スクリム
「お疲れ様です」
気づいた頃には既に舞希と慶さんと凪咲ちゃんが入っていた。
集合時間には間に合っているが申し訳ない気持ちになる。
『お疲れー。配信見てたよー』
凪咲ちゃんが言う。
知り合いに配信を見られるとどうしても恥ずかしくなってしまう。
これから大会運営の人から大会の説明だったりを受けると聞いていた。
正直1時間も必要なのかと疑問になるが大会初出場の俺には分からないので黙っておく。
この時間に次の配信を準備をしようとサブモニターでサムネを探したり枠を作ったりと配信者らしいことをする。
運営からの説明も終わりやっとスクリムが始まろうとする。
『じゃあ配信始めるねー』
舞希の言葉をきっかけに全員が配信をつける。
なぜ全員が配信をつけたか分かったかというとそれを見る必要があるからだ。
俺の配信では画面を4等分し舞希、慶さん、凪咲ちゃんの配信を映している。
コーチという立場上全員の画面を見ないといけないからだ。
通話サーバーの方はミュートにする。
本番はコーチの人は試合中話せないのでスクリムの時から同じようにすることにした。
「スクリムもカスタムの時と同じようにマッチ終わった後コーチングする形でやっていきます」
・きちゃ
・了解
・分かりました
・がんばれー
ついに始まったカスタム1戦目。
舞希達が下りた場所は牢獄というランドマーク。
宮殿ほどではないが激戦区だ。マップの中央に位置して他の地と海によって隔離されている。
牢獄の中は白と黒の色しかなく床や壁はチェス盤のように白と黒が交互に並べられている。
他のランドマークと比べると特に装飾もなく淡白な印象を与える。
そして牢獄は特異的なとこがある。
牢獄の中にいるボットを倒すと救援物資でしか手に入らない武器を落とすのだ。
そのボットは牢獄の1番奥に存在しておりチェスのrexのような存在感を放っている。
特に名前も無いためプレイヤーからはキングと言われている。
如何やら1部隊被っていたようで戦闘が始まる。
慶さんが孤立しているところに2人詰めてきたので少し焦ったが慶さんは危なげなく2人倒して見せた。
残りの1人を舞希と凪咲ちゃんで倒しに行く。凪咲ちゃんは苦手な武器だったのか1マガジン全部外していたが舞希さんが倒してくれる。ここで大爆笑したのは秘密だ。
牢獄の物資もキルポイントももらえてかなり美味しい状態だ。
同じように初動ファイトがあったのか部隊数は20まで減っていた。ランドマーク1つにつき1部隊いる計算だ。
安地内の強いポジションを取ることに成功する。
因みにキングからは『ラハティ L-39』という胴体でも1発で倒せるスナイパーが出た。全スナイパーの上位互換である。いつもスナイパーを持っている舞希がラハティを持つことになった。
第3ラウンドになっても20部隊から減ることはなかった。
俺が思っていた以上にレベルが高くてビックリする。立ち回りだけで言ったらチャンピオン帯よりも高そうだ。
ただキルログを見る限り誰も死んでないというわけではなく味方が死んでも逃げてハイドしているようだ。これならそのうち一気に減りそうだな。
第4ラウンドになるとアンチ移動する敵が戦い始めてどんどん減っていく。
元々安地内に入っていたこちらの部隊は移動する敵を何人か倒すことができた。
「いやほんと舞希のスナ強いな」
・強いね
・長距離でキル取れるのでかい
・今日ポジ取れてるこそやね
・さすがの愛弟子
・愛弟子w
最終安地にも入っており残りは5部隊。
「スクリムでも慶さんのポジション取り刺さってていいね」
だが足音を消して近づいてきた敵に無理やり倒されてしまう。5キル5位なので本番の1戦目だと思ったらかなりいいだろう。
「お疲れま」
『嫌な死に方したー』
凪咲ちゃんが明らかにテンションが下がった声で言う。それもそうだろう、1位を取れるポジションだったのだ。
「惜しかった惜しかった。慶さんのオーダーはかなり良かったし舞希さんもスナでキル取れてて凄い良かった」
『え、私は!?』
「ギャグ線が高くてよかったですね」
『おいー、プレーについて言ってよ』
「冗談だって。カバーめっちゃうまかったしグレとかの使いどころも良かったです」
『今のって改善点あるんの?なんか運悪く死んだ感じなんだけど』
慶さんもテンション低めだ。もしかしたら凪咲ちゃんより低いかも。それもそうだろう完璧に近いオーダーで勝てそうだったのに言い方は悪いが一か八かにかけた敵に負けたのだ。
「まあ舞希がスナで敵倒すのでその分周りを見ないといけないってのはあるね。多分これが本番ならこういう動きも増えてくると思うので気を付けないといけないですね」
『オッケー』
『ねーローちゃん』
「はい?」
『初動とかさ自分の苦手な武器で戦うことになったらどうする?やっぱ慣れるしかないのかな?』
「あーそれ威嚇ですね」
・威嚇w
・ちゃんと当ててくれ
・1マガジン全部外してた……
・苦手過ぎるやろ
・ここにいる全員わろてたけどな
『そっか威嚇なら練習しなくてもいっか』
「そうですね」
『何があれば勝てるんだろうなー』
「凪咲ちゃんは頭ですね」
・草
・正解
・このチームの頭いるやろ
・凪咲も考えないとな
・コーチ適当すぎだろw
『はあああああ?意外と頭いいですー』
『学力テストしたとき点数良かったもんね』
そんなこともあったなと思い出す。『これくちお』に所属するvtuber達でやった学力テスト、司会を舞希がやっていたため勿論見ている。確か2位だったはずだ。点数は……まあ想像通りだった。周りの人も頭が悪かったため2位になったのだ。正直2位から最下位までは団栗の背比べだった。
1位は慶さんで2位と圧倒的な点差をつけていた。
『そうだよ。頭いいんだからなー』
『じゃあ私に足りてないのって何?』
舞希が言う。今の試合をよく思い出してら俺は口を開く。
「無いですね。完璧です」
『おい対応の差が激しいって』
こんな感じでマッチの反省……と言えるのかは分からないが一応終えて次のマッチが始まる。
2、3試合目は立ち回りは良いのだがやはり無理やりファイトで倒されて負けてしまう。まあ順位のアベレージは高いので総合ポイントで見るとかなり上位だろう。
だが4試合目、この2戦で修正できたのか13キルを取り1位を取った。ムーブを変え舞希さんに詰めてきている敵を撃たせて慶さんと凪咲ちゃんで安地内に入ってくる敵を撃つようにしていた。
「え、強くね?」
・ナイス
・強すぎー
・今日の最多キル?
・そうだね
・慶さんのオーダー気持ち良すぎだろ!!
『やったーー!!1位とったぞー』
凪咲ちゃんが大声で言う。さっきのテンションは何処へ行ったんだ。
『理想の動きできたね』
慶さんも満足そうである。
『じゃあ俺マネージャーさんとの打ち合わせあるのでここでおさらばです』
慶さんのセリフで俺の思考は一瞬止まる。
「あれ今日だっけ?」
『あれ言ってなかったっけ?』
『言ってたね』
「……聞いてなかったかも」
『じゃあ5試合目キャリーお願いします』
こうして俺、舞希、凪咲ちゃんでのスクリムが始まった。
更新遅くなって大変ソーリー。
因みに作中に出ているrexとはラテン語で王という意味です。
 




