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3人(2人のイチャと1人の厄介)

 自分の部屋まで軽い足取りで行く。

 肉体的には疲れているはずなのに。

 心は疲れているどころかウキウキだ。

 

 カバンの中からスマホを取り出しカバンは適当に床に置く。

 pcに電源を入れ起動している間に由香里に連絡しておく。

 ずっと俺のトーク画面で待機していたかのようなスピードで返信してくる。

 

 俺は『watcher』の通話サーバーに入る。

 既に1人入っていた。

 

「お帰り。大分帰ってくるの早かったね」


「え、そう?いつも通りだと思ったけど」


 嘘である。

 バスを降りてから全速力で走ってきた。

 まあ、俺が全速力で走っても大したスピードは出ないが。


「もう1人呼んでもいい?嫌だったらやめるけど」


「全然大丈夫だよ」


 俺は陽斗に連絡する。

 そうするとすぐに俺たちが入っている通話サーバーに入ってくる。


「よう、ちょっと気になってたんだけど今日買い物行くんじゃなかったのか?」


「もう行ってきたよ」


「早。なんでもう帰ってきてるんだよ。もっと2人でイチャイチャしてろよ」


 俺1人だったらいいのだが由香里もいるので反応に困る。

 

「関係ないけど蓮、俺とやってない間ポイント盛れた?」


「ああ、めっちゃ盛ったよ」


「冗談は程々にしとけよ」


「しばくぞ。まじだから」


「知ってるよ。めっちゃ切り抜き流れてきて見てみたら1日で400とか盛っててビビった」


「見るなよ」


「見るよ。それで?これはどういう集まり?」


「由香里に『rex』を教えようの回」


「なるほどね。……俺いらなくね?」


「俺人に教えるの下手だから」


「確かに下手だもんねー」


「おい謙虚なのを逆手に取るな」


「ごめんて。実際見たことあるけど結構うまかったよ」


「そう?」


「ほんとほんと。まあ不安なら俺も教えるけど」


「助かる」


「まあ取り合えずマッチ行くか」


「オッケー」


 そういって『rex』を始める。

 由香里ともフレンドになって去年と比べるとフレンド欄が華やかになっていた。

 5人しかいないけど……俺の中では華やかになったんだよ!


 由香里が操作に不慣れなため最初はあまり敵が来ない場所、所謂過疎地に降りる。

 まあ、敵と戦った方がうまくなるのだが操作がおぼつかない状態から戦ってもしょうがないので、まずは操作に慣れてもらうことを優先する。


「由香里はこの武器使いたいとかある?」


 陽人が言う。

 こういう時に率先して話してくれるのは本当にありがたい。

 さすがこのチームのコミュ力担当だ。

 俺が勝手に言ってるだけだが。


「うーん。蓮の配信見てただけだからあんま詳しくないけどウィンチェスターとか使ってみたい」


「あかんあかん。その武器が1番あかん」


「なんで?」


「めちゃくちゃ当てずらい。……まあ1回使ってみてもいいか」


 陽斗がそう言ったので俺は持っていたウィンチェスターを由香里にあげた。

 因みに俺はスナイパーライフルに分類されるM24を持っている。

 スナイパーの中で1番人気のある武器だ。


 降りたランドマークを漁り終わり俺たちの初の戦闘が始まる。

 今回も舞希さんの時と同様、キルを取らせるような立ち回りで行く。


 敵の居る所にピンを指す。

 距離は大体250mだろうか。

 距離的にもちょうどいいので由香里に撃たせてみる。


「今見つけた敵撃ってみて」


「分かった」


 由香里がウィンチェスターを取り出した時ちょっとした違和感が芽生える。

 いつも俺が持っているウィンチェスターと違うような。

 

「それさあ、スコープついてる?」


「え、ああついてないかも」


 落ちてなかったのかそれとも単に拾い忘れたのか。

 まあ初心者だししょうがないよね。

 そう思い俺は持っていたM24についているスコープをあげた。


「そのスコープ付けて撃ってみ」


「分かった」


「『rex』やってる男と女じゃん」


 陽斗が言う。


「厄介オタクかよ」


「だってそうじゃん。何ならもっといちゃつけよ」


「お前は何なんだよ。俺と由香里に何を望んでるんだよ」


「え、(付き合ってほしい)別に何も」


 まじで何なんだ。 

 そんな戯言を話していると由香里が打ち始める。


 パァン パァン パァン パァン パァン


 少し高めの銃声が5回。

 マガジン内のすべての弾を撃ったようだ。


「当たらない……」


 由香里が少し悲しそうな声で言う。


「まあ、ウィンチェスターなんて当たんなくて当然みたいな武器だから」


「でも蓮は当ててた……」


「ああ、蓮は一種の怪物みたいなもんだから気にしなくていいよ。蓮、M24落として」


「ん?何で?」


「多分そっちの方が由香里使いやすいだろうから」


「なるほどね」


 俺は持っていたM24を落とす。

 由香里が拾ったときウィンチェスターを落としたので代わりに持っておく。


 バン


 さっきよりも低い銃声がする。

 新たにキルログが流れる。


「あ、倒した」


「え、噓でしょ?」


 陽斗が驚いている。

 いや俺も声を出してないだけでかなり驚いている。

 武器を変えればエイムが良くなるなんて機能ないのだ。

 プレイ初日というか初マッチでこれは凄すぎるな。

 

「よしじゃあ詰めるか」

 

 陽人のオーダーで即座に詰める。

 かなりの距離があったので詰めた頃には蘇生されていたが体力差で押し切った。

 チャンピオン帯では通用しない立ち回りにちょっと面白くなる。

 

 この後も由香里が何人か倒して1位を取った。

 まあ、現役チャンピオン帯が2人もいるのだ。アンレートの1位なんて楽勝だろう。

 

 大体4試合目くらいだろうか。

 数えていないので正しいかはわからないが。


「今回は何の武器使うの?」


 コミュ力担当が聞く。


「うーん、あ、そうだ。VAL。VAL使ってみたい」


「いいね。初心者が使いやすい武器1位だよ」


「やっぱりそうなんだ」


「ん、知ってたの?」


「蓮が配信で言ってたから」


「へー蓮の配信見てたんだ」


 何となくだが陽斗がニヤニヤしている気がする。

 

「そうだけど……何?」


「蓮のこと配信見るくらい気になってるんだなーって」


「っっ、違う。いや違うわけじゃないんだけど。そういうのじゃなくて」


 由香里が焦ったような反応をする。


「ふーん。そうなんだあ」


 またニヤニヤしてる気がする。

 なんか体があっつくなってきたような。

 なんでだろ。エアコン付けるか。


「あ、敵。倒した」


「つっよ」


「なんか全員倒せた」


「はー強すぎでしょ」


 キルログを見ると由香里が敵3人を1人で倒していた。

 あれ、俺らより強くね?

 

「VALめっちゃ使いやすい」


「VALが強いのか、由香里が強いのか」


「後者でしょ」


「いやいやそんなことない」


 エイムが覚醒した由香里、覚醒由香里はそのままほぼ1人で敵を殲滅していき1位を取りましたとさ。

 ちゃんちゃん♪

 いやほんとに強すぎじゃない?

 もう少ししたら俺なんかよりもうまくなってそうだ。

 

「じゃあ私この後ちょっと予定あるから抜けるね」

 

 そう言って由香里は『watcher』の通話サーバーから抜けた。

 

「蓮はどうする?もう少しやるか?」


「あーちょっとだけランクまわそ。ほんとちょっとしかできないけど」


「なんかあるの?」


「この後舞希さんと配信する予定なんだよ」


「へーすっかり大物になっちゃって」


「別にそんなんじゃないって」


「ま、どうでもいいけど。じゃランク行くか」


「オッケー」

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