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格闘ゲーマー迷宮入りの推理奇譚  作者: 秀島キョウ/師走幸希
ホームゲーセンが一緒だった編
9/26

Final Round

 終電に揺られながら、ケイブと迷宮入りが空いた車両に隣同士で座っていた。

 あの後、警察が到着すると同時にキヨシの自白が始まり、警官はひどく混乱した。現場検証とは別に事情聴取と言うことで迷宮入りたちもパトカーで警察署まで連れて行かれた。

 警察へ向かう前に名前を聞かれ、夜叉が動揺か緊張か素かは知らないが「夜叉金剛丸です」と答えて別の意味で警官を困らせていたりもした。

 事情聴取を終えると、夜は更け終電となっていた。夜叉は途中駅で降り、今はケイブと迷宮入りの二人が帰路についていた。


「迷宮さん」

「んー。なんだ?」

「今更ですけど。どうしてあの場で無理矢理犯人を名指ししたんです?」

「どういう意味だ?」


「いや、シフが死んだのは悲しいことでしたが、でもあいつのためにあそこでキヨシを告発するほどの必要性はなかったんじゃないかって思って。だって、死者を悪くは言いたくないですけど、シフですよ」


 そう。人から借りたものを返さないことを繰り返し、挙げ句それが死因に繋がってしまうほどの救いようのない奴。そいつに義理立てするようなほどのものがあったのだろうか。


「あったよ、事件を明白にしたかった理由は。シフは好きでもなかったけど、手向けとして何が起きたかをはっきりさせたくてさ」


「理由、あるんですか」

「ああ。あいつは、もう潰れてなくなってしまったホームゲーセンが一緒だったんだ」


 ホームゲーセンが一緒。それは仲が良い悪いや、多く会話をしてきたかどうかを超える、一つの青春の絆であった。


「そう、だったんですね。それで引っ越しの手伝いをしていたのですね」


「ああ。……あいつはろくでもないやつだったよ、僕から見ても。でも、安易に死んでいいと思えるほどでもなかった。だから、せめてわからん殺しではなかったとハッキリさせたかったんだ」


 迷宮入りは外の景色を見るとはなしに眺める。ケイブも、迷宮入りの言葉を噛みしめるようにして、同じように外を眺めていた。

 何も言わないが、二人は揃って外の暗闇の中に、在りし日にキヨシとシフが同じゲームの筐体に座って対戦しながら馬鹿を言い合っている風景を思い出していた。



〈了〉


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