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貰った『ギフト』がバグっていたのだが?  作者: 大英
第0章 プロローグ
4/14

第4話

本日も3話投稿します。

 

 道中、エミから色々話を聞く。

 ここはアーベル王国で間違いないそうで、今向かってるのはその最北端の都市〝アルバン〟

 アルバンは大森林に最も近いという立地のため堅牢な城壁を持ち、大森林由来の素材が直接入ってくるのでそれに関連する取引が盛んな都市だという。


 ちなみに、俺の素性はこうだ。

 生まれてすぐに大森林へと捨てられ、森で暮らす偏屈なじーさんにたまたま拾われて育てられた。そして、そのじーさんが最近亡くなったため、遺品等を整理した上でこっちに出てきた。これまでずっと森暮しだったこともあって外の情報に疎い、こんな感じ。

 はっきり言ってもうめちゃくちゃである。森で暮らすじーさんってなんだよ。ただ、あんまり凝った設定にしてもボロが出るのも嫌だし、異世界人という立場がどうなのか未確定のうちはこの設定でいこうかと。


「それは.......苦労なさったのですね」


「ま、まぁな」


 なんか微妙な顔をされたけどまぁいいや。


「クラウドさんがファングボアを軽くあしらえた理由もわかりました!43歳とは思えないそのお若い姿にも納得です」


 俺は23歳の時にアルテアにやってきて20年経つので43歳ということになる。しかし、23歳の頃からその容姿は殆ど変わっていない。

 というのも、レベルが上がれば上がるほど肉体が数値に引っ張られるとかで、老化の進行が緩やかになり、結果的に寿命も長くなる。例えば、数世代に渡って仕え続ける騎士団長とか、200歳を超えてもなお現役の人族の冒険者とかが普通にいるらしい。

 これは高レベルになれば成程その傾向は顕著で、クロノア曰くーー


「エルフやドワーフ、魔族なんかは元々長命種じゃの。妾は不死ではないがほぼ不老の存在じゃ。お主は.......わからんな。まぁ、百年単位では寿命で死ぬことはないんじゃないかの?」


 との事だった。やべぇよ。

 俺のレベルは今の数値と合わせて実質7万オーバー。クロノアが出会った人種の中でも最も高くて500ぐらいだって聞いているからな.......。

 ちなみに、クロノアのレベルはそれほど高くはない。元の寿命が長ければ長いほどレベルが上がりずらいそうで。まぁ、あいつは基礎値が化け物すぎるからなぁ。


「この丘を越えると見えて来ますよ!」


「お?おお〜すごいな」


 丘を超え、見えてきたのは立派な城壁だった。地球では少なくとも日本で見られる光景ではない。


「ようこそアルバンへ!歓迎しますよ!」


 俺はアルテアで初めての街、アルバンへと辿り着いた。




 ーーーーー




「ほ〜賑わっているな」


 ヨーロッパ風の街並みの中のそこかしこで多くの人々が忙しなく動いている。商店や屋台では呼び込みの大きな声が聞こえてくる。人種も様々で、人族は勿論、獣人、エルフ、ドワーフと思しき人達やおそらく魔族であろう人達もいた。


「アーベルは他種族にも友好的な国ですからね」


「なるほどな」


 逆に言えばそうでは無い国もあるということだ。これもこの国を最初に選んだ理由でもある。


「まずは身分証を作らなきゃな」


「そうですよね」


 俺は身分を示すようなものは持っていない。

 城門を通る時にそれで一悶着あるかもと考えていたのだが、例の糞設定と金銭を支払うことで普通に通して貰えた。お金はクロノアがいくらか持っていて、いらないと言うのでありがたく貰った。若しかすると使えないという可能性もあったが、普通に使えたのでセーフ。

 というわけで、とりあえず身分をを作りに行くことにした。身分証となるのは街や村で発行される住民票のようなものか、各種ギルドで発行されるギルドカードだ。


「ギルドかー。どうしようかな」


「アルバンにあるのは冒険者ギルドと傭兵ギルド、それ以外だと商人ギルド等の非戦闘系ギルドですね」


「傭兵ギルド?」


 クロノアはそんなギルドがあるって言って無かった。


「数十年前に冒険者ギルドから業務を効率化する為に出来たギルドです。他に探索者ギルドがあります」


「へ〜」


 エミ曰くーー 

 冒険者の主な仕事は未開地の探索と素材の採取。未開地の探索というのはほぼアルテア大森林のことを指す。素材の採取は木の実や薬草等から、魔物の物まで含まれるので、当然その討伐が仕事の範囲内ということになる。

 傭兵は文字通り雇われの兵士だが、メインとなるのは護衛任務。街から街へと移動する間だったり、高ランクになれば貴族や王族といった人達の依頼もあるらしい。アーベルではほぼゼロであるものの、地域によっては兵士として戦場へと向かうこともある。

 探索者の活動の場は〝ダンジョン〟そう、あのダンジョンである。ダンジョンには最下層のコアが生み出しているとされる魔物がおり、それを討伐すると死体は消えるが〝魔石〟と呼ばれる石や、魔物によっては武具や魔道具をドロップする不思議空間だ。それを取引して稼ぎを得るのが彼らなわけだ。俺もいずれはダンジョンに行ってみようと思っている。


 以前はこの業務全てを冒険者ギルドで一括して管理運営していたということで、それが現在では分割化していると。


「私もそうなのですが、全てのギルドに登録している人は多いです。その中で何をメインに活動するか、ということになりますね」


「それなら俺も冒険者と傭兵、両方とも登録しておこうかな。探索者ギルドはないんだっけ?」


「探索者ギルドがあるのはダンジョンのある街だけですね。アーベルだとここから王都方面に行ったところにありますよ」


「そっか。とりあえず、冒険者ギルドまで行こうかな。案内は頼んだよ」


「はい!任されました!こっちです」


 大通りを歩いて暫くすると、石造りの大きな建物が見えてきた。


「ここです」


 扉を開けて中に入る。正面には受付っぽいカウンター。右手には酒場になっているのか何組かの冒険者だろう人達がたむろしている。右手は張り紙が貼られた掲示板と、素材の買い取りを行っている人の姿がある。

 そのまま正面に進み、エルフの特徴である長耳のお姉さんに話かけた。


「あの、冒険者登録をお願いしたいのですが」


「はい。こちらの用紙に記入をお願いします。登録料には銀貨5枚が必要ですが宜しいでしょうか?」


「大丈夫です」


 今更だがちゃんとアルテアで通じる言葉も話せるし、文字もかける。学んでおいてマジで良かった。

 それに、ステータスのチェックなんかもないみたいだ。城門とかでもそういうのがあった時の為に、対策は用意してあったけど、今のところ出番はない。いや、一応不意の鑑定に対応する為に()()()()にはしているが、そういう感触もなかった。


 名前や出身地や特技を書き込み提出する。


「出身は.......アルテア大森林?!」


「(そりゃそうなるよな)えっと、実はかくかくしかじかで」


「はぁ.......かくかくしかじかですか。大変でしたね」


「まぁそうですね」


「では、少々お待ち下さい。ギルドカードを発行致しますので」


 そう言ってお姉さんは受付の裏側に行った。


「これでクラウドさんも冒険者の仲間入りですね!」


「そうだな。宜しく頼むよ、先輩」


「先輩だなんて.......クラウドさんならあっという間にランクが上がりますよ」


 すると、後ろの方で入口の扉が開く音がした。そしてーー


「あっ!エミじゃねぇか。無事だったのか。それに.......」


「その人.......もしかして!」


 入ってきて声をかけてきたのは2人組の男女ーーそう、あの時の3人組のエミ以外の2人だった。


「生きてたのか、ちっ」


「.......」


「(露骨だな、おい。確信犯ってやつか?)ああ、君達か。あの時は()()()()()()()()。彼女の案内もあって無事にアルバンまで来れたよ」


 露骨に舌打ちをして不快感を隠そうともしない少年と、黙って俺を憎々しげに睨む少女に皮肉を込めて返してやった。


「まぁいいよ。俺から君達に何か言うこともないし、それはギルドも同じだ。次は気を付けろよ」


 俺からこいつらをどうこうすることはない。また同じことをすればいずれ報いを受けるのは自分自身だし。


「ふん.......おいエミ。あの時はああ言ったけど戻ってこいよ」


「え?」


「だって、暗くてどんくさいお前と組んでくれるやつなんていないだろ」


「いや.......あの.......」


 エミから事情を聞いているから彼女がこいつらのパーティを抜けたのは知っている。というか、暗くてどんくさい?別にそんなことはなかったけど。明るくてとても良い子だと思う。


「なぁボウズ。この子はお前らのパーティを抜けた、間違いないな?」


「なんだよおっさん、これは俺達の問題だ。あんたには関係ないだろ」


「おっさん.......なのはまぁいいか。もう一度聞くぞ?この子はパーティを抜けたんだな?」


「そうだけどまた入れてやるって言ってんだろ。もうすっこんでろよ」


「それがそうもいかないんだよ。俺とエミはもう新しいパーティを組むことにしたから」


「「「え?!」」」


 3人が驚いた表情で俺を見る。いやいやエミさんや、君も驚くのはわかるけど、おじさんの作戦が台無しになるかもだからね。


「俺も冒険者になったからな。そこに調度良くフリーの相手がいた。俺は初心者だから頼りになる先輩と組むのは別に不思議じゃないだろ」


「ふざけんじゃねぇよ!」


「そ、そうよ!」


「ふざけてる?ふざけてるのはどっちだ。それに周りを見てみろ。騒ぎになればその原因を話す必要があるけど?」


「ぐ.......」


「あ.......」


 口論する俺達を他の冒険者達が訝しげに見始めていた。もしこれ以上騒げばその理由を話さなければならないかもしれない。そうなった時、やばいのはあっちだからな。


「くそっ!覚えていろよ」


 2人はそう言ってギルドを出ていった。


「あれ?どうされました?」


 そして、そのタイミングで受付のお姉さんが帰ってきた。


「いえ、なんでもありませんよ」


「?ーーこれが、ギルドカードです。お受け取り下さい」


 俺が金属で出来たカードを受け取った。


「それと、ここに魔力を流して下さい.......はい、大丈夫です。それでは、もう一度同じ箇所に魔力を流してみてください.......ギルドの紋章が浮かび上がったのでこれで登録完了です」


「おお。ありがとうございます」


 ギルカードは一種の魔道具で、一度魔力を流すと同一人物の魔力でなければ今のように紋章が浮かび上がらないらしい。登録料の銀貨5枚というのもほぼこれの値段なんだってさ。


「紛失した場合は再発行に金貨1枚いただきますので気をつけて下さい」


「わかりました」


「では、冒険者とギルドについて説明しますね」


「お願いします」


「はい。冒険者とはーー」


 俺はお姉さんから冒険者について話を聞いた。よくあるランク制で、活躍の度合いによってギルドの判断で上がっていくと。冒険者同士の争いは基本不介入だが、大事になったり相談があれば仲裁してくれる。まぁそんな感じ。


「ーー以上です。他に何かありますか?」


「いえ。あ、もしかしたらちょっとしたらまた来るかもしれません」


「はい。では、ご検討をお祈りしております」


 こうして晴れて冒険者という身分を獲得した。

 後はエミとは今後どうするかだが、少し考えがある。俺は、酒場のテーブルへと座るように彼女を促した。これから、とある提案をするためだ。それはーー




次の投稿は14時です

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