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貰った『ギフト』がバグっていたのだが?  作者: 大英
第0章 プロローグ
2/14

第2話

本日2話目です。

 

「ひゃーすっごいな」


「きゅー!」「わぉん!」


 俺達1人と2匹は、山の麓に到着した。見上げれば山頂は雲を突き抜けて遥か彼方にある。

 更にそこから数時間進むと、周囲の光景は木よりも山の岩肌が目立つようになってきた。そして、完全に森を抜けたところで、キャンプを貼ることにした。


「今日はここで野宿をするぞ。晩飯はカレーだ!」


「きゅきゅきゅー!」「わぉぉぉぉぉん!」


 スラきちとフブキはカレーが大好きだ。勿論、俺も大好物である。ガチャ産の香辛料をブレンドした俺の特製カレーライスだ。手早く場をセッティングする。スラきちもフブキも待ちきれないのかそわそわしていた。


「それじゃ、いただきます!」


「きゅー!」「わぉん!」


 俺の音頭に合わせて2匹もカレーに飛びつく。


「んぐ、美味い!それに、この光景はなかなか見られないよな」


 この場所は森に比べればそれなりに標高があり、見渡せる位置にいる。水平線の果まで鬱蒼と生える木々という光景は不気味さはあるものの、日本で普通に暮らしていればなかなか拝めない光景だった。それに加えて夜空に輝く満点の星がとても綺麗だ。


「これだけでも異世界に来た価値を感じられるなって.......なんだ?」


「きゅ?」「ぐるるるる.......」


「お前達も感じたか?殺意とかそういうのじゃない.......けど、何か来る?!」


 10年間、まがりなりにも戦い続けた結果、敵意とか殺意といった視線や感情を何となくだが感じ取れるようになっていた。しかし、今回はそういうのでは無い。凄まじい存在感を放った何かが近づいてきている、そんな感じだ。


「山の上から.......だな。お前達、注意しておけ」


 そう言うと、2匹とも身構える。俺も背中に下げた剣の柄に手をかけ、戦闘態勢に入る。そして、念の為に全開で魔力探知を張り巡らせる。するとーー


「?!?!?!ーーとんでもないやつが来るぞ!」


 突然魔力探知の範囲内にその何かが入ってきた!しかも、これまで感じたことのないほどの強大な魔力を内包した何かだ!


 そして、それは姿を現した。天井の雲を霧散させながら現れたそれはーー


「白銀の.......龍.......」


 これまで倒したことのあるドラゴンと言えば、アースドラゴンのみ。しかし、あいつはドラゴンと言うよりもデカいトカゲという印象しか抱けなかった。しかし、今目の前にいるのは違う。そのフォルム、白銀に煌めく美しい鱗、圧倒的な存在感、その全てが正しく〝龍〟だった。


「(どうする?鑑定は.......しない方が良いか。気付かれて要らぬ刺激を与えたくない。戦うのは.......)」


『お主達、一体何者じゃ?知らぬ気配を感じて見にきたのだが』


「(喋った?!いや.......脳内に直接語りかけられているような)」


『ふむ.......まさか人族とはの。それに、デモンスライムにインフェルノウルフか』


 デモンスライムとインフェルノウルフというのはスラきちとフブキの種族名だ。鑑定魔法か?俺達が警戒を強めているとーー


『そう警戒せんでも良い。お主達が戦いたいのならば相手をするが』


「いや.......俺達にも戦う意思はない。お前達も警戒を解け」


 2匹にもそう指示をする。仮に戦闘になったとして、とてもじゃないが勝てる相手ではなかった。相手が何もしないというのなら、それに従う他なかった。


『ん?人族の、お主は妾の知らぬ言葉を喋るのか』


 そういえばそうだ。アルテアに来て会話のキャッチボールなんてした事がないから考えてもなかった。


『念話は使えるか?妾が今使っているのがそれなのだが。やり方は己の意志を魔力に乗せて届けるイメージをすれば良い。ある程度の魔力のコントロールができるならば適正に関係なくやれる魔法のはずじゃ』


 そう言われればやってみるしかない。魔力をコントロールして、それを相手に届けるーー


『これでできているか?』


『できるとは言ったが、初めてで成功させるとはの。よく鍛えているようじゃ』


 暇だったからな。娯楽はないから、空いてる時間は魔力や魔法の研究をしていた。結果わかったのは俺に使えるのは身体能力を強化する魔法と、魔力探知、1部の魔道具を使えることだけ。それでも、魔力を操作する訓練自体は怠らなかった。我流だけど。


『それなりにな。それで、何の用だ?』


『最初に言ったが、知らぬ気配を感じたから見に来ただけじゃ。それにしても、久しぶりに人種を見たの』


『それで、どうする?俺達はここから立ち去った方が良いのか?』


『何か悪さをするということもなかろう。自由にするが良い。時にお主.......良い香りがするそれはなんじゃ?』


 龍が言うそれとはカレーのことだった。


『これか?俺達の晩飯だけど.......』


『ふむ.......それを妾に馳走せよ』


 え?こいつ、カレーが食べたいのか?


『それは構わないが.......その体格を満足させられる量はないぞ』


 実際、作り置きの量では目の前の龍が満足できる量はない。


『それなら問題ない。ほれ』


『え?!』


 すると、龍はみるみるうちに縮んでいく。そしてーー


『これなら良いじゃろう』


「ええええええええええ?!」


 思わず声に出てしまった。巨大な龍は姿を消し、そこにいたのは人間の女性だった。元の鱗と同じ白銀に煌めく長い髪、透き通るような白い肌と地球の女優やアイドルが裸足で逃げ出すレベルの美貌に抜群のプロポーション。


『妾の持つギフト〝人化〟じゃ』


『まじですかい.......』


 これが、俺と彼女ーー神龍クロノアーーとの出会いだった。




 ーーーーー




『こりゃ美味いの!』


 テーブルを挟んだ対面では、美女がカレーを貪るというなんとも言えない絵面が広がっている。


『.......そうかい』


『んぐ、んぐーーおかわりじゃ!』


『あいよ』


 俺はお釜からご飯をよそって、ルーをかけて渡す。緊張の解けたスラきちとフブキは足元でスヤスヤと眠っていた。


『ぷはぁ!妾は満足じゃ』


『食いすぎだろ。10杯はいってるぞ』


『こんなに美味いもんは初めてじゃ。誇って良いぞ!』


『どういたしまして。そうだ、俺の名前は左門 蔵人。こいつらはスラきちとフブキだ。さっきは種族名を当てられたけど、鑑定でも使ったか?それにしては何も感じなかったが』


『妾はクロノア。神龍とも呼ばれておる。あれは〝神龍眼〟というは妾の種族特製じゃ。鑑定魔法とはちと違うが.......まぁ似たようなものじゃな。クラウドよ、お主はこれからどうするつもりじゃ?』


『どうするっつってもなぁ.......』


 これから先どうするかはぶっちゃけノープランだった。あるとすればーー


『森を出て世界を見て回る.......ぐらいか』


『ほう.......それは良いが、言葉はどうする?』


『へ?』


『お主、共通語も喋れんのじゃろう。それでは人里に行っても不便じゃ。お主の意志は念話で飛ばせても一方通行ではの』


 確かにその通りだ。クロノアが言うには念話はそれなりに高等技術っぽいし。


『うーむ.......』


『ふふ.......それならば妾が教えてしんぜよう。対価は貰うがの』


『ん?良いのか?それに対価って?』


 ありがたい話だが、何かとんでもない物でも要求されるのかと思わず身構える。


『そう身構えんでも良い。対価はこれじゃ』


 そう言って、クロノアは空っぽになったお皿を指差す。


『毎日妾に飯を馳走してくれれば良い。どうじゃ?』


『それだけで良いなら.......宜しく頼む』


『契約成立じゃ!』


 俺とクロノアの契約はなった。

 その日以降、俺はクロノアから様々な事を学んだ。クロノアはその人化能力でかつては諸国漫遊していたこともあり、知識は豊富だった。例えば言語だが、アルテア全土で使える共通語は勿論、種族固有の言語、大昔に使われていた古代の言語まで様々だ。

 俺もレベルアップによって知力が上がっていたーー肉体的なステータスにはかなり劣るがーーので、それほど苦もなく覚えることが出来た。

 それ以外にも、このアルテアの基本的な知識も得た。例えばこの森、〝アルテア大森林〟というらしいが、なんと大陸の約60パーセントを占めているとの事。アルテアには大陸が1つしかない代わりに大きさも相応で、その半分以上ということはこの森がいかに広いかがわかるというものだ。

 クロノアは「まぁ妾が旅していたのは数十年前じゃからの。使えんかったらすまん」とは言っていたが。


 それともう1つーー


「ふん!まだまだ甘いの」


「ちっ.......これなら!」


 俺とクロノアは絶賛戦闘訓練中だった。クロノアは知識だけではなく、戦闘技術にも優れていた。龍のお前に必要なのかと聞けば、「暇だったから」だとさ。

 当時の大陸にいた実力者に片っ端から挑んではその技術を吸収したらしい。そういう訳で、人化した状態だと本来の姿よりもだいぶステータスが落ちるらしいが、それでも俺よりは全然上であり、その技術と相まって俺は全く歯が立たない。


「はぁ.......はぁ.......」


「今日はここで終わりにするかの。ほれ、飯を用意せい」


「はぁ.......はぁ...................了解」


「今日の献立は何かの。楽しみじゃ」


「今日はトンカツにしようかなって」


「おぉ!あれは妾も大好きじゃ!」


 俺達の生活にクロノアが加わってはや1年。

 変化という変化はない。クロノアの個人レッスンと作る飯の量が増えたぐらいだ。


 この時には俺の素性をクロノアには話してある。ただ、異世界人は珍しいがゼロという訳ではないらしい。そしてその殆どが大なり小なり何らかの功績を残しているそうだ。まぁその中でも俺は頭1つどころか数十個飛び抜けておかしいと言われたが。特に、俺の力の根源ともいえるガチャには強い興味を示していた。

 〝ギフト〟はアルテアの人種ならば誰もが持っている物で、神が魔物に対抗すべく力の弱い人種に与えた恩恵、ということになっている。その種類も様々であり、武力に直結する物もあれば、そうでない物も数多あるという。

 その中でも俺の【ガチャ】は異質であり、クロノアも長い龍生の中で聞いたことがないと言う。まぁ、地球の神様由来のギフトだしな。他の異世界人がどうだったかは知らんが。

 ちなみに、魔物であってもクロノアのようにギフトを持つ存在がいて、その多くが人かそれ以上の知性を持っている。少なくとも龍種はこれに該当するそうだ。


 さてとーー


「すぐに出来るから少し待ってくれ」


「了解なのじゃ!」「きゅ!」「わぉん!」


 スラきちとフブキもこの通り元気にしている。こいつらもどうやら俺が狩りに出ている時にはクロノアから色々教えて貰っているようだ。仲良くできて大変よろしい。


 このまったりとしてはいるが充実した日常が続いていく。

 そして、再び10年の月日が流れた。




次話は2時間後の16時投稿です。

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