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頽廃  作者: 彌樹
1/1

【弌】(仮)






私は突然、首を絞められるような感覚に襲われました。






次第に視界が霞んできて、妙な寒気に晒されたのです。

私は、朦朧とし始めた意識に鞭を打つようおもむろに立ち上がり、その悪寒を紛らわす方法を探しました。



地下の書斎を藁にもすがる思いで漁りました。


いや、機微(きび)を穿つような思いで。



書物の山の中に、1冊、とても惹かれるものがありました。






著書名は「頽廃(たいはい)」。






まるでその言葉は、今の私其の物のようでありました。

私は震える手でひとつ頁をめくり、現れた眼前の文字にはっとさせられたのです。



そこには、こう記されてありました。




「愛というものは実に無益だ」




それは今の私の気持ちを代弁してくれているようで、この気持ちに落とし前を付けてくれる、神のお告げのようにも感じられました。

私は次頁へ手を掛け、そうしてもう一度、その言葉を見返しました。


「愛というものは実に無益だ」




本当に、そうなのかもしれない。




全て無駄だったのかもしれない。




気づいた時には、寒気も、震えも止まり、瞳から溢れた哀愁の雫が、睫毛を濡らしていました。


私はその言葉を口に出し、反芻(はんすう)し、遂にその場に倒れ込んでしまったのです。







脈の音と蝉時雨だけが、響いていたのを覚えています。







あのころと同じように。






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