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U&I  作者: ダイヤ
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U&I はじまり




「ねぇ知ってる?寂しいは罪ではないの。寧ろ喜ぶべき事だわ」


―――――――




「あらまぁ!可愛い黒猫ちゃん!」


「にゃーん」


 大体こんな風に鳴いていれば人間は餌をくれる。良い時で猫缶、あんまりな時でソーセージ、それでも何も食べられないよりはマシ、そうやって人が良さそうな人間を選びすり寄って餌を貰う、そうする中で顔見知りになれば大体は食べ物には困らない、そんな地域猫として生きている。猫が嫌いな奴、好きな人、人間も様々いる中でこちらも見抜き共存する社会、たまに酷い人間もいるがそんな奴滅多にいない、やたらと最近はオレらを大切にする空気がある、とオレは考えていた。まぁ言っても猫の世界、そんなに甘くはない。縄張り争い、特に若い奴らは血の気が盛んで喧嘩を良く吹っかけて来る。オレは若い奴らが嫌いだ。いつもの公園の芝生の上の木陰でゆっくりと微睡まどろむ、そんな一日を送る事が出来ればそれで満足、もうオレもそんなに若くはない。



 近所のおばちゃんが「クロちゃん元気?」と今日も餌をくれた。今日は液体状の缶詰に入った餌、多少味は濃いが不味くはないのでそれを貰って食べた。欲を言えば冷たい状態ではなく多少温かくしたものを食べたいが、そこまでするのも面倒だろう。まぁ食えりゃ良い、ペロペロしながら「にゃーん」と言ったらおばちゃんは軽く手を振って帰って行った。


 今日は晴れて気持ちが良い。この公園は色々な人間が集まって来る。自分の子供を連れた母親、ベンチに座っている老人、公園の遊具で遊び回る子供達、オレは一日の大半をここで過ごすがその人間模様を眺めていれば飽きる事もない。ただこうして過ごして老いて行く、それがオレの望む事でそれ以上望む事もない。そんな風にゆっくり死に向かって生きて行く、それがオレの望む幸せなのだからそれで良い。



 今日もいつもの公園へと向かう。何だか今日は人が少ない。たまに見かける老人がベンチに一人、黒い服着た女の子が一人...何だか突っ立っている。やけに長い髪、腰の辺りまであるその長い黒髪が風でゆらゆらと揺れている。やけに白い肌、血色...こいつ生きてるのかと疑う程の白。何だかオレの方をジッと見ている。全く眼を逸らさないその女が薄気味悪く感じられてオレは眼を逸らしいつもの昼寝場所へと向かった。

「何だアイツ」と思いながら芝生に寝転がり眼を瞑ってそのまま眠りに落ちて行った。


眠りから覚めると陽が落ちかけていた。今日はいつも餌をくれるあの家の住人から餌を貰おう、そんな事を考えながら公園を見渡すとあの少女らしき人間はいなくなっていた。まぁそりゃそうか、もう陽が落ちてる、帰ったのだろう、そんな事を考えながら餌をくれる住人の家へと向かった。


―――



「あ!猫だ!」

「猫ちゃーん!」

「あら、この公園にも猫が、可愛いわねぇ」

「私猫アレルギーだから触れないんだよねー」



 人は良く喋る。何をそんなに喋る事があるのか。まぁ人間社会にも人間にしか分からないものがあるんだろう、オレらには関係無い、そんな風にいつもの景色に溶けて生きている、そんな日常がただ毎日続いている、その繰り返し、何も悪い事ではない。春夏秋冬、夏の暑さ、冬の寒さに耐えそれなりに生きて来た、まぁ来年は分からないがそれなりに生きて行く以外にない、オレよりも先にあっちの世界に逝った奴らも多い、オレも分からない、それなりに日々生きて行くしかない、人間程オレらは喋る事など何もないのだから、そんな事をたまに考えながら餌を貰って生きて行く、それが猫社会というものでもあるのだから。


 カラスの鳴き声、もう陽が傾きかけている。オレもいつもの寝床へ帰ろう、そう思っていたら遊具の方に女が一人突っ立っている、この前の女の子...またこちらをジッと見つめている。帰ろうとしたが何だか不自然な感じになる気がして気が乗らなかったが一声「にゃーん」と言って帰ろうとした。そしてその女の子にゆっくり近付き「にゃーん」と声を発するとその女の子が一言、


「あなた、私が見えるの?」


と言葉を発し、その瞬間突然の突風が吹きオレはとっさに眼を閉じて風が収まるのを待って暫くしてから眼を開き周りを見渡すと、その女の子はオレの目の前から消えていなくなっていた。












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