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貰った『ギフト』がバグっていたのだが?  作者: 大英
第1章 王都
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第12話

 

 アルテアに存在する魔法の中に〝呪魔法〟というものがある。


 その効果は文字通り相手に呪いをかけ、その体力を徐々に奪っていく、というものだ。魔物相手に使えば所謂〝デバフ〟として作用するが、人間相手ならばそのまま暗殺の道具となりえる。

 メリットは今回のように人知れず対象を呪殺できることだが、それなりの制限やデメリットも存在する。


 1つ目、呪いをかけられる対象が基本的に1人であること。

 2つ目、1度呪いをかけると、その効果を維持するために常に魔力を消費すること。

 3つ目、万が一呪いをかけている相手に何らかの方法で解呪された場合、術者本人にその数倍の呪いが帰ってくること。


 今回、国王の体調不良はこの呪いによるものだった。それも、宮廷に仕える者が分からない、対処できない呪いとなると、相当高位の術者だったに違いない。まぁ、今はどうなってるか知らんが。

 ある程度予想ができていたが、俺の持つ魔道具の1つ〝鑑定のモノクル〟のおかげですぐに確定した。これは虹カプセルから出た魔道具で、最高位の鑑定魔法と同じ効果を持っている。その能力は尋常ではなく、例えばエリクサーにかければ、その材料や製法もわかるし、人にかければステータスは勿論のこと、ある程度の個人情報までわかってしまう代物だ。

 これをあの時の盗賊に使っていれば、何か手掛かりが掴めたかもしれない。最悪、アロイスに1度戻る必要があるかもしれないな。


 そんなわけで、呪いと聞いて驚く4人。


「私達王族は常に身を守る魔道具を身につけているのですが.......」


 そう言って胸元のネックレスを手で触る。


「それを破る程の術者だったということさ。実際、誰も呪いである事に気付けなかったわけだし」


「.......」


「それで、術者はわかっているのですか?」


 ザームエルさんがそう聞いてくる。


「少なくとも()()()には居なかったようですね」


「なるほど.......クラウド殿は王城内の誰かが犯人であると?」


「そこまでは言いませんよ。少なくとも術者はその場にいる必要はありませんし、このレベルとなるとそういった専門の奴の可能性は高いです。まぁ、その術者は今頃生きていないでしょうが」


「それだけの呪いを返されたとなるとそうなってしまいますか」


「とはいえ気をつけて下さい。国王はエリクサーの効果で暫くの間呪いは勿論、毒物の類も心配ありません。ただ、イーリスさんは別です。術者は死んでもまた次が居ない保証はありませんし、それ以外の手段を取る可能性もあります」


「そう.......ですな。ところで、クラウド殿はこの後どうするおつもりで?」


「普通に宿を取るつもりですが?」


「それならば是非ここに泊まっていってくだされ」


「え?」


 ザームエルさんが何やら泊まれと言い出した。いや、俺は別にーー


「そうです!それが良いです!」


 イーリスさんも食い気味に乗っかってくる。ヒルデグントさんは.......特に何も言わない。


「クラウド殿が居れば何かあった時も安心じゃろう。姫様もこう言っておりますし.......」


「えぇ.......エミはどうする?」


「私ですか?別に構いませんよ。王城に泊まれるって一生の自慢になりそうじゃないですか!」


「あ、はい。それならお言葉に甘えまして.......」


「やった!」


 別に喜ぶ程のことでもないが、イーリスさんは歓声を上げた。やれやれ。




 ーーーーー




「馬鹿な!」


「.......」


 とある屋敷の一室で男が声を荒らげる。この場にいるもう1人はそれを黙って聞いていた。


「エリクサーだと?!なぜそんなものが出てくる?!」


「どうやら冒険者が持ち込んだようです。雇っていた術者も呪いを返され死亡していました。それはそれはおぞましい死に方でしたよ」


「その冒険者は一体何者だ?!」


「手の者を使って調べさせましたが、クラウドという男とエミという女のパーティですね。共にDランクらしいです」


「Dランクだと?高々中級レベルの冒険者風情がなぜエリクサー等持っている?」


「それは分かりませんね。そういえば例の盗賊に偽装させていた者たちを捉えるのに協力したのもこの2人のようです」


「何だと?!クソッ!我々の邪魔をしおって.......忌々しい」


 後者に関しては完全に偶然なのだが、結果的には彼らは邪魔されたことになる。


「殺りますか?」


「出来るのか?Dランクとはいえお前の用意した者を蹴散らす者達であろう?」


「あのような捨て駒ではなく手練を用意しましょう。後、国王が回復した以上、計画を変更せねばなりません」


「そうだな。なら次はーー」


 男達の密談は続く。次なる魔の手がクラウド達に忍び寄ろうとしていた。




 ーーーーー




 かぽーん。


 俺は今、王城の大浴場にいた。クロノア達には悪いが今日の晩飯には行けないことを伝えてある。


「いい湯だな.......」


 俺は独り言ちる。しかしーー


「そうだろうそうだろう!我が王城自慢の大浴場だからな!」


 この場にはもう1人はいた。それはーー


「なぁ.......国王が一緒に入って良いのか?」


「構わぬ。クラウドは命の恩人だからな」


「はぁ.......」


 なんと風呂を共にしているのはアーベル王国の国王だった。名前はドミニク=フォン=アーベル、現在43歳のナイスガイだ。つまり俺とは同い年なわけで。

 あの後、目を覚ました国王直々にお礼を言いに来た。実はその時に俺の年齢も明かしたのだが、めちゃくちゃ驚かれたよ。国王ーーいや、ドミニクには敬語は不要だと言われたのでそうしている。俺としてもタメに敬語ってちょっと違和感があるし、イーリスさんにも敬語なんて使ってないしな。


「それにしてもクラウドは凄いな。相当レベルが高いのだろう」


「まぁそうだな。詳しくは秘密だ」


「ははは!別にそれ以上は聞かんわい。そういえば娘もそろそろそういう時期なんだが、どうだ?」


「は?寝言は寝て言えよ。こんなおっさんに軽々しく娘を差し出すなっての」


「そう言う割には連れている娘がいるようだが?」


「く.......」


 こういう他愛のないやり取りも久々で何となく心地良い。これだけでも王都に来てよかったと思えるくらいだ。


「改めて言おう、本当に助かった。対価を払えるかは分からないが.......」


「気にすんなよ。あんたを救える手段を俺がたまたま持っていて、イーリスさんがそれを導いた。するなら娘に感謝するんだな」


「そうだな.......だがーーありがとう」


「おうよ」


 その後もサウナで我慢比べしたり、色々話していたら割と長湯になってしまった。のぼせる前に風呂から上がって、そのまま夕食の場所まで案内された。


「イーリスちゃん、この前ねーー」


「エミちゃん凄い!それでーー」


 食堂には既にエミとイーリスさんが席に着いていた。彼女たちも一緒に風呂に入ってたみたいだが、どうやら随分と仲良くなったようだ。


「エミはイーリスさんと仲良くなったのか」


「はい!イーリスちゃんってとっても可愛いんです」


「エミちゃんったら.......あ、クラウド様も〝イーリス〟で構いませんよ」


「それで良いならそうする」


「はい!」


「あー!師匠は私のだから駄目だよ?」


「でもまだ恋人同士ってわけじゃないんだよね?ならまだチャンスが」


 普通にノーチャンスだから。流石に一国の姫に手を出すとか無理だろ。それに.......エミにも悪いしな。

 そうこうしているうちに、ドミニク、ドミニクの奥さんで王妃であるカミラさん、そしてザームエルさんが入ってきた。全員が着席すると、国王であるドミニクが乾杯の音頭を取る。


「此度は我を救ってくれた英雄の歓迎会だ。乾杯!」


「「「「「乾杯」」」」」


 そして夕食が次々と運ばれてくる。

 王族の食事とあって豪華ではあるのだがーー


「エミ、どうした?」


「いや、うん、えへへ」


 こいつ、絶対に宜しくないことを考えている。少なくともこの場では確実にアウトだ。


「ん?どうしたエミ殿、もしかして食事が口に合わぬか?」


 ほら気付かれた!

 別にアルテアの料理が不味いわけではない。塩や砂糖、胡椒だって普通に存在する。ただ、世界の差とでも言うべきか、地球の食文化に比べたら圧倒的に劣るのは間違いない。俺の作る料理に調教されてしまったエミがこれに満足することも無くーー


「実はーーかくかくしかじかで」


「なに?!クラウドの料理はそんなに美味いのか?!」


 エミが俺の作る料理が以下に美味いかを説明していた。

 俺をやたら褒めているがプロの料理人か何かと勘違いしてないか?確かに元々料理は好きで日本にいる頃も自炊していたし、こっちでもアホみたいに飯を作っているけど。


「師匠!()()を下さい!」


「えぇ.......()()だけはヤバいだろ」


「大丈夫ですって。ね?」


 何が大丈夫なのか全く分からない。絶対酷い絵面になる。


「クラウドよ、()()が何か気になる。構わんから出してくれ」


「まじかよ.......俺は知らんぞ。ちょっと待っててくれ」


 収納リングから直接取り出す訳にはいかない。あいにく、ダミーのマジックバッグは与えられた部屋の金庫に置いてきているからな。1度席を外し、例の()()を持って食堂に戻る。


「ほらよ。これだろ?」


「やった!」


 俺が持ってきたのは白く滑らかな物体ーーマヨネーズーーだった。


「これをドバっとかけまして」


 これもガチャから出たものだが材料はあるので自作できる。容器はプラスチックにチューブではなくガラス瓶なのが少し使い辛い。実はガチャから出る調味料とか液体の類は基本的にガラス瓶に入っている。これはアルテアにはプラスチックが存在しない上の配慮なのだろうか。


 にしても、エミのやつドバっと行き過ぎなんだよなぁ。

 エミはマヨネーズを1度口にして以降、マヨネーズ大好き人間、所謂マヨラーになってしまった。まぁそれでも何が何でもというわけではないのだが、今回は我慢できなかったらしい。


 案の定、皿の上が酷い絵面になっている。せっかくの綺麗な料理が白い物体に埋もれてしまった。


「んー!おいしー!」


「そ、それはそんなに美味いのか?どれ、少し分けて欲しい」


「良いけどよ。毒味とかせんで良いんか?」


「エミ殿が身をもってやってくれただろう。はよ」


「はいはい」


 そして、ドミニクもマヨネーズをぶっかけて1口ーー


「こ、これは?!」


「貴方、どうですの?」


「お父様?」


「う、う、う、う.......」


「おいおい、大丈夫かよ」


 固まったままうーうー唸るドミニクが心配になって声をかけたのだがーー


「美味い!」


「あ、はい」


「〝まよねーず〟というたか!こんなに美味い物を食べたことがない!」


 すると、さらにマヨネーズをぶっかけて皿の上はエミと似たような感じに。

 それを見たカミラさん、イーリス、ザームエルさんも恐る恐るといった具合にマヨネーズを試し始めた。


 その後、俺以外は出てくる料理の皿の上が真っ白になるマヨネーズ大会になってしまうのだった。




次話の投稿は4月15日12時です。

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