07-13 幕間/クリスティーナの独白
先代魔王であるオルバーンにかけられた“停止”の魔法。もう、二度と誰かと言葉を交わす事も、触れ合う事も出来ないのだと思っていた。
でも、一人の人間族の冒険者がその呪縛を解いてくれた……力技で。
彼に出会ったのは、運命だったのだと私は思っている。
運命の人……私の英雄。その人の名は、ユート。
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彼は不思議な人だった。
人間族なのに、獣人やエルフを連れている。そして魔人にも忌避感なんかは無いみたい。自然な笑顔を私や兄上に向けて来る。
それが嬉しくて、胸の内が温かくなるのを感じる。
異世界人にも会ったけれど……名前、何だっけ。彼等では、温かくならない。ユートと居る時だけ、心がポカポカしてくる。
兄上が開催した、お茶会。ユートは余り口を開かない。
迷惑なの? 楽しくない?
ちょっと心配になった。だから、聞いてみる。
「ユート、楽しくない?」
ユートは苦笑いして、首を横に振る。
「いえ、楽しいですよ。何か話題がないかと考えていたものですから」
良かった、楽しくないわけじゃないんだ。ユートが楽しいなら、私は嬉しい。
「……ふむ。ユートよ、折角だからお前の旅の話を聞かせてくれないか」
……兄上、褒めて遣わす。私も聞きたい、ユートがこれまで経験して来た旅のお話。
「クリスティーナ殿下、それで構いませんか?」
……むぅ、余所余所しいのは嫌。私が魔王の妹だからなの? お願いしたら、ユートは普通に話してくれるかしら。
「クリスでいい……敬語もいや……」
そう言ったら、ユートは少し困ったような顔になったけど、優しく微笑んでくれた。
「わ、解ったよ、クリス……これで、いいのかな?」
クリス……ん、ユートにそう呼んで貰えたら嬉しいの。
その後の、ユートの話はとても楽しかった。私もそんな風に、旅をしてみたいけれど……ダメかしら。
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ユート達は、魔王国の大迷宮に挑むんだって。
折角仲良くなったのに、もうお別れなの? そんなの嫌、それなら私も着いて行きたい……。
でも、困ったように笑うユートが、約束してくれた。
「大迷宮を攻略したら、もう一度会いに来るよ」
そう約束してくれたから、信じて待っているの。大丈夫、ユート達ならすぐにまた会いに来てくれるもの。
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本当に、すぐに会いに来た。びっくり、まだ三日も経っていないのに。
勇者達と、見知らぬ人間族が率いている冒険者のパーティが一緒だけれど……何かあったの?
でも、そんな事はどうでも良くて。
首飾り、腕輪、指輪……私と兄上への、ユートからの贈り物。嬉しい、こんな素敵なプレゼントは初めて。
ユートは遺失魔道具だよって言っていた。遺失魔道具を作れるなんて、本当にユートは凄いの。
「ふむ、不明点は未だあるが、確かに報告は受け取った。それで、根源魔法とやらは何人が獲得できたのだ?」
勇者の報告を受けた兄上が、勇者に根源魔法の取得状況を聞くの。でも、勇者は歯切れが悪い。
それに応えたのは、勿論ユート。
「僕達のパーティは全員、勇者達はメグミのみだ」
ユートを睨む勇者その一。
勇者のクセに、踏破できなかったの? それなのに、何故勇者が報告しているの? それはユート達の役割じゃないの?
私は、これまでペラペラ喋っていた勇者が、何だか嫌いになってきた。
『……ユート』
早速、ユートがくれた腕輪を使ってみるの。
『なんだい、クリス』
『……勇者達は、攻略したの?』
『勇者達は、大迷宮で別行動だったんだけどね。僕達の後を尾けて来たんだよ』
つまりメグミ以外は、戦ってもいない? この人達、何しに行ったの?
メグミは良いの、ユートを守ったから。
……
ユート達と兄上が話していると、兵士が一人やって来た。その顔は、とても焦っている。
「謁見中失礼致します! 魔王陛下に緊急のご報告! 先代魔王軍が王都の四方から接近中! その数、東二万、西二万、北三万、南三万! 十万の軍勢です!」
……何故、今になって。
どうしてなの? オルバーンはユートのパパが倒したのに。
兄上は、そんな風に考えていた私に、念話を送ってきた。
『ユート達を人間族の大陸に帰還させる。ここで死なせていい男ではない』
『……ん、同感……』
そう、ユート達が死ぬなんて嫌。
私達は死ぬかもしれない……ううん、きっと死ぬ。でも、ユート達は……ユートには、生きていて欲しい。
――そっか、これが私の初恋なのね。
兄上に、転移魔法陣を使って人間族の大陸へ戻り、オーヴァン魔王国の事を報せるようにと命じられたユート達。ユートは私達の事を報せる事を、了承してくれた。
ありがとう、ユート……。
……
私と兄上は、ユート達を見送りに……行ったはずだった。
ユート達と一緒に転移魔法陣で転移させられた私は、海の向こうの魔王国を見る事しか出来ない。
何も耳に入ってこない……今、兄上達は……どうなっているの……?
恐い、恐い、助けて……誰かこの不安を止めて。私を……兄上達を、助けて……。
「さて、行こうか」
……ユートの声。
「何処へ行くというんだ! イングヴァルト王国か!? クリスの気持ちを考えろ、ユート・アーカディア!!」
「黙っていろ、残念勇者。クリス、今すぐアマダムの加勢に行くぞ。戦うなら付いて来い」
……今、すぐ?
「……ユート? でも……」
「行く手段を俺が持っていないと思うか?」
私の言葉を遮るようにして、ユートが得意気に笑った。
普段の優しい顔とは違う……不敵な笑み。まさか……遺失魔道具!?
「行け……るの?」
「あぁ、君を兄貴の所へ連れて行く。やるんだろ、お仕置き」
冗談っぽく言うユートは、視線を私に合わせてくれて……泣いてる場合じゃないの。
「んっ!!」
――パァンッ!!
破裂音と同時に、展開された転移魔法陣。
こんなに……あっさりと……? ユート……一体何者なの?
……
私達が帰還したのを確認した兄上は驚いていたけど、ざまぁみろって思った。私だけを逃がした罰なのよ。
「“手伝ってくれ”くらい言えよ。友達が困ってりゃ、いくらでも助けるぞ」
「……友、達」
人間が魔人に対して……友達。友達に、なれるの?
……じゃあ私が、ユートに好きって言ったら……ユートの側に居られるの?
「そうか。じゃあ協力はしないで……勝手に暴れさせて貰うわ」
兄上の、協力は要らないという宣言。それに対して、ユートはそんな事を言った。
何て、自分勝手。でも格好良い。
更にユートは助っ人を呼んだ。ユートのお友達? いっぱい居るし、獣人やエルフ、ドワーフまでいるわ。
ユート、顔が広いのね。
「ユ、ユート……お前、一体何をするつもりだ?」
「勝手にやるって言ったよな? だから、四分散して数の暴力に対し、質の暴力で捻じ伏せ、叩きのめし、ブッ潰すだけだぞ」
「正気か!? その少人数で!!」
そう、確かに少人数で対抗できる相手じゃない……でも、ユートなら。きっとユート達と一緒なら、大丈夫。
「……ユート、私も行く」
「クリス、馬鹿な事を言うな!!」
「馬鹿は兄上、後でお仕置き……」
馬鹿に馬鹿って言われたので、脅しておくわ。
そして、ユートに視線を戻してお願いするの。私も……貴方のそばに居させて、貴方と一緒に戦わせて。
「お願い……」
そんな私に、ユートは優しく微笑んだのよ。
「特等席を用意してやる、世界で一番安全と言う連中まで居る場所だ。絶対に俺から離れるな」
……あぁ、格好良い。その言葉に私は、これ以上無いくらい安心してしまうわ。
……
ユートが鉄の塊を宝物庫から出したの。凄い、こんなに大きな物も入るのね。
ユートがそれに跨ると、メグミが止めたわ。
「……連れて行って下さい、先輩」
「……後ろに乗れ」
そう、メグミも私と一緒なのね。ユートと一緒に行きたいの。
「はいっ!!」
嬉しそうなメグミ。
ライバル? ううん、きっと仲間、同志だわ。だってキリエ達を見ても、そう思うもの。
「ユート、私は……?」
何処にのればいいの?
「……俺の前、おいで」
「んっ!!」
背中はメグミに譲るわ、代わりに胸の中は私が貰うの。
駄目勇者が何か言っていたけど、私達はユートに連れて行って貰ったの。これ、凄く、早い。
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グランディアを囲む、北側の大門。
先代魔王軍は、現在不可視の壁に囲まれて、ユートの遺失魔道具から死に物狂いで逃げているわ。
それを無視して、のんびりお茶を飲んでいるユート。
……これは、ひどい。
しばらくして、ユートが立ち上がる。
「残念ながら、そろそろ時間か。じゃあ、生き残りくらいは相手してやろうかな」
丸い玉を取り出したユートが、私達にもそれを手渡す。投げるのね?
「この世の地獄は堪能したか? 今度は先代魔王と一緒に、あの世の地獄を楽しんで来い」
ユートがそれを先代魔王軍に向かって投げる。私達も、それに倣って投げた。
そして、広範囲にわたって発生した大爆発。
何千人も残っていた先代魔王軍の残党達が、跡形も無く消滅した。
あっ、ユートって絶対敵に回しちゃいけない人だわ。ちょっと……ホントにちょっとだけ、恐いって思ったもの。
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謁見の間で、兄上に戦果の報告をする。
兄上は疲れた表情をしてるけど、無理も無いわ……さっきの光景を魔眼で見ていたはずだもの。
褒賞を与えるという兄上の言葉に、ユートは“勝手に暴れたんだ”といって固辞する。
ユートは私と兄上が“身内”だから手を出したの? ユートにとって“身内”は特別なのね……。
四カ国会議の場所を相談していると、ユートにあてがあるみたい。今知ったんだけど、この助っ人の中には王子や皇子・皇女もいたのね……びっくり。
ユートの遺失魔道具で、各国の王とも話ができた。
ユートは検討するって言って、一度話は終わったの。
話し合いに、私とメグミも付いていったの。
アーカディア島という所を、会談場所にするのね? ユートの仲間は皆賛成だった。ユートに連れて来られた私とメグミも賛成よ。
「……満場一致じゃないか。んー、よし! じゃあ、この話は受ける事にしよう!」
ユートは笑ってそう言ったわ。
……
「よくも俺達を置き去りにしたな、ユート・アーカディア! そんなに功績を独り占めしたかったか!」
駄目勇者が何か言ってる。
「それにメグミやクリスを連れ去って、何のつもりだ! メグミ、クリス、こっちにおいで。何もされなかったかい?」
誰がお前に呼び捨てを許したの? それにユートに酷い事を言って……許せないわ。
「鏑木さん、あまりにもそれは先輩に対して失礼ではありませんか?」
私が怒るより前に、メグミが怒った。
「愛称で呼ぶのやめて……」
私も怒る。
「ユートは魔王国の英雄……あなたは違う……」
「私は連れ去られたのではなく、自分の意思で先輩に同行したんです。それに先輩は優しい人です、変な事なんてしません。先輩に謝罪して下さい」
私とメグミの言葉に、駄目勇者はオロオロし出した。
ユートや私達の言葉に駄目勇者の顔が歪んでいく。あぁ、多分コイツは何も解っていないわ。
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離宮のテラスにユートがいるので、私はユートとお話ししに行く。ユートに会いたくなっちゃったの。
テラスを見ると、ユートの背中は……何だろう、寂しそうに見えるのよ。どうしたの?
「……ユート、此処に居たの?」
振り返ったユートの顔は、ちょっとお疲れ顔だったわ。
ユートの横に行って、テラスから見える光景を見る。
目を覚ました夜に見た、魔王国の光景そのままだわ……この光景が、失われていたかもしれないのね。
「……ありがとう、守ってくれて」
そう言うと、ユートは笑って返事をくれたの。
「僕は、自分がやりたいからそうしただけさ。だから、気にしないで良いんだよ」
もうすぐ、ユート達は行ってしまう。それは解っている……ユート達にはやりたい事もあると思うから。だから……。
「……行くの?」
「あぁ、行くつもりだ。仲間の為にも、回復の根源魔法を探さないといけないからね」
多分、もうすぐお別れ。
「明後日、魔王国を発つよ」
それは、とても寂しいわ。
「……ん」
だから……私は決意する。
「……戻る、また話し合いで……」
あの娘達に、相談しよう……そして、もう一つ。
「……兄上へのお仕置き、決定したから」
少し反省すべきだと思うの。
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「……一緒に行きたい」
私は口下手、自覚はあるのよ? だから、出来る限りの精一杯でキリエ達にお願いする。
「私達の旅に同行したいという事ですね。では、その理由を聞かせて貰えますか?」
キリエ達から、拒絶する感じは無い。だから精一杯の気持ちを篭めて、伝える。
「ユートに恋をした」
それが、私の素直な気持ち。これは私の初恋。哀しい結末で終わらせたくないの。
「はい、話は解りました」
「私達の想いは同じみたいですね」
「はい、クリス様からは真剣な意思を感じます」
「私も同じように感じました」
キリエ、アリス、アイリ、リインがそう言うの。やっぱり、皆ユートが好きなのね。
「クリスさん、これからよろしくお願いしますね」
キリエの言葉は、私を受け入れてくれるという意味合いのものだった。
嬉しくて、つい抱き付いてしまったのは内緒だ。でも皆優しくて、私を受け入れてくれた。あぁ、嬉しい。
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アーカディア島で会談を行う事が正式に決まったわ。私も早く行きたい。
「では、オーヴァン魔王国からは余が赴くのは当然として、クリスと……」
……来たわ。
「……その人員、私は含めないで」
「ク、クリス? 何故だ、アーカディア島とやらはユートの本拠地だ。お前なら行きたいと思ったのだが」
兄上が本気で焦っている。ふふ、これはお仕置きなの。
「……島には行く、ユートのパーティメンバーとして」
一瞬、世界が止まったように思えた。“停止”はもうこりごりよ。
「んんんんんんっ!? な、何だって!?」
何だかんだあったけど、最終的に認めさせたわ。そして、ユートは……。
「よし、この後アーカディア島にご招待な」
苦笑いしながらも、私に優しい視線でそう言ってくれた。貴方の側に、居て良いのね……。
「……んっ!!」
好きよ、ユート。大好き。
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しばらくしてから、私達はアルファルド達に呼び出された。兄上も一緒だ。
「ユートを王とする国を、アーカディア島に建国して貰いたい。その提案をする前に、お前達に相談しようと思い、この場を設けた」
……ユートが王様! それはとても素晴らしい提案だわ。
このアルファルド、やはり見所があるの! イングヴァルト王国は素晴らしい跡継ぎが居るのね、羨ましい。
私は賛成の意見を伝える。他の皆も一緒よ。
そしてキリエは……。
「まずはユーちゃんの事を考え、その提案をしてくれた事に感謝します。私の意見を述べる前に確認したいのですが、それはユーちゃんを利用しようというつもりは無いと言い切れますか?」
穏やかな声音に反し、キリエの視線は鋭い。
それに対し、アルファルド達は……。
「皆無とは言えん。その力を借り受けたい時は、無論対価を支払って協力を願うだろう」
「アイツの力をアテにしたい時は、まぁ筋を通して頭下げるな」
「そうだな。まぁ、遺失魔道具狂いの馬鹿共は責任を以って押さえる必要も出るな」
「放置していたら勝手に暴れられるのが解ったからねぇ……今度は素直に協力を願い出るよ」
そんな事を言った。
キリエも彼らを認めたみたいで、賛成したわ。やっぱりキリエは凄い。
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その後で、四カ国会談は五カ国会談……いえ、世界会議になった。
ユートは新王国の王様になる。そして……私達は、ユートのお嫁さんになる事が決まったわ。こんなに早く、初恋が実るなんて……嬉しいの。
新王国の名前はアヴァロン。アヴァロン王国。
そしてユートは、ユート・アーカディア・アヴァロンになった。私達の王様……とても素敵。
……
そして、建国に向けて動き出してから……五日目。
メグミから念話が終わったと連絡を貰って、私はユートの部屋に行くわ。
「……ユート、いい?」
「勿論、おいでクリス」
優しいユートの声に、私は部屋の扉を開けたの。
「なぁ、皆が俺の部屋に来る時、メグミの定時連絡の後にしてるだろ」
「……正解」
気付いていたのね。まぁ、もう五日目だものね。
メグミにもユートとの時間をあげたい、皆でそう相談して決めたのよ。
「皆、優しいね……そんな君達だから、僕も惹かれたんだと思うよ」
「……ん」
嬉しくて、ユートの胸元に頬ずりするの。ユートは私を求めてくれているかしら……。
「……ユート、する?」
「うん、する」
即答だった。嬉しいけど、ちょっと恥ずかしい。
ユートは私を押し倒して、キスをしてくる。私の身体に触れるユートの手が、胸やお尻にいく……ちょっと恥ずかしいけど、ユートならいいの。
その後、脱がし合いっこをして……私はユートのものになったわ。でも、空が明るくなり始めるまでは……ちょっとやり過ぎじゃないかしら?
嬉しいから拒否なんてしないけれど、私は壊れちゃうんじゃないかって心配になったのよ?
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クロイツ教国を処したの。ユートからしたら羽虫みたいなものだもの。
メグミだけじゃなく、ユウキとマナもアヴァロン王国に来たわ。
この二人なら大丈夫。マサヨシは嫌。
ユートもクロイツ教国については意識していないみたいで、王城の建設に取り掛かっていたわ。そしてクロイツ教国の件から十八日が経って、王城が完成したの。
ユートは城大工にも人気だったわ。ふふ、自慢の旦那様なの。
その日の夕方から、私達もお屋敷から新しい王城へお引越し。うん、立派なお城だわ。
跳ね橋から城門、そして王城の中へ入り、私達は謁見の間へ。
「これまでは跪く側だったんだけどなぁ……」
そんな事を言うユートだけど、もう跪かれる立場なのよ。頑張って慣れてね。
立派な謁見の間、そして玉座。
「さぁ、玉座に座ってみましょう!」
「そうです、ユート君!」
「ユート様の玉座に座る姿、見たいです!」
「ユートさん、行きましょう!」
「……行く、ユート」
「先輩先輩、私も見たいです」
「え、えぇ~……やんなきゃダメ?」
私達全員に勧められて、ユートが玉座に座る。
「え、えと……こう?」
私達が跪くと、ユートがビックリしていたわ。ちょっと可愛い。
「それじゃあ皆、顔を上げてくれ」
ユートの声が、真剣な時の声だった。
「まずは礼を言わせて欲しい。これまで僕に付き合ってくれた事、心から感謝しているよ。皆のお陰で、こんな素晴らしい城も出来上がった。アヴァロン王国として、まずは第一歩が踏み出せたと思うんだ。だから、ありがとう」
真摯なお礼の言葉。その言葉に、私はやっぱりこの人を選んで良かったと思った。
「知っての通りの新米国王だ、至らない事も多々あると思う。それに、皆に迷惑をかける事もあると思う。それでも、皆と……そしてこれから増えていくだろう国民の為に、僕は僕に出来る事を全力でやっていきたいって思っている。だから……」
玉座から立ち上がったユートが、頭を下げるの。
「これからも、どうかよろしく頼む」
もう、今日だけよ? 王様は簡単に頭を下げちゃいけないんだから。
私達の拍手に微笑みながら、ユートはもう一度玉座に座ったの。うん、これでこそ私達の王様ね。
……
その日の夜、私達は一度くらいユートをヘトヘトにさせたいと相談して、皆でユートの相手をする事にしたわ。
でも……ユートは凄かったの。六人相手でも、敵わなかった……凄い。これはきっと、子供もたくさん出来ちゃう……かも。
きっと、皆で幸せな家族を……そして幸せな国を作れると、思うのよ。




