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貰った『ギフト』がバグっていたのだが?  作者: 大英
第1章 王都
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第11話

 

「そこの下郎!姫様から離れろ!」


 如何にも騎士と言った風体の女性が腰の剣を抜き、猛然と突っ込んできた。それにしても姫様ね。


「嬢ちゃん、とりあえず止めるから説明を頼む」


「え、あ、はい!」


 その剣筋と動きを見れば良く鍛えられているのがわかる。レベルもそれなりに高いのだろう。だがーー


「なに?!」


 上段から振り下ろされた剣を、白刃取りの要領で()()()で摘むように止める。

 その方が止められた方にもインパクトがあるだろう。思いもよらぬ状況に女騎士も硬直する。


「ほら、今のうちだ」


「あっ!ーーヒルデ、剣を退きなさい」


「姫様?!しかし.......」


「剣を退けと言っているのです」


「は、はい.......」


 俺が剣をそっと離すと、女騎士は不承不承といった形で剣をその鞘に収める。


「とりあえず騒ぎになる前にここを離れるぞ。いいよな?」


「は、はい」


「わかった.......」


 大きな騒ぎになる前にここを離れる。既に十分ざわざわしているが。

 何とかその場を抜け出して、人目があまりない場所まで移動してきた。


「さて、お嬢さん。説明してもろうぞ」


「貴様!姫様に向かってそのような口を!」


「ハイハイ。生憎俺はこの国の人間でもないんでね。この子がどういう身分かなんて関係ないのさ」


「なんだと!」


「ヒルデ、落ち着きなさい。この度は大変申し訳ありませんでした」


 そう言って少女が深く頭を下げた。それを見て当然声をあげるのはーー


「姫様!このような下賎の輩に頭を下げるなど!」


「ヒルデ.......これ以上口を開かないで下さい。良いですね?」


「.......」


 幼さい見た目にはそぐわない迫力で女騎士に釘を刺す。嬢ちゃんが仮にーーほぼ間違いないーーこの国の王女様として、この女騎士の態度はむしろ当然と言える。そもそもこのような状況になったのは嬢ちゃんのせいだと思うのだが、そこには突っ込まないことにした。面倒そうだし。


 嬢ちゃんがかくかくしかじかと説明する。

 彼女はアーベル王国の王女で、父親ーーつまり国王の体調が最近優れないという事で、村娘に変装して市中の薬屋に行こうとしたらしい。


 そもそも薬にしろ回復魔法にしろ国王ならばあらかた試しているだろうから、今更市中の薬屋で手に入る物でどうにかなるとは思えない。それが分からないような子じゃないような気もするので何とも腑に落ちない。

 というか、王宮の警備がガバガバすぎる件について。一体どうなってるのよまったく。


「そうだ、自己紹介がまだだったな。俺はクラウド」


「エミと申します」


「申し遅れました。私はイーリス=フォン=アーベル、アーベル王国の第2王女です」


「私はヒルデグント=フォン=ベルツ。姫様の専属護衛騎士を務めている。クラウド殿、エミ殿、先程は済まなかった。姫様を救っていただいたのにも関わらず、あのような態度に出てしまい不徳の致す限りだ」


 女騎士、ヒルデグントさんが頭を下げる。頭が硬くない人で正直助かる。


「それで、どうしてイーリスさんはこんな所に?父親が病気だとして、今更市中で手に入る薬なんて効く保証はどこにもないでしょう?」


「.......実は、私の〝ギフト〟なのですが」


「姫様?!」


「ヒルデ、良いのです。私のギフトは【天啓】というものです」


「天啓?」


「ええ。これはごく稀にですが、頭の中に言葉が聞こえてくる、ただそれだけのものです。ただ、この言葉に従って悪いことになった事はありません。他国では神からのお言葉〝神託〟として扱っている国もあるそうです」


「なるほど。それで」


「はい。今回の天啓は〝外に出れば良き出会いがある〟というものでした。お父様の薬をを買いに行くというのは嘘ではありませんが、咄嗟に出たものです。申し訳ありません」


 そう言うことなら合点はいく。

 それで、もしかしてその出会いってのが俺達のことなのか?まだわからんが。

 確かに父親がどのような状態だろうと完治できるアイテムを俺は持っている。そういう意味ではイーリスさんが今欲している人材なのは違いないかもしれない。


 しかしどうするか。そのアイテムをこのままぽんと渡しても良いが、ちょっと気になることがある。

 国王の体調不良はここ最近のことだ。そして、例の襲撃事件が起こり始めたのもつい最近の話。想像の域を出ないが無関係ということもなさそうだ。

 エミはアーベルの出身で、両親は村で農業を営み生活しているという。もしそっちに何かあればエミは帰ってしまうかもしれない。

 正直なところエミとは一緒にいたい。だって可愛いしボインだし俺の事が好きみたいだし、仕方ないよね?


「そうか.......イーリスさん、もし俺が国王のことを治すことができると言ったらどうする?」


「「え?!」」


 イーリスさんとヒルデグントさんが同時に声をあげる。


「ほ、本当ですか?!」


「確証はないがおそらく治せるはずだ。ただし条件がある、俺を国王の元に連れて行って欲しい。手段を君達に託すのは簡単だが.......それはできない」


 この国を巣食う問題を解決するためには国王を直接()()必要がある。


「わかりました」


「姫様、宜しいのですか?クラウド殿達は信用足り得る者かもしれませんが、身分としては平民で間違いありません」


「良いのです。王女である私が許可します。それに.......私はこれが天啓なのだと感じておりますので」


「.......かしこまりました」


「では、参りましょう。クラウド様、よろしくお願いします 」


「わかった」


 俺達は昼でも夜でもさんの案内で王城へと向かう。幸い、イーリスさんは村娘の格好なのでさほど注目は浴びなかった。ただ、王城前の城門で一悶着あったが。

 王女が城から姿を消したのは当然騒ぎになっている。それが村娘の格好でヒルデグントさんが一緒とはいえどこの馬の骨かも分からない平民2人を引き連れているのだ。問題にならないはずがない。

 その場はイーリスさんの鶴の一声でどうにかなったが、最悪捕まってたぞ.......。


 どうにか入城を許可された。一応、王女の客人ということでそれなりの扱いは受けているが、城を警備する騎士や使用人からの視線は冷たい。

 案内された応接室のソファーに座り、とりあえず一息ついた、その時ーー


「王女殿下!国王陛下が倒れました!」


「なんですって?!」


 タイミングが良いのか悪いのか国王が倒れたらしい。


「クラウド様!」


「ああ。任せてくれ」


 慌てるイーリスに同行する。道中俺を連れて言って良いのか等とえらい言われようだったが、イーリスがその全てを封殺する。そして、国王の居室に入るとーー


「お父様!」


 イーリスの父親ーーアーベル王国国王がベッドに横になっていた。息はあるようだが、その様子はすぐに死んでもおかしくない。


「まずはこれだな」


「師匠、それってもしかして」


「ああ。()()()()()


 俺は収納リングから取り出した片眼鏡、所謂モノクルを装着して魔力を込める。


「(なるほどな。やっぱりそういう事か)」


 国王が苦しんでいる原因がわかった。それなら()()でいけるはずだ。


「クラウド様.......」


「わかった。これを」


 俺が取り出したのはガラス瓶。所々に意匠が施され、中には濃い緑色の液体が入っている。


「これは?」


「エリクサーだ」


「え?」


「エリクサーだ」


 大事なことなので2度言いました。これは〝エリクサー〟あらゆる病魔や身体的異常、そして魔法による何かしらの攻撃の全てを回復、解除する秘薬だ。

 ガチャの金カプセルから出たこれなら国王を全快にするなど容易い。正直、これを出す事で新たな波紋が及ぶ可能性はあるが、それはその時だ。


 周囲にいた国王に仕える官僚や騎士、使用人もざわめく。


「本物.......なのですか?」


「ああ。嘘だと思うなら使わなければ良いさ。まぁ、鑑定でもすればわかるんじゃないか?」


 鑑定も万能ではない。鑑定対象ーー人であれ物であれーーが自分の力量を越えている場合、わかるのはせいぜい名称ぐらいだが、今はそれが分かれば十分とも言える」


「お、王女殿下.......どうやらエリクサーで間違いないようですぞ!」


 鑑定魔法が使える爺さんがいたようだ。慌ててイーリスさんに進言する。


「わかりました。お父様、お願い.......」


 イーリスさんが国王の口の中に少しずつエリクサーを流し込んでいく。国王もコクリと少しずつそれを喉に通していった。そして、しばらくしてその全てを飲み終える。するとーー


「あ、ああ.......」


 一瞬、国王の体が光ったと思うと今にも死にそうだったその表情は血色を取り戻した。眠ってしまったようだが、とても安らかな寝息に聞こえる。


「(どうやら上手く言ったようだな)」


 イーリスさんは眠る国王の傍らで嗚咽をあげていた。他の人達もその様子を見て目元に涙を浮かべている。


「(この中には居ないか。まぁこれで尻尾を出してくれると良いが)」


 国王をこの状態にした()()はこの中には居ないらしい。これが計画的なものならばそのうち尻尾を出すだろうが。


 俺達は近くにいたメイドさんに頼んで元いた応接室に案内して貰った。さすがに勝手に戻るのはどうかと思ってな。

 暫くすると、イーリスさんとヒルデグントさん、それに、先程鑑定魔法を使ったじーさんが応接室に入ってきた。


「クラウド様、本当に有難うございます」


「ワシはアーベル王国の前宰相、今は相談役を務めておりますザームエルと申します。この度は何とお礼を申して良いのか」


「気にしないでください」


「まさかかの伝説のエリクサーとは.......それなりに長い時を過ごしておりますが、実物を見るのは初めてでした」


「(伝説ね.......)エリクサーにしろ何にしろ、薬は使ってこそですからね。役にたって良かったです」


「クラウド様.......いずれお礼は必ずします。ところで、お父様は一体何のご病気だったのでしょうか」


 問題はこれだ。イーリスさんにも関わることだから話す必要がある。


「あれは.......〝呪い〟だな」


「「「「呪い?!」」」」


 イーリスさん、ヒルデグントさん、ザームエルさん、そしてエミの全員が驚きの声を上げた。




次話の投稿は4月13日12時です。

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