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貰った『ギフト』がバグっていたのだが?  作者: 大英
第0章 プロローグ
7/14

第7話

本日は2話+登場人物紹介の投稿です。

 

「今日もなかなかの成果ですね」


「まぁ俺は殆ど何もしていないけどな」


 アーベル王国の都市アルバンに来てからはや数ヶ月。エミの修行は順調そのものだし、俺自身ものんびりやっている。今日は休日で、エミは宿の部屋で休んでいる。俺は霊峰へと行く前に、ギルドへ成果の報告や素材の売却をしに来ていた。かなり打ち解けたいつものもエルフのお姉さんの所へ。

 魔物の種類毎に決められた討伐証明部位を袋に詰めて提出する。こういった部位は基本的にお金にならない部分で、ギルド職員が回収し処分する。これは使い回し等の不正を最低限防ぐための措置だが、それでもやらかすギルド職員や冒険者はいるらしい。職員はともかく、冒険者の方はそれで得られる栄誉になんの意味があるのか甚だ疑問だ。実力が伴わないランクなんてすぐにボロが出るだろうに。

 稀に貴族なんかが自身の泊付の為に証明部位を買取り、それを提出するという方法を使うそうだが、それは黙認している状況だとか。


「またまたご冗談を。エミさんは確かに凄まじい成長を見せています。アルバンの冒険者の間でちょっとした話題になるぐらいには。しかし、本当にすごいのはクラウドさんだってわかる人にはわかるんですよ?」


「へぇ.......お姉さんはどうなんだい?」


「ふふふ。私はエルフなので魔力に対する感受性が強いんです。生きとし生けるもの、魔力を持たぬ存在はいません。そして、魔力量に関わらず大なり小なり漏れ出るのが普通です。それは熟練と言われる魔法の使い手も同様。しかし、クラウドさんからは一切それがありません。それがどれほどのことか私は理解しているつもりです」


「これは1本取られたな。まぁ師匠(クロノア)のおかげだよ」


「成程。クラウドさんの師匠(謎のじーさん)は素晴らしい人だったんですね」


「ああ。それで、実はそろそろアルバンを離れようと思ってる」


 エミもそれなりの実力が付いてきたし、心配事(ジョン)も片がついた。アーベルの王都ぐらいには行ってみたいし、ダンジョンも気になる。問題があるとすればエミがなんて言うか、か。


「そうですか。寂しくなりますね」


「アルバンは良い所なんだが、他も見てみたくてな」


「そうですよね。エミさんも一緒にですか?」


「それは本人に聞いてみるつもりだ。それじゃ、今度来る時は別れの挨拶、かな?」


 俺はギルドを出て、まずは霊峰へと向かう。人目のつかない場所で転移魔法を起動。視界が一瞬で切り替わった。


「ただいまー」


「おぉ!待っておったぞ!」「きゅー!」「わぉん!」


「おーよしよし。うわっ!」


 フブキが覆い被さるようにのしかかり、そのままぺろぺろと俺の顔を舐める。最初は子犬程度の大きさだったのに、今は俺を乗せて走れるほど大きい。スラきちは相変わらず俺の頭に乗れるサイズなのだが、体のサイズを変えられるので、本気を出すとめちゃくちゃでかい。


「どうどうどう。3日ぶりだな」


「妾は待ちくたびれたぞ。毎日帰って来れんのかえ?」


 何とかフブキを落ち着かせ、テーブルと椅子を取り出して着席する。フブキは足元にゴロンと寝そべり、スラきちはポヨンと俺の頭の上に取り付く。


「何度も言うけどそれは流石に無理だって」


「いけずじゃのう」


 このやり取りはもう毎度のことだ。


「マジックハウスも作り置きの飯も置いてあるんだからさ」


「そうかもしれぬが皆で一緒にとる食事の方が美味かろう?お主なしだとちと味気なく感じるの」


 嬉しいことを言ってくれるが、それは我慢して欲しい。〝マジックハウス〟は魔道具の1つで見た目はちょっとしたログハウスなのだが、入口をくぐると外見以上の空間が広がる豪華な部屋だ。特に、虹カプセルから出たそれは圧巻の一言で、どういうわけかオール電化ならぬ〝オール魔化〟された超快適空間で、予め必要な魔道具や家具が備え付けられていた。俺は下のグレードになる〝マジックテント〟を持っているので、ここに設置している。


 おっと、まずは近況報告だな。


「色々と問題が片付いたからそろそろ次の街にでも行くつもりだ。具体的にはダンジョンか王都だな」


「ほう.......ダンジョンか。妾もいくつか踏破したな。まぁ、お主なら余裕じゃろ。そう言えば、例の娘はどうじゃ?」


「それなりだな。まぁ俺やお前からすればまだまだだよ」


「カカカ、妾とお主と比べてどうにかなる相手がいれば見てみたいものじゃ。して、いつ会わせてくれるのかの?」


 もしこのまま師匠と弟子という関係を続けて行くならエミには俺の本当の素性を話すつもりでいる。そのタイミングはもう決めてある。


「近いうちに会える.......かもな。まぁ、彼女次第さ」


「それもそうじゃの」


「さて、飯の前にレベル上げと食材の調達をしてくるわ」


「うむ。待っておるぞ」


 俺は霊峰から大森林へと飛び出した。一応、ガチャは毎日引いているし、こっちに来た時にはレベルの補充をしている。ただ、もはやこの大森林には敵となりうる魔物はいないので、食材として美味しくいただける魔物しか狙っていない。アホみたいに食べるやつと、食べようと思えば無限に食えるスライムがいるので、多く倒しても困ることはない。


 そして1時間程、俺は魔物を探して大森林を駆け回った。




 ーーーーー




 翌日、アルバンに戻った俺は早速エミと話をすることにした。


「今日の修行は一旦保留だ。大事な話がある」


「大事な話.......ですか?師匠まさか?!た、確かに、私は師匠のことを尊敬していますし!で、でもまだちょっと心の準備が.......」


「(何か勘違いしているな.......。いや、エミは可愛いし胸もでかいしぶっちゃけ悪い気はしない。ただ、そういう関係になるにしても俺の覚悟が色々と足りない)あー、悪いんだがそういう話じゃないぞ。いや、気持ちは嬉しいけど、俺に今のところはそういうつもりは無い」


「へ?うわぁぁぁぁぁ」


 エミは自分の勘違いを指摘されて顔を真っ赤にして叫ぶ。なんだか俺も恥ずかしくなってきた。


「師匠ぉ.......酷いです」


「俺になんの罪があったんだ.......」


「でも、()()ってことは可能性はゼロってことじゃないんですよね?わかりました!」


 一転、急にふんすっと気合いを入れるエミ。


「こ、この話はこれで終わりだ。本題に入るぞ。俺はアルバンから離れ「そうですか?なら私も準備しないといけませんね」.......いいのか?」


 そう問いかけると「こいつ何を言ってるんだ?」みたいな顔をされた。


「むしろ残るという選択肢が存在しませんけど?」


「そうなのか?」


「はい。師匠の居場所が私の居場所ですので。それに、もう師匠(の出すご飯)なしでは生きていけない体ですし」


 くそ真面目な顔でエミがそんなことを言うせいで、たまたま周囲にいた人達がギョッとした表情になる。しかし俺にはわかるーーこいつ、クロノアと同じだと。まさか一緒に来る要因の1つがが食い物って師匠は少し悲しいぞ。


「そ、そうか。準備はまぁ良いとして、出発の前に知ってて欲しいことがある」


「それって休日に師匠がいないことと関係します?」


「どうしてそう思う.......」


「何となくですかね?1度師匠のご飯が恋しくて休日に探し回ったことがあったのですが、何処を探しても見つからなかったことがあって。門番の方に聞いても知らないって言うし。こっそりと何かやってるのかなって」


 割と鋭いな。ただ、原動力が結局飯かよ。


「正解だ。それじゃ、早速向かうとするか」


「え?どこにですか?」


「まぁ期待しておけ。とりあえず少し人気のない所に行くぞ」


 俺は路地裏の人気のないところにエミと共に入る。


「よし、それじゃ行くぞ〝転移〟」


 一瞬で景色が切り替わる。エミはこの事態についていけないのか目をぱちくりさせていた。


「師匠.......今のって」


「転移魔法だ。魔道具の力だけどな。まぁそれは後で説明してやる。ようこそ!アルテア大霊峰へ。歓迎するぞ」


「え、え、え、ええええええええええ?!アルテア大霊峰?!ここが?!どうやって?!」


「転移だと言っただろ。とりあえず落ち着けって。はい、すっすはぁー」


「すっすはぁーって何でですか!」


 切れ味鋭いツッコミをありがとう。芸人の才能があるよ。

 すると、後ろからいつもの気配が3つ。


「ふむ、その娘が例の弟子か」「きゅー!」「わぉん」


「おう。連れてきたぜ」


「ま、魔物?!あと誰?!」


「紹介しよう。俺の家族であるデモンスライムのスラきちとインフェルノウルフのフブキ、そして師匠のクロノアだ」


「家族?!師匠?!」


「娘、お主に危害を加えることはないからとりあえず落ち着くのじゃ。このスライムとウルフも同様じゃ」


「は、はぁ」


 俺の弟子だけはある、と思いたいが、混乱しすぎた結果一周まわって落ち着いただけっぽいな。


「説明するぞ?とりあえず俺の出身の話は覚えているよな?」


「覚えてますよ?」


「あれは嘘だ」


「やっぱり」


「驚かないのか?」


「普通に考えたらおかしいと思いますけど。なんですか、森で生活するじーさんって。もしかしたら本当なのかもしれないですけど、真面目に信じるのはアルバンの門番さんぐらいです」


 確かに、門番さんには何故か涙を流して物凄い同情された。まじでラッキーだった。そういえばエミはやたら微妙な顔をしていたけどそういうことだったか。


「怪しいと思わなかったのか?」


「思いましたよ?だからといって悪い人かどうかはまた別の話ですよね?」


「まぁそうだな」


「ならそういうことです。私は師匠が悪い人じゃないと判断した。それだけです」


「そうか」


 我ながら良い弟子に恵まれたな。


「それで、実はなーー」


 俺は自分のことをかくかくしかじかと全て話した。その間、エミは眉一つ動かすことなく聞いていた。


「ーーそして、今に至ると」


「.......師匠」


「ん?」


「話してくれてありがとうございます。お陰様で色々と腑に落ちました」


「それで、どうする?」


「何がですか?」


「改めて今後どうするかだよ」


「はぁ.......師匠は何もわかっていませんね。今更ビビってさようならなんてするほど私の師匠愛は小さくありませんよ?一生ついて行きますから。あ、その為にはレベル上げしないといけませんね」


「.......そうだな。これからもビシバシ行くから覚悟しろよ」


「はい!」




次話と登場人物紹介は18時の投稿です。

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