本音
由香里視点です。
家に帰ってきた。
自分の部屋に入ってすぐ制服を脱ぐ。
いつもなら脱いだ制服はすぐハンガーにかけクローゼットにしまっているのだが今はそんなことどうでもいい。
下着だけを身に纏いベットに身を投げる。
今日の5、6時間目の授業全然頭に入らなかったので後で勉強しないとなんて考える。
だがそれは余裕のあった頭の片隅で考えていたこと。関係ないことだ。
いや関係ないことはない。
今脳の大半を使って思考を巡らせているのは昼食からだ。
そのせいで5、6時間目の授業に集中できなかったのだから。
ではその考えていることとは何か。
それは蓮のこと。
より正確に言えば蓮のお弁当を作っている人。
蓮は1人暮らしなのにお弁当を作ってもらっていると言っていた。
1年生の頃から関りがあるのに気づかなかった。
もっと話していたら気づけたのかななんて思う。
だがお弁当を作っている人は彼女ではないとのこと。
ちょっと安心する。
ここで安心してしまうのはよくわからないが。
本当に彼女ではないのかという疑問が頭に浮かぶ。
陽斗に聞かれたから彼女じゃないと答えたのかもしれない。
じっとしていることに耐えられず少し寝返りする。
もし彼女がいるとしたら私と2人で買い物に行くのはまずいかもしれない。
別にもしかしたら私のことを蓮が好きになるかもなんて自惚れたことは考えていない。
世間体というやつだ。
それに何もしなければ蓮は私のことなんて好きにならないだろう。
知り合ってから1年弱経った今でも私と話すときは遠慮気味なのだ。
私は陽キャと分類される人間だと思う。
これは自慢でも嫌味でもない。
単純な自己分析だ。
そして一定数陽キャを苦手とする人はいるだろう。
初めて話した時の反応的に蓮もそういうタイプの人だと思った。
だが陽斗とは仲良くしているので違うのだろう。
ちょっと陽斗に嫉妬してしまう。
私ももっと仲良くなりたくて『rex』を始めようとして、蓮を買い物に誘って。
だがいくら頑張っても、もう彼女がいたら元も子もない。
それに最近は推しと関われてうれしそうにしていた。
私が今まで聞いたことのないような声ではしゃいで喜んでいた。
ズルいななんて思ってしまう。
なにもズルくないのは分かっている。
でもそう考えないと落ち着かない。
土曜日の買い物で仲良くなれたらな。
そう思うと尚更気合が入る。
今から彼女いるかもなんて考えていても無駄だろう。
何かあっても言ってない方が悪いのである。
これはさすがにひどいか。
気持ちを切り替えるためにお風呂に入ることにする。
それに少しでも綺麗な状態で買い物をしたいから。
一朝一夕で変わらないのは分かっているが気持ちの問題だ。
そう考え立ち上がる。
ドアの前に落ちてある制服のしわを伸ばしてからハンガーにかける。
お風呂に入るためにタオルや服を選んでいるとスマホの通知が鳴る。
舞希さんの配信が始まったことを知らせてくれる。
蓮が見ているから私も見ようと思い通知をオンにしていた。
タイミング悪いなとちょっとだけ忌々しく思ってしまう。