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学校の方の

 いつも通り登校時間にぎりぎり間に合う時間に家を出る。

 ここ最近は舞希とのコラボが多く生活習慣が整ってきた。

 舞希も大会が終わったことで深夜まで配信することはなくなったからだ。

 

 寒さが落ち着いてきたことで制服だけで登校できる。

 玄関に1つ寂しそうに置いてある靴を履いてドアを開ける。

 そこは初めて見る景色だった。


「おはよう、蓮」


「……おはよう」


 困惑で返事が遅れてしまう。

 転落防止柵に体を預けていた由香里が体を離す。

 一緒に帰ってきたことはあれどこうして家の前で合うのは初めてだ。

 

「もしかして待ってたの?」


 聞いた後で自意識過剰だったかもと思う。

 

「うんそうだよ」


 何も不思議なことは無いという様に言う。

 これで否定の言葉が返ってきたら凄い恥ずかしかったので助かる。

 待っていることを伝えないのは急かしたくなかったからだろうか。

 

 お互い特に何も言わず学校に歩き出す。

 外は想像していたよりもはるかに暑かった。

 それが気温のせいか体温のせいかは分からない。

 

 教室のドアを開けると何人かがこちらを見てくる。

 視線は由香里に向いてそして俺に向く。

 何故由香里と一緒にいるんだと言いたげなアイスピックよりも鋭い視線に殺されそうになる。

 できるだけ気にしないで逃げるように自分の席に向かう。

 陽斗の周りにいる女子を躱して席に座る。

 周りにいた女子は由香里の方に行き俺は無駄に体力を消耗しただけになる。


「珍しいね、というか初めてか由香里と一緒に登校してくるの。え、もしかし「黙れ」


 陽斗が言おうとしたことを察し口をふさぐ。

 まったく俺の周りにはカプ厨しかいない。

 類は友を呼ぶという言葉を疑いたくなる。

 おい友じゃないだろとか言うな。


「で、なんで一緒に来ることになったの?」


 冗談ではなく真面目に聞いてくる。


「俺の家の前で待ってた」


「家の前で待たせてたと」


「ホチキスとアロンアルフア、どっちがいい?」


「アロンアルフアで」


「今すぐホチキス買ってきてお前の口を閉ざすよ」


「こっわ。炎上どころじゃすまないぞ」


 そんなくだらない話をしていると担任の先生が入ってきてSHRが始まる。

 今日の日程を伝え終わるとそれと、と続けて言う。


「近々体育祭の準備が始めるから覚えとけよー」


 それは歓喜か悲哀か。

 クラスがざわっとうるさくなる。

 声が大きいのではなく空気がうるさくなる感じだ。

 それにしても体育祭か。

 運動が苦手な俺は悲哀側の人間だ。

 体育の授業も体育祭関連のものになるのでより一層めんどくさくなる。


 6時間目の体育を終え帰路につく。

 学校から家に帰るという普通の人なら嬉しいことのはずなのに今日だけは煩わしい。

 原因は体育の授業かそれとも一緒に帰ってきてる3人のせいか。

 メンバーは由香里と綾さんとカス(陽斗)

 このメンバーで帰ってる時の周りの目はそれだけで死にそうなほど鋭かった。

 

「ほんとに家隣なんだあ」


「そうなんだよ。マジびっくりだよね」

 

 俺の家の前でそんなことを話している。

 何故陽斗が答えたのかは不明だが。

 まあ俺は話せるわけないのでこうして陽斗が話してくれるのは助かる。

 俺がカギを開け中に入る。 

 今まで後ろを歩いてきたからか先頭に立つことに緊張感を覚える。

 

「うわー綺麗だね」


「綺麗というより物がないだけだろ」


 おい陽斗、余計なこと言うな。

 ただ事実である。

 必要最低限の物しか買っていないため俺の家はかなり綺麗な印象を与えるだろう。

 俺の部屋以外は。

 俺の部屋は今見ている光景では考えられないレベルの散らかり具合を見せている。

 

「で、なんで来たの?」


 勿論聞き先は陽斗だ。

 提案したのが陽斗だし何より他2人に話を振るなんてできない。

 

「特に理由なんてないけど」


「は?」


 何言ってんだこいつ。

 さっさと帰れよと思ったが言えるはずもなく。


「ごめんね、お邪魔しちゃって」


 由香里が困ったような顔で謝ってくる。

 陽斗には見習ってほしいものだ。


「まあ特に予定もないし大丈夫だよ」

 

 今日は家に誰も来ないのでいいだろう。

 1人暮らしのいいところだ。


 特にやることも無いので映画を見ることになった。

 買ってから1度として使わなかった映画を見る機能が活躍した瞬間だった。

 

「うわもうこんな時間」


 綾さんがスマホを見て驚愕する。

 学校が終わってから映画を見たので遅い時間にはなっているだろう。

 由香里と綾さんはドアの前でお邪魔しましたと言って出ていく。


「それで?何で俺の家来たの?」


「ん?ああ、今日妹と買い物する予定なんだけどあいつ生徒会だから遅いんだよ」


「なるほどね」


 どうやら本当に理由がなく俺の家に来たわけではないらしい。

 本当に理由が無かったらぶっ飛ばしてところだ。

 

「ま、そろそろ生徒会も終わるだろうし俺も変えるわ」


 そう言って陽斗も荷物をまとめて歩く。

 一応俺も付いて行くことにする。

 ドアを開けるとまだ外で由香里と綾さんが話していた。


「あれ、陽斗も帰るの?」


「ああ」


「そっかじゃあね由香里。蓮さんもまた遊ぼうねー」


 何と言ったら分からず頭だけ下げておく。

 2人はそろって帰って行った。


「蓮、意外と綾ちゃんと気が合いそうだね」


「そうか?あんま話さなかったからわかんないな」


 2人とも少しの間、風の音を聞いてから由香里が口を開く。


「明日も今朝みたいに待ってもいい?」


「いいけど……因みに何時から待ってた?」


「うーん7時15分位かなあ」


 それだとかなり待っていたことになる。

 明日はそれくらいの時間に家を出ることにしよう。

 

 お互い別れの空気を感じてか部屋に戻ろうとする。

 家に入る前に、


「じゃあまた明日」


 由香里はその言葉に目を見開き驚いてからクシャっと笑う。


「うんまた明日」


 今まで誰とも一緒に帰ったことがなかったのでこうして別れの言葉を言うのは初めてかもしれない。

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