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貰った『ギフト』がバグっていたのだが?  作者: 大英
第0章 プロローグ
1/14

第1話

初投稿です。

サクサク行きたいと思います。本日はあと2話投稿します。

 

「グゴォ.......」


「ふぅ.......よし、これで今日のノルマは達成だな」


 数十メートルはあろうかという爬虫類のような怪物の首を手に持った剣で落とす。そして、表示させたステータス画面のレベルの項目を見つつ、そう独り言ちる。


 俺の名前は左門 蔵人(さもん くらうど)。おおよそ10年前にこの惑星〝アルテア〟へとやって来た元日本人だ。アルテアは地球とは異なる宇宙に存在する、所謂〝異世界〟ということになる。

 アルテアではゲームのようなステータスやレベルといった概念があり、魔法もある。凶悪な魔物も当然のようにいて、今目の前で死に絶えているのがそれだったりする。


 俺はアルテアにやって来た当時のことを、ふと思い返す。


 なぜこうなったのか。

 あの日は仕事の疲れで夕飯と風呂を済ませた後、すぐにベッドで寝てしまったのは覚えている。ただ、次に目覚めた時には森の中で、傍らにメモ書きのような物があるだけだった。

 そこには、地球を管理する〝神〟を名乗る者から、この世界のことや、詫び代わりに〝ギフト〟と呼ばれる能力を与えられたこと、後は地球には2度と帰れないことが書いてあるのみ。


 そこからは大変だった。絶望する暇等ない。持ち物はその時来ていた下着とジャージにもはや尻をを拭くぐらいにしか役に立たないメモ書きのみ。とにかく水を求めて彷徨い、何とか見つけた湧き水には感動で思わず涙が零れた。その後はそこを拠点に今度は食料を求めて周囲を探索した。その時に初めて魔物と遭遇する、ゴブリンだった。


 ー戦わなければ生き残れないー


 本能的にそれを察した俺は、何の躊躇いなく落ちていた拳大の石を拾って殴りつけた。数度殴りつけると、ゴブリンは絶命した。生き物を殺したことがないなんて綺麗事は言わないけれど、明確な意志を持って手にかけたのは初めてだった。俺はこの時の感覚は一生忘れないだろう。それ以降も何度かゴブリンに遭遇し、それをことごとく屠った。そして、結果的にそれが転機となった。


 レベルが上昇していた。

 俺の初期レベルは当然0。それが5まで上がっていた。それによって、俺の唯一の力となる()()が使うことが出来る。それが、俺の〝ギフト〟だった。


 〝ガチャ〟


 何かしらを対価に何かしらの物品を得る。その形態は様々であるが、俺のギフトの名称は正しく【ガチャ】であった。使い方は簡単、ギフトを意識して「出ろ」と唱えると、目の前に古き良きガチャガチャの筐体が現れる。特にこれといった特徴はなく、ハンドルと景品が排出される穴が空いているのみ。

 そして、このガチャを回すのに必要な対価は〝レベル〟だった。レベルを〝1〟下げる代わりに、1回だけガチャが回せる。


 ステータスには様々な自身に関する数値が表示されるのだが、レベルを上昇させると、各ステータスの〝強化率〟が上がっていく。強化率の上がり方はまちまちで、【幸運値】なんかは著しく低い。要は、基礎ステータスに強化率を掛けたものが最終的な実数値になるというわけだ。

 そして、レベルを下げるということは、その分強化率も下がるということ。とはいえ、この低レベル帯ならばコストとしては格安と言えた。たとえレベルが0の状態でも、この辺りに出る魔物はゴブリンかそれ以下の魔物で、よっぽど数が多くなければ問題なかったからだ。


 躊躇うことなくハンドルを回す。何が出るかはわからない。全く何の役に立たない物だとしても、現状をどうにかしていくには縋る他ない。ちょっとした手応えと共に、排出口から青色のカプセルが出てきた。

 そして、無造作にそれを開けると、一瞬の輝きと共に鉄製の〝剣〟が現れたのだ。重力に従って剣は地面に落ち、俺の足をスレスレで避ける感じで突き刺さる。この10年間でこれ以上に驚いたことはないだろう。ドキドキしながら柄を持ち、引き抜いた後何度か振ってみる。重さと共に、これが本物であることを実感し、ガチャから出るアイテムが今後の鍵となることも確信した。


 そして、ステータスを確認すると、確かにレベルが減少していた。しかし、強化率の方に目を向けると、とんでもないことが起きていた。それは、強化率が減少していなかったことだ。何度確認しても間違いない。


 そう、この【ガチャ】というギフト、盛大に〝バグっていた〟


 その後、限界までガチャをしてみたものの、レベルは確かに下がるのだが、強化率は変わらない。ならばと思ってレベルをあげてみると、普通に強化率は上がるし、このギフトの制約である〝1日10回まで〟という限界まで繰り返してもそれは同じだった。また、レベルが上がりずらくなっていたということもない。


 結果、この対価を払うという行為がメリットにしかならないことになる。

 レベルが高くなるほど、次のレベルに上がり辛くなる。レベル0から1になるのに必要なゴブリンの数は1匹。それがレベルを上げるに連れて段々と増えていった。なので、当初はレベルを1にした傍からガチャを引いて、アイテムを充実させながら何とか暮らしていこうと思っていたが、これだと話が変わってくる。事実上、1日10レベルは確実に強くなれるということに他ならない。


 こうして、俺のアルテアライフが始まった。


 以上、回想終了。

 それ以降、レベルを上げてガチャを引く、という生活を続けている。転移直後は安全な人里に向かおうとも思っていたが、その思考はあっという間に霧散し、今ではガチャに払うコストを計算しながら、強くなっていく度により訓練になりそうな魔物を求めて拠点を変えていた。また、ガチャからは様々なアイテムが手に入った。食料品や日用品、武具や魔法のある世界特有の道具まで多岐に渡る。例えばーー


「(収納)」


 アースドラゴンの死体に軽く手を触れて、指輪型の魔道具に魔力を流し込み、起動した状態にした後、収納されるようにイメージする。すると、巨大な死体がみるみるうちに指輪へと吸い込まれていく。これは所謂〝アイテムボックス〟のような物で、正式には〝収納リング〟という。同様の機能を持つ魔道具は他にもあるのだが、その中でも最上級の代物だ。


 とりあえず今日のノルマ、10レベルアップが終わったので、今の拠点へと戻る。するとそこにはーー


「きゅ〜!」「わぉん!」


 そこには2匹の魔物がいた。スライムとオオカミだ。


「帰ったぞー。今日の成果はこれだな」


 俺は収納リングにしまっていた先のアースドラゴンの死体や今日狩った魔物の死体を並べる。これらは全てそのままこの2匹のご飯となる。まぁ、殆どがスライムの方に吸収されるけどな。

 こいつらはアルテアで出会った俺の新しい家族みたいなもんだ。特にスライムのスラきちはほぼほぼ転移当初からの付き合いだし、オオカミのフブキは8年は経つ。


 スラきちとの出会いは最初の拠点だった水場だった。レベル上げを終えた後、水を飲みに来たのかウロウロしていたのを見つけた。スライム自体が初遭遇で、ポヨポヨと可愛らしかったので、ご飯をあげていたら懐いてしまった。フブキは怪我で倒れている所を発見し、連れ帰って治療したりと世話をしたら、スラきちと同様に懐いてしまい、現在に至る。


 そんな2匹の食事を横目に見ながら、俺は今日もガチャを回す。

 いつものようにガチャの筐体を出現させ、勢いよくハンドルを回していく。


「今日は白が5個に青が3個、緑と紫が1個ずつか」


 ガチャから出るアイテムにはレア度がある。それは出てくるカプセルの色に対応しており、白、青、緑、紫、赤、金、虹の順で高くなっていく。つまり、最初の鉄剣は下から2番目のレア度ということになる。ちなみに、収納リングは最高レア度である虹色のカプセルから出たアイテムだ。

 排出率は体感だと、白が50パーセントぐらいで、金が1パーセント未満、虹はそれ以下。1日に赤が出れば良いかなって感じだ。ただ、白だとガッカリという訳でもなく、食料品は主にこのレア度からの出現なので文句はない。


「米に麦、塩と砂糖が2つか。後はまぁいいか」


 まとめて収納リングに入れる。食料品はいずれ消費するにしても、残りは武具の類で今となっては金や虹から出るものでなければ不要在庫だ。実際、俺の装備は武器も防具も全て金カプセルから出た物だったりする。


「さてと、俺も飯にするか」


 収納リングからテーブルを取り出し、作り置きのご飯、味噌汁、おかずをその上に並べていく。どれもがこの収納リングの効果〝時間停止〟のおかげで出来たてのままだ。そして、テーブルからご飯の入った土鍋、食器類は全てガチャから出たものである。


「いただきマース」


 うん、美味い。異世界といえば食事問題ってテンプレな気もするが、それが一切ないのは素晴らしい。というより、日本で暮らしていた時よりもよっぽど良いものを食べている気がする。


「きゅ〜!」「くぅん」


「お前たちも欲しいのか?良いぞ」


 スラきちとフブキも与えた魔物を食べ尽くして、こちらにやってきた。

 基本的にスラきちは何でも食べられるし、フブキは生肉を食べるのだが、俺の作った食事も大好きでこういう風に寄ってくる。甘えるような仕草がなんとも可愛らしい。

 それぞれに収納リングから取り出したおかずを皿に乗っけて置いてやると、スラきちは覆い被さるように、フブキはガツガツとそれにありついた。


 食後、コーヒーを飲みながらまったりする。スラきちとフブキも寄り添うようにしてゴロンと寛いでいた。俺は、ふととある場所に目を向ける。


「たった10年なのか、10年もかかったのか.......かなり近づいてきたな」


 視線の先にはそれはそれは雄大な山がそびえ立っている。そして、この山こそが一応の目的地ではあった。

 特にこの山に何かあるからという訳では無い。ただ、ここに向かって進むと、より魔物が強くなっていく傾向にある。レベルの上げ下げで確かにステータス上は強くなっていくかもしれないが、それだけではダメだと思い、安全マージンやガチャのことを考慮しながら実力と見合った相手と戦うために、山を目標に進んできたという経緯があるだけだ。


「順調に進んであと数ヶ月ってところか」


 この時の言葉通り、この後約2ヶ月で辿り着くこととなる。そして、そこでは新たな出会いが待っていることを、俺はまだ知らない。




次話は2時間後の14時投稿です。

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