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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第7章 アヴァロン王国

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07-02 四カ国会談/提案

これまでのあらすじ:四カ国会談参加者が、アーカディア島に到着しました。

 参加者がアーカディア邸に到着してから一時間、いよいよ会談の始まりだ。僕は姉さんと二人で、この日の為に用意した会議室に入る。

『よし、こっちは準備出来たよ。陛下達を会議室にお連れして』

 各国に同行させたアリス・アイリ・リイン・クリスに、参加者を連れて来て貰うように念話する。


 マップに映る光点が移動を開始したのを確認し、僕と姉さんは部屋の中央に立つ。

 数分後、全員が四方の扉の前に立った事を確認。さぁ、いよいよ会談の始まりだ。

『よし、じゃあ扉を開けてくれ!』

 両開きの扉を、運転手・給仕コンビに開けて貰う。


 人間族の住む東の大陸より、イングヴァルト王国。

 亜人族の住む南の大陸より、獣人の国・ミリアン獣王国。

 妖精族の住む西の大陸より、エルフ族の国・ヴォルフィード皇国。

 魔人族の住む北の大陸より、唯一の国家・オーヴァン魔王国。

 ——今、この場に四カ国のトップが集まった。


 ……


 運転手と給仕がまず扉から入り、両脇に退いて跪く。各国の王が先頭に立つ扉から、部屋の中まで絨毯が敷かれている。

 四枚の絨毯が行き着く先……そこに置かれたのは円卓。円卓には各々の王の席があり、その後ろに随伴者の席を設えた。

 各国の王が座る席は、玉座っぽい物を用意した。玉座の背凭れの頂きには、各国の紋章をあしらったエンブレムを用意。この会議の為に用意した一品物である。


「それでは、お席の方へ」

「陛下、どうぞこちらへ」

「ご案内させて頂きます」

「……ん」

 アリス、アイリ、リイン、クリスが参加者を席へと案内する。クリスはもうちょい喋ろうね。


 各国の王が席に辿り着いたので、僕達も挨拶をする。

「ようこそお越し下さいました、四カ国の皆様。この度、和平会談におきましてホスト役を勤めさせて頂きます、ユート・アーカディアと申します」

「ユートの補佐をさせて頂きます、姉のキリエ・アーカディアと申します。アーカディア島にお越し頂いた皆様、心より歓迎申し上げます」

 ホスト役として、僕達は一礼をする。


「イングヴァルト王国の国王、アンドレイ・フォルトゥナ・イングヴァルトだ。アーカディア男爵と女男爵、心からの歓迎痛み入る」

「ミリアン獣王国が獣王、バナードだ。両アーカディア卿の心尽くしのもてなしに感謝する」

「ヴォルフィード皇国皇帝、メイトリクス・デア・ヴォルフィードだ。アーカディア島を挙げての歓待に心からの感謝を」

「オーヴァン魔王国が魔王、アマダム・ガルバドス・ド・オーヴァンだ。ユート・アーカディア並びにキリエ・アーカディア、そなた達に謝意を示そう」

 各国の王がそう言って挨拶して来る。

「身に余るお言葉を賜り、光栄に存じます」

「それでは各々方、お席にどうぞ」


 陛下達が席に座り、随伴者も座ってから僕達は所定位置に行く。

 僕達の対角線上には、勇者四人の席を用意してある。

 ……マサヨシの視線がウザい。あいつ、締め出した方が良いかな。まぁ、そういう空気じゃないし……我慢しよ、というか無視しよ。


 さて、それでは会談を迎えるにあたっての、最後の役目だ。

「僭越ながら私の方から、四カ国における和平会談の開会を宣言させて頂きます。どうか、皆様にとって実り多き会談とならん事を」

 そして、会談が始まった。


************************************************************


「改めて、ご挨拶をさせて頂こう。イングヴァルト王国国王、アンドレイ・フォルトゥナ・イングヴァルトだ」

「余は魔王陛下と皇帝陛下にお会いするのが初めてか。ミリアン獣王国獣王、バナードと申す」

「うむうむ。私はヴォルフィード皇国皇帝、メイトリクス・デア・ヴォルフィードだ。イングヴァルト王以外は始めてだな」

「余はイングヴァルト王以外、初めてお会いするな。オーヴァン魔王国魔王、アマダム・ガルバドス・ド・オーヴァンだ。この度は、余からの呼び掛けに応じて頂いた事、心より感謝申し上げる」

 会談のきっかけは、アマダムの“各国と和平の為の話し合いがしたい”発言だったからな。


「うむ、魔人族との関係改善、過去の事を水に流すとまでは言えぬが、腹を割って話さない限りは何も先へは進めまい」

「左様。人間族との関係改善の為に、我が国も一歩を踏み出した。魔王国に共感する部分も無きにしも非ず」

「そもそも、その話を持って来た人物がユート殿……じゃない、アーカディア卿だからなぁ……」

「うむ」

「そうだな」

「あー……」

 何で皆、こっちを見るんだよ!!

「えー、私の話はどうでもいいので、和平の話をですね……」

 四カ国会談という厳粛な場で弄られるのは御免だぞ!


「まぁ、それもそうだな」

「うむ」

「さて、話を戻すとしてだ。今はまだ、我々魔人族に対して不信感や嫌悪感が拭えぬのは重々承知している。先代魔王の行い、そしてそれに従った魔人族達が世界に対して犯した罪は拭いきれぬ事も」

 あっ、これ重い話だわ。

「確かに、各国が被った被害は少なくない。しかし、ここは未来を話し合う場のはずだ魔王陛下」

「既にこの場に集まった事で、我々は魔王国との和平を成したいという意思を表明したと考えて貰って構わぬ」

「左様、我らが集ったのは、貴殿がこれからどうしたいのか、それを聞いて話し合う為ではないのか?」

 その言葉に、アマダムが目を見開く。おぉ……流石は大国の国家元首、言う事が違うな。


「というか、その辺りをグチグチ言っていたらユート君がな」

「うむ、折角ここまで場を整えたのに、無駄な事に時間を使うのはな」

「この会場の凝り様を見たまえ、相当本気で会談のセッティングをしているぞ」

「あぁ、それは確かに……そうだな、建設的な話をするとしようか」

「うおおぉい、ちょくちょく僕を引き合いに出すの、やめないっ!?」

 何で僕を引き込むかな、この四カ国の王共は!!


「まぁそういうワケだ、時間を有効的に使おうではないか」

「うむ。では今後についてだが、各国との交流を深め、相互理解の為に動き出したいと思っている。その中で出てくる不平や不満は、都度協力して対処していきたいと思っている」

「ふむ、良いのではないか?」

「うむ、余は賛成するぞ」

「異議なし」

 あれっ、何かすっごく円滑に話し合いが進んでいるんですけど!?


 立ち上がって異議を唱えた僕がおかしいみたいな空気じゃんか……とりあえず、座ろ。

 くぅ……っ、解せぬ!!


 ……


 そこから先の話し合いは、実にスムーズだった。時折各国の宰相や、殿下勢も発言し始め、様々な議論が交わされる。

「オーヴァン魔王国で取れる魚介類を輸入したいと……」

「ミリアン獣王国で作られた衣服が……」

「ヴォルフィード皇国の……」

「イングヴァルトで……」

 おぉ、交易の話かぁ。確かに他種族の文化に触れるには、いいかもしれない。

 また、互いに足りない所を補うじゃないけど、無いものを融通し合うのは大事な事だな。


「さて、ユート殿。折角なのでユート殿からも何か無いだろか?」

「話を振られたっ!?」

 何故振るんだ!! 僕はただの置物だと思っていたのに!!

「うむ、我々の発想をはるかに凌駕するユート殿だ。何か良い案は無いだろうか?」

「折角だ、この場に居る皆の意見を聞かせて欲しい」

 え、えぇ……? 流石のアーカディア勢(公爵令嬢組とクリス除く)も、顔が引き攣っている。


「え、えーと……が、学校を作るとか」

「む? 学校か?」

「学校とは……貴族学院か?」

「いえ、平民でも教育を受けられる学校です。勿論、貴族用の学校もあってもいいですし」

 各国の人材を育てる、または留学して交流を深めるとかね。

 それと、人材派遣か?

「例えば、獣王国の建築職人を魔王国に派遣するとか、皇国の魔導師を王国に派遣して魔法について指導するとか……」

「ほほう、それは面白い案だ」

 獣王陛下の言葉に、各国首脳陣が学校や人材派遣について話を始めた。

 ……何かマサヨシが睨んでるんだけど、何よ。折角のジ●ニーズアイドル風の顔が台無しだ。まぁ、どうでもいいけど……。


「あ、そうだ」

「む? 何かまだ案があるのか?」

 僕の反応に、アルファが視線を向けて来る。

「あぁ、どうせだからさ。各国で合同のイベントを催すとかしたらどうかなって。例えば……そうだな、演奏会とか、ダンスパーティーとか。ライブみたいなのもいいな」

「……ライブ?」

「舞台で、歌って踊るパフォーマンスを見て楽しむんだよ」

「ほぉ、後で詳細を教えてくれ」

 僕の発言に、勇者勢の視線が訝しげな物になる。あぁ、この世界にそういう催しとかはないもんな。

 ……ま、いっか!! 他にも何か思い付いたら、提案してみるか。

 言うだけはタダだからね。


 ……


 結局、話し合いは数時間に渡って行われた。

 途中でお茶休憩等を挟んだのだが、国家間交流の為の催しについての話題は過熱していく。

「それぞれの国の衣装を持ち寄って、披露するのはどうだろうか?」

「あぁ、それはいい考えだ獣王。余はその意見を支持する」

「うむ、良いではないか」

「ならばこれは可決だな」

 とか。


「各国の文化というならば、歌や演奏を順に行うのはどうか」

「素晴らしい提案だ、魔王陛下」

「順番を決めるのはどうするか」

「公正に、クジで決めるのが良いのではないか?」

 とか。


 しかし、難航したのが料理だ。食文化の交流は外せない、しかし一度に各国の料理を出してもゴチャゴチャしてしまって見栄えも悪いし、どうしたのものか。

 そんな中、提案して来たのは意外な人物だった。

「それなら、出店にしてはどうでしょうか?」

 おずおずとした様子で挙手しながら、提案してきたユウキに視線が集中する。

「成程、出店形式とはいい考えかもしれない。祭り感も出るしね」

「ふむ? 出店、とは?」

 あぁ、この世界では出店という概念は無いようだな。


「出店というのは、こちらでは露店という方が解りやすいでしょうね。通路上に仮設の店舗を並べて、飲食物を販売するんですよ」

 その言葉に食い付いた国家元首達の視線が、僕に集まる。

「む、それは面白そうだな」

「うむ。その辺りについても検討が必要だな」

「感謝するぞ、勇者ユウキよ」

 国家元首達のお褒めの言葉。

「い、いえ……どうも……」

 ユウキが恐縮したように顔を俯かせるが、もっと胸を張っていい。後でフォローしよう、ナイスだったよユウキ。


 ……


 それからも、四カ国合同の催しについて話が盛り上がり……ある問題点に行き当たる。

「さて、そうなると会場だな」

「そうだな、どの国でやるかという問題が出て来る」

 そう、どの国でその催しを行うのか。催しを行う国が、四カ国において優先権を持つだとか、そんなバカを言い出す輩が居ないとも限らない。

「左様、中立の土地があればいいのだがなぁ……」

「何処かに無いかな、そんな島とか……空に浮いてたり……」

「露骨過ぎる!!」

 暗にアーカディア島でやらせろって言ってるだろ!! それは構わんけど、言い方って物が……!! 一応、ここ僕が所有している事になっている島ぞ!?


「……各々方、それについて関わる点ですが、少々提案があります」

 そんな空気をぶった切ったのは、アルファだ。

「む? どうした、アルファルド」

「ええ、少々お時間を頂けますでしょうか。これは国家間和平においても、恐らく重要な案件となるでしょう」

 そこまで言われては、国家元首達も佇まいを直さざるを得なかった。


 ……おや、アルファだけでなく、ブリックやマック、リアも起立している……アマダムもか。何だろうね?

「さて、今回の和平会談で提案したかったのは、ユートについてです」

「えっ、僕?」

 何だよ、僕についてって……何か、恐いんだけど!

「ユートが旅に出る前に、私はユートに我が国に仕官しろと勧誘をした事があります」

「あぁ、俺もだ」

「私もしたね」

「余もするつもりだった」

 うん、確かにされたね。


「……四カ国からの勧誘か」

「……ふむ」

「むむ……やはり他国もそう出ていたか」

 唸る国家元首達。ていうか、そんなに重大な事なのか?


「さて、ユートを取り合って争いになり、我々の間に不和が生まれるのはあまりにも愚かしい。故に、我々は何度か話し合いを行ってきた」

「えっ、そんな事してたの!?」

「あぁ、していたのだ」

 あっさり肯定するアマダム。い、いつの間に……。

「よって、我々は話し合い……ユートの勧誘を四カ国全てが取り下げるべき、という結論に至りました」

「……アルファルドよ、言いたい事は解るがそれは……」

 苦言を呈そうとするアンドレイ叔父さんだったが、アルファがそれを押し留める。


「重々承知しております。ユートは四カ国に伝手を持ち、その伝手と彼自身の力を以って四つの国を繋げ、そして今日ここまで導いた張本人です」

 そんな大した話じゃないと思うんだけど、そんなん。

「そして、類稀な技術力と圧倒的な武力を保有し、世界各地で暗躍を見せる悪魔族に対抗できる存在。自国に引き込みたいと考え勧誘するのは、至極当然の事」

 ……何か、僕がとんでもない重要人物みたいに言われているんだが。

「勧誘を取り下げる代わりの、代替案があるんだよ」

「国家間の不和……それは誰もが避けたいと思っていますからね」

「うむ。そして勧誘を取り下げる代わりに、ユートにはある提案を受けて貰いたい」

 ……提案? 何それ、何か恐いんですけど。

 代表としてなのか、アルファが僕に対して正面に向き直る。


「ユート、このアーカディア島で新国家を建国しろ」


 ………………はっ? 

「はああぁぁぁぁぁっ!?」

 何を言っているんだ、こいつ!?

「新国家建国だと!?」

「ぜ、前代未聞ではないか!!」

「それも、こんな若い少年がか!?」

「殿下方に魔王陛下! 正気ですか!!」


 各国の側近達が、アルファ達の言葉を否定している。その反応は正常です。

 というか、逆に叔父さん達国家元首の表情が、真剣に思案している風に見えるのですけど!?

 待って、一笑に付そうよ!!


「アーカディア島に、建国……か」

「確かに、ユート殿を手に入れるという事は、この島を手に入れる事と同義だな」

「各国への転移門が存在するこの島……国家としては是が非でも手に入れたいのが実情。しかし、それは和平協定の根幹を崩し、争いの火種となろう……」

 えっ、何か真剣に話し出したんですけど……マジ?


 思案する三カ国のトップに、アマダムが向き直る。

「では、各々方も考えて頂きたい。ユート自身がこのアーカディア島で王として君臨するならば……」

「……ふむ四カ国の立場は、ユート殿の国の友好国という形になるな」

「そうだ。更に言えば、四カ国の囲む海の上に浮かぶ天空島……我らの協定において、ユートとユートの国こそが、我らを繋ぎ止める存在になるとは思わぬか?」

 えっ、何か僕がすっごい厄介な立場になりそうなんですけど!?


 更にリアンナが意見を述べる。

「ついでに言いますと、各国の転移門を利用してアーカディア島を基点とすれば、流通や交流が活発化するとは思いませんか?」

「なるほど、ユート君の国には我らの同盟関係の中立国家として、間に立って貰う。そしてアーカディア島を中心とした国交を展開し、交流を深めると……」

 ……あー、橋渡ったり海渡ったりしなくて良いのは、確かにそうなんだけどさぁ……。


「それに、悪魔族の件がある」

 ブリックの言葉に、国家元首達の表情が引き締まる。

 ……悪魔族。各国で暗躍する、地の底から這い出てきた邪悪な種族。地上の人達の、明確な敵対者。

 実際に悪魔族が生み出した影の軍勢に、獣王国は襲われたわけだからな。

「悪魔族に対応するには、ユートの力を借り受ける必要がどうしてもあります」

「その為にも、同盟の中心にユートが居るのが望ましいだろう?」

「国家間の連携の中心人物が、平民の冒険者っていうのは国としても座りが悪いですからね」


 ……まぁ、言わんとしたいことは……解らないでも無いけどさぁ……。

 でも、わざわざ僕が建国しなくても良くないかな。例えばアーカディア島を四つの区画に分けて、各国で治めて貰うとか……。

 あっ、それいいんじゃない? 思い立ったが吉、これ以上厄介な事になる前にその提案をしよう。

「あのさ、それ……」

 と思っていたら、意外な所から意見が出て来た。


「私、アークヴァルド公爵家長女アリシアは、殿下方の意見に賛成します」

「ヴォークリンデ公爵家が次女、リイナレインもその意見を支持します」

「……王妹クリスティーナ、賛成……」

 んんんんん!? 君達、何言ってくれちゃってるの!?

「ユート様、奴隷の身分で差し出がましく思いますが、私も賛成です」

 アイリまでっ!? 

「あ、俺も賛成ですご主人」

「ご主人様、僕もです」

「ご主人様~、王様になりましょう~!」

「私も賛成ですぅ!」

「ご主人様、私も賛成させて頂きますわ」

「ユート、俺も賛成だ」

「ユート兄なら、いい王様になれると思うよ!」

「ユート殿、私も賛成に一票です」

「ごしゅじんさまがおうさまになるときいて!」

「あっ、クレアちゃん! 今大事な話し合いですよ! あっ、私も賛成です!」

<ユートさん、幽霊も一票です>


「満場一致じゃねぇか!?」


 いや、まだだ! まだ姉さんが居る!!

「ユーちゃん、国の名前はどうしましょうか。やっぱりいっときます? ユートピア」

「それは嫌だって言ったじゃん!! あと、建国もう決定してんの!?」

「あっ、勇者という立場は置いて、一人の後輩として私も賛成します」

「メグミまで!?」

 お前もか、ブ●ータス!! 味方がいねぇ!!


「メ、メグミっ!? 本気か!? あんな奴が王様になったら、とんでもない国になるに決まっているじゃないか!!」

 テメェ、喧嘩売ってんだなマサヨシ? いいぞ、いくらでも買ってやるぞ?

「鏑木さんは黙っていて下さい。私の意見を述べただけです、その意見を変えるつもりはありませんから」

 不信感を含んだ視線が、マサヨシを射抜く。流石のマサヨシも、メグミの態度が不信から来るものと気付いたのか、口を噤んだ。


 アーカディア勢に触発されたのか、考え込んでいた三カ国のトップ達が動いた。

「……イングヴァルト王国国王、アンドレイ・フォルトゥナ・イングヴァルトは、ユート・アーカディアの建国に賛成し、その後見となる事をここに宣言しよう」

「叔父さんっ!?」

「ミリアン獣王国が獣王バナード、イングヴァルト王に同じく」

「ヴォルフィード皇国も皇帝メイトリクス・デア・ヴォルフィードの名において同意しよう」

「おぉい、マジか!?」

「あっ、余は元から話し合いに参加していたので、オーヴァン魔王国として賛成するぞ」

「知ってるから一々言わんで良いわ!! ゲホッ……ゲホゲホッ……!!」

 叫びすぎて喉枯れそう。

「ユート様、大丈夫ですか? お茶をどうぞ」

「ありがとうアイリ……でも、僕の喉がブレイクした原因の一端は君にもあるからね?」

 とりあえず、お茶で喉を潤しておく。あー、染み渡るぅー。


 項垂れる僕に、アマダムが近寄ってきた。

「ユート、悪魔族に対抗する為に……そして、この世界を一歩でも平和に近付ける為に、我々は力を尽くすつもりだ。その為に、お前の力を貸して欲しい。この通りだ」

 そう言って、アマダムは頭を下げた。

「頼む、ユート君」

「この通りだ」

「ユート殿、お願いする」

 四国家の元首が総出で頭を下げて来た。

 これは断れない雰囲気ですよね解ります!! 解りたくないけど解りましたよ!!

「……建国、一応頑張ってみます……」

 あー……“身内”のお願いに弱いって、絶対解ってるだろこの人達は……。

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