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配信の前、新しいフレンド

 4月になってからかなりの日が経ち5月が近づいてきた。

 段々寒さも落ち着いてきたがまだ布団じゃないと寒いと感じるくらいだ。

 そろそろ布団から出ないとなとは思うものの中々体温で温められた布団は俺のことを離そうとしない。

 布団にモテてもしょうがないんだけどなあと思う。

 まあ後数日すれば布団とは別れることになるが。

 

 布団に抱きつかれた状態で今日の予定を思い出す。

 今日の8時からV杯のスクリムが始まるんだった。

 後大きな予定は新マイクデビュー兼20万人記念配信だろうか。

 それは6時からになっている。V杯の集合時間が7時なのでこの時間になった。

 

 今日の予定はこれくらいかと思い暇になった俺は『watcher』を開く。

 俺が良く見ているせいか将又、短期間で再生数が多くなったからなのか俺の『watcher』のおすすめには、俺、舞希、慶さん、凪咲さんでやった配信がずらっと流れている。

 見たい衝動に駆られるが踏みとどまる。

 前見た切り抜きの自分のクソ音質を思い出した。

 マイクを買うときに知ったのだが自分の声が気持ち悪く感じるのは音質のせいではないらしい。

 いつも聞く声は空気を通して伝わる気導音なのだが自分の声はこの気導音+骨導音という低音の成分が強調されやすいため気持ち悪く聞こえるらしい。

 マイクを変えても切り抜きを見るときは自分の声を我慢しなければならないと思うと嫌になる。

 まあ聞き続けると慣れるらしいんだけどね。そこに達するまでが苦痛なんだよなと思う。

 

 トレンドにはV杯が乗っていた。

 いよいよ今日からスクリムが始まるので皆楽しみにしているようだ。

 下にスクロールしていくとメンバー一覧表を作ってくれている人がいた。

 90人+コーチもいるという事で凄く細かくなっていた。

 スマホで原寸大を見ることは俺の目では無理なため左上のチーム1から拡大してみていく。

 立ち絵、名前、ランク、事務所、一言紹介、が書いてある。

 1チームづつ適当に見ていると知っている名前があった。

 『vivid』という事務所に所属している天外さん。

 舞希と1番と言って良いほど仲が良くよくコラボしている人だ。

 プライベートでもよく遊ぶ仲だと配信で言っていた。

 そして今世界で最もチャンネル登録者が多いvtuberらしい。

 前流れてきた切り抜きのサムネにはチャンネル登録者430万人達成と書かれていた気がする。

 桁が違い過ぎて幽霊でも見ているかのような気分になる。


 見進めていくと俺たちのチームを見つける。

 舞希の所には【初心者とは思えない動きで敵を薙ぎ倒していく今大会バランスブレイカー筆頭。ロータスさん仕込みのスナイパーは如何なる敵も打ち抜く。私も打ち抜かれたい。】と書かれていた。

 気づけば自然に口角が上がっていた。

 戻そうと思っても推しが褒められている様を見ると不可能だとわかる。

 ただここに俺の名前が載っているのは少し恥ずかしい。

 変なことが書かれてないか不安で見ないようにしていたがつい自分のが目に入ってしまう。

 【2シーズン連続日本1位。世界最多キル。公式大会には出ていないものの既に日本最強と呼ばれるにはふさわしい実績を持っている。コーチング能力も素晴らしく選手の能力は確実に上がっている。】

 過大評価だと思ったが褒められたのは素直に嬉しいようでスマホを適当に置き体をよじる。

 動いたからか体が熱くなったので布団とは別れる。


 適当にあったご飯をあっためてモニターの前に座る。

 今日からスクリムがあるという事で舞希達との配信を見直す。

 自分の声が聞こえて反射的に一時停止していまう。

 この声を聞きながらご飯を食べるといつもより不味くなりそうだ。

 舞希と天外さんのコラボ配信があったのでそれを見ることにする。

 推し×世界1位の相乗効果でご飯10杯は食べれそうだ。

 まあそんなに胃のキャパは無いのだが。気持ちの問題だ。

 この人たちが大会で戦うと思うとより一層コーチをするのが楽しくなる。


 ポッケに入れていたスマホが振動しバイブ音が鳴る。

 イヤホンをしていたのでバイブ音は聞こえなかったが振動で気づいた。

 この設定をしているのは『watcher』だけなので舞希が配信を始めたのかツイートをしたのだろう。

 この大会を開いたら1位になれるだろう速度でスマホを取り出し電源をつける。

 ツイートをしたようだ。

 【はじめて天ちゃんとrexやった

  まじうまいんだけど】

 天外さんの名前がでてきてタイムリーだなあと思う。

 ん?舞希と思考が一緒ってこと?

 いやそんなことないんだけどね。

 

 推しが『rex』をやっている姿を想像すると俺もやりたくなってきたので食器を洗いに行く。

 食器を洗っているとこういう時のために陽斗を家に住ませておけばよかったなと思う。

 できるだけ早く終わらせよう。

 

 メインモニターで見ていた『watcher』を消して『rex』を起動する。

 代わりにサブモニターでさっきまで見ていた配信を見る。

 『rex』のフレンド欄では舞希がオンラインになっていた。

 8時からスクリムなのに体力持つのかな?

 いや32時間もやった人が言うセリフではないが。


 配信もしようかと思ったが新マイクのデビュー戦はせっかくなら記念配信の方がいいので今はやめておく。


 ここ最近カスタムばかりやっていたのでランクが120位まで下がっていた。

 ランクやるかあ。

 コーチングばかりでプレーしていなかったので若干不安だがまあ大丈夫だろう。

 体が覚えてるというやつに期待する。

 

 助けてください。全然弾が当たりません。

 それでもスペックの低い俺の立ち回りをフル活用しポイントを盛っていく。

 レミアさんたちとやっている時と比べると微々たるものだが。

 

 戦闘になった敵部隊に単純なファイト能力の差で負けて嫌になる。

 ここチャンピオン帯なんだからもっと堅実に立ち回れよ、と思ってしまうがファイト能力がない俺が悪いのだ。

 逆に相手からしたら何でこんな奴がチャンピオン帯にいるんだと思っているんだろうな。

 

 ロビーに戻ると舞希から招待が来た。

 前に聞いたが試合中に送ると邪魔になるかもしれないからという理由でロビーに来たら招待を送るようにしているらしい。本当にらしいなと思う。

 続いて通話サーバーの招待も来た。

 天外さんとやっていたのでは?と思ったがもうやめたのだろうか?

 通話サーバーを見るといつも配信の時に使っているサーバーではなかった。

 そこには既に2人は言っていた。

 あれー?俺もしかして天国に行こうとしてます?

 できるだけ考えずに入る。

 

「お疲れ様でーす」


『おつ……え?あ、もしかしてマイク変えた?』


「はい。もしかして変でした?」


『違う違う。めっちゃ音質良くなっててびっくりしただけ』


「なら良かったです」


『初めまして』


 ついさっきまで聞いてた声がする。

 やっぱそういう事だよなあ。


「初めまして。ロータスです」


 なんか最近初めましての人に自己紹介しすぎて慣れてきた気がする。

 最近は配信でも挨拶をするようになった。配信者ならこれが普通なんだろうけどね。

 そのおかげで通話サーバーにいたもう1人の人、天外さんにも緊張することなく自己紹介できた。

 いや天外さんは人ではなく妖精なんだけどね。そういうせって……妖精だよ?天外さんは妖精、分かった?これvtuberを楽しむうえで大事なことね。

 

『存じてます。天外です。よろしくお願いします』


 俺も存じてますけどね?

 それにしてもいい声をしている。ノイズ1つ無い空気よりも透き通った声。

 もし声が具現化出来たら先の景色が見えてしまうのではないかと思うほどだ。

 なんで存じているんだと思ったが舞希とコラボしていたから知っているのか。

 俺が天外さんを知っているのと同じだろう。


 俺達は時間を忘れてマッチをやり続けた。

 解散のきっかけになったのは俺の配信開始時間まで残り僅かになったからだ。

 アンレートだったのでランクを上げることはできなかったが皆に見せても恥ずかしくないくらいにはエイムが回復したので良かった。

 やるのはコーチングなので意味は無いのだが教えている側が教えられる側よりも弱いのは嫌なのだ。

 

 終わってから思ったが天外さんと話すことって実はすごいことだったのではないのだろうか。

 最近自分の感性がバグっているのを知っているので疑問に思う。

 そんなことを考えていると配信を始める時間になった。

 

 



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