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格闘ゲーマー迷宮入りの推理奇譚  作者: 秀島キョウ/師走幸希
ホームゲーセンが一緒だった編
7/26

Round06.プレイヤーカード

 迷宮入りの発言に、各々固まってしまった。


「おいおい、迷宮さん、一体何を言い出すんだ? 警察が来るまでの冗談としてはあんまり面白くない話だぜ」


 夜叉がリアクションを返す。ケイブが追随するようにうなずく。キヨシは少ししてから口を開いた。


「や、やだなぁ。煽るのはゲーセンでだけにしてくださいよ」


「いや、これは煽りでもなんでもない。キヨシ、詳細は見てない僕にはわからないが、これだけは言える。君は今日ここに僕らがこうして来る前にこの部屋にシフを訪ねていたということが」


「ど、どうしてですか?! ボクがここに来たのは今日が初めてですよ? 住所も知らないってのに、どうやってここに来たっていうんですか」


 キヨシはまっとうな反論で迷宮入りの言葉に対抗する。変な疑いを掛けられて心外だと怒りを露わにしていた。


「住所に関しては実は難しくない。シフは位置サービスを使ったソシャゲのプレイ画像やらを無闇にSNSにあげるくらい危機意識がなかったからな。やろうと思えばここを突き止めるのは難しいことではない」


「オレもフォローしてたけど、迷宮さんの言う通りあいつ個人情報管理ずさんだったなぁ」


 ケイブのフォローにより住所の特定が決して困難ではないことがこの場に知れた。自撮りの瞳に移る景色どころか時折駅名の入った投稿をしていたシフであった。


「だ、だとしてもどうしてボクがここに来なきゃいけないんですか?!」


 そう、仮に住所の特定が難しくなかったとしても、ここに皆との約束より早く来た上にシフを殺害する理由までは分からない。


「それは……僕にも分からないさ」

「ほら! ならボクを疑う理由なんて――」

「でも、想像はつく」


 迷宮入りは分からないと言った。そして、想像はつくとも。どちらもキヨシが犯人と示す根拠としては弱い。


「ここに来る理由も分からず、想像だけでボクを犯人だなんて言ったんですか? 見損ないましたよ迷宮さん」


 そう。弱いのなら、強い判定のもので相手にぶつかるべきだ。


「見損なった、か。それはキヨシ、君自身に言えることだよ。……付いてきてくれ。決定的証拠を見せよう」


 迷宮入りは台所から一メートルだけ部屋へと移動した。あるのは、沈黙したシフと散らばる財布の中身。


「こ、これがなんだって言うんです。あ、まさかさっき見当たらないとボクらに言っていたシフのクレジットカード。ボクがそれを持っているはずだなんて言いませんよね?」


「違うな。まったくの見当違いだ。君は暴れているのと差し込みの差が分からない素人(※2)のようだ。焦っている証拠だぞ」


※2……暴れ、ゲーム状況を見ずに適当にボタンを押す(行動する)こと。差し込み、ゲーム状況を判断して的確なボタンを押す(行動する)こと。


「焦っているのは当たり前だろう? いらぬ嫌疑を掛けられているんだ」

「なら、それを確定させてあげるよ。ほら、そのテーブルの陰にカードが見えるだろう? 何だと思う?」


 迷宮入りを除く三人が首を伸ばして見る。あったのは、ゲーセンで使うプレイヤーカードだった。


「俺たちがやってる格ゲーで使うプレイヤーカードがあるな。デザインは規格が一緒だし、多分シフのでは……あ」

「あ」

「え?」

「気づいたか。分かるよな」


 迷宮入りが三人のリアクションを見て言葉を継いだ。


「そう、プレイヤーカードだ。シフのでないのはもう分かるよな? だってそれはキヨシ、お前が持っていたはずのゲーム『盟王とリリの最果て』限定版の特典シールが貼られているカードじゃないか? こんなのは、狭い界隈でお前のもの以外ではありえない」


 夜叉とケイブがキヨシを向く。疑惑と憐れみが二人の目には浮かんでいた。

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