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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第一章 『自分探しの旅』
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3『知りたい』

「こんにちは。私は、リナンさんに頼まれてあなたに会いに来たのだけれど、あなたがルイちゃん?」


私は彼女の背丈に合わせ、膝を曲げながら──それ程曲げる必要は無かった──少女に聞いた。

少女は、瞳に浮かべていた警戒心を少し弱めて、口を開く。


「そうなの。ルイは、ルイナ・アルベラなの。ルイって呼んで、なの」


その一連の言葉の並びが彼女の定番の自己紹介なのか、おぼつかない口調で少女、ルイは私の質問を認める。

ルイは私を不安そうに見上げながら、口を尖らせた。


「リナン姉、怒ってた、の?」


「ううん。怒っては無かった、と思うよ」


「そうなの。良かった、の」


ルイは、少しの不安をとき、私をまっすぐに向いた。


「お姉ちゃんは、なんてお名前なの?どうしてルイに会いに来たの?」


「ああ、ごめんね。……私は、ナツメ。ルイちゃんには、これを渡しに来たの」


そう言って、屈んだまま、手に持っていた紙切れをルイに渡す。

ルイが受け取り覗くと、不可解な現象が紙の上で起こった。

地図の線が動いたのだ。


「うわ」


私は驚きのあまり声を漏らしてしまったが、ルイの方は特に驚いた様子もなく変形した線を見る。

ここからだとよく見えないが、地図だったあの線たちは、今は文字を形どっているように見える。

私が頑張って覗き込んでいるのに、ルイはさっと紙を閉じ、突き返して来た。


「ルイは帰らないってい言っといて、なの」


「えっ」


「お姉さんも、もう来なくていいの。ばいばい、なの」


ルイは手を振ると、髪を揺らして何処かへ跳んで行ってしまった。

──はて。あの紙切れにはなんと書いてあったのだろう。






「どうでした?」


ギルドに帰ると、リナンがカウンターで座りながら何かを飲んでいるところだった。

私は椅子を引いて彼女のカウンターを挟んで目の前に座る。


「ルイちゃんに、ルイは帰らない、って言われました。もう来なくていいとも」


そう言い終えると、リナンはコップを持ちながらため息をついた。

コップを置いて苦笑いをした彼女は、いつものことなんですよ、と言った。


「あの子、最近反抗的なところがあって、言う事を聞いてくれないんですよ。前は一時期、落ち着いてたんですけどね……」


「はあ……」


──不思議な子だった。

あの黄色い瞳で純粋そうに見つめてくるのに、その中では色々な計算を行っている。

油断しているようで、実際はそうでない。


──あの子のことをもっと知りたい。

何も知らないし知れもしないくせに、そう願ったこの時の私は、馬鹿だったのかもしれない。






「今日はここで休んでください。明日は私と一緒に森へ行ってモンスター狩りをしましょう」


「モンスター狩り、ですか」


「はい。ここで自立した生活を行うには、クエストでお金を稼ぐのが一番ですから」


「そうなんですね」


クエスト、と言えばRPGなどでの定番だが、この世界にもその概念があるのか。

──そうか。この世界に来たばかりでまだ実感出来ていなかったが、これから1人で生活しなければいけないんだ。

前から一人暮らしも同然だったので、そう変わりないとは思うが、何も知らない世界で1人は流石にきついので、サポートしてくれる人がいて良かった。


「そうだ、帰ってきたら文字の勉強もしましょう。シャギ文字96音、明日で全て覚えてしまいましょうか。そして、覚えた後は単語を覚えていきましょう。魔法はどの言語でも使えますが、決まった術式を使ったほうが威力が増しますから」


「は、はあ」


リナンは早口で聞きなれない言葉を含めながらつらつらと今後の計画を練っていく。

これなら私が計画を立てなくても、この人が私を世界に慣らしてくれるだろう。

ひとまずの安心を得た私は、初めての部屋でぐっすりと眠りについた。






「この世界には、魔法があります。魔法は、何も無いところに物を生み出したり、人の体力を回復させたりすることが出来ます」


リナンはカウンターの向こうで、ポケットから紙を取り出し読み出した。

何を読んでいるのだろうか。昨日ルイに渡した紙より大きいように見える。

どうしても気になってしまって、遠慮がちに聞いてみる。


「えっと……。何を読んでるんですか?」


「すみません……。これは、転生、転移者にこの世界について説明する時に話す内容が書いてあるんです。伝承によると、大体の方達は魔法の無い世界から来られますので、こうして、何から教えればいいか分からない私達のために残されているんですよ。……今から数年前にも、一人来られたんですが、その時はマスターが対応していたので、私は今日が初めてなんです。すみません、私が不甲斐ないばかりに気にさせてしまって……」


「リナンさんが気にする事ありませんよ。どうぞ、メモを取りながら聞くので続けてください」


「ありがとうございます。……魔法には原則があって──」


──なるほど。

魔法を使うにはオドなる生命力を削る必要があるのか。

そして、魔法を発動するには術式を詠唱する必要がある。

最後に、マナの宿っていない物質を形成変換することは基本出来ない、と。

マナというのは、大気中にある魔力の事で、体内にあるオドと同じ様なものらしい。

つまり、オドはマナでマナはオドという事だが……。


「何でそうやって分けるの?」


ふと、そう疑問に思った。

同じものであるなら、名前を分ける必要がない。存在する場所が違うだけの話なのに。

リナンは、焦りながらも答える。


「分けられているのにも、ちゃんとした理由があるんです」


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