07-15 幕間/ガールズトークⅢ
「はい、めでたくメンバーも増えました! 第五十二回女性陣会議ー!」
いつになく高いテンションで、キリエが高らかに宣言する。
やはり、この会議は定期的に……それも、結構な頻度で開催されている模様。既に何度か付き合わされている獣人勢・ドワーフ勢は諦め顔だ。
そして、今回が初めての参加となるマナは目を丸くしている。
「キ、キリエさん? 何かいつもとキャラ違いませんか?」
「いえ、テンション上がるのも仕方がないですよ! だって、婚約者ですよ婚約者! 念願叶ってお嫁さんになる約束を取り付けた、婚約関係なんですよ! じゃあいつ、テンションを上げるんですか!」
「今でしょ!! ……って何させるんですか。後、何でそのネタ知ってるんですか!?」
ノリツッコミを繰り出すマナに、キリエは「おぉ……中々……」と、高い評価を付けた模様。
「まぁ、とりあえず今回は、相手が居る人居ない人で色々と、話したいんですよね」
「私達、レイラさん、ジョリーンさん、リリルルさんは相手持ちですね」
つまり、メアリー・エミル・エルザ・マナには特定の相手が居ない訳で。
「七人目の立候補が無いのは、正直意外です。ユートさん、容姿もいいし性格もちょっとぶっ飛んでいる以外はまともですし、更にはお金持ちで挙げ句の果てには王様ですよ?」
「「「「だから(です〜)(なのですぅ)((だよ))」」」」
全員が揃って返す。
「ご主人様には、アイリちゃんがいるし〜。私はご主人様にお仕えする、戦える歌える踊れるメイドでいいの〜」
いつ歌って踊るのか。
「私みたいなチンチクリン、ご主人様には相応しくないです。お兄ちゃんと同レベルくらいが丁度いいのですぅ」
情け容赦の無い妹のコメント、ジルは泣いて良い。
「前にも言ったけど、付いていくにも覚悟が居るんだよ、ユート兄は。あたしはユート兄の仲間、それだけで満足!」
ちなみに、夜の相手に関しても覚悟がいる事をエルザは知らない。
「ユート君ねぇ……私には高値の花だわー。ほら、規格なにそれ美味しいのレベルじゃない? 勇者ですら見劣りする存在とか、ヤバくない?」
実際、勇者ですら見劣りする実例が、クロイツ教国にいる。
「ユート様は、流石高評価ですね」
「……私達の旦那様なら、当然」
「第一、既に六人も居るでしょ〜? それも、元義姉・公爵令嬢二人・王妹・勇者・付いていきたい一心で奴隷解放を拒んだウサ耳少女〜。敵わない〜!」
「その中に入るのはできません」
「銅級冒険者には無理!」
「正直、格好いいと思うけどね。私の好みのタイプからはちょっと外れるかなー」
ピクッと、メグミが反応した。
「マナさんの好みのタイプ、気になります!」
「げっ、藪蛇だった!! っていうか、そんなに食い付くのメグミン!?」
女性陣(マナ除く)の結束!! アーカディアスクラム発動、マナは囲まれた!!
ちなみにマナさん、メグミンと呼び合うようになったのは、ここ最近。二人は同じ境遇、同じ出身世界という事もあり、距離が縮まるのも当然と言えば当然か。
「で? で? どんな人が好みです?」
「今日のキリエさん、グイグイ来るの何で? ねぇ、何で?」
恋バナ、何気に大好物だからです。
観念したのか、マナは溜息を一つ吐いてから、口を開く。
「……強いて言えば、面倒みたくなっちゃうような人? でも、いざという時はしっかりしてて、引っ張ってくれちゃうような?」
女の子はワガママなのだ!
「ちなみに、エルザさんは?」
隣でスクラムを組んでいたリインからの、予想外の話題転換!! エルザは困惑している!!
「えっ!? えっ!? ひ、人を思いやれる優しい奴!? あと、できれば背が高すぎないほうが!!」
困惑したまま、好みのタイプを吐いてしまう!! たまにド鋭い割に、普段はちょっと抜けている子である!!
「私はお兄ちゃんとどっこいどっこいくらいの人です」
「頼りになる、同じくらいの歳の子〜?」
獣人少女コンビは、振られる前に無難に吐いてしまう。
身を守る術を、二人はしっかり学んでいるのだ!! 主に、この女性陣会議で学んでいるのだ!!
盛り上がる中、クリスの声が不思議と参加者全員の耳に入る。
「……それ、ユウキとジル?」
クリスが首を傾げながら、二人の名前を挙げる。
「あー、マナさんとエルザさんの言う条件に、ユウキさんは当て嵌まりますよね」
うんうんと頷きながら、アリスがマナとエルザを見る。
「ジルも、ユート様が指揮を任せるくらいに成長著しいですし、メアリーと同年代です」
アイリも確かに、等と思いながらメアリーに視線を向けた。
視線を向けられた三人は、その顔をそれぞれ思い浮かべ……少し頬を染めた。
「い、いやぁ……ジルは仲間と言うか相棒だから〜?」
「ユ、ユウキね! まぁ悪くないとは思うけど、ちょっと頼りないし!?」
「確かに面倒みたくなるけど、何ていうか……困った弟みたいな!?」
三人は頬を赤く染めて、そんな言葉を捲し立てる。
三人以外の女性陣は、心の中で同じ事を考えていた……。
―ーこれは、面白くなりそうだ。
 




