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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第6章 オーヴァン魔王国
72/327

06-06 大迷宮へ/同行者?

これまでのあらすじ:クリスティーナ姫改めクリスを解放した、力技で。

 さて、オーヴァン魔王国に到着して三日目、僕達は行動を開始する事にした。

 大迷宮攻略の準備である。

 欠損回復と死者蘇生を実現できる手段があるのは、大迷宮の最深部の可能性が高いというアマダムの情報を信じ、攻略に乗り出すのだ。


 その旨をアマダムに伝えると、もう少しゆっくりしていけばいいと言われたのだが……待っている仲間達がいるのだ。

 むしろ、アマダムよりもクリスを宥める方が大変だった。

「折角仲良くなれたのに……」

 そんなに、シュンとした顔をされると困ってしまう。

「大迷宮を攻略したら、もう一度会いに来るよ」

 そう約束して、ようやく納得して貰った。


 さて、迷宮攻略前にステータスチェックだ。


************************************************************


【名前】ユート・アーカディア

【職業/レベル】/付与魔導師エンチャンター/23→26

【ステータス】

 体力:39→40(+100)

 魔力:37→38(+30)(+100)

 筋力:36→37(+100)

 耐性:40→41(+100)

 敏捷:35→36(+100)

 精神:38→39(+100)

【技能】付与魔法LV7→8・遺失魔道具アーティファクト製作LV7→8・魔道具製作LV7→8・銃撃LV4→5・剣術LV4→5

【称号】名も無き英雄(NEW)・黒騎士バハムート(NEW)・ドワーフの友(NEW)・魔王妹の解放者(NEW)


【名前】キリエ・アーカディア

【職業/レベル】/剣士フェンサー/27→30

【ステータス】

 体力:90→93

 魔力:102→105

 筋力:73→75

 耐性:88→91

 敏捷:106→109

 精神:93→96

【称号】ドワーフの友(NEW)・魔王妹の解放者(NEW)


【名前】アリシア・クラウディア・アークヴァルド

【職業/レベル】/魔導師ウィザード/24→27

【ステータス】

 体力:57→58

 魔力:85→88

 筋力:54→57

 耐性:52→55

 敏捷:84→87

 精神:75→78

【技能】水魔法LV6→7・風魔法LV4→5・光魔法LV5→6・銃撃Lv3→4

【称号】ドワーフの友(NEW)・魔王妹の解放者(NEW)



【名前】アイリ

【職業/レベル】/戦士ファイター/17→20

【ステータス】

 体力:41→44(+20)

 魔力:40→43

 筋力:39→42(+20)

 耐性:35→38(+20)

 敏捷:72→75(+20)

 精神:52→55

【技能】剣術Lv3→4・銃Lv3→4

【称号】ドワーフの友(NEW)・魔王妹の解放者(NEW)


【名前】リイナレイン・デア・ヴォークリンデ

【職業/レベル】/魔導師ウィザード/27→30

【ステータス】

 体力:53→56

 魔力:81→84(+20)

 筋力:52→55

 耐性:49→52

 敏捷:80→83

 精神:82→85(+20)

【技能】風魔法LV7→8・水魔法Lv8→9・地魔法Lv6→7・弓術LV9→10・森林魔法Lv7→8・銃撃Lv1→2

【称号】ドワーフの友(NEW)・魔王妹の解放者(NEW)


************************************************************


 うん、大迷宮攻略に支障は無さそうだね。


 そんな事を考えていたら、予想外の事態に陥った。余計な人物が余計な決定をしたのだ。

「俺達も大迷宮を攻略する事にした」

 勇者マサヨシの、そんな宣言である。仲間達は、バツの悪そうな顔をしている……多分、ゴリ押ししたのだろう。

「そうか、頑張ってくれ」


 そう言い残して、僕達は早速出発しようとするのだが……ピッタリくっついて来た。

「行き先は同じなんだ、何も文句は無いだろう?」

 ……クソったれ。こういう時、行き先が同じだと面倒だ。

 移動、戦闘、野営において、すぐ隣りに居ても文句が言い難い。寄生行為スレスレじゃないか。


 寄生行為とは、例えばマナーの悪い商人などが、護衛を連れた商隊にピッタリくっついて移動・野営をし、商隊が連れている護衛の戦力を頼るというものだ。

 これに対し、文句を言っても相手はこう言うのだ……「たまたま、行く方向が同じだけじゃないか」と。

 そして、護衛を雇う金を浮かせる。碌でもない。

 マサヨシの事だから、寄生のつもりはないだろうけどね。大方、僕に対して「勇者の力を見せて、思い知らせてやろう」とか考えているんだろう。


 振り切ってやろうかと思うのだが、メグミがいるし……マナとユウキは嫌いじゃないし。くそ、マサヨシめ。

 それに、移動速度は変わらない。僕達に宝物庫ストレージがあるように、勇者には無限収納庫イベントリがあるのだ。

 ちなみに馬車を使えないのも、マサヨシ達の目の前で転移魔法を使いたくないからだ。どうせ、クロイツ教国に帰らせろとか、無理難題を言われるに決まっている。

 その辺りは他のメンバー(メグミ含む)と相談済みで、マサヨシには可能な限り遺失魔道具アーティファクトの事を隠す方針に決定した。


 メグミは人柄を知っているし、他人の秘密を軽々しく口外する子じゃないから良い。

 マナやユウキはまだよく解らない……が、悪い奴らでは無さそうだ。

 しかし、僕に敵執心バリバリのマサヨシは駄目だ。よほどの事がない限り、遺失魔道具アーティファクトの事を明かせる人物じゃない。


 ……


 さて、道中は平和そのものだ。この辺りに魔物がいない訳ではないが、僕達は一度も遭遇していない。

 理由は簡単、魔王国の軍が定期的に魔物討伐を行っているからである。市民の安全の為というアマダムの指示だ。流石はアマダムである。

「魔王軍の練度は高いな。被弾を避ける事を第一に、継戦能力に長けているし」

「そうですね、軍としての練度は非常に質が高いと思います」

「連携も素晴らしいです。私達も負けていられませんね」


 僕達の魔王軍の評価が聞こえたようで、マサヨシが口を挟む。

「俺達だって連携なら負けていない、なぁ皆!」

 リーダー格の言葉に、決まりの悪そうな空気で首肯する三人。まぁ、首肯するしかないもんな、空気的に。

 っていうか、一応は別パーティなんだから便乗して来んなよお前。

 なし崩し的に同行しそうだな、これは……他の三人がマトモな分、グレン達よりはマシだと自分に言い聞かせて、先に進む事にした。


 ……


 神はどうやら、よっぽど僕が嫌いらしい。創世神様がこんな悪意を振りまくとは思ってないから、世界神に違いない。

 この状況下で、最も会いたくない奴が現れたからだ。

「……随分賑やかなパーティだね、付与魔導師君」

 女好き冒険者グレン、登場。ドワーフ族が増えているんだが。また口説いたのか、こいつは。


 この世から退場させたいのをこらえて、訂正を入れる。

「こっちの勇者四人は別パーティだ、僕達とは関係ないね」

 そう言って、今の言い方だとメグミに悪いよな、と思って念話を送る。

『メグミはパーティが違っても、身内だと思ってるからな?』

 僕のそんな念話による弁明に、メグミが苦笑した。

『解っていますよ、先輩。でも、ありがとうございます』

 嬉しそうな様子だし、気にはしていないようだ。


「勇者……だと? この四人が?」

「あぁ、俺はクロイツ教国が召喚した勇者で、マサヨシ・カブラギだ」

 胸元からステータスが書かれた身分証を出すマサヨシ。冒険者のライセンスカードではないようだ。

『ユーちゃん、あれは国が発行する特別な身分証です。国家が勇者と認定しているという証明ですね』

 なるほど、他国を旅するのに、そういう身分証も必要だろうからな。


「おぉ、それは正しく勇者様の!! 私の名はグレン、銀級の冒険者です!」

 そう言って跪くグレンとその仲間達。

 グレンの奴、僕みたいな対象は見下した態度を取るが、上位者や権力者にはゴマを擦るタイプと見た。

「顔をあげてくれ、グレン殿。銀級の冒険者といえば中堅だろう、俺達より経験豊富なはずだ。良かったら、色々教えてくれると助かる」

「お任せ下さい勇者様、このグレンに務まるのであれば、いくらでも!」

「よろしく頼むよ、グレン殿」

 ……うーん、マトモな勇者と冒険者に見えるな。不思議だね。

 そう言えば、今まで特に気にもとめていなかったグレン達のステータスも見てみようかな。


************************************************************


【名前】グレン

【種族/性別/年齢】人間/男/22歳

【職業/レベル】魔法剣士マギソードマン/20

【ステータス】

 体力:55

 魔力:50

 筋力:54

 耐性:52

 敏捷:51

 精神:53

【技能】剣術Lv7・火魔法Lv8・地魔法Lv6

【称号】魔法剣士・女好き・ハーレムの主

【賞罰】なし


【名前】ミレア

【種族/性別/年齢】人間/女/16歳

【職業/レベル】魔導師ウィザード/17

【ステータス】

 体力:35

 魔力:48

 筋力:32

 耐性:30

 敏捷:29

 精神:45

【技能】水魔法Lv5

【称号】魔導師・グレンの恋人

【賞罰】なし


【名前】シャロン

【種族/性別/年齢】人間/女/18歳

【職業/レベル】狩人ハンター/16

【ステータス】

 体力:43

 魔力:21

 筋力:39

 耐性:35

 敏捷:52

 精神:34

【技能】弓術Lv5・罠設置Lv4

【称号】狩人・グレンの恋人

【賞罰】なし


【名前】ビーナ

【種族/性別/年齢】獣人(虎)/女/25歳

【職業/レベル】獣戦士ビーストウォーリアー/14

【ステータス】

 体力:49

 魔力:20

 筋力:52

 耐性:48

 敏捷:42

 精神:26

【技能】斧術Lv6

【称号】獣戦士・グレンの恋人

【賞罰】なし


【名前】ダリア

【種族/性別/年齢】ドワーフ/女/15歳

【職業/レベル】戦士ファイター/12

【ステータス】

 体力:48

 魔力:12

 筋力:55

 耐性:41

 敏捷:25

 精神:34

【技能】槌術Lv3

【称号】戦士・グレンの恋人

【賞罰】なし


************************************************************


 ……まぁ、銀級パーティ平均ってこんな感じみたいだよ。テリー氏達とどっこいどっこいだね。


 さて、時間的にも丁度いいので、このまま野営である……え、この三パーティでか?

 流石に誤魔化しは効かない状況なので、妥協案として収納鞄アイテムバッグから取り出すフリをして、宝物庫ストレージからテントや野営道具を出す。

「それは、収納鞄アイテムバッグか?」

「そんな貴重な品を持っていたのか、正に宝の持ち腐れだね」

 ……イライラするな。いい、無視だ無視。


 というか、仲良く会話をしているマサヨシとグレンだが、お前ら働けよ。

 勇者組はユウキがせっせと二つのテントを設営して、女性陣が料理をしている。

 ハーレム組は女性陣の半分がテント設営、もう半分が調理だ。

 当然、僕達は全員で協力して野営の準備を進めている。働かざるもの食うべからずなのだ。


 ハーレム組は相変わらずの黒パン、屑野菜スープ、干し肉。

 勇者組は炒飯、サラダ、クリームスープ。

 僕達はオムライス、トマトスープ、ミノタウロス肉のサイコロステーキ。

 各パーティがそれぞれの陣営で食べる……かと思いきや、マサヨシとグレンの一存で共同野営に発展した。うん、そんな気はしていた。

 メグミ達が本当に申し訳無さそうにしているし、今回はもう諦めよう。


「もういい。今夜は共同野営、それを了承しよう。それならば、見張りをどうするかを先に決めておきたい」

 グレン達がクエスト王国の時のような暴挙に出ないようにしなくてはなるまい。なので、こちらから切り出しておく。

「確かにお前の言う通り、この規模の野営だ。見張りは一人二人では辛いだろうな」

 マサヨシ如きにお前呼ばわりされる筋合いはない。

「ふっ、流石の付与魔導師君でも、見張りの重要性は解っているようだね」

 クエスト王国で見張りも立てずにヤりまくってたお前が言うな。


「各パーティ、一人ずつがいいと思います。人数がそれぞれ違いますが、他人のパーティのテントに出入りするのもどうかと思いますし」

 ナイスだ、姉さん!!

「キリエさんは流石ですね、細やかな気配りができる」

「確かにそうだな、流石はキリエさんだ」

 馴れ馴れしく姉さんに微笑みかける二人。

 だが、姉さんの本音は「罷り間違ってもこいつらに寝ている姿を見られたくない」だろうな。他のメンバーを見ても、多分その予想は外れていないと思う。


 ……


 食事を終えた僕達は、夜番を残して寝る。最初の番はアイリ・マサヨシ・ドワーフ女性のダリアだ。

 マサヨシが機嫌良さそうに話しかけているみたいだな。アイリは必要最低限の返答だが、ダリアは普通に話している。

 話題はグレンの事のようだ。マサヨシもグレンの態度はお気に召したらしいな。

 ダリア達全員がグレンの恋人と聞いて、マサヨシは驚いていた。だが、平等に愛してくれるという言葉とダリアの幸せそうな様子に納得したのか、グレンの評価を上げたようだ。

 しかし、そこで何故僕を引き合いに出すのか解らないな。


 ……


 やがて、僕の夜番が来た。夜番のお供はユウキとグレンだった。ユウキはともかく、グレンかぁ……やだなぁ……。

「お疲れ様です、ユートさん」

「お疲れ様、ユウキ。変わりは無さそうかな?」

「はい、特に何も」


「勇者様に対して、君の口の聞き方は礼儀がなっていないんじゃないかな、付与魔導師君」

 口を挟んでくるグレンがウザい。

「僕は気にしていないので、グレンさん。ユートさんの方が僕よりも、何倍も強いですし」

 少し陰りのある表情だな。


「何か、悩みごと?」

「……えぇ、まぁ」

 もしかして、説教の件かな。

「錬成魔導師の勇者が以前にも居たのだって聞きました。その人は、変異種という魔物の大群に挑んで、勝ったとも……でも、僕に同じ事が出来るかと言われたら……」

 そっか、ショウヘイさんも錬成術師だったな。

「諦めないで、前を向いて頑張るしかないんじゃないかな? 僕だってハズレジョブって言われている付与魔導師だけど、こうして冒険者ができているし」

「ユートさんは、強いですよね……」

う、これは言ってもネガティブに走りそうな感じだな。


 しかし、思わぬ所から声がかけられた。

「最初は誰だって弱いんですよ、ユウキ様」

 そう、グレンだ。

「私も最初は、何も出来ずに切り傷が増えていくだけの駆け出しでした。ですが、出来ることを積み重ねていって、自分の力を信じて腕を磨いて来ました」

 ……まぁ、こいつはこの若さで銀級冒険者になっているんだもんな。それなりに努力を積み重ねて来たんだろうなぁ。

「私にも出来た事なのです、ユウキ様に出来ないはずがありませんよ」

「……ありがとうございます、グレンさん」

 ……ちょっと、グレンがいい事言ってるんだけど。明日の昼には大迷宮なのに大丈夫かな……晴れ時々槍だったりしないかな。


 結局、その日の夜番は何事も無く終わった。


************************************************************


 夜が明けた。

 グレン達は、僕達と勇者達が大迷宮へ向かうと聞き、姉さん達と勇者達に同行を申し出た。徹底した僕に対するシカト、いっそ感心してしまうね。

 ちなみに、勇者勢はマサヨシがそれを了承したので正式に同行となるが、ウチのメンバーは全員で無視したので同行者とは考えていない。

 ついでに、ただ同じ方向に進んでいるだけで、マサヨシ率いる勇者パーティも同行者ではない。


 道中なのだが、マサヨシとグレンが事あるごとに僕をディスる。

 そんな僕への態度が姉さん達を怒らせている事を、マサヨシもグレンも未だ自覚していないらしい。もはや、呪いの域に達していないか?


 尚、メグミはグレンを避ける方向で動いており、マナもそれに追従している。

 どうやらメグミは姉さん達にグレンのこれまでを聞いているみたいだな。そして、メグミからマナに情報が流れた。

 哀れとは思うが同情はしない。


 さて、女好きグレン駄目勇者マサヨシは放っておいて、僕はマップを確認する。

 大迷宮までの道筋に、魔物はほぼ居ないな。

 うん、自称同行者共以外は順調な旅だ。どちらも、パーティリーダーの性格に難があるだけで、普通なら戦力的には頼もしいんだけどなぁ。


 大迷宮に向けての道中は、予想通りのものだった。

 勇者の世界の話をするマサヨシに、グレンが質問をしたり。グレンの冒険者講義に、マサヨシが真剣に聞き入ったり。面倒なヤツ同士、仲が良いようだ。


 尚、所々で僕を引き合いに出すので、姉さん達のストレスがマッハだ。無論、僕もイライラが募って仕方ない。


 ……


 そんなこんなで僕達のフラストレーションを溜めながら、いよいよ大迷宮の入口が見えて来た。

 大迷宮は巨大な門で口を塞がれ、魔物の流出を押し留めているようだな。どうやら、門は全部で三つあるらしい。

 門の隅にある普通の扉、僕達はそこから入る。


 順調に三つ目の門を通り抜け、僕達は大迷宮の入口に辿り着いた。

「さて、勇者マサヨシ。どちらに向かうつもりだ?」

「……俺の勘だと、しばらく真っ直ぐだ」

「そうか、僕達は右へ行くから、ここでお別れだな」

 僕の言葉に、勇者達とグレン達が目を剥く。


「何を不思議そうな顔をしている?」

「いえ、その……」

 言葉が見つからないのか、バツの悪そうな表情で視線を逸らすマナ。


「待て、別行動をする意味が解らない。理由は何だ」

 別行動……ね、やはり解っていないようだ。勘違いを正す必要があるので、少し厳しめに言うか。

「勘違いするな勇者マサヨシ、僕達は君達のパーティとは別パーティだ。昨夜の野営については了承したが、大迷宮攻略は別問題だ」

 それに対し、マサヨシはまた顔を顰めて反論する。


「大人数の方が、安全だろう! キリエ達を危険に晒す気か!」

 最もそうな言葉を口にするが、そんなマサヨシに対してウチの女性陣が目を吊り上げた。

「あなたに呼び捨てにされる謂れはありません」

「不愉快ですから止めて下さい」

 僕が一言言ってやろうと口を開く前に、ピシャリと斬って捨てる姉さんとリイン。他の二人もそれに頷く。

「うっ……」

 厳しい言葉と視線に、マサヨシが気圧される。


 そこに割って入るのは、KYグレンだ。

「ならば、ここから正式に同行者として同行すれば良い。それが嫌なら、君一人で右に行きたまえ」

 こいつは本当に何を言っているのか。

「同行するつもりはありません。ユート君が右に行くなら、私も右に向かいます」

「そもそも、私達が大迷宮攻略を先に宣言したのです。最初からあなた方を宛てにしていません」

 アリスとアイリの言葉に、今度はグレンがたじろぐ。


「お前らが大迷宮を攻略しに来た事も、僕達のパーティと同じ速度でここに来た事も、野営場所が同じだった事も”たまたま”だろう。そして、お前達は真っ直ぐ行くんだろう? なら、右に行く僕達とはここでお別れだ、それの何がおかしい?」

 僕の言葉に、マサヨシもグレンも何も言えずに黙り込む。やれやれ、話にならないな。


 それに付き合わず、僕達は早々に右側の通路に向けて歩き出した。

「待てっ! 話はまだ終わっていない!」

「知らないな、君達の都合に付き合ってやる理由は無い」

 そのまま、マサヨシとグレンが追い縋ろうと駆け寄って……。

 ——パァン!! 

 乾いた銃声が、響いた。撃ったのは僕じゃない、姉さんだ。見れば、他の三人も武器を構えている。


「キリエさん、な、何を……」

「私達の行く先を塞ぐなら、敵と判断します」

 厳しい視線の姉さんに、グレンもマサヨシもたじろぐ。

「私達の行く手を塞ぐ正当な理由は何ですか?」

「それが無いのに、私達を引き止める権利が貴方達にありますか?」

 アリスとリインの厳しい視線と言葉に、何も言えなくなった二人。


「行きましょう、ユート様。時間が惜しいです」

「そうだね、行こう」

 彼等を放置して、僕達は歩き出す。あー、ようやく自分達のペースで行動できそうだ。

『何かあったら、すぐ連絡してくれ』

『はい、先輩!』

 メグミにだけは念話を入れてフォローしておく。まぁ、勇者のステータスなら命の危険は無いだろうけどね。


 ……


 さて、彼等を放置して歩き出した僕達は、左目のマップを活用し先を目指す。

「ユートさんのお陰で、楽に進めますね」

「はい、流石はユート君です!」

 リインとアリスが誉めてくれるのだが、こっちとしては少々バツが悪い。ズルしているようなものだからね。まぁ、それでもマップは使うんだけど。


 さてさて、マップで周囲を把握できている僕である、現在の勇者マサヨシ率いる勇者パーティと、冒険者グレン率いるハーレムパーティの現在位置も解る。

「ユーちゃん、一つ質問です。彼等は今、どこに居ますか?」

「僕達の後方十メートルだけど?」

 つまり、結局彼等は付いてきたのだ。

 メグミからも念話で知らされていたから、マップで見るまでもない。全く理解に苦しむね、何を考えているのやら。

 ちなみに、こういう正当な理由なき追跡等の行為は、冒険者としては最低のマナー違反である。寄生と一緒。

 どうせグレンの中では、姉さん達を守るためだとか言って正当化するんだろうけどね。


 おっと……反応あり、お出迎えのようだ。前方十メートル、ゴブリンが三十匹。

「ゴブリンが居る、三十匹だ。一人頭六匹、瞬殺していこう」

 僕の言葉に首肯し、武器を構える。

 丁度いいので、マサヨシとグレンに思い出させてやろう……格の違いというものを。


 まずは各々の銃撃で五匹減った。こちらに気付いたゴブリン達が駆け寄ってくる。

 第二射で五匹減る。更に三射目で五匹減。

 流石に目前に迫れば、銃撃で対処するのは悪手になりかねない。刃に魔力を流して振動剣バイブレーションソードで、残る二匹ずつを斬り殺す。

 はい、討伐完了。

 ゴブリン発見から、一分足らずの出来事である。

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