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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第7章 アヴァロン王国

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86/327

07-04 建国一日目/会談の後で

これまでのあらすじ:パーティメンバー全員が婚約者になりました…。

 僕はアヴァロン王国の国王となり、ユート・アーカディア・アヴァロンと名乗る事になった。

 そして、五人の女性……姉さん・アリス・アイリ・リイン・クリスと婚約した。

 更に、もう一人……。

「地球に居た頃から、先輩の事が好きでした。私もこの世界で先輩と一緒に生きていく覚悟は出来ています、皆さんと一緒に私もお嫁さんにして下さい」

 晩餐会の後、メグミは僕の部屋に訪れて、顔を真っ赤にしながらそんな事を言ってきた。


 自分の気持ちに向き合って、僕は他の五人と同様にメグミを受け入れる事にした。

 メグミは一度クロイツ教国に戻り、義理を果たす……オーヴァン魔王国の現状と、五カ国の同盟について報告した後、アヴァロンへ出奔するそうだ。

 その場には既に婚約が決定した五人も一緒で、みんなはメグミを快く受け入れていた……絶対に、前もって話し合いをしていたな。

 ふぅ、嫁さん同士が仲良い分には問題無いと、開き直る事にした。


 話し合いの結果、メグミが出奔する事、僕との婚約の事は、他の勇者達には内密にする事となった。理由は簡単。

「あの勇者マサヨシが暴走するでしょう」

「しますね、確実に」

「しないはずがありません」

「ええ、します」

「……する」

「鏑木さんなら、必ず先輩に対して何かしらの迷惑をかけそうです」

「うん、僕にもそんな未来が見える」

 これが理由の全てである。


 それと、アイリからある提案がなされた。

「勇者ユウキ・サクライ殿、勇者マナ・ミナヅキ殿を、アヴァロン王国に引き抜けないでしょうか?」

「確かに、あの二人はマサヨシ・カブラギと違い人格も穏やかで、善人ですね」

「それにユートさんのアドバイスを活かして、オーヴァン魔王国では民の避難に奔走したとか」

「……将来有望」

 確かに、あの二人なら……と思う。


「それじゃあ、メグミ。出奔の時にでも二人に声をかけてみて貰える?」

「はい、お任せ下さい先輩!」

 二人が話を受けてくれると良いんだけどね。

 ユウキにはアヴァロン王国の名付け親にもなって貰ったし。


************************************************************


 翌朝、僕達は朝食の席に着く。各国の首脳陣達と共にご飯を食べる訳ではない。

 無論、各国へは仲間達を派遣している。そして、どの国にも属さない勇者達は、アーカディア邸本館に居るのだが……。

「ユート・アーカディア、後で話がある」

 あ、絶対ろくでもない話だわコレ。しかし、折角の朝食の席で噛み付かれるのも嫌なので、仕方が無いから受けてやる事にした。


 そんな中、メグミも口を開く。

「五カ国の会談も見届ける事が出来ました。なので、私達はクロイツ教国へ戻り、これらの件を教皇様に報告するべきでしょうね」

 その言葉に、マサヨシの表情が和らいだのを僕達は見逃さなかった。

 コイツ、メグミが僕達寄りだと感じて危機感を抱いていたんじゃないかな。そしてメグミからクロイツ教国に帰還すると聞いて、安心したのだろう。

 残念だったな、その後メグミはアヴァロン王国に出奔して僕の嫁になるぞ。内心でマサヨシざまぁと思いつつ、僕達は朝食を済ませた。


 ……


 さて、朝食の後でマサヨシと連れ立って庭園に出る。噴水の前で、マサヨシが僕を見た……勝ち誇ったような表情で。

「メグミはお前のモノにはならないぞ、残念だったな」

 いきなり第一声がこれか。

 と言うか、残念ながら僕の嫁になる予定だぞ。真実を知らないで、得意げに笑っているコイツの自信はどこから来るのかね。

「お前の思い通りにはさせない、俺から言う言葉はそれだけだ……覚えておけ」

 ……ちょっと何言っているのか解んないです。

 何する気だ、コイツ。頭が狂ったのかな?


 ……


 各国の王達は、当初から昼前に帰る予定だった。

 イングヴァルト以外はまだ滞在したいと考えていたようだが、アンドレイ叔父さんが政務のために帰らなければならなかったのだ。

 ここは足並みを揃えようという事で、四カ国全てが帰還する事になった。

「では、名残惜しいが失礼するよユート君」

「またお邪魔させて貰うよ」

「ユート殿、では一月後に」

「クリスを頼んだよ、ユート」

 一カ月後に、国交活性化のためのイベントについて、互いの国からプレゼンテーションをする事に決まった。

 それまでに、外壁と転移門を何とかしたいな。加えてウチも催しの出し物を考えねば。


 そして、勇者達も。

「それでは先輩、失礼します」

「またお会いしましょう、アヴァロン国王陛下」

「またねー、陛下ー!」

「……」

 メグミは安定として、ユウキは素で国王呼びなんだろうな。マナは解ってやってる、絶対。

「呼び方は今まで通りでいいよ、国民もうちの屋敷の人だけだし、建物もここしかない。まだまだ、王様は名乗れないよ」

 勇者達もイングヴァルト王国へ転移し、そこからファムタール騎士国を経由してクロイツ教国へ帰還する予定だ。

 厳しい視線を向けるマサヨシ? 知らないよ、無視だ無視。


 門弾ゲートバレットで各国参加者+勇者達を各国の転移用姿見に転移させ、正式に五カ国会談は終了した。


 ……


 会談の終了を迎えた僕は、アーカディア島の住人を集める。

「皆、今回は本当にありがとうね。皆のお陰で、建国や婚約以外は予定通りに会談を終える事ができたよ。気疲れもしただろうし、肉体的にも疲れたと思う。今日から二日間は仕事は無しにして、ゆっくり休んで羽を伸ばしてくれるかな?」

 僕の言葉に、苦笑する皆。


「ご主人様、私達の楽しみを奪わないで下さい」

「そうそう、俺達はご主人の為に何かするのが趣味なもんでね」

 ……こやつら。

「はぁ……じゃあとやかく言うことはしないよ。でも、休める時に休んでね」

「はい、ご主人様!」

「ご主人様陛下〜!」

 変な呼び方になっているよ、メアリー。


 さて、久々にステータスチェックでもするか……。


************************************************************


【名前】ユート・アーカディア→ユート・アーカディア・アヴァロン(NEW)

【国籍/階級】アヴァロン王国(NEW)/国王(NEW)

【職業/レベル】付与魔導師エンチャンター/22→23

【ステータス】

 体力:40→41(+100)(+50)

 魔力:33→35(+30)(+100)(+50)

 筋力:40→41(+100)(+50)

 耐性:42→43(+100)(+50)

 敏捷:39→40(+100)(+50)

 精神:41→42(+100)(+50)

【技能】銃撃LV6→7・剣術LV5→6・守護の概念魔法アカシックレコードLv1(NEW)

【称号】アヴリウス大迷宮踏破者(NEW)・魔人族の友(NEW)・アヴァロン王国国王(NEW)・キリエの婚約者(NEW)・アリシアの婚約者(NEW)・アイリの婚約者(NEW)・リイナレインの婚約者(NEW)・クリスティーナの婚約者(NEW)・メグミの婚約者(NEW)

【賞罰】オーヴァン魔王国 魔王栄誉章(NEW)

【状態】アヴリウス大迷宮踏破(+50)(NEW)


【名前】キリエ・アーカディア

【国籍/階級】アヴァロン王国(NEW)/アーカディア名誉女男爵→第一王妃予定者(NEW)

【職業/レベル】剣士フェンサー/28→29

【ステータス】

 体力:94→96(+50)

 魔力:101→103(+50)

 筋力:73→75(+50)

 耐性:87→88(+50)

 敏捷:109→111(+50)

 精神:92→93(+50)

【技能】守護の概念魔法アカシックレコードLv1(NEW)

【称号】アヴリウス大迷宮踏破者(NEW)・魔人族の友(NEW)・ユートの婚約者(NEW)

【賞罰】オーヴァン魔王国 魔王栄誉章(NEW)

【状態】アヴリウス大迷宮踏破(+50)(NEW)


【名前】アリシア・クラウディア・アークヴァルド

【国籍/階級】イングヴァルト王国→アヴァロン王国(NEW)/アークヴァルド公爵家令嬢→第二王妃予定者(NEW)

【職業/レベル】魔導師ウィザード/26→27

【ステータス】

 体力:58→59(+50)

 魔力:89→91(+50)

 筋力:54→55(+50)

 耐性:52→53(+50)

 敏捷:85→87(+50)

 精神:81→83(+50)

【技能】水魔法LV8→9・風魔法LV5→6・光魔法LV6→7・守護の概念魔法アカシックレコードLv1(NEW)

【称号】アヴリウス大迷宮踏破者(NEW)・魔人族の友(NEW)・ユートの婚約者(NEW)

【賞罰】オーヴァン魔王国 魔王栄誉章(NEW)

【状態】アヴリウス大迷宮踏破(+50)(NEW)


【名前】アイリ

【国籍/階級】ミリアン獣王国→アヴァロン王国(NEW)/ユートの奴隷→第三王妃予定者(NEW)

【職業/レベル】戦士ファイター/19→21

【ステータス】

 体力:47→50(+20)(+50)

 魔力:45→47(+50)

 筋力:46→49(+20)(+50)

 耐性:43→46(+20)(+50)

 敏捷:80→85(+20)(+50)

 精神:57→58(+50)

【技能】剣術Lv5→8・銃撃Lv6→8・守護の概念魔法アカシックレコードLv1(NEW)

【称号】アヴリウス大迷宮踏破者(NEW)・魔人族の友(NEW)・ユートの婚約者(NEW)

【賞罰】オーヴァン魔王国 魔王栄誉章(NEW)

【状態】アヴリウス大迷宮踏破(+50)(NEW)


【名前】リイナレイン・デア・ヴォークリンデ

【国籍/階級】ヴォルフィード皇国→アヴァロン王国(NEW)/ヴォークリンデ公爵家次女→第四王妃予定者(NEW)

【職業/レベル】魔導師ウィザード/23→26

【ステータス】

 体力:54→57(+50)

 魔力:84→89(+20)(+50)

 筋力:54→57(+50)

 耐性:53→56(+50)

 敏捷:83→86(+50)

 精神:85→90(+20)(+50)

【技能】風魔法LV6→8・水魔法Lv8→10・地魔法Lv6→8・森林魔法Lv7→8・弓術LV10→11・銃撃Lv2→4・守護の概念魔法アカシックレコードLv1(NEW)

【称号】アヴリウス大迷宮踏破者(NEW)・魔人族の友(NEW)・ユートの婚約者(NEW)

【賞罰】オーヴァン魔王国 魔王栄誉章(NEW)

【状態】アヴリウス大迷宮踏破(+50)(NEW)


【名前】クリスティーナ・ガルバドス・ド・オーヴァン

【種族/性別/年齢】魔人/女/329歳

【国籍/階級】オーヴァン魔王国→アヴァロン王国(NEW)/オーヴァン魔王家王妹→第五王妃予定者(NEW)

【職業/レベル】魔導師ウィザード/48

【ステータス】

 体力:72(+20)

 魔力:94(+20)

 筋力:81(+20)

 耐性:79(+20)

 敏捷:83(+20)

 精神:93(+20)

【技能】闇魔法LV9・火魔法Lv8・風魔法Lv8・氷魔法Lv7

【称号】魔王妹・魔導師・人間族の友(NEW)・ユートの婚約者(NEW)

【賞罰】オーヴァン魔王国 魔王栄誉章(NEW)


************************************************************


 いろいろ増えてる! そして僕のステータス見辛いな!!


 はぁ……さて、僕はまたやる事リストの続きだ。

 一カ月後にまた、五カ国会談があるからね。それまでにやるべき事は沢山あるのだ。

「うーむ、森とか湖は何かに使えるかもしれない。やっぱりこの辺まで外壁を作るべきかな」

 まずは、どこまでを開拓するか。それが決まらないと、計画も練れないとようやく気付いたのだ。


 アイリから聞いたユウキの発言から、このアーカディア島の面積は東京都と同じくらいらしい。

 中心部に作る王都と、その周辺に作る開拓村って形にするか? 王都に内壁、島の外周に外壁を用意しよう。そうすれば、森や湖は今の自然な状態を残せるな。

 特に森。エルフは自然の森をこよなく愛するからね。

 エルフ族の公爵令嬢を娶るのだ、その辺りにもしっかり気を配らなければなるまい。


「平野部を整地する必要があるか……こういう時は遺失魔道具アーティファクトに限るね」

 土木工事用の遺失魔道具アーティファクト……きっと前代未聞だろうなぁ。

 作る物リストに、整地用遺失魔道具アーティファクトと殴り書きする。

「王城の件や、住宅区画の整備はその後からだ。まずは地盤を固めよう、文字通り」

 後で、製作に取り掛かるか。


「精が出ますね、ユートさん」

「お茶をお持ちしました、ユート様」

 労いの言葉をかけてくれるリイン。持って来てくれたティーセットは羊皮紙だらけの場所には置けないため、サイドテーブルに置いてくれるアイリ。

「ありがとう、二人とも」

 いつも、僕を気遣ってくれる二人。こんなに優しい彼女達と婚約したんだなぁ。


 ……おや、二人だけかな?

「他のメンバーは?」

「疑似魔石に魔力を籠めています。これから、ユートさんがたくさん必要とするだろうと」

「私達も、この後手伝いに行きます」

 ……うちの婚約者達は、本物含めて天使ばっかりだな。


「ありがとう、色々と考えてくれて。僕も後で行くよ」

「いえ、ユート様はこちらの作業を優先なさって下さい。こちらはユート様が国王としてやる、最初の仕事になりますから」

「はい、その為のサポートとして、私達は居るのです。比翼の鳥……まぁ、翼が多いのはご愛嬌ですが」

「それな」

 翼が既に片方五枚、じきに六枚になるんだし。

「お言葉に甘えて、一つ気合を入れて頑張るよ。皆の未来の旦那として、皆の王様として手は抜けないからね」

 僕の言葉に、二人は顔を赤らめて頷いた。うん、僕もきっと赤い顔をしているだろう。皆の旦那とか、普段なら言えないもん。


 ……


 数時間かけて作成したやる事リスト。それに優先順位を振り分けて、清書しておく。

 これで一先ずは優先度の高い物から取り掛かれるな。


 まずは、アーカディア島の外壁だ。島の外縁を外壁で囲む。これは子供達等が、誤って下の大海原に落ちたりしないようにする為だ。

「まずは、”石の壁ストーンウォール”で壁を作るところからだなぁ」

 これは魔導銃があれば、魔力を持つ者ならば誰でも可能である。流石に、皆にも手伝って貰わないと時間が足りないだろうなぁ。

 単発式の魔導銃……リーヴォケインの森の消火活動で使用した物に、”石の壁ストーンウォール”用の疑似魔石弾を装填していく。

 今日、今からやるのは大変だ。明日も暫定で皆には休みにしているので、明後日からにしよう。

 あぁ、明日はコイツで作った壁が実用に耐え得るかをテストしようかな。


 ……


 丁度昼時なので、食堂へ向かうと皆が待っていた。

「先に食べていても良かったんだよ?」

「いえ、一国の王を差し置いて食事を始める部下とかいませんよ」

 まぁ、言われてみればジルの言う通りかもしれないが。


 まだまだ国王という実感が沸かないのよね。

 しかし、部下か……確かにそうなるんだな。まだ、僕的には仲間という感覚が強いんだけどね。

 そんな事を考えながら席に付き、皆と一緒にご飯にする。


 食事の話ついでに、皆にアヴァロン王国にあったらいいなと思うものを聞いてみることにした。

「そうですねぇ……」

「やっぱりご主人が言ってた学校ですか。それがあると、いいなとは思いますね。クレアにも沢山友達が出来るでしょうし」

 そうだな、学校はやはり欲しいな。


「私としては、やはり食材を購入できる店があると有り難いです」

 屋敷の家事を預かるレイラさんらしい意見だな。


「動物のいる場所〜?」

 メアリー、それは狩る方? それとも戯れる方?


「やはり、国交の要として考えるならば、市場でしょうか。他にも、露天商が集まれる広場などがあれば、アヴァロン王国に訪れる人も増えると思うんですが」

 相変わらず鋭い意見を言ってくれるジル。本当に頼りになるやつだよ。


「ユート兄! やっぱり冒険者ギルドは必要だよね!」

「ここ、魔物居ないぞ?」

「ノンノン、解ってないなぁ。各国に転移できるんだよ? つまりドワーフがクエスト王国からイングヴァルト王国へ飛んで、クエストでは手に入りにくい素材なんかを入手できる! その逆もありでしょ? その中継地点になるアヴァロン王国に冒険者ギルドがあれば、冒険者は様々な場所、様々な依頼を受けられる!」

 ……たまに、エルザは凄くいい事言うよな。

「なるほど、検討する価値は十二分にあるな。後でドーマ支部長に相談するか」

「うんっ!」


「俺はやっぱり鍛冶工房かねぇ。王国お抱えの鍛冶工房として使ってくれよ」

「あぁ、それなんだけどさ。冒険者ギルドみたいに、職人ギルドを開設したらどうかな? 建国では色々依頼するだろうし、マルク用に鍛冶の遺失魔道具アーティファクトを用意するけど、それでも手が足りないだろうからさ」

「そりゃ面白そうだ! 良いじゃねぇか、流石は俺達の王様だぜ!」

 持ち上げたって何も出ないよ。遺失魔道具アーティファクトくらいは出るよ。


 ……


 食事の後で、僕は地下の工房へ入る。

 地下工房に来たのは、これから作る物をまだ誰にも見られたくないからだ。そう、今はまだ。

 創造者の小箱クリエイターズボックスを使い、それを造形していく。

 はぁ、デザインがイマイチだな……もうちょい何とか、いい感じにしたい。試行錯誤しながら、僕は”ある物”を作っていった。


 それから二時間程して、ようやく納得いく物が出来上がったと思う。ふぅ、肩が凝ったな。

 地下工房を出ると、そこではアリスとクリスが難しい顔をしていた。

「アリス、クリス。こんな所でどうしたの?」

「あっ、ユート君」

「ユート……」

 僕の顔を見て、二人は表情を綻ばせる。相変わらず可愛い、この娘達が僕の婚約者なんだと思うと、誇らしい気持ちになるな。


「……アヴァロン王国民、募集……」

「二人で、どうしたら国民を集められるかを考えていたんですよ」

 そんな所まで考えてくれていたんだな。本当に出来た娘さん達だよ、僕には勿体ないくらいだと思う。

 思うだけで、婚約解消なんてしないけどね。


 さて、それじゃあ二人に僕のプランを伝えてみようかな。

「それについては、僕も考えていたんだ。それで、地球にはある文化というか、システムがあってね。モデルハウスって言って、ここではこういう家が買えますよっていうのを、実物を見せてアピールするんだ」

「モデルハウス……」

「面白いですね、確かに実物を見て貰えば、移民の判断材料にもなります!」

 二人共、食いついて来たな。


「いつもの不動産屋に依頼して、それを何種類か建てて貰うつもり。んで、催しをする時に来てくれた一般者にそれを見て貰おうと思うんだ」

「……いい案、採用」

「はい、皆に相談してみましょう!」

 そうだな、後でもう一回会議かな。


「ちなみに、ユート君はどんな建物を作るつもりですか?」

「うん?」

「……ユートが居た世界の建物?」

 あぁ、そう言う意味か……ふむ、それもいいかもしれないぞ?

「そうだなぁ。一般市民が建てる家は大体、一階か二階建だったな。これを地球では一軒家、または一戸建てって言うんだ。それに対し大きな一つの建物の内部を区切って、その一室を居住区として提供する建築物をアパートとか、マンションなんて呼ぶ。それらを作ってみるのもいいかもしれないね」

「……面白そう」

「そうですね、この世界にユート君がいた世界の文化を再現するのも面白そうです!」

 二人は乗り気みたいだな。よし、後でミリアン獣王国の不動産屋に相談しに行こうかな。


 ……


 夕方になる前に不動産屋へ足を運び、やがて夜が来た。

 尚、城や建物についてはアルファ達と念話で会議を行い、四カ国に話を持っていく事にした。一国にばかり依頼するのは、贔屓と思われそうだからだ。

 四カ国の建築士には、各々の区画を依頼する。東西南北で分けるつもりだ。


 ミリアン獣王国の不動産屋は僕の依頼を二つ返事で受けてくれたので、明日はヴォルフィード皇国に依頼をしに行く予定だ。

 王城は、四カ国の城建築に精通している職人に、合同でお願いする事になっている。それは八日後に集まって貰う予定だ。

 それを夕食の席で皆に伝えた。

「なるほど、確かにそれは良い案ですね」

「各国の特色が出そうです」

 そうだね、それが狙いでもある。


 さて、夕食を終えて……アレを、渡そう。丁度皆が揃っているしね。

「えーと、婚約者の皆……ちょっと、こっちに」

 僕が皆を呼び寄せると、嬉々として近寄って来た。婚約者という所に反応したな、これは。

 これから渡す物で、もっと喜んでくれるだろうか。


「最初は姉さん……これからも宜しく頼むよ。十五年間姉弟としてだったけど、これからは……夫婦として」

 そう告げて、左手の薬指に自作した婚約指輪を嵌める。

「ユーちゃん……はい、これからもずっと……」

 瞳を潤ませて、指輪を嵌めた左手を胸元に寄せる。抱き締めたいなんて一瞬思ったけど、まだ待っている人達が居るので我慢する。


「アリス。五年間、僕達に着いて来るために努力してくれてありがとう。これからはパーティメンバーじゃなく、夫婦としてよろしくね」

 そう言って、アリスの左手の薬指に指輪を嵌めた。

「はい、ユート君……末永く、よろしくお願いします」

 ひと粒の涙を溢して、アリスが微笑む。五年間もの間、僕を想い続けて努力を積み重ねてくれていた事を、心から感謝している。


「アイリ。もう、君は僕の奴隷なんかじゃない。元々そのつもりも無かったんだけどね。君は僕の婚約者で……奥さんだ、いいね」

 そう告げて、アイリの左手の薬指に指輪を嵌める。

「はい、ユート様……私は、ユート様の婚約者です……」

 瞳を閉じて、嵌めてあげた指輪を確かめるように撫でるアイリ。

 もう奴隷は卒業だ。これからは堂々と、僕の婚約者だと宣言して貰おう。


「リイン、故国を離れて僕に付いて来てくれてありがとう。まだ頼りない王様だろうから、奥さんとして支えて欲しい」

 指輪をリインに嵌めてあげると、とても嬉しそうに微笑み返してくれた。

「お任せ下さい、ユートさん……私達の、旦那様」

 うん、それは照れるから今まで通りに呼んで欲しいな。

 リインは細かい所に気を配ってくれるので、きっと良妻賢母の素質があるだろう。彼女となら、互いを想い合い支えあっていける。


「クリス、僕を選んでくれてありがとう。君が奪われていた時間分……いや、それ以上だ。夫婦としてたくさんの思い出を作っていこう」

 クリスの左手を取り、その薬指に指輪を嵌める。

「ん……皆で、一緒に……」

 そう言って、指輪に口付けするクリス。

 相当、喜んでくれたようだ。三十五年分の倍以上の思い出を、たくさん一緒に作っていきたい。


「おめでとうございます!」

 そう言って、最初に拍手をし始めたのはジルだ。それに、他の皆も続く。

「ご主人、皆さんおめでとうございます!」

「おめでた~!」

「メアリー、それじゃあ意味合いが違いますよ。おめでとうございます、皆様」

「おめでとうございますぅ!」

「ごしゅじんさま、おねえちゃんたち、おめでと~!」

「おめでとさん!」

「末永くお幸せに!」

「おめでとうございますー!」

 皆の祝福を有難く受け取って、僕達は一礼する。

 これからは、ただの仲間ではなく夫婦として共に歩いていく。その覚悟を胸にして、僕も自分の指輪を嵌めた。


 結婚指輪は、どうしよっかなぁ。


************************************************************


 さて、今日の予定を消化した僕は、自室である人物と話していた。定時になったら連絡をすると言っていたメグミだ。

 予定時刻あたりになると、きっちり念話連絡を送ってきた。僕も送り出したメグミが気掛かりなので、定時連絡はありがたい。


『今日はイングヴァルト王国とファムタール騎士国の国境付近の村に宿泊します。水無月さんと相部屋なので、残念ながらそちらには行けそうにありませんね』 

『そうか、仕方ないな……その分、こっちに来た時はこれでもかってくらい甘やかしてやるから、覚悟しておけよ?』

 冗談めかして言うが、本気と書いてマジで。

『……っ! はい、楽しみにしてますっ!』

 僕の本気度を察したのか、メグミはそんな返答を返す。メグミの婚約指輪も用意済みだが、ビックリさせたいのでまだ内緒だ。

『あ、水無月さんが呼んでいるので、今日はこれで失礼しますね』

『あぁ、おやすみメグミ。ゆっくり休むんだよ』

『はい、先輩も。それでは、おやすみなさい』


 念話が途切れ、僕は椅子の背凭れに凭れ掛かる。

「しばらくは建国で大忙しかな。それが終わったら、こっそり旅も再開したいけど……」

 そんな独り言を言っていると、部屋の扉がノックされた。

「空いてるよ、姉さん」

 マップで来訪者が誰か把握していた僕は、姉さんを招き入れる。


「ユーちゃん、今大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫。どうかした?」

「いえ……少し二人で話したい事がありまして」

 何だろう?

「ユーちゃん、私はユーちゃんのお姉ちゃんを卒業して、お嫁さんになります」

 ……あぁ、そういう事か。

「そうだね。もう、姉さんじゃないんだね……キリエ」

 僕の呼び方に、姉さん改めキリエが表情を綻ばせる。


 そして、僕のベッドの上に腰掛けた。

「はい、ユーちゃん……」

 ……もしかして、そういう流れなのか? 僕を見つめる瞳が、潤んでいるようにしか見えない。

「順番は相談して決めたんです。その……旅に同行した順番という事になりました」

 キリエ・アリス・アイリ・リイン・クリス……の前にメグミが入るか……つまるところ、()()()()話なのだろう。

「……解った。そういう事なら”俺は”遠慮はしない。今夜、キリエの全部を貰う」

「初めからユーちゃんのものですけどね。それじゃあ……」


 ……その日の夜は、随分と長い夜になった。

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