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距離感なんてない

 予定していたメンバーが集まり全員が配信を始めた。


『じゃあ自己紹介からしますか』


 いつも配信で見ていた通り舞希さんが進行をするようだ。

 舞希さんはその高い進行能力を買われ『これくちお』の公式番組でも司会進行をすることが多い。

 オタクとしては推しの出番が多く見れてうれしいのだ。


『通話サーバーの上から順番にいこうか」


 そういわれドキッとする。

 通話サーバーに入った順番は俺が2番目だったからだ。

 すぐに確認すると1番下で安心する。

 如何やら五十音順になっているようだ。


『はーいどうも皆さんこんにちは。碧舞希です』


 ああああああ配信で聞いてたやつだあああああ。

 配信と比べて特別音質がいいとかはないのだが通話サーバーに入っているだけで凄い特別感がある。

 いや特別なんだけどね。最近感覚がバグっているような気がする。


『どうも慶です』


『はーい凪咲でーす』


 俺の番になった。

 心臓の鼓動が聞こえてきてうまく声を出せるかすら不安になる。


「えー、lotus(ロータス)です。よろしくお願いします」


 あー自己紹介1つ終わらせただけで安心する。

 俺のコメント欄はいつもより多くのコメントで溢れかえっている。


『じゃあランク行く?』


『でもランクだとロータスさんが喋れなくない?』


 慶さんの口から突然俺の名前が出てきて安心しきっていた俺はすぐに消え失せる。


『え、そうなの?』


『別にBAN対象とかではないんですけどFPS界隈の暗黙の了解みたいな感じです』


「いや俺はそれでも大丈夫ですよ」


 ・優男

 ・人間性〇

 ・推しと話さなくて済むからでは

 ・あっ

 ・心読んでる奴おる


 コメント欄で俺の考えを理解している人が。

 

『カスタムでやればいいんじゃない?』


 凪咲さん余計なことは言わなくていいんですよ。


『カスタム開いてリスナーに入ってきてもらおうか』


「全然ランクでもいいんですよ」


 たのむ、ランク行ってくれ。俺の心臓を保つために。

 

『いやいや初対面だからたくさん話したいじゃないですか』


『そうそう』


 なんかこのチームコミュ力担当多いな。4人中3人だぞ。

 まあ、平均で見れば俺が低すぎて一般くらいになるんだけどね。


「オッケース」


 ・草

 ・草

 ・オッケースw

 ・オタクでとる

 ・みんなこうなるやろ

 ・それはそう


 舞希さんがカスタムを開くとすぐに満員になる。

 87人も入れるのに5秒もたたず満員になる様を見ると魚群が餌に群がる様子が思い浮かぶ。

 オタクたちからすれば推しと同じマッチに入れるという事はかなりおいしい餌なのだろうけど。


 マッチが始まる。

 露骨に降りる場所をかぶせてくるパーティーはいなくほんと民度いいよなと思ってしまう。


 初動は危ないところもなく2パーティー倒す。

 俺は通話サーバーの方をミュートにしてリスナーと話す。


「ほんと舞希さんうまくなったよな。後、慶さんと凪咲さんのプレー画面初めて見たけどうまいね」

 

 ・それな

 ・舞希さんかなり裏でもやってそうだよね

 ・慶さんも凪咲ちゃんも現ダイヤだからね

 ・舞希さん俺よりうまいんだけど

 ・成長速度が異常

 ・もう少しでロータスさんよりうまくなりそうだね


「いやもう俺よりうまいでしょ」


 ・草

 ・そんな簡単に日本1位越されてたまるか

 ・自分が怪物だという自覚を持て

 ・人外認定されてて草

 ・いつから人だと錯覚していた?


 残り10部隊でマッチは終盤に差し掛かっていた。

 俺のメインモニターには3人の配信画面と俺の配信のコメント欄が4等分されて映されているためコメントを読みながらでもプレーを見ることが簡単になっていた。


 舞希さんはM24を持っていた。

 うん。ウィンチェスターなんていうゴミを持っていなくて安心する。


 最終安地は激戦区の宮殿。

 周りが木で囲まれていて中にある大きな宮殿で構成されているランドマークだ。


 慶さんのオーダーで宮殿の左側を取りに行くことになった。

 俺がオーダーをしていても同じ判断をしていただろう。

 まあ、いつもオーダーは陽斗がしているので俺がオーダーすることなんてないのだが。


 かなり早く着くことができてフリーで取ることができた。

 時間が経つと宮殿内に入ってくる部隊がいる。

 もう入れないと思ったのか周りの木に隠れている部隊もいる。

 その舞台の1人を舞希さんがM24でダウンを取ったがポジションを優先して詰めない判断だ。


 よく見ると全部隊の場所が分かった。

 舞希さんたちが分かったかは分からないが、分からないならこれからできるようになればいいだろう。

 

 8部隊になった。

 宮殿の真ん中を取っていた部隊が足音を消してこちらに近づいてきた。

 3人で舞希さんをフォーカスして舞希さんが倒されてしまう。

 その流れで全員倒されてしまう。

 倒された相手の名前に見覚えがあったがそれは後でいいだろう。


 ミュートを解除して話す。


「お疲れさまでした」


『あ、話したいからって言ってカスタムにしたのに全然話してなかったね』


 慶さん、そのおかげで俺はギリギリ生きているのでこれからもそうしてくれると……

 

『コーチ』


「こーち!?」


 ・声やば

 ・草

 ・オタク死亡

 ・舞希さんじゃなくて凪咲さんに言われて死亡は浮気では?

 ・浮気だな

 ・火


『うーんじゃあ、ローちゃん』


「はい?え、何ですか?凪咲さんって俺のこと殺そうとしてます?」


『いやいや違う違う。呼びやすかったから』


 凪咲さんが笑いながら話す。

 笑い過ぎて声出せてないって。


「まあ、呼びやすいんだったらいいんですけど」


『じゃあローちゃん、さっきのマッチのいいところと悪いところ教えてください』


 その呼び方になったのか……

 もし俺の殺し方講座があったら2番目にこの方法が紹介されるだろう。

 1番目は舞希さん関連全てである。


「良かったとこは……慶さんは宮殿の左取る判断が良かったですね。後、木の所にいた部隊に詰めなかったのも良かったですね。凪咲さんは……」


『待って待って待って。凪咲()()じゃない。ちゃん、か呼び捨てで呼んでください』


 ・?

 ・まずい

 ・オタク死ぬぞ

 ・火?

 ・燃やそうとするなw


「……凪咲ちゃんは戦闘中の位置取りが良かったですね」


 ・草

 ・wwwww

 ・ちゃんw

 ・距離の詰め方エグw


「最後に舞希さんは……」


『じゃあ私もちゃんか呼び捨てがいいです』


「……え゛?……」


 ・張り合ってきたな

 ・オタクで遊ぶなw

 ・この人死なない?大丈夫?

 ・ん?もしかしててぇてぇか?

 ・てぇてぇ


「……どっちの方がいいとかありますか?」


『呼び捨てでお願いします』


「……舞希は1ダウン取ってたのが良かったですね。後かわいかったのも良かったですね」


 ・ん?

 ・あれ?

 ・オタクでてるな

 ・てぇてぇ

 ・てぇてぇ


『因みに私のこと呼び捨てで呼んでるのロータスさんだけですね。後私も呼び捨てで呼んでいいですか?」


「……」


『もしかしててぇてぇか?』


『てぇてぇな』


 慶さんと凪咲さn……凪咲ちゃんがなんか言っているが聞こえない……ふりをしておく。


「まあ俺のこと呼び捨てにするのは全然大丈夫ですよ」


『じゃあこれから呼び捨てで呼びますね』


『いやーほんとてぇてぇなー。俺たちが来るまでデートしてたみたいだし』


「『え?』」


 ・流れ変わったな

 ・炎上か?

 ・燃やせ―

 ・火火火

 ・火火火

 ・火火火


『違うって、2人を待ってる間マッチ行ってただけだから』


 ・へー

 ・裏で2人でマッチに、へー

 ・推しとオタク何も起きないはずもなく

 ・どうやったら何か起きるんだよ


『まあその話は置いといて』


 その話を切り出したのはあなただろう。


『ローちゃん今のどこが悪かったと思う?』


 慶さんもその呼び方になったのか。


「そうですね、宮殿の左側って外から直接入れないのであんまり外見なくて良かったですね。中を中心に見てればよかったと思います。後、単純に相手が強かったですね」


『なるほどね。確かに相手めっちゃ強かったよね』


「まあ、現チャンピオン帯の人ですからね」


『知ってるの?』


「多分俺のリア友ですね。舞希倒してたので後で〆ておきます」


『じゃあもうこのゲームできなくなるくらいに』


「分かりました」


 こんな調子で何回かマッチをして解散した。

 今回でかなり動きもよくなり2回1位を取ることができた。

 配信を閉じモニターを消すとニヤニヤしたきもい人が見えたが気のせいだろう。


 

 

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