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いつもの配信

『』がvc

・コメントです

見づらかったら変えます

「こんばんはー。」


 ・こんばんは

 ・こんばんは

 ・きちゃー

 ・ライブ初見です

 ・毎日配信ナイス

 ・335日目です

 ・定期ありがとう

 

 配信を始めると100人くらいの人が見に来てくれる。

 

 俺はlotusという名義で活動している。

 俺の名前と同じ漢字の花、『(はす)』の英名が由来だ。

 安直なんて言うなよ。


 コメントで知ったが初配信から335日も経過したらしい。

 もうそんなに経ったのか。

 あと1か月で1周年だ。

 1周年記念に何かしようかと考えたが毎日同じゲームばっかしてる俺にいい案が思い浮かぶはずもなく。

 

「もう、そんなに配信してたんだ。でも去年の5月から配信始めたからそんなもんか」


 ・そんなもん?

 ・毎日5時間以上配信して『そんなもん』はやばい

 ・明らかに配信日数と時間が見合ってない。

 ・え、毎日5時間も配信してるですか?

 ・実は32時間やってるときもあったり・・・

 ・えwぐwすwぎw


 俺はゲームしているついでに配信しているだけなので気づいたらそんなに時間が経っているのだ。

 皆もゲームをしていたらこれくらい時間が経っているはずだ。


「でも、みんなもゲームしてたらそれくらい時間経ってることない?」


 ・ない

 ・ない

 ・あんただけだよ

 ・何言ってんのこの人

 ・人間ですか?


 無いようだ。

 マジかよ、皆も同じだと思っていたのに。

 てか「人間ですか?」ってなんだ。

 人間に決まっているだろう。


「君らは俺のことを何だと思ってるんだ」


 俺はリスナーからのコメントを返しながら何時ものごとく『rex proelii』という超人気FPSをプレーしている。

 『rex proelii』は、3人1部隊合計90人30部隊の中で1位を目指すバトルロワイヤルゲームだ。

 キャラによる差は無く単純なエイムと立ち回りが物を言う。

 体力は例外はあるが大体AR(アサルトライフル)でヘッドショット3発、胴体で6発で倒せるくらい体力が少ない。

 何故このゲームが現在最も人口が多いかというと競技シーンの盛り上がりと圧倒的なまでのバグとチーターの少なさだ。

 やっていることが単純なのでライト層もヘビー層も見ていて楽しめるのだ。

 バグとチーターに関してはゼロじゃないのはしょうがないだろう。

 バグがゼロはありえないとしてチーターがゼロだとすればそれはとても過疎っているゲームだろう。


 そして俺はこのゲームで日本1位を2シーズン連続で取ったことがある。

 ただ勘違いしてほしくないのがこのランキングはランク戦の最終結果であり、公式大会で日本1位を取ったという訳ではないのだ。

 そしてリスナーが言っていた32時間配信の正体はこれだ。

 シーズン終了12時間前から配信を始めてランキングを日本10位から1位まで上げたのだ。

 そのあと新シーズンが始まり気づいたら合計で32時間もやっていたのだ。


 安地内に移動し暇だった俺はリスナーのコメントを拾って雑談していた。


「初心者におすすめの武器?そうだな……『AS VAL』かな。よく『VAL(ヴァル)』って呼ばれてるAR(アサルトライフル)なんだけど撃った時の反動があんまり強くないから初心者でも撃ちやすいと思うよ」


 ・確かに

 ・今シーズンから大分強いよね

 ・なんか性能変わったの?

 ・静音性が高くなったのと反動が小さくなった

 ・有識者ありがとう

 ・初心者なんですけどアタッチメント無しのリココンがうまくできません。何かコツとかありますか?


「そもそもグリップとストックっていう反動を軽減してくれるアタッチメントがあるんだけど、プロですらこれ付けてないとちゃんとリコイル制御できないから練習しなくていいと思うよ。

 あ、敵みっけ」


 俺は、安地収縮のタイミングで安地内に走ってくる敵を見つけた。


 使っている武器はウィンチェスターライフルというSR(スナイパーライフル)に分類される武器だ。

 胴体2発、頭1発で倒せる為威力だけ見れば一般武器最強なのだが、120mを超えたあたりから弾が落ち始める事から本来SRを打つ距離での運用が難しい。

 そして、120m以内ならARを使えばいいのでウィンチェスターライフルは今最も使用率が低い武器となっている。

 所謂玄人向け武器というやつだ。


 では何故この武器を使うのか。それはかっこいいからだ!!

 ゲーム内で1番と言っていいほど不遇な武器。

 ゲームオタクとしてはとても燃える武器なのだ。

 逆張りとか言うなよ?断じて違うからな!


 敵との距離は大体230m位。正確な数字は分からないが長い時間このゲームをプレイして得た知識が大体の距離を教えてくれる。

 いつもならスコープを覗いて偏差を考えて撃っているのだが、それでは視聴者は満足しないだろう。

 俺はわざと視点を1周させスコープを覗いた瞬間に撃った。

 所謂クイックショットってやつだ。


 撃った弾は距離が遠くなるほど落ちていき走っていた敵の頭に当たった。

 

「え゛、当たったんだけど……」

 

 ・??

 ・は?

 ・どゆこと

 ・でたーw

 ・何でウィンチェスターで当てれんの

 ・日本1位だから(思考放棄)

 ・クリップ行き確定

 ・またチートって言われますよ

 ・人間やめてる


 反射的に声が出てしまった。

 如何やら俺は本当に人間じゃなかったみたいだ。

 一応狙って撃っていたがまさか当たるとは思わず俺はマウスとキーボードから手を離し呆然としてしまった。


 流石にランク戦で棒立ちはまずいので操作に戻ろうとマウスとキーボードに手を伸ばした時……


 パァン


 ほかの敵にスナイパーで頭を抜かれてしまった。

 

 俺達の居た場所は相手よりも高所だったのでしゃがんでいれば射線が切れる位置だったのだが動いていなかったので簡単に抜かれてしまった。

 その後、1ダウンを取ったことで詰めてきた敵に味方2人も倒されてしまい負けてしまった。

 俺が完全に戦犯してしまった。


「やっべー、戦犯した。まじ申し訳ねー」


 ・あっ

 ・?

 ・これはまずいw

 ・神プレイからの沼プレイ

 ・人間アピール定期

 ・まじ1日に1回はやるよな

 

「-39って下がりすぎでしょ」


 俺の今いるランク帯は1番上のチャンピオン帯なのだがマイナスの最大値が50と設定されているので-39は意外と痛いのだ

 またプラスの最大値は30なので勝ち続けないとポイントが上がらない。

 

 俺は、ロビー画面に戻った瞬間次のマッチを始めた。

 始めたといってもまだチャンピオン帯にいる人が少ないためマッチングには時間がかかる。


 15分位待っていたあたりでやっと試合が始まった。

 人口が凄く多いので基本的にはマッチメイキングした瞬間にマッチングするのだが、まだチャンピオン帯にいる人が少ないため時間がかかるのだ。

 まあ、俺はこの15分間推しの配信を見ていたので何の苦でもなかった。

 リスナーは約15分間無言のロビー画面を見ていたのである意味凄い。

 このことをリスナーに言うと怒られそうな気がするので約半年近くやっているがいまだに言っていない。

 秘儀トイレに行ったふりである。


 マッチした敵が半分ほど倒された頃、チーム合計キル数が21になっていた。


「この試合めっちゃ調子いいわ。俺15キルしてるんだけど」


 ・強すぎ

 ・最高キル狙えるんじゃない

 ・これでプロじゃないってまじ?

 ・これは日本1位だわ

 ・チャンピオン帯でキャリーしてて草


 今チーム合計21キルの内15キルは俺が取っているためこのチームの中で1番キルを取っているのは俺だ。

 だがキルが多いと強いはイコールではない。

 1対3をしてここまでキルを取っているのならキルが多いと強いはイコールになるのだが今回は違う。

 野良の2人のカバーが手厚いため無理に射線を通そうとしても倒されることがなく多くキルを取ることができた。

 一見俺がキャリーしてあげているように見えるが実のところ俺が野良の2人にキャリーされていたのだ。


 そんなことを考えながら山頂を目指し走っていると味方の1人が岩の裏に隠れていたチームにダウンさせられてしまった。

 俺はすぐ近くに遮蔽があったため隠れることができたが、もう1人の味方は敵3人からフォーカスされてダウンしてしまった。


 俺はすぐに思考を切り替える。

 状況は1対3。

 真正面から打ち合っても勝てる確率は万に一つも無いためまずは1ダウンを狙う。

 2人ダウンさせたことで甘えて詰めてきた敵をウィンチェスターライフルで頭を抜く。

 1ダウンを取られたことで甘えを無くした敵が岩の裏から頭だけを出してこちらを撃ってくる。

 このまま打ち合っていても時間が経ち、別の部隊に俺も相手も倒されてしまうので早くこの戦闘を終わらせたい。

 そこで俺はわざと爆発までに時間がかかるようにグレネードを投げた。

 グレネードのダメージを嫌った敵が出てきたので1人の頭を打ち抜く。

 ウィンチェスターライフルは1発撃つごとにコッキングをするのでその間にもう1人の敵は遮蔽に隠れてしまう。

 無意識下でそう考えすぐにサブ武器に持っていたコルト・パイソンに持ち替え最後の敵を倒した。


「……なんか勝てたんだけど……」


 ・???

 ・これは日本1位ですわ

 ・お前もうプロになれ

 ・あれ、人間やめてね?

 ・チーターって言われたほうが納得する


 俺は味方を蘇生しながらコメント欄を見て余韻に浸っていた。

 ランク戦なので相手も俺と同じくらい強いのだ。

 それを俺は1対3で……はあ、俺うますぎないか?


『ナイス、強すぎます』

 

「うわぁ、びっくりした」

 

 不意にゲーム内vcで声をかけられて思わず声が出てしまった。


 vcで話してきた相手は女性ですごく透き通った声をしていた。

 元の声がいいのだろうがそれだけではないだろう。

 ただのゲーマーにはもったいないほどの高音質だった。

 それこそ配信者の中でもマイクにこだわっている程の。

 

 配信のコメント欄は突然女性の声がしたもんだから大歓喜である。

 基本ゲーマーは女性との関りが無い為こういう時はテンション爆上げなのだ。

 俺は紳士だから違うよ?

 ゲーマーリア充は滅んでしまえ。


 ・レミアさんに声似てね?

 ・レミアさん配信してる

 ・レミアさんとclademさんだね

 ・え?本物?

 ・まじだw


「え、味方レミアさんとclademさんなの?流石に噓でしょ」


 ・配信してますよ

 ・本物ですね

 ・最強パーティーの完成

 ・絶対にあたりたくないパーティー

 ・まずチャンピオン帯に行けないから関係ないよーん

 ・草


 俺は推しの配信が映し出されているもう1つのモニターでレミアさんの配信を見た。

 そこには確かに蘇生中の俺がいた。

 全員匿名モードだった為誰も気づかなかったようだ。


 「マジじゃん。やばすぎでしょ。これは戦犯できないな」


 レミアさんとclademさん、2人とも元プロゲーマーで今はストリーマーとして活躍している方々だ。

 俺とは比べ物にならないくらい有名な2人だ。

 確かにこの2人ならあの強さも納得だ。


 その後、俺たち3人はチャンピオン帯を蹂躙して結果チーム合計42キルという異例なキル数を叩き出し1位を取った。

 緊張で手がとんでもなく震えていたが如何やら視聴者にはばれて無いようだ。

 もしかしたらレミアさんとclademさんにはばれていたかもしれない。


「よかったー戦犯しなくて」


 ・ナイス

 ・つえーー

 ・42キル!?

 ・これチャンピオン帯だよね? 

 ・えぐすぎ

 ・良かったね戦犯しなくて

 ・まあ、前のマッチでやったから……


 本当に戦犯しなくてよかった。

 あの2人の配信には多くの視聴者がいる。

 そんなことしたら俺はボコボコに叩かれるだろう。


 ロビーに戻りもう1度マッチを始めようとした時、左上に2人分のフレンド申請が来ていた。

 ついさっき見た名前だ。


「・・・まじ?・・・」

 

 

 

 


 

 

 

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