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記念凸待ち2

 次の人が来るまで雑談で場繋ぎをする。

 心臓に負荷をかけながら推しと話す地獄とも天国とも見える状況だ。

 いや全然天国なんだけどね。

 この世のVオタクの生きていて1度あるかないかの夢を何度も叶えているのだから。

 他のアイドルとかと違いvtuberと違い話せる機会なんておしゃべり会の他だと限りなく0に近い。

 

 そんな俺を助けるかの如く凸者が現れる。

 『自己紹介どうぞと』凸者に気づいた舞希が言う。


『どうも―出雲冬馬でーす』


 個人で活動しているvtuberでV杯を開催してくれた人。

 1度しか話したことがなかったが改めて声を聞くと本当にいい声をしている。

 これぞザ、イケボという声だ。

 事務所に所属していないのが不思議に思うほどだ。

 まあ個人で活動することを選んだという可能性もあるので真相は分からない。


『お2人ともお久しぶりです』


『前はV杯の時でしたね』


 ・冬馬さんだー

 ・V杯で話したっけ?

 ・れんがスクリムで大暴れしたとき

 ・あったなあ

 ・めっちゃうれしい組み合わせ


 多分俺もいたときだろう。

 ただ舞希の配信をいつも見ている俺だから言うが舞希と冬馬さんの絡みは意外と珍しい。

 あれ?2人って話したことあったっけ?と思う。


『蓮さんもお久しぶりです』


 俺の反応がなかったからか揶揄う様に名前を呼んでくる。

 絶対この人性格悪いと思う。


「お久しぶりです」


『じゃあまず懺悔したいことから』


『えー、なんだろ……V杯の時蓮さんが出ることがあったら本当に素手でやらせようと思ってた事かなあ』


『え?』


『私もそれがいいと思うよ』


『え!?』


『だって強すぎるんだもん』


『え///』


 『え』だけでこんなに表現できるんだな。

 推しに褒められるのは青酸カリウムよりも致死性が高い。


 ・照れてる

 ・え///

 ・でもまあ素手が妥当だよなあ

 ・さすがに強すぎた

 ・他の大会でも制限掛けられそう


『これがてぇてぇかあ』


『「ん?」』


『いや何でもないですよ』


『よかったよかった』


 今ハモって嬉しいのは秘密だ。

 

『え、もう次の人来たの?早すぎでしょ。えーと、ゲームする機会とかあったらね、よろしくお願いします。あと5周年と1周年おめでとうございます。えー、応援しています。では』


 オタクコミュ障の俺もびっくりする早口で抜けていく。

 そんなに急がなくてもいいと思うんだけどね。

 配信を見ていたのか次の人は間髪入れず入ってくる。


『え?あ……ま、まあとりあえず自己紹介お願いします』


 舞希が驚いたような困惑しているような声で言う。


『はい、初めましてWV(ウーヴィー)所属プロゲーマーira(いら)です』


 ・えええええええ

 ・まさかのいらさん

 ・嘘だろ?

 ・どんな繋がりだよw

 ・公式大会日本1位の人だ

 ・ここに日本1位2人いて草


 全く想像していなかった凸者に舞希が驚いた理由が分かる。

 『WV』正式名称は『veni, vidi, vici』というプロチーム。

 いらさんは『WV』の『rex』部門のプロゲーマーだと陽斗が言っていた気がする。

 まあ陽斗の話なんて授業よりも適当に聞いているためあっているかは分からない。


『すいません初めましてなのに凸来ちゃって』


『いや全然大丈夫ですよ。誰でも大歓迎です』


 いらさんの謝罪を舞希が気にしないようにとフォローする。


『ありがとうございます。俺ロータスさんの大ファンでどうしても来たかったんですよ』


 この後もこういう凸者はいるだろう。

 ただ俺は同担拒否じゃない。

 何なら舞希のことを褒められると嬉しいのでこういう凸者は嬉し……俺って言った?

 脳内で勝手に舞希に変換されたが耳から入った言葉はロータスと言っていた気がする。


「え、俺って言いました?」


『はい』


 どうやら俺だったようだ。

 俺のファンなんて存在したのか。


『ファンになったきっかけとかありますか?』


『懺悔で話そうと思ってたことと同じになっちゃうんですけど、ランクの最上位帯って大体同じ人と当たるんですけど俺プロなのにロータスさんにボコボコにされ過ぎてファンになったんですよ』


「え……М何ですか?」


『いや違いますって』


「あー、ドМ……ってこと?」


『そうっすそうっす』


『え、このパターンで当たってる人初めて見た』


 冗談で言ったがまさか本当にドМだったなんて。

 ただ少し疑問に思う。

 あ、本当はSなんじゃ?とかそういう話じゃないぞ。

 俺は『rex』の設定で匿名モードでやっているのでいくら倒されても分からないはずなのだ。

 

「あれ俺って匿名モードでやってませんでした?」


『匿名でしたね』


「え、なんでわかったんですか」


『特定しました』


 こっわ。

 これだから本名バレとか嫌なんだよな。


『ロータスさんちょっとお願いなんですけど』


「はい」


 こういう話の切り出し方をされるのは初めてなので緊張する。 

 おい誰だ、そもそも話しないだろって言ったやつ。


『後でコラボとかって……』


「え、俺でいいんですか?」


『はい、是非』


「じゃあ後で」


『なんだあ?カップルなんかあ?てぇてぇなあ』


 ・新たなてぇてぇが

 ・腐女子我大歓喜ノ舞

 ・日本語かよw

 ・おいこのてぇてぇは邪道だろ

 ・草


 舞希がそっちの立ち位置になるのは珍しいな。

 いつも弄られる側だったのでなんだか生き生きしている。

 

 コラボの予定を立てて想像していなかった凸者は抜けていく。

 凄く満足そうだった。


『いやーまさか蓮君がプロとコラボするなんてねえ』


「足引っ張りそうで怖いな」


『いや蓮君なら大丈夫だよ』


 不安と推しに褒められた歓喜が混ざり合う。

 さっきよりは時間を空けて次の凸者が入ってくる。


『まきまきー久しぶりー』


 何度か配信で声を聞いたことがあるので俺もわかる。

 配信者ではないがそれと遜色ないレベルの透き通った声。

 女性では低めのアルト程の音域。

 まあ俺は絶対音感を持ち合わせていないので正確には分からない訳だが。


『あ、ママー』


 ママと言っても実母ではない。

 さすがに実母が入ってきたら俺はどんな顔をしていたらいいのか分からない。

 ママというのはvtuberのイラストレーターさんの事だ。

 何度か舞希の配信に出でいるしコメントもしている。

 

『初めまして蓮さん。ゆうぁとと言います』


「初めまして蓮です」


 もう名前については諦めることにする。

 絶対に苗字と漢字は教えないけどね。


『私ママが蓮君のイラスト書いたの見たよ』


『ありがとー、あ、そうだ蓮さん』


 急に話の矛先がこちらに向く。


『vtuberにならない?』


「ならないです」


『どうしても?』


「ならないです」


『絶対に?』


「ならないです」


『でも自分の立ち絵がまきまきと並ぶとこ想像してみ?』


「なります。なりたいです。ならせてください」


 ・ちょろいなあ

 ・ママれんの扱い方うまいな

 ・れん舞希さんの弟になるのか

 ・は?結婚できなくね?

 ・俺らで法変えるか


『よく言った。蓮さんのイラスト書いた時にV体も作ったからちょっと準備すればすぐ使えるよ』


 さすがに準備が早すぎないか。

 俺がもしならないと突き通していたらどうしていたんだ。

 

『よかったねまきまき。弟ができたよ』


 そういえばゆうぁとさんの子は舞希だけだったか。

 

『あ!弟ってことはこれまで通りいくと近親相か『ママ?』


 ・草

 ・ママ暴走気味か

 ・酔ってる?

 ・相変わらず頭のねじ飛んでる

 ・まあ平常運転か


『え?』


『何言おうとしたのかなあ?』


『いや何もないですよ?』


 凸待ちは3時間ほどやって48名もの人が来た。

 舞希の5年間で作り上げられた人脈が分かる配信だった。

 まあ1名関係ない人がいたが。

 俺がvtuberになる話は後々詳しく話すようだ。

 こうして俺の1周年記念は物凄く濃いものとなった。

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