家に来たホテルにありそうなおしゃれな机が置いてある。

 最近家具が増え過ぎな気がするが気のせいだろうか。

 予想外にも皆勉強を始める。

 予想外だったのは皆が勉強したことではなく陽斗が勉強したことである。

 静寂の中、紙とペンがこすれる音だけが聞こえる。

 慣れない環境での勉強に集中できないでいると陽斗が静寂を破る。

「あ゛~、分からん」

 机に突っ伏してそう嘆く。

 良かったいつもの陽斗だ。

 これなら降るのは槍くらいになりそうだ。

「違うんだよ!今日ここで勉強するのは蓮に教えてもらうためなんだよ!」

 さっきの静けさとの差で風邪を引ける。

「て事でここ全員の先生役頼んだ!」

「え、全員?」

「そう全員」

 他のみんなも期待のまなざしで見てくる。

 めんどくさいなと思いながらも断れるわけもなく渋々教えることになった。

「とりあえずテスト範囲でわかんないとこはどこ?」

「全部!」

 陽斗がうっきうきで答える。そんな元気に答える事ではないと思うのだが。

 テスト範囲が全部わからないとかもうすでに絶望的だ。

 学校に来ているのなら少なからず覚えていることがあると思う。

「授業は?」

「聞いてない」

「宿題は?」

「やってない」

「もちろんテスト範囲も?」

「分からない」

 とまあこんな感じの問題児なのです。

 この顔で運動出来て勉強もできたら俺は嫉妬で発狂してしまう。

 あれ?俺教えない方がいいんじゃね?

 なんてことも考えたが教える人が陽斗だけではないので無理だ。

 

 皆の1番苦手な教科のワークを解いてもらい分からないところがあれば俺が教えるという方式を取った。

 さすがに今から全教科やると明日になっているので少しづつだ。

 陽斗に限って言えば苦手な教科に1番とかないので全教科やってもらう。

「はい!センセーここ分かんないです」

 綾さんがビシッと手を上げて言う。

「センセー俺も」

 続けて拓も言う。

 もうセンセー呼びで定着しているのが怖い。

 この2人は誰かと違って教えるとすぐ吸収するので助かる。

 由香里も由香里で1人で黙々とワークを解いている。

 ちゃんと見ているわけではないが物凄いスピードで手を動かしている。

 俺の負担を軽くしてくれている。

 そして問題の陽斗。

 こいつはダメだ。徹夜コースである。

 まあ勉強で徹夜が1番良くないのだがそうでもしないと間に合わない。

 目指している点数にもよるが赤点回避レベルでも無理だ。

 

 今日やると決めていた分を終らせた綾さんと拓は買ってきたお菓子を陽斗を煽るように目の前で食べてから帰った。

「あ~疲れた~」 

 後ろの背もたれに寄りかかるようにしてぐっと体を伸ばす。

 帰ってきてからぶっ通しでやっていたのでこうもなるだろう。

「今日はこの辺で終わっとくか」

 詰め込み過ぎが良くないのは俺自身よく知っている。

 ずっと正面に立っていたが陽斗の隣に座る。

 背伸びをしながらう~と唸る陽斗にこれまで脳の大半を占めていたことを聞く。

「何でテスト勉強しようと思ったの?」

 高校生がテスト勉強をするくらい当たり前だと思うがこいつの場合は例外だ。

 陽斗は疲れて横になって目を閉じる。

「いやー海に1教科でも赤点だったらパソコン没収するって言われてさあ」

 海ちゃんの、いや多分親の策略だろう。

 パソコンという陽斗にとって超重要物資を人質に取りさらにそれを海ちゃんに言わせている。

 効果は覿面でこうして変わろうとしている。

 こういうのを見ると心がチクリと痛む。

「どう?赤点は回避できそう?」 

 声の方向に顔を向けると後ろからソファーの背もたれに手を付けた由香里がいた。

「ま、赤点回避位ならできるよ。由香里の方は?」

 これは赤点の話ではなくいい点数を取れるかという意味だ。

 由香里に赤点の心配とか無駄でしかないだろう。

 詳しくは聞いていないが前のテストの点数も良かったらしい。

「うん。今回こそは蓮に勝つからね!」

「え、俺に?」

 いつの間にか勝負対象にされていることに驚く。

「前はギリギリで負けちゃったから今回は勝つよ」

 闘志を顕わにする。

 陽斗はよくそんな勝負できるなというような目をしている。

 

 

主人公→海ちゃんと呼びます。

前にさん付けで書いた記憶があるのですが正しくはちゃんです。

時間があるときに直します。時間があるときに……

お目汚し失礼。

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