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あれ今何時?

 目が覚めると辺りは暗く何も見えない、なんてデスゲームの序盤にありそうなことを思ってしまう。ただ本当に何も見えないので困ったものである。


 手探りでベットのヘッドボードに置いてあるはずのリモコンを見つける。適当にボタンを押すと部屋が照らされる。急に明るくなったので思わず目を細めてしまう。


 細めた視野の中で充電器に刺さっているスマホを手に取る。とっくに充電はされているので充電器は抜いておく。ロック画面には重なった通知が見える。陽斗と由香里と舞希からきているようだが1番上が電話の着信だったので内容は分からなかった。


 お風呂に入る気分でもなかったためシャワーだけを済まし夕食の準備をする。準備と言ってもあっためるだけだが。冷蔵庫を開けると小分けにタッパーに入っているカレーが目に入る。如何やら今日はカレーらしい。カレーをあっためている間にご飯を探すが見つからなかったのでパンにする。


 自室に夕食を運ぶ。机上にある朝食の食器を見て朝洗っておけばよかったと後悔する。

 パソコンに電源を入れて『watcher』を起動する。今日の朝までやっていた配信を見ようとするがとある動画が目に留まる。『コーチが寝坊で不在ながらも総合2位を取る』というタイトルにサムネには舞希と凪咲ちゃんと慶さんが映っている。

 変な汗が出てきてさっきシャワーを浴びた体が急に気持ち悪く感じる。モニターの左下には24:03と何の装飾も無く書かれている。俺はそれがただ絶望を与える為だけに用意されているように感じる。


 通話サーバーを確認するとまだ3人は入っていた。上下左右に震えるカーソルで『参加』の文字を押す。


「たいっっっへん申し訳ございませんでしたあぁぁ」

 

 参加早々謝罪の言葉を口にする。


『コーチーコーチングしてくださいよー』


 凪咲ちゃんがからかう様にいつもより声を1トーン上げて言う。俺には謝ることしかできない。


「すみません」


『よく寝れましたか?』


 慶さんが……以下同文である。これからずっと言われ続けるんだろうなあ。


「ほんとすみません」


『ふふ、いじめないの』


 舞希が止めてくれる。なんだ?もしかして神か?神だな。


『寝坊だったの?』


「はい……寝坊……ですね……」


『しょうがないよ昨日寝落ちするまでやってたんだから』


 もう優しすぎだろこの神は。


「俺何時くらいに寝たんですか?」


『5時半くらいだと思うけど』


 確か起きたのが6時くらいなので30分ほどしか寝ていないことになる。俺良く学校行けたな。


「俺全然寝てなかったんですね」


『よくその状態で学校行けたなあ』


「家帰ってきたら過労死で異世界転生する人みたいな倒れ方しました」


『やばすぎるなあ。ちなみに今配信中だよ』


 良かった俺が変なこと言う前に教えてくれて。いや配信外でも変なこと言わないからね?


「分かりました。今何してたんですか?」


『今は今日のスクリムの反省会中だよ』


「今日はどんな感じでした?」


『上位にはか入れるんだけど中々1位が取れなくて。今日は天ちゃんのチームが5連続で1位になってたよ』


 意味は分かるが理解ができない言葉に耳を疑う。


「え?5連続1位?」


『うん強すぎて冬馬さんが縛り入れようかなって言ってた』


 おい天外さん強すぎだろ。1回だけやったことあるけどそこまで飛びぬけてうまいはずではなかったが……もしかしてわざと手を抜いてたのか?策士だな。あれ?でも結局スクリムで分かるからあまり意味ないのでは?


「まあそうなりますよね」


『ていうかコーチングしてよー。誰かのせいでできてないんだから』


 凪咲ちゃんの言葉で俺の胃は悲鳴を上げている。


「あああああ。ほんとすみません」


『もうやめてあげな?』


『正妻ストップが入ったな』


『あ?』


『すいません何でもないです』


 いつから舞希が俺の正妻になったんだ。そんなこと言ってるとそのうち燃えそうで怖くなる。


 俺は3人の配信を1試合目まで巻き戻して画面共有をした。

 言っていた通り上位までは行けるのだがそこで終わってしまう。昨日みたいに不意打ちで押し切られるのではなく強ポジから一方的に撃たれている。


「うーん。こういう時は1位狙うのかなり難しいから2位狙いでもいいかもしれないな」


『こっから1位とるのは無理?』


 オーダーをしている慶さんが聞いてくる。よっぽど悔しかったのだろう、いつもより大分声が小さい。


「絶対じゃないけどかなり難しいね。相当ファイト力ないときついかも」


『そっか』


「まあこのマッチで1位とりたいんだったらもっと漁り早くしてポジション取りに行ってもいいかもしれない」


『初動の漁りってこと?』


「うん。最悪武器揃えば移動していいかも」


『なるほど』


「あとどうしてもポジション取れないってときは舞希のスナで無理やりダウン取ってもらって詰めてもいいかも」


『あーありかも』


「で、慶さんは『待って待って』


「え、何ですか?」


『ローちゃんてさ、舞希先輩の事なんて呼んでる?』


 凪咲ちゃんが聞いてくるが急にどうしたのだろう。


「舞希ですけど」


『じゃあ私は?』


「凪咲ちゃん」


『そうだよね。慶は?』


「慶さん」


『え、なんで?なんでそんな距離遠いの?』


「いやそんなこと無いですけど」


『そうだよ。さん付けてるから距離遠いなんてないから。俺はどっかの誰かさんと違ってさん付けやめてなんて言わないから』


『でもさんって呼びにくくない?』


『ちゃんの方が呼びにくいでしょ』


『そんなことないもん』


『まあでもここだけの話意外と仲いいんだよね』


「ここだけの話って俺いるが?」


『普通に裏でゲームしてたり暇すぎて通話かけることもある』


『やめてロータス×慶なんて言う邪道作らないで』


『作ってないから。ロータス×舞希さん推しだから』


『よかった仲間か』


『ローちゃんこの人たちやばくない?』


「やばいですね。サーバー分けましょうか」


『そうだね』


『慶、舞希先輩はローちゃんと2人の時間が欲しいんだって』


『やっぱ新婚だからね』


「おい誰かこいつら燃やせ」

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