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格闘ゲーマー迷宮入りの推理奇譚  作者: 秀島キョウ/師走幸希
ホームゲーセンが一緒だった編
2/26

Round01.ほぼ集合時間

「迷宮さん。どうしてオレらガチってたんでしたっけ」

「なんでだっけ。まだ少し早いからってサブキャラで遊んでいたのは覚えているんだけど」


「そうだ、迷宮さんがメイン出してきたでしょ? だからオレもメイン出しちゃって気付いたらガチ対戦になっちゃってて」


「いや、待て待て。先にメイン出して本気になったのはケイブの方だろ?」

「強キャラに慈悲なし! とか叫んでたの、誰でしたっけ?」

「……僕かもしれないわそれ」


 ここは各駅停車しか止まらない私鉄駅近くにあるゲームセンターだ。流行っているとはお世辞にもいえないが、ゲーセン閉店の流れの中未だに店を開いているだけでも応援したくなる。

 一階にはUFOキャッチャーなどのプライズコーナーとリズムゲーム、音楽ゲームが置いてある。

 二階には昔ながらのビデオゲームが数台とネットワークゲームが多く設置されていた。ロボット物の対戦アクションゲーム、麻雀ゲーム、それと格闘ゲームだ。


 格闘ゲームの筐体に先ほどまで座っていたのは〝迷宮入り〟と〝ケイブ〟。二人とも学生時代から格闘ゲームに慣れ親しんだ人間で、社会人になってからもこうして一緒に遊んでいた。

 二人は自販機でジュースを飲みながら感想戦をしつつ、今日集まった理由にやっと触れるのであった。


「もうそろそろ集合時間だな」


「えっと、オレと迷宮さん、あとキヨシと夜叉さんの四人ですね、このあとシフの家に行くのは」「格ゲーマーは時間にルーズだからな。集合時間ぴったりから五分過ぎるまでくらいは待とうか」


「だからってオレらも遅れるかもしれないから格の違いを見せようっつって、二時間も早く着いた挙げ句、一生対戦してるのもどうかと思いますけど」


「まぁいいだろ。いつものトコだと人多くてケイブと1対1で対戦し続ける機会、最近なかったし」

「そうですね。オレも楽しかったですよ。勝ち越せましたし」

「ん? ちゃんと数えてた? メインだと8対7で僕の勝ちだったろ?」

「何言ってるんですか。サブキャラから数えたら12対10でオレの勝ちですよ」

「あー、そういうこと言う」


 二人は言い合いをしているが、これは別段感情的になっているわけではなかった。いつものじゃれ合い程度である。それが証拠に、もう一人の人間が何の遠慮もなく迷宮入りとケイブの会話に交ざってきた。


「なんだ、今日はケイブの勝ちか。ってことはケイブに勝てば今日の最強は俺になるわけか」

「夜叉さん!」

「おう。今来たところだ、時間ぴったりだろ?」


 得意げに言い放ちつつ快活に笑う大柄な男。待ち合わせの人物の一人――〝夜叉金剛丸〟であった。


「早いっすね夜叉さん。ツゥイッターだと隣駅の人気ラーメン店に並ぶって書いてたんで、多少遅れるものと思ってましたよ」


「俺もすまないが遅れる気満々だったんだが、約束の時間に遅れるのはよくないだろ? 急いでかっこんで来たんだ」


 遅れる気満々と言った舌の根も乾かぬうちから義理を大事にするような発言。こういった豪快さと適当さがまた似合う男であった。


「そういやケイブ、あそこの店、新メニュー出てたぞ。俺が入ったときにはもう売り切れてたけど。限定三〇食、辛味噌九条ネギ担々麺だと」


「マジですか。え、マジですか。今度行かなきゃ。有給使うまである」


 ケイブは格闘ゲームの他に食べ歩きが趣味だ。ゲームがてらその土地のうまい店を開拓するのに余念がない。そのことを知っている友人は何かあると彼に情報を提供してる。見返りは別のうまい店への案内だ。


「夜叉さん情報助かります!」

「おう。気にするな。で、あとはキヨシか。あいつが遅れてるのは珍しいな」

「いや、夜叉さんがいつも遅れているからそう感じるだけでは?」

「違いない。……お、噂をすれば影だ」


 夜叉が階段の方へ手を挙げる。もう一人の待ち合わせ人であるキヨシが現れたところであった。気弱そうな雰囲気があるが前からこうだ。


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