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刻印の付与魔導師(エンチャンター)  作者: 大和・J・カナタ
第6章 オーヴァン魔王国

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06-02 魔王アマダム/魔人族の英雄

これまでのあらすじ:魔王様が見てる。

 先程から脳裏に響く、姿の見えない魔王の声。

 どんなカラクリなのやら。

<アングルス、彼等を余の下へ連れて参れ。無礼に対する謝罪をするのに、声だけで済ませるのは彼等に対し無礼の上塗りとなろう>

 ……ほう? この魔王、随分と律儀な性格らしい。

 評価を上方修正……いやいや、僕は何様だよ。

<本来ならば余自ら出向く所だが、生憎と手が離せぬ。彼等を余の客人として、丁重に持成せ>

「……畏まりました、陛下」

 この場に居ないはずの魔王に対し、ある方向に向けて恭しく一礼するアングルス。あぁ、あっちは魔王国の王都の方角だな。


「……人間族共よ、魔王陛下が貴様等をお呼びだ。黙して付いて来るが良い」

 威圧的に声をかけて来るリーダー格の男。しかし……。

<アングルス?>

「いえ、その! ……魔王陛下の客人として持成そう、付いて来て貰えるか」

 何か……魔王、すげぇな。

「何だか、ユート様みたいですね」

「あ、それ私も思いました」

 アイリにリイン、どういう意味かな!? 


 ……


 アングルスとやらが、付近にある砦へと僕達を案内した。

「……ここから、王都付近の砦へ跳ぶ。遅れた場合取り残されるので、注意する事だ」

 一応客人扱いなのかな、ギリギリで。ちゃんと注意点を説明してくれているのは、純粋にありがたい。

「忠告感謝します、アングルス殿」

「……フン」

 僕の言葉に鼻を鳴らすアングルスの眉間に皺が寄っている。

 だが、光点を見ると知人レベルを示す色になっていた。悪感情は抱いていないらしい。

 むしろ、悪感情を抱いているのが一人……マサヨシだ。敵意まではいっていないけど、かなり敵意に近い……まぁ、どうでもいいか。


 案内されたのは、砦の最深部の部屋。その部屋の床面に、見覚えのある魔法陣が描かれている。

「お、転移の魔法陣か」

「む? よく解ったな」

「母さんが転移魔法の使い手でね」

 僕の説明に、アングルスは驚いた様な表情をしているが、同時に納得したようだ。


「それでは王都へ向かう。遅れるなよ」

 魔力を兵士達が数人がかりで注ぎ込み、魔法陣が光輝く。このタイプは、多分対となる魔法陣に転移するタイプのものか。僕や母さんのやり方とは、少し違うのね。

 アングルスを先頭に、僕達は兵士に促され転移魔法陣の上に乗って転移する。


************************************************************


 転移先は、王都を囲む防壁の外にある砦だった。砦の作りは同じなんだな。

「馬車が手配されていたようだな。流石は陛下、抜かりが無い」

 よっぽど心酔しているのか、魔王陛下に対するアングルスの態度が何だか忠誠を超えた何かに見えるな。そこまで部下を惹き付ける人柄なのだろうか。


 僕達冒険者組と、勇者組で馬車に別れて乗る。

 すぐに王都の外壁の門を潜り、魔王国の王都グランディアに入った。

「……おぉ」

 王都グランディアは、石造りの建物が立ち並ぶ中世ヨーロッパ風の街並みだ。

 住民が闊歩して買い物や仕事に精を出す様子は、他の種族と何ら変わりない。王都外での戦闘が嘘のように、住民達は生き生きとしている。


「住民が活気で満ち溢れ、生活を営んでいますね」

「ええ……スラムの様な物もありません。当代の魔王は良い為政者なのでしょう」

 公爵令嬢組が、馬車の窓から街並みを眺めつつ呟く。

 そう、これまで見て来た国と変わらないものがあったのだ。住民は戦争が起こるかもしれない未来を知らず、ただ日々を生きている。

 ただの、普通の、美しい街並み。ただの、普通の、生きる人々。

 魔王を討伐する為に呼ばれたと信じている勇者達は、一体どのような思いでこの町を見ているのだろう。


 ……


 平民街を抜け、屋敷が立ち並ぶ貴族の居住地を抜け、目指すは魔王の城。

 岩で出来た巨大な城……等では無く、普通の建造物だ。なんか、普通にいいお城だな。

 離れていても見える大きな時計塔がある部分から、正方形の対象な平面の城だ。昔、海外旅行で行ったミハイロフスキー城……だったかな? あれに近い気がする。


 僕達はその魔王城の城門を通り、入口のエントランスへ通された。早速現れた執事っぽい魔人族や侍女っぽい魔人族達が、僕達に対し恭しく一礼する。

「ようこそお越し下さいました、お客様方。魔王陛下よりすぐに謁見の間へお通しするようにとの指示を伺っております」

 僕達はそのまま、謁見の間へ通される。

 が、その前にお花を摘みに行くことは出来るらしく、しばし時間を取らせてくれた。僕は特に大丈夫だったのでソファを勧められたのだが、座り心地いいわぁ。


 ……


 そして五分後。通された謁見の間も見事な物だった。

 大扉を開いた先は、青い絨毯が真っすぐに敷かれている。中は白い石材で出来ており、壁や柱には絵・彫刻細工が施されている。

 その先にある玉座には、まだ誰も座っていない。


 アングルスの先導で玉座の前まで行き、そこで膝を付くように指示された。マサヨシの眉間に皺が寄っているので、余計な事をしてくれないように警戒しておかねば。


「アングルス・ド・ゲイル伯爵閣下並びに御来客の皆様方、魔王陛下がお見えになります」

 先触れの執事が恭しく一礼しながらそう言うと、玉座の右横に設えた青い扉を開き、頭を垂れる。


 ——んんっ!?


 そこから現れたのは、一人の少年。外見年齢、人間族で言えば約十歳ちょっとくらいだったのだ。

 金色の髪はしっかり切り揃えられ、紅の瞳は穏やかな光を湛えている。少年はそんな僕達の様子を見ながら、笑顔で玉座の前に立つ。

「よく来てくれた、人間族の客人達。余が当代のオーヴァン魔王国魔王である、アマダム・ガルバドス・ド・オーヴァンだ」

 立ったまま、座らずに自己紹介をする魔王陛下。


 次いで、その視線をアングルスに向ける。

「彼等を連れて来た事、大義であったアングルス。今宵は王都で家族の時間を過ごし、その後に南の領地へ戻ると良い」

「寛大なるお言葉、ありがたく頂戴致します魔王陛下」

「うむ。では下がって良いぞ。早く娘の顔を見に行ってやるが良い」

「ハハッ!!」

 既婚者だったのかよ、アングルス!! 厳めしい面のオッサンだ、奥さんと娘さんがどんな人物なのか気になるわ!!


 いや、そこじゃない。落ち付け僕、冷静になれ。

 そうだ、『素数』を数えて落ち着くんだ。『素数』は一と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字、私に勇気を与えてくれる。

 一、二、三、たくさん! よし落ち付いた!


 情報を整理する。

 オーヴァン魔王国の王都は平和そのもの。先代魔王軍の暗躍は確かにあるものの、現状では人間族や他種族の敵らしき対応は無い。

 ここに居る勇者は十五~十八歳の少年少女四人で、その内一人は矢口。なんでさ。

 魔王陛下は外見年齢十歳のショタッ子美少年。

 アングルスは伯爵で妻子持ち。

 そして、重大な事実を”真実の目プロビデンス”と竜眼が示していた。この少年魔王、アマダム・ガルバドス・ド・オーヴァンの()()だ。


「先の件だが、余の部下がお主達に働いた無礼に対し、謝罪させて貰う。また、本来は余が出向かねばならぬ所をこうして足労願った点についても、併せて謝罪しよう」

 そう言って、軽く頭を下げるアマダム魔王陛下。

 しかし、僕はそれどころではない。

 まず第一にこの魔王陛下の年齢が、五百二十四歳だということ。若作りにもほどがあるぞ。


 そして、それを凌駕する真実。

「さて……改めて、余の客人としてそなた達を歓迎しよう……クロイツ教国とヒルベルト王国が異世界から召喚した、勇者達」

 その言葉に、勇者達と周囲の従者達の表情が強張る。

「そして……勇者レオナルドと聖女アリアの息子、ユートとその仲間達」

 更に告げられた真実に、周囲の視線が僕に向かう。


「歓迎の御言葉痛み入る、魔王陛下……いや、こう呼ぶべきかな?」

 そう、目の前にいる少年魔王陛下こそ、会った事が無かった一人。

「魔王オルバーン討伐を果たした魔人族の英雄、アーカム」

 その言葉に、今度こそ勇者達と侍従達が驚きの声を上げた。


「やはり解るようだね。うん、君はやはりレオに似ている。数か月前にアリアから連絡が来ていてね、会えるのを楽しみにしていたんだ」

 口調が外見年齢相応ですぞ、陛下。

「唯一会った事の無かった魔人族の英雄が、まさか現魔王だとは思わなかった。そりゃ会えないわ、国家元首なんて忙し……アンドレイ叔父さんの例があるな」

「アンドレイは要領がいいのさ。自分にしか出来ない仕事以外は、他の者に回すんだよ。余は中々そうもいかないのが現状でね」

「うん、アンドレイ叔父さんらしいね!」

 いきなりめっちゃフレンドリーに話し出す僕達に、周囲の視線は凍り付いている。


 その様子に苦笑し、魔王陛下は謁見の終了を宣言した。

「では、堅苦しい謁見は終わりにしてお茶にしよう。客人達よ、ゆっくりすると良い」

 王様が謁見を堅苦しいとか、言っちゃ駄目じゃね?


************************************************************


 魔王城のテラスに通された僕達は、席に座らせられた。無論、無理矢理じゃなく丁寧にね。

 そしてすぐにやって来た魔王陛下。

「待たせたかな? それでは互いの理解を深める為、お茶をしながら話をしよう」

 魔王陛下の言葉を待っていたのか、控えていた侍女達が現れてお茶の準備を整えていく。勇者勢はもう為されるがままだな。


「では、互いに自己紹介と行こうか。余はアマダム・ガルバドス・ド・オーヴァン。この国を治める魔王で、勇者レオナルドと共に先王を討伐した魔人族の英雄アーカムだ」

 そして、魔王陛下は視線を勇者勢に向ける。

「クロイツ教国に召喚された勇者、マサヨシだ」

「同じくクロイツ教国に召喚された……メグミです」

「ヒルベルト王国に召喚されたユウキ、です……」

「同じくヒルベルト王国に召喚されたマナでーす」

 勇者達は、未だ魔王陛下を警戒しているようだ。その為、自己紹介も最低限で済ませた。


 それに苦笑し、魔王陛下の視線が僕達に向く。

「ユート・アーカディア、銀級冒険者だ」

「同じくキリエ・アーカディアと申します」

「イングヴァルト王国よりユート君達と旅をしています、アリスと申します」

「ミリアン獣王国からユート様の奴隷として同行させて頂いています、アイリと申します」

「ヴォルフィード皇国から旅の仲間としてユートさん達のパーティに加わった、リインと申します」

 僕達も、最低限の言葉で自己紹介する。


「ふむ、それでユート・アーカディア()()()()。イングヴァルト、ミリアン、ヴォルフィードで最上級の勲章を叙勲した貴殿は、何用で我が国に参られたのかな?」

 ニヤリと、魔王陛下が僕の情報を補足しながら、質問を投げ掛けてくる。

 僕の詳細な情報を伝えていなかった勇者達は、名誉男爵という爵位と三カ国からの叙勲に驚いた表情を見せる。


「理由の一つは、とある魔法を探しているから。もう一つの理由は、オーヴァン魔王国を見極めようと考えたからかな」

「ほぉう? 我が国を見極める……とは?」

 魔王陛下の目が、細められる。しかし、その程度で委縮する僕ではない。


「現魔王である貴方は、他種族との共存の為に精力的に動いているというのが、世間一般の認識だ。しかし、人間族・亜人族・妖精族の神々は”魔の王を討伐させる為に”勇者を過去最大規模で召喚させた」

 その言葉に、魔王側と勇者側が押し黙る。緊張感が場を満たす。

「そして、三柱の神を信仰する国々が勇者を召喚し、魔王討伐に向けて動き出している。さて、本当に魔人族は討伐されるべき存在なのか? そこに合点がいかないんだ」

 僕の言葉に、興味深そうな視線で魔王陛下が先を促す。


「悪魔族を名乗る連中が、世界各国で暗躍している。討伐すべき”魔の王”は、魔人族の王ではなく悪魔族の王じゃないかと思ったんだ」

 その言葉に、魔王は首を傾げた。

「悪魔族……か。初めて聞く種族だな」

「悪魔族については、ミリアン獣王とヴォルフィード皇帝が証人になってくれるはずだ」

 一国の王が証人になる……その言葉に、勇者達の顔が強張る。


「それで? 君はオーヴァン魔王国をどう見る?」

 討伐されるべき国か? 討伐されるべき種族か? 勇者がその力を向ける相手か? 

 その回答は、僕の中で既に出ている。

「着いたばかりだから、確たることは言えない。ただ現時点で、オーヴァン魔王国は普通の国家だ。他種族と何も変わらない。個人的な認識だけど、僕はそう思う」

 その言葉に、魔王陛下の表情が緩む。

「我が国が正当な評価を得るのは嬉しいものだ。礼を言うよ、ユート」

「特別な事を言ったつもりはないからね、そんな言葉を贈られても困るだけだよ?」

「そうかい?」

 そうだとも。


 さて、ここで魔王陛下の矛先は、勇者達に向かう。

「ユートの言った通り、”魔の王”として真っ先に名前が浮かぶ魔王たる余だが、お主達は私を討伐すべきと思うかな?」

 その言葉に、勇者達は何も言えず黙り込む。

 一見すると邪悪な感じのしない、フレンドリーな魔王。

 ”魔の王”と呼ぶべき存在がもう一人いて、神託がそちらを指している可能性。


 そんな中、口を開いたのは以外にもユウキ少年だった。

「そちらのアーカディア男爵が言ったように、来てすぐに判断できません。判断材料が足りないんです」

「おい、桜井!」

 ユウキ少年の言葉は最もだ。だからこそ僕も”現時点で”と前置きしているし。

 なるほど、彼は頼りなさそうに見えるが、どうやら慎重かつ冷静な人物のようだ。


「これまで聞いた魔王国の評価は、良くないものばかりでした。そこへやって来て、こんな風に対話の場を設けられても、すぐには返答出来ません」

「ふぅむ、そんなに評価が悪いのか……まだまだ、余の努力が足りぬようだな……いや、失礼した。それで、この国で何をしたいのか聞かせてくれ。可能な限り便宜を図ろう」

「それは……時間をもらえませんか。仲間と、相談させてほしいんです」

 自分一人で、この先の道筋を決めるわけにはいかない。そのために時間を稼ぎ、仲間と相談して方針を決める。

 いい対応だと思う、やるなぁユウキ少年。


「それも当然か、済まなかったな勇者達よ。余も滅多に他種族の客人を招く事が無いからな、どうやら気が逸っていたようだ」

 一つ頷いて、魔王陛下は苦笑した。

「どれだけ時間が欲しいか、その辺りはそちらが決めてくれて構わぬ。客間を離宮に用意するので、好きに使ってくれ」


 そう言って、カップに入ったお茶を飲み干した魔王陛下は席を立つ。

「そろそろ政務に戻らねばな。済まないが、そろそろ失礼しよう。何かあれば、近くにいる者に申し付けてくれ」

 外見年齢十歳の少年にしか見えない魔王陛下が、颯爽と去っていった。

「……あれで、五百歳超えてるっていうんだから驚きだな」

 僕の言葉に、姉さん以外の全員がギョッとした。


 ……


 さて、僕達は離宮に通された。

 離宮も見事な建造物で、美術品等が整然と飾られている。品の良い、超高級ホテルみたいな感じだな。

 いや、泊まったことないけど。


 さて、僕達は宛てがわれた部屋に荷物ダミーを置こうとして……呼び止められた。

「待て、ちょっと話がある」

 勇者マサヨシが、こちらに厳しい視線を向けている。

「ん? 何かな」

 その後ろに立つ勇者達は、黙って推移を見守るようだ。


「……君達は何者なんだ。本当に、先代勇者の息子なのか」

 別に説明する義理は無いんだけどね。と思い、彼の発言に違和感を覚えた。

「そんなに気になるなら、鑑定すればいいじゃないか」

 そう、勇者には”人物鑑定ステータスチェック”と”無限収納庫イベントリ”という技能スキルが与えられるのだ。これは父さんが持っていて、質問した時に教えて貰った。

人物鑑定ステータスチェックを知っているのか!?」


 驚くマサヨシ少年だが、それに取り合わないでマナ嬢が口を開く。

「あのね、人物鑑定ステータスチェックも魔法でしょ? 私達はまだ人理魔法の詠唱省略を取得してないんだよね」

 なるほど、こっそりやるには詠唱省略がないとバレるからね。

「なら、見てみれば良いよ」

「……よろしいんですか?」

「見られて困るものじゃないからね」


 鑑定で見れる範囲は、所詮ジョブと階級・ステータス・賞罰だ。

 加護の+100はそのまま加算された状態で表示されるから、”鑑定”なら困らない。”解析アナライズ”だったら、ちょっと面倒な事になりそう。

 さて僕の提案に従って、勇者達が詠唱を開始する。

「”来たれ、人の理を司る精霊一柱……”」

 やれやれ、これが終わるまでは、荷物を置きに行けないようだ。


「”真実を見通す目をここに、人物鑑定ステータスチェック”」

 最初に詠唱を終えたのは、セカンドジョブが魔導師のマナだった。

「……ほあぁ……すごいわね。あの戦いぶりから只者じゃないと思っていたけど、ステータスが100越えとかヤバくない?」

「……本当、ですね。それに、魔王……陛下の言っていた、叙勲の話も」

「……確かに、ミリアン獣王国、イングヴァルト王国とヴォルフィード皇国、三つの国から爵位を与えられているみたいだな」

「付与魔導師って、戦力外って言われているのに……それで、そんなに強くなれるなんて!」

 四者四様に驚いているな。マサヨシだけ、何か釈然としないって顔をしているけど。


「イングヴァルト王国の国王は僕達の母親の弟で、アンドレイ・フォルトゥナ・イングヴァルト国王陛下だね」

 ついでなので補足。イングヴァルト王の姉、それは物語で語られているのだから。

「聖女アリア様だよね、それ!」

「そう呼ばれているね。うちでは単なるフワフワした美人の母親なんだけどね」

 ただし、料理の天災。


「へぇー、君ってば本当に大物なんだねぇ」

「父さんと母さんの息子だからって偉い訳じゃないよ。僕自身はただのしがない付与魔導師だからね」

 凄いのは父さんと母さんだ。僕自身は、大した事が無いただの冒険者。

 そこは、決して譲ってはいけない部分だと思っている。


 そこへ、勇者メグミ……矢口恵が歩み寄る。

「……アーカディア卿、でいいのでしょうか。済みません、その辺りは疎くて」

 日本では、貴族とか身近な存在じゃないもんね。

「まぁ、アーカディア卿でもアーカディアさんでも、ユートでも好きに呼んでくれていいよ」

「では、アーカディア卿と……その、アーカディア卿にお願いがあります」

 矢口は真剣な表情で、僕の目を真っ直ぐに見て言う。


「私達に力を貸して頂けませんか」

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