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貰った『ギフト』がバグっていたのだが?  作者: 大英
第0章 プロローグ
8/14

第8話

本日2話目です。少し短めです。

同時に登場人物紹介も投稿しております。

 

 それから少しの間、エミとともに霊峰ですごした。

 クロノアの真の姿と、俺とクロノアの模擬戦の様子にはこれまでで1番驚いていたな。


「フブキちゃんはもふもふだねぇ。スラきちちゃんはすべすべぷにぷにだ」


「きゅ〜」「くぅん」


 ご覧の通り、2匹とも大変仲良くなっている。

 ちなみに、クロノアのことは師匠()の師匠ということで、〝大師匠〟と呼ぼうとしていたが、語呂が良くないということで却下された。


 全員で楽しく昼食をすませ、まったりと食休み中だ。


「エミ、お前は行きたい所とかある?」


「う〜ん.......師匠が行きたい所ならどこでもいいですよ?」


 夕飯の献立を募って「なんでも良い」って返って来るのと似たような感じだ。といっても、アーベル国内だと本当にダンジョンと王都ぐらいしかない。それにしたって他国の方が良い。例えばーー


 〝迷宮国家ラビリア〟

 アルテア大陸にある国家の中で、最も多くのダンジョンを抱える国であり、とにかくダンジョンと共に発展してきたといっても過言では無い。政治や経済がとにかくダンジョンを中心に回っており、名のある探索者は国民にとってヒーローであり、下手な貴族なんかよりよっぽど強い権力を持つ。


 〝ラース帝国〟

 アルテア大陸で最も強大な国力を誇る覇権国家。隣国に積極的に侵攻し、領土を広げて来たという背景を持つ。徹底的な実力主義の国でそこに種族は関係なく、他種族にも寛容という意味ではアーベルと共通するところか。帝都は大陸に存在する全ての都市の中で最大規模を誇り、1度は行く価値があるという。また、アルテア大森林の開拓にも積極的で、有力な冒険者の多くが帝国を拠点にしている。


 〝ガイア獣王国〟

 獣人が中心の国家。毎年行われる闘技大会には国内外から多くの観戦客が集まる。大会への参加資格は特になく、獣人族以外でも参加可能。様々な種類の獣人が見られるので、もふもふ好きなら必見。


 〝エルフニア〟

 名前の通りエルフの国。やや排他的で、あまり他種族に対して好意的では無い。とはいえ入国が不可能という訳ではなく、大自然の中に存在する都市の美しさは必見。


 〝魔法都市アルカディア〟

 アルテアでも珍しい単一都市のみで形成される国家で、魔法研究の最前線。世に出る著名の魔法使いの殆どがここにある魔術学院の出身者で、将来の大魔法使いを夢見る少年少女の多くがここを目指す。人類の制作した魔道具のほぼ全てがこの都市で生み出されている。ちなみに運営しているのは魔族で、都市自体も魔王国内にある。


 とまぁ、これ以外にも面白そうな国は色々ある。わざわざアーベル国内をうろつく必要はない、という訳だ。


「なら一応アーベルの王都には行ってみるか。その後はまた決めよう」


「わかりました。師匠との旅、楽しみです」


「ああ。おっと、記念にってわけじゃないんだが、渡したい物がいくつかあるんだ」


「??」


「まずはこれだ。受け取れ」


 俺が渡したのは短剣だ。まぁただの短剣ではない。


「総魔鉄製の短剣で、刀身に魔法文字が刻まれている一種の魔道具だ。普通に使ってもそれなりの切れ味だけど、風属性の魔力を流すことで切れ味が上昇する。少し申し訳ないがエミが買ったあの杖よりも補助道具として性能が上になってしまう。すまんな」


「いえいえいえいえ。ありがとうございます!大事にします!わぁ.......」


 アルテアには大気中に〝魔素〟という粒子が存在し、これが体内に吸収されると魔力になる。魔力の変換速度は人によってまちまちだが、最大量に関わらず空っぽの状態からだいたい1日程で全快する。

 その魔素が鉄などの金属に徐々に吸収されていき、〝魔法金属〟となる。魔法金属は武具や魔道具の素材となり、中でも魔鉄は元の鉄の埋蔵量が多いことから希少な魔法金属の中でも比較的入手しやすい部類だ。

 その為、そう安くはないが、魔鉄製の武具というのは駆け出しの冒険者やその他戦闘を生業にする者にとって一種の目標でもあるのだ。


「あとこれも」


 機動力を殺さぬように〝エアウルフ〟という風属性の魔法を使う狼系の魔物の皮を使用した防具一式。風属性魔法の威力が上がる追加効果がある。


「最後にこいつを渡しておく」


「もしかしてマジックバッグ?!良いんですか?」


「他にも何個か持ってるし、それはその中でもたいしたことないやつだけどな。あれば便利だろ」


 マジックバッグは現状ではダンジョンでのドロップ以外に入手手段がない。

 魔道具は魔法文字や魔法陣を刻み、魔力を流すことで特定の魔法効果を引き起こす。ただし、今のところ人の手で可能なのは属性魔法のみであり、ギフト由来の魔法効果を持つ魔道具というのは未だに研究段階でしかない。

 そういうわけで、マジックバッグは容量にもよるが最低ランクでもかなり高額だ。


「師匠ってもはやなんでもありなんですね.......。収納リングでしたっけ?それって相当やばいやつなんじゃ」


「これ1つで戦争でも起こるんじゃないか?割とマジで」


 俺の持つ魔道具の中にはそういうギフト由来の魔法が使える物は多くある。そして、収納リングを筆頭に他にも同等の力を有した物もいくつか持っている。そのどれもがおそらく国一つを買ってもお釣りが来る代物だ。一応、腰にはダミーのマジックバッグを下げている。加えて、万一の時の例の保険もあるから、直接奪われでもしなければ大丈夫。


「これから旅しながら色々見せてやるよ。楽しみにしててくれ」


「はぁ.......」


「それで、王都に行くわけだが.......どうやって行く?」


「やっぱり徒歩しかないんじゃないですか?乗り合い馬車は色々と不便ですし」


 アルバンからは王都方面へ乗り合い馬車の定期便がある。まぁ急ぐ旅ではないし、のんびり行くとしますか。何かあれば俺がエミを抱えて走れば良いだけだし。


「そうだな。んじゃ、アルバンに戻って準備するか」


「わかりました!」


 クロノア達にアルバンに戻ることと、王都に向かうことを伝える。


「夜はどうするのじゃ?」


「そういえばそうだな。野営する必要がないから毎回ここに戻ってくるよ」


「おお!それは良いの」


 大霊峰に転移できる以上、エミと2人ならばわざわざ野営をする必要はない。流石にことある事ににここに来るのは風情がないから夜だけだな。


「それじゃ、またな」


「クロノアさんまた来ますね。スラきちちゃんとフブキちゃんもまたね!」


「うむ」「きゅ!」「わぉん!」


「〝転移〟」


 転移した先は俺が使っている宿屋の部屋だ。ちなみにエミはこの隣を利用している。帰還先にこの地点を登録していた。


「本当に凄いですね、それ」


「まぁ登録した場所しか行けないけどな。便利なのは違いない」


「私も使えますか?」


「今のエミじゃ100人いても無理だ。要求される魔力量の桁が違う」


「ぶー」


「いずれは使えるように鍛えてやるさ。とりあえずギルドに挨拶に行こうか」


 ギルドでは受付のエルフ姉さんは勿論、顔馴染みとなった職員や同業の冒険者達にアルバンを離れることを伝えた。お姉さんやあまり話した事がなかったギルド長も別れを惜しんでくれたし、冒険者達も似たようなものだ。特に俺達をパーティに入れようと狙っていた一部の連中が心底残念そうにしていたな。


 他にもお世話になった宿屋や良く買い食いしていた屋台のおっちゃん、商店街のおばちゃん達、後はいつもの門番の人にも挨拶を済ませる。俺はともかく、エミは結構人気者で彼女が出ていくことに涙を流している人もいた。


 そして翌日、日の出と共に俺達は初めて入った城門とは真逆の城門を出た所に立っていた。


「良い街だったな」


「そうですね」


 特に俺にとってはアルテアで初めて訪れた街であり、弟子となったエミとの出会い、多少のトラブルはあったものの良い時間を過ごせた思い出深いものとなる。ある程度世界を見て回ったらいずれ戻ってこようと心に決めた。


 隣に立つエミをちらと見る。

 その装備は出会った時とがらりと変わり、昨日俺が渡した物になっている。彼女は仲間からどんくさくて弱い等と言われパーティを抜けた。確かに最初は口が裂けても強いとは言えなかった。しかし、今の彼女は俺の与えた訓練をなんやかんやでこなしたし、かつての仲間程度なら圧倒できる力を身につけた。どことなく雰囲気を感じるのは、新調された装備のお陰だけではなく、彼女に自信がついたということだろう。


「行くか!」


「はい!」


 俺達は朝の陽射しを背に、アーベル王国の王都へと歩みを進めた。




ここまでがプロローグです。次回から新章となります。

次話は4月7日の12時投稿です。

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