プロローグ『混乱』
青く澄んだ空、そのキャンバスに描かれる飛行機雲、学び舎の隙間に流れる風の音の中で。
今日もまた日常を送る。
それは鈍い音、声を上げる事すら許されぬその行為は毎日のように降りかかる。
「ッ―――!」
思えば入学式の時、いじめを受けている奴を助けた所からこの悲劇は始まっただろうか。
無力な者同士が助け合った所で、そこに正義は生まれないのだと思い知らされた瞬間であった。
「おいっ!聞いてんのかぁ?結城!」
このいかにも三下感のある喋りかたをしているのはクラスの不良の中でもリーダー格の取り巻きにあたる、後藤だ。
後藤は入学式で目をつけて以降ほぼ毎日、リーダー格にパシられているストレスを校舎の影で僕にぶつけている。
「お前のとーちゃん医者なんだろぉ?わかるよなぁ?金だよ金!財布から抜いてくるだけで良いんだ。簡単だろぉ?」
クズめ。そんな酷い事出来るわけないじゃないか。
「む、無理だよ。医者って言っても....ち...小さな病院で....お金なんか....」
何度も何度も殴られ続けて痛みには耐えられる。でも、家族を巻き込むわけにはいかない。その思いとは裏腹に鈍い音だけが学び舎の隅に響く。
「くそが...最初の頃は泣き叫んでたくせに、つまんねぇな」
そう言うと掴んでいた髪から手を離し、その場を後にする。
教室に戻ろう。そう決心したのは昼休みが終わり授業が半ほどまで終わろうとしている時だった。
教室に入ると遅いと先生に叱られ、不良達からは睨まれ、一部生徒からの心配の眼差し。
いじめは助ければ次のターゲットになる。自分が痛いほど理解しているが故に手を差し伸べてくれない人々を責める事なんて出来ない。
「あー、今日の授業はここまで各自黒板を板書し課題をしてくること」
その時だった
授業が終わり、先生が教室を出て行く所までは覚えている、先生が扉を閉めた瞬間、辺りが真っ白になった。
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「NEWSの時間です。本日午後15時頃、東京都〇〇区にある....」
「ただいま爆発事故があった学校前に来ております.....」
「教室で爆発が起きた原因については未だ分かっておらず.....」
【31名の生徒が行方不明となっており....】
「警察が現在、生徒の行方の調査を行なっています」
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なんだ目眩か、どうやら今日は殴られ過ぎたみたいだ。目を擦り周りを見るといつもと変わらない風景があった。
1人の生徒が声を上げるまでは。
「おい...ここどこだ...?窓の外見てみろよ」
!!!?
彼が指した先に広がるのは苔の生えたビル、折れたスカイツリー、その絶望を感じさせる様は東京のコンクリートジャングルが本物のジャングルにでもなったかのような風景であった。
とっさに今出て行った先生を追うものも居たが教室を出るとそこは荒れ果てた校舎だった。
「落ち着くんだ。見たところこの教室の外だけ老朽化も進んでる。下手に動かず状況を確認しよう」
最初に場を落ち着かせようとしたのは、クラス委員長である、二階堂賢也、一部クラスのリーダー的存在だ。剣道部の主将でもあり、文武両道ってやつだ。
「あ?何かってに仕切ってんだよカスが」
意を唱えた彼は、阿久津明、不良グループのリーダーで悪のカリスマ的存在。他の下っ端達とは違って馬鹿ではない。
「阿久津くん....今は緊急時なんです。下手に動かないのは必要な事ですよ?」
「だからカスだって言ってんじゃねーかよ!もう夕方になりかけてる、こんな状況下の夜なんてどれぐれー寒いかなんて想像できないだろ!」
「それは....」
「確認するだけなんて、サルでも出来んだよカスが!」
リーダー同士の出来る会話、その会話に意を唱えるものは無く、話が進む
「わかりました...では、阿久津くんの言う通り、まず校内からだけでも調査してみましょう」
話がひと段落ついたのか、阿久津は席に座り腕を組む。委員長は一人の女子に目を向ける。
「相沢さん、女子の方のケアをお願い出来ますか?」
女子生徒のリーダーを任されたのは相沢可憐、弓道部のキャプテンで女子の人気の的だ。
「わかったわ、この教室にとりあえず居れば良いのかしら?」
「頼みました」
委員長の返事に頷いた相沢はテキパキと泣いている女子生徒を慰め教室の隅の方に寄せた。
「じゃあ、男子で2グループに別れて団体行動を心がけて移動しつつ周辺の調査を行います!」
そう言うと、委員長は人を集め始めた。2グループと言ったが半々に別れるわけではない。要するに委員長グループと不良グループだ。クラスの不良達は阿久津の側に行きグループを作る。
「結城!こっちこいよ?」
後藤に睨まれ、僕は阿久津のグループへと足を進める。向かってくる僕を冷たい目で阿久津は向かい入れる。その目は何か言いたげな目だった。
「行くぞ」
阿久津が号令をかけると不良達は彼の後を追い教室を出た。沢山の視線を向けられながら僕はその最後尾に続く。
教室から足を踏み出そうとした瞬間、二階堂が声をかけてくる。
「結城くん....いつでも来て良いからね」
その真っ直ぐとした目から目を逸らし、ありがとうの言葉が出ず教室を出た。
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