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何故か連れられた帰り道

 関係ないふりをしようと視線を外しておく。

 視線を外しても会話は聞こえてくるのは困ったものだ。

 由香里と綾さんの女子会中である。

 由香里と綾さんはかなり仲が良く学校とかでも話しているのをよく見かける。

 

「で、由香里は何で蓮さんと一緒にいるの?っはもしかして……」


 あー、陽キャって怖い。

 綾さんの口から俺の名前が出てきたことで心臓は悲鳴を上げている。

 ていうかよく俺の名前知ってるな。陽キャって陰キャに興味ない人種だと思っていたが。

 俺のくだらない思考をよそに由香里は勘違いを解くため説得中だ。


 すると視界の端に映る綾さんがこっちを向いて言う。


「初めまして蓮さん」


「あ、初めまして」


 相手が名前を知っている時も自己紹介した方がいいのか?

 というかそのん?みたいな顔やめて。なんか質問ある?みたいな。

 ないから。一欠片も思いつかないから。

 しいて言うなら早くどっか行ってほしい。気まずすぎるから。

 由香里と2人でも気まずいのに女子@1とかどういう了見だ?もしかして裏で俺の暗殺計画でも企てられてるのか。

 既に致死量を超えてるぞ。

 

「あ、私待ち合わせしてるんだった。またね!」


 そう言って綾さんは横を通り過ぎていく。

 待ち合わせ?学校から一緒に来てるのではないのか、と疑問に思ったが綾さんは俺達と違って私服だったので1回家に帰ったのだろう。

 え、面倒臭すぎじゃない?私服に着替える必要あった?

 横を通り過ぎた時にした甘い匂いは香水のせいだろうか。

 気合入りすぎだろ。それともこれが普通なのか。

 住む世界が違うと改めて分からされた。


 由香里のスマホから俺のスマホだとあまり鳴らない音がする。


「陽斗買い物終わったって」


 陽斗からのメールの内容を共有してくれる。

 さっき由香里がメールしていたのを見て返事をしたのだろう。


「じゃあ戻るか」

 

 留まる理由も無い(早く帰りたい)ためそう提案する。

 勿論由香里が行きたいところがあれば合わせるが。


「え、服買いたいんじゃなかったの?」


 言われて思い出す少し前の発言。

 陽斗を待たせるのも悪いし服買うのも面倒臭くなってきたのでさっさと帰りたい。

 割合的には0.5:9.5くらいだ。


「まあ、後でいいよ」


 とか言ってるが多分買わない。絶対買わない。

 未来の俺が絶望している姿が容易に想像できる。

 もしかしたら誰かと買い物に行く機会がなくて絶望してるのかもしれない。


 陽斗が待っている由香里と陽斗が分かれた場所に行くと明らかに目立っている男を見つける。

 レジ袋を両手に2つずつ持っており、それからはアニメのキャラと思われるぬいぐるみの顔が出ている。

 すべての袋がパンパンになっており、それだけで物凄い量を買ったことが察せる。

 

「由香里は買いたいの買えた?」


 近づいてくる俺達を見つけてそう言う。


「うん。陽斗は……聞かなくてもわかるか」


 まあこれだけの量を買っておいて実は買いたいのありませんでしたはないだろ。


「じゃあ蓮これ持って」


 そう言って右手に持っていたぬいぐるみの顔が飛び出した方を差し出してくる。

 結局俺荷物持ちなのか。 

 ていうかこいつ絶対重い方渡してきただろ。

 差し出された袋を両手に1つずつで持ってみると滅茶苦茶重かった。

 見た目に反して明らかに重すぎる。

 こんな重い物を出不精の人に持たせたらダメでしょ!肩外れるかと思ったわ!


 肩が外れる思いで2人の後ろを付いて歩く。

 坂道ほんとつらい。

 誰か変わって!って本気で言うと多分由香里が持とうとするので我慢する。

 

「俺バス乗って帰るから」


 そう言ったことで陽斗がバス通学だったことを思い出す。

 家はここから少し遠いところらしい。実際に行ったことは無いので詳しくは分からないが。

 陽斗が手を差し出してくる。

 荷物よこせって意味だろう。

 持っていた2つの荷物を差し出してきた手に掛ける。

 重い物を離したので手が上に上がる感覚に襲われる。


「またなー。蓮ちゃんと由香里のこと家まで送るんだぞ」


「え、由香里の家わかんないんだけど」


 俺の言葉が聞こえないかのようにそそくさと歩いていく。

 

 由香里の家がわかんないので由香里の歩く方向に俺も歩く。

 幸い出不精な俺でも知っている道で安心する。

 ていうか腕が軽い!それに伴って足取りも軽くなる。

 もう絶対荷物持ちはしないとここに誓う。


「私の家ここだからもう大丈夫だと」


 マンションの前で由香里が言う。


「え、ああ」


 見たことのあるマンション。よく、というかすっごい見たことがあるマンション。

 あれ?これ……俺の家だよなあ?

 見送ろうとしているのか一向にマンションに入る気配がない由香里が不思議そうに言う。


「ん?どうしたの?」


「あ、いや……俺の家もここなんだよね」


 両者頭に?を浮かべたままマンション内に入る。

 自分の家のドアノブに手をかけたタイミングはほぼ同じ。

 その距離僅か数メートル。

 

「え、お隣さんだったの?」


 驚愕の声で聴かれる。


「何で今まで気づかなかったんだろ」


 それは俺が外に出ないからだと……

 このこと陽斗は知っていたのだろうか。

 いや陽斗が知っていて俺達が知らないのは意味が分からないな。


「時間があるとき遊びに行ってもいいかな?」


 心臓が痛くなる提案をしてくる。

 勿論断れるはずもなく。


「まあ俺は1人暮らしだから問題ないよ」


 その時間帯に起きているかは不明だがというのは言わないでおく。


「そっか。へへ、またね」


 そう言って由香里は自分の家に姿を消す。

 ドアを閉めたすぐあとにゴンっとドアに何かがぶつかったような音がしたが大丈夫だろうか。

 この後3人でゲームをすることに期待を膨らませながら俺も家に帰る。


 

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