表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
格闘ゲーマー迷宮入りの推理奇譚  作者: 秀島キョウ/師走幸希
優勝記録詐称エス・オー・エス編
11/26

Round02.DIE5LOW

 迷宮入りは帰宅後、自室の机に座って首を傾げていた。帰りの電車内でSNS検索をかけたところ、イノセント高橋の話題は一部で検証が盛り上がっているようだった。

 そちらはいいとして。

 迷宮入りが気になったのは、ケイブが個人的に発掘してきたというブログだ。2件のうち1つはレトロゲームの大会での活躍を自慢していた内容であったが、それが本当のことかどうか分かる人間も興味を持つ人間も少なそうで言っちゃ悪いが話題性に欠けそうであった。コメントは1件もついていない。

 もう1件に、なぜか関心が引き寄せられていた。内容はイノセント高橋と同じゲーム、『イノセントコード』の店舗大会で優勝したという話であった。ブログにはこうあった。



「『イノセントコード』プラザ5の定例大会でまたまた優勝してしまった。みんな弱すぎる


 タマキの236Aからの623B連携しらないやうおおすぎ

 ザキヤマの上り214C食らったけど最後にたってたのは俺だったってわえ


 メイ子の超筆を食らってみたい。とどめの41236Cは生当てダメ」



 正直、意味がよく分からない。

『イノセントコード』は格闘ゲームのタイトルで、大会で優勝したらしいのは分かるが、それ以降が謎である。タマキ、ザキヤマ、メイ子は出てくるキャラクターの名前だが、文脈が通らない。打ち損じも所々ある。

 迷宮入りはひとまずは最初の煽り文に注目した。


(プラザ5? 西東京のゲームセンターの店舗名だけど、あそこは系列店でプラザ1~3はもう閉店していて、プラザ4で格闘ゲームの大会がよく行われている。プラザ5はリズムゲーム、いわゆる音ゲーとクレーンゲームばかりだ。間違えて書いたのか? それと、あきらかな周りを馬鹿にするような文。こんなの本当に優勝していても批判を浴びるだろうに。もしかして馬鹿なのかも知れないが馬鹿と決めつけるのは良くないかも知れない。なにか引っかかる)


 迷宮入りはブログ主の名前を確認した。「DIE5LOW」(ダイゴロー)という名前らしい。多分頭は良くない。


(ふむ。あいつに聞いてみるか)


 迷宮入りは『イノセントコード』を現役でやっている西東京方面に住んでいる格ゲーマー仲間に連絡を取った。


「おう、迷宮さんか。ひさしぶり。どうした?」

「や。久しぶり。夜中に悪いね、盛平もりへいくん」


 盛平と迷宮入りは一昔前に同じ『イノセントコード』で遊んだ仲だ。迷宮入りは今はタイトルから離れているが、こうやって数年ぶりにいきなり連絡を入れてもまるで3日前に会ったときのようにすぐ距離を縮められるのは格ゲーマーとしてよくありつつも嬉しい関係性であった。


「ちょっと聞きたいことがあってさ。プラザって今でも『イノセントコード』の定例大会やってる?」


「ええ、やってますよ」

「それってプラザ5?」


「迷宮さん、最近こっち来てないからって変なこと言わないでくださいよ。格ゲー関係は相変わらずプラザ4です」


「そうだった、ごめんごめん。でさ、そこの定例で優勝常連者のDIE5LOWって人いる? 漢字じゃなくてアルファベットと数字でだいごろう」


「だいごろう? 変なアルファベット? ……ああ、5LOWのことかな。多分、迷宮さんの言ってる奴ならそれっぽいのいますけど、そいつは優勝常連どころかたまにしか大会出ない上にいつも1~2回戦で負けてたんじゃなかったかな。少なくとも俺が行くときに上位に食い込んでいた記憶はないっすね」


「……妙だな」

「妙? 何かあったんですか、迷宮さんとそいつと」


「いや、直接なにかあったわけじゃないんだけどさ。そいつのブログを友人経由で知ってさ。なんか定例優勝したとか書いてるみたいで、友人曰くこれも最近流行の経歴騙りじゃないかって僕に見せてきたんだ」


「ああ、イノセント高橋みたいな、ですか」


 盛平からサラっと出てくる単語。迷宮入りはこういう風に共通の話題としても話が早いから情報を仕入れておけとケイブが言っていたのだと実感した。


「そうそう、そういう類のやつじゃないかって」


「へぇ。面白そうっすね。リンクくださいよ。ってか迷宮さんと話すの久しぶりだし折角なんで飯でも行きましょうよ。明日とかどうです?」


「明日か。明日は祝日だっけか。昼なら行けるよ。夕方からは他ゲーの集まりの方に行く予定だから、それまでなら動けるわ」


「なら決まりですね。俺もそれこそ夕方からプラザ行く気だったんでちょうどいいですわ」


「なら僕からそっちに行くよ。プラザのある最寄り駅改札前集合にしようか。さっき話した内容がちょっと気になっててね。ついでに色々聞きたい」


「了解! じゃ、そうしましょ」

「ああ。よろしく頼むよ」


 迷宮入りは通話を切ると、ベッドに横になりながら再度DIE5LOWの日記を見る。検索をかける。まさかな、という思いと、もしかしたらという思いを頭の中で巡らせながら意識を闇へと沈めていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ