07-10 建国七日目/勇者三人
これまでのあらすじ:耄碌爺と駄目勇者をシメました。
もう、お分かりだろう。多分僕は、性欲魔神らしい。
六日連続でハッスルしたが、体調は頗る快調だ。本当におかしいな! 六日で六人だぞ!? 毎晩こんな事していたら、普通は枯れるだろ!?
とは思うものの、婚約者達を満足させられているのは事実なので、とりあえず棚上げ。
色々考える事はあるのだが、今の状態を何とかする方が先決だろう。ただいま、おやまの間に居ます。
何とか呼吸は出来ていますが、素敵な感触の二つのおやまの胸囲度はヤバい。誤字じゃない、確かに胸囲度なんだ。
まぁ……今日は忙しくなりそうだし、今の内に堪能しておくか。
「あっ……ふぅっ!? せ、先輩?」
あっ、起こしちゃったか……でも、そのままで。
「んんっ……も、もうっ……せんぱ……あっ……!!」
可愛いなぁ。
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アヴァロン王国アーカディア邸の大会議室。そこに、僕を含めて五人の王が再度集まった。
イングヴァルト王・ミリアン獣王・ヴォルフィード皇帝 オーヴァン魔王。そして僕、ユート・アーカディア・アヴァロン。
更に、イングヴァルトからは第一王子アルファルドと宰相アークヴァルド公爵。獣王国からは第一王子ブリックと、宰相。ヴォルフィード皇国からは第一皇子マックールと、内務卿ヴォークリンデ公爵。オーヴァン魔王国からは東西南北の伯爵。アヴァロンからは婚約者勢揃い。
そして、事の発端となった三人の勇者だ。
……
「さて、集まって貰ったのは他でもない、クロイツ教国の教皇とその凶行……あっ、コレは駄洒落じゃなくてマジで言ってるから」
……滑った!!
居た堪れない空気が流れる……場を和ませようと思ったのに!!
「……それについて、勇者から話を聞く為です、ハイ。すんません……」
まず、オーヴァン魔王国に偵察に向かう為の魔道具があると唆された件。
そんな物はクロイツ教国には存在しないと言い張り、教国はヒルベルト王国の仕業と断定。ヒルベルトの使者を処分し、勇者ユウキと勇者マナの身柄はクロイツ教国が貰い受けると一方的に断言したと言う。
「どう思う?」
「黒だな」
「黒だろう」
「真っ黒としか思えないね」
四カ国の王は断言する。僕も同感だ。ヒルベルト王国のせいにして、勇者二人を引き入れる為の罠だったのだろう。
とは言え、とんでもない事してるけどね……勇者を一度に四人失いかねない愚策だ。実際、魔王国で死ぬ寸前だったんだから。
続いて、魔王国で魔王に謁見し、魔王国に逗留した件。それは魔王に敵ではないと油断させ、魔王国の内情を探るための行為だと教皇は高らかに宣言し、勇者を称えた。
あまりの物言いに異論を唱えようにも、兵士達に武器を向けられ説明を先に進めざるを得なかった。
「え、勇者相手に武器向けたの?」
「はい、向けられました」
「勇者を何だと思っているんだろうな、クロイツ教皇」
全くだ。
そして、アマダムや王妹クリスティーナの事を聞かれた際……マサヨシが暴走した。
その時、たまたま魔王国に居合わせた冒険者……つまり僕達だ。僕達は魔王と結託しているのだと証言。
「んっ!? 何でそうなった!?」
「……済みません、私達にも意味不明で……」
「はい、あまりに唐突でした」
「あの時の鏑木さん、目が血走ってたよ……」
更に、僕の事をどんどんバラしていく……真実を捻じ曲げて。
――曰く、アーカディア島は神が勇者達の為に用意した神聖な地であり、勇者とそれを擁する国のためにある地だと断言。
――曰く、ニセ英雄の僕がアーカディア島を発見し、そこに眠っていた過去の勇者の遺産を不当に手に入れ、それを以って世界を混乱に陥れようとしている事。
――曰く、勇者の息子の名を語る僕が、更に貴族だと偽り各国の優秀な貴族や獣人奴隷を誑かし、自分の勢力を作り上げようとしている事。
――曰く、遺失魔道具を悪用し、世界同盟の国々も洗脳されて偽りの情報を真実だと思い込まされているとの事。
――曰く、世界同盟の盟主の立場を利用し、クロイツ教国にも牙を剥くであろう事。
そんな世迷い言を言う方も言う方だが、信じる方も信じる方だな。
クロイツ教国はそれを信用するとし、洗脳魔法の解除を勇者達に進言。しかしメグミ達はそれを拒否した。
そこで投げ付けられた魔封じの鎖により、ユウキとマナが戦闘不能に。盾で受け止めたメグミは首飾りの障壁を展開し、僕達の救援まで耐え……そして、今に至る。
「怒涛の意味不明が押し寄せる展開に、僕の処理能力が追い付かないんだけど」
「安心しろ、ユート君。私もだ」
他国の王達も頷いている。
「では、次にユート殿の話を聞きたい。クロイツ教国で何をしたか」
「あー、そうねぇ……具体的に言うと、遺失魔道具でクロイツ教国の神殿に転移、ゴキブリみたいに大量に湧いて出る兵士や騎士を一通りボコり、マサヨシと教皇をシメて次は殺すと警告した」
僕の説明に、婚約者以外がフリーズした。
「あっ、一応あの時点で死人は居ないよ?」
「う、うん。それについては本当によくやったよユート……」
口調が素だぞ、アマダム。
「……で、どうするか」
「教国がアヴァロンを敵視するのは間違いないな」
「同盟国である我々にまで敵意が及ぶ可能性があるな」
……あっ!! しまった、それを失念していた。そうだ、僕のした事で同盟国が……。
しかし、同盟国の反応は予想の真逆だった。
「我が国にクロイツ教国が攻めて来たとしよう、そうしたら……あの影の軍勢を圧倒するユート殿の力を今一度見れると、我が国の民は沸くな」
「皇国としても、リーヴォケインの森を救った英雄だからな。ユート殿、やるなら派手に頼むぞ」
「魔王国にはどの道攻めて来そうだし、ユートの蹂躙劇をまた監視する事になるのかぁ……もういっそ、余も出よっかなぁ……」
「ユート君、うちではまだそこまで派手にはやっていないが、クロイツ教国が侵攻してきたらやっちゃうのかね?」
……迷惑どころか、僕の力をアテにしてるわこれ。
まぁ、僕の撒いた種だし? 今回は文句言わずに首を縦に振る。
「アヴァロン王国国王として、同盟国にクロイツ教国が攻め入った場合、責任をもってその対処を行う事を宣言する。そして教皇もマサヨシも含め、今度は全員殺す」
明確な殺戮宣言に、各国の王は苦笑する。
「あっ、そうだ! 今度馬鹿な真似をしてきた時の為に、新しい武装を作ろうかな! どうせなら男の夢を体現した、アレとか……」
「おい、待てユート!」
「ちょっ……何する気だ!?」
「ヤバい、ユートが自重しないパターンだ!」
「何する気か、吐け!」
え……そんな変な事考えてないよ? 僕が考えているプランを、皆に説明する。
……
「……ユート、その時は手伝うから、私のも頼む」
「俺も!」
「私も欲しい」
「余も! 余も!」
「ユーちゃん、私達にも!」
「……」
「ユート君、桜井君も欲しいって! ちなみに私も!」
「ちょっ、水無月さん!?」
あー、やっぱ惹かれるもの、あるよね?
「うし、マルクと後で詳細を詰めるか! さて、後は……」
「あぁそうだ、ジークハルト竜王国の使者はもう帰還したのか?」
そう言えば獣王陛下には、その辺伝わってるもんね。
「えぇ、都合の良い日があれば、ご挨拶に伺うよって返事を送ったから、返答待ちですよ?」
「ふむ。今回の件、竜王国もこちら側に引き込めないものか。あの国は誇り高き竜人族唯一の国家だ、その為に南大陸では誰も戦争を吹っかけるという愚行は侵さない……今はな」
昔は別、か。
「ユート殿が良いなら、こちらで話を持ちかけてみよう」
「あ、お願いします」
「がははは! 構わぬとも!」
すると、アンドレイ叔父さんと皇帝陛下が一つ頷く。
「ならば、東の大陸からも友好国家に声を掛け、世界同盟への参加を促してみようではないか」
「うむ、西の大陸でも声を掛けようと思う」
世界同盟を広く知らしめると同時に、僕の味方を増やす為……なのだろう。僕は王という立場を一度脇に置き、頭を下げる。
「では、まとめようか」
今後の動きだが、まず各国の友好国家に対し世界同盟に参加して貰えないか呼び掛ける事。
アヴァロン王国としては、クロイツ教国が勇者三人に対して行った非常識な扱いを公表する。そして建国の合間に、軍備を整える方向性に決まった。勿論クロイツに対する牽制の為であって、他国を侵略なんてしないよ。
「さて、それでは最後に……勇者三名。君達は今後どうするか、だが」
その言葉に、真っ先に答えたのはやはりメグミだった。
「私はせん……いえ、アヴァロン王に求婚し、昨夜了承を頂けたのでアヴァロン王国に亡命します」
その言葉に、婚約者以外の全員の視線が僕に集中する。
「そういう事なので、メグミは渡さないよ?」
僕の視線に、各国の王達が視線を逸らす。別に、悪意を振りまくつもりは無かったんだ、本当なんや……。
「でだ、ユウキとマナはどうする? とりあえずクロイツに戻るのはやめとけ?」
「それはまぁ……」
「絶対戻りたくないね!」
そうだろうとも。さて、二人はどうするのか……ウチに来てくれれば嬉しいけどね。
「すぐには決められないなら、時間をあげるけど」
「……僕は、決めました」
「うん、私も決めたよ」
二人は顔を見合わせ……そして、僕達に向けて宣言する。
「「アヴァロン王国に亡命します」」
その言葉に、各国の王はやっぱりね、って顔だ。
「勇者ユウキ・サクライと勇者マナ・ミナヅキ。アヴァロン王国は、君達を心から歓迎しよう」
僕の言葉に、二人は跪く。そういうの、別にしなくても良いのよ?
さて、それじゃあ……。
「メグミ、おいで」
「はい? 何でしょう、先輩」
僕の前にやって来たメグミの左手を取る。
「婚約の事も公言したわけで、君にこいつをプレゼントだ。勇者ではなく、メグミ・ヤグチとして……お嫁さんとして、僕の側にいて欲しい」
その左手の薬指に、指輪を嵌める。メグミがその指輪を呆然と見て、顔を上げる。
「先輩……」
その瞳から涙が溢れ出した所で、メグミが僕に勢い良く抱き着いて来た。
「はい……先輩。ずっと、側にいます……」
感極まってしまったみたいだね。
「若いとはいいものだな……」
「英雄と勇者の婚約か……」
「というか、ユート殿の婚約者は全員凄まじい気がするんだが」
「余もそろそろ、身を固めねばならないと実感させられるな……」
国家元首の皆さん、うるさいっす。
「お、おめでとうございます!」
「矢口さん、ユート君、おめでとう!」
勇者二人の祝福の言葉を皮切りに、皆から盛大に拍手を貰った。
これで、六人の婚約者が揃ったわけだ。アヴァロン王国も、いよいよ本格始動だな。
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【名前】ユート・アーカディア・アヴァロン
【称号】メグミの婚約者(NEW)・勇者を束ねる王(NEW)
【名前】メグミ・ヤグチ
【国籍】クロイツ教国→アヴァロン王国(NEW)
【階級】アヴァロン王国第六王妃予定者(NEW)
【称号】ユートの婚約者(NEW)
【名前】ユウキ・サクライ
【国籍】クロイツ教国→アヴァロン王国(NEW)
【名前】マナ・ミナヅキ
【国籍】クロイツ教国→アヴァロン王国(NEW)
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各国との会議を終わらせ、僕達はアーカディア邸で寛ぐ事にした。
色々あり過ぎて、本格始動の前にちょっと休息が欲しい……この前、休みにしたばっかりだけどな。
今現在、ユウキとマナの部屋も新たに用意されている。勿論、客室ではなく三階の私室だ。
アーカディア邸の形はコの字型になっているのだが、中央部分が僕達メインパーティ、東館が獣人勢、西館がドワーフ勢の私室がある区画にしている。人数の都合上、ユウキとマナの部屋は西館に用意される事になった。
尚、二人には当面の間、開拓と家事を手伝って貰う事になる。なので、作業服や侍女服を用意して手渡しておく。
「ツナギですね!?」
「メイド服じゃん!!」
二人には僕の出自を明かしていないので、大層驚いていた。話すか話さないかは、まだ検討段階だ。
メグミ含め勇者三人はアーカディア勢に快く受け入れられた。
メグミは婚約者だと宣言しているし、ユウキやマナも皆と同じ新しい仲間だよ、と説明したからね。二人も既に面識のあるアーカディア勢の、心からの歓迎の言葉にホッと一息ついた表情をしている。
ヒルベルト王国で召喚され、クロイツ教国へ向かい、トラブルでオーヴァン魔王国へ……その後、一時アヴァロン王国に滞在し、クロイツ教国へ戻ったわけだが、言ってみれば何処へ行っても“お客さん”だったわけだ。
明確な自分達の居場所が定まった事で、安心したんじゃないかな。
それに、アーカディア勢は僕と婚約者以外には、対等に接しているもんね。同じ立場の仲間として受け入れて貰えたのも、嬉しいのだろうな。
ユウキやマナがうまくやっていけるように、僕も色々と考えてみよう。
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さて、クロイツ教国の動きなのだが……案の定である。
――アヴァロン王国は、自分達の神が住む土地を簒奪した神への冒涜者の国だ。
――嘘偽りで塗り固められた王は、手勢を連れてクロイツ教国の神殿に押し入り、三人の勇者を不当に拉致した大罪人だ。
――魔人族との決戦を前に、まずはアヴァロン王国を打倒し、あるべき物をあるべき場所に還すべし、との事だ。
とても面白いジョークである。
アヴァロン王国として、動く必要があるだろう。そこで、僕は東・西・南の大陸に存在する国全てに向けて“ある物”を送る事にした。
それは透明な板で出来た、遺失魔道具だ。
――映像再生専用遺失魔道具“伝達の石板”。
それに、僕からのメッセージを篭めて送信した。メッセージは、こんな感じだ。
……
世界各地の国家元首の皆様方に申し上げる。
僕はユート・アーカディア・アヴァロン。天空島に新王国を建国した、アヴァロン王国の王だ。
クロイツ教国からの声明を信じる国、信じない国がいるだろう。
愚かな言い掛かりで、何の罪も無い国と事を構えるのは避けたい。なので、こうしてメッセージを贈らせて頂いた次第だ。
天空島が神の土地と教国は吹聴しているそうだ。
まぁ、間違いではない。最もその神は、神竜と呼ばれる神だが。
神竜の試練を受け、認められた僕がこの天空島を引き継いだ。もし興味があるなら、転生に入った神竜の卵を見せようか。
嘘偽りで塗り固め……というのが、何を指しているのか解らないな。恐らく出自と身分の事だろうか。
出自ならば、先代魔王を討伐した勇者と七人の英雄にでも聞いてみてくれれば良いだろう。その為に、この遺失魔道具には、音声だけではなく映像も付けているのでね。
クロイツ教国の神殿に突入したのは事実だが、その真相は勇者を救出する為だ。
我が国に亡命した勇者から話が聞きたいならば、申し出てくれて構わない。洗脳なんてされていない事も、実証する用意がある。
ちなみに、クロイツ教国で我々は敵対者を倒しはしたが、死者は出していないので悪しからず。
こっちから仕掛けるつもりはない。だが次にクロイツ教国が敵対行動を取るならば、容赦はしない事も付け加えよう。
尚、僕は敵対行動を取る者にかけてやる慈悲を持ち合わせない。
別に侵略行為をするつもりもないし、そんな事より建国した国をより良い国に発展させる事に尽力する方が建設的だ。故にこちらから他国に戦争を吹っ掛ける事は、無いと思って貰って結構だ。
そうそう、アヴァロン王国は先日発足した世界同盟に参加している。
東西南北、イングヴァルト王国・ミリアン獣王国・ヴォルフィード皇国・オーヴァン魔王国と手を取り合い、教国が否定した”本当の脅威”に対して対応するため……と、国家間の交流を深め、種族の違いや国家の違いによる諍いを無くすための和平同盟だ。この同盟は参加国を募集している。
あっ、これじゃ宣伝の為にこれを送ったみたいになっちゃうんじゃないか?
「余計な事は言っちゃ駄目ですよー」
あ、しまった! え、えーと……ゴホン、そういう訳です、はい。
アヴァロン王国と貴国の関係が良いものになるのを祈って、この遺失魔道具を贈らせて頂く。
どうか一考をよろしく願いたい。
……
撮り直し、しとけば良かったかなぁ……などと思いつつも、伝達の石板を送った。後は各国の反応待ちだねー。
さて、阿呆国家は一旦忘れて、自分の国家に目を向けよう。
本日は同盟国から建築士を迎え、王城についての話をする日だ。各国の殿下(魔王国だけ魔王)と建築士を迎え、王城の案について話をする。
建築士達には、この王城建築の間、僕の製作した遺失魔道具を貸与すると約束。加えて、築城後も「希望する友好国には、有料で貸与する事も考えている」と伝えた所、大盛り上がり。
早速、翌日から建城の準備に取り掛かってくれるそうだ。鼻先の人参じゃないけど、いい起爆剤になってくれた……のかな?
その間、僕はメグミ、そしてユウキとマナを伴ってミリアン獣王国へ向かう。
いつもの服飾店で、彼等のアーカディア装備(仮称)とその他の服を購入していく。試作の新色を出されたので、ユウキは濃い蒼のコート、マナは臙脂色のコートを選んでいた。
僕は黒に、金の縁取りが入ったやつにした。メグミは他の婚約者とお揃いがいいそうなので、いつものだ。
折角なので、それぞれのイメージカラー(僕主観)の縁取りがされた新衣装を依頼してみると、店主は大喜びで受けてくれる。きっと、お土産に持って来た菓子詰めも効いているな。
ついでに南の転移門を潜り、勇者三人用に用意しておいた魔力駆動二輪を出してツーリング。
クロイツ教国のせいで溜まっていった陰鬱な気分を、風にのせて吹っ飛ばして貰おうと思ったのだが、三人は大層気に入ってくれたようだった。メグミは僕の後に乗りたそうだったが。
……そして、夜。
「ユートさん、ありがとうございます」
ユウキがそんな事を言って来た。
「他の皆にも用意している物だから、あまり気にしないでいいよ」
「いえ、それだけじゃないですよね」
……ユウキの目が、いつになく真剣なものになっていた。
「多分、僕達がこの世界に召喚されてから味わって来た……その、仕打ちとか扱いとか、そういうのが原因で溜まったモヤモヤした気分なんかを、吹き飛ばそうとしてくれたんじゃないですか?」
おぉう、意外と鋭いな。
「ユート君は、解りやすい所があるよねっ!」
単純だと罵られたのか? そんなわけないか。
まぁ、その通りっちゃその通りなんだけど……それは、僕からすれば普通の事だ。
「当たり前じゃないか、僕は身内に甘い系国王だもん。だって……僕達はもう友達で、仲間で、家族だろ」
偽りない僕の本心に、二人は目を丸くして……そして、微笑んだ。影の無いその笑顔に、ここ最近の面倒事も「ま、いっか」と思えてきた。
それじゃあ今夜は改めて、二人の新たな家族を歓迎しよう。今夜はご馳走だ。




