05-07 幕間/銀級冒険者グレンの独白Ⅱ
私の名前はグレン。銀級冒険者だ。卓越した剣技と火属性と地属性の二属性魔法を駆使する、魔法剣士だ。
更には整った容姿で女性の心を魅了してしまう、罪な男さ。
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南の大陸で出会った生意気な少年。
得体の知れない彼が持つ武器に対抗する手段を探すべく、私達はドワーフ族の国・クエスト王国へ向けて旅している。
ミリアン獣王国で知り合った虎人族の女性・獣戦士のビーナが加わり、私のパーティは更に華やかになった。
愛する三人の恋人達を連れて、一カ月少しの旅を送っている。
……
やがて、長い旅路を経た私達は、クエスト王国の王都カルネヴァーレに辿り着いた。
ふむ、ドワーフ族といえば小柄な体躯が特徴と言うが……成程。中々に愛らしい女性達が多いな。
「失礼、ドワーフのレディ。私は旅の銀級冒険者でグレンと申します。先刻この王都に辿り着いたばかりでして、宿が決まっていないのです。貴女のお勧めの宿をご紹介しては頂けませんか?」
溢れる気品、漂う色気……流石は私だ。ドワーフ女性が見惚れている。
無理も無い、私の魅力は種族すら超えて魅了してしまうのだからね。
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ドワーフ族はいい、小柄で愛らしい。
あれから数人のドワーフ族とベッドを共にしたが、あの愛らしさは実にいいものだ。
何より小柄な所がいい。
さて、今夜は残念ながらドワーフ族の女性達との逢瀬はお預けのようだ。
何軒か鍛冶職人を訪ねたのだが、残念ながら魔法の武器は手に入らないようだ。ただ、鍛冶魔法というドワーフ族特有の魔法で、武器の強化は出来るそうなのだ。
故に私は、私と恋人達の武器を強化すべく、素材を集めに王都を出ていたのだが……中々に素材の集まりが悪く、今夜は王都へ帰るのは無理のようだ。
野営に丁度いい場所を探して歩いていると、焚き火の火が見えた。
前にもこんな事があった気がするな? まぁ良い、野営ならば複数人で行えば危険を減らす事が出来る。声をかけてみることにしよう。
「失礼、旅の方で……ムッ! 君は!」
「……やぁ、ご無沙汰」
なんと、あの少年が何故こんな場所に!?
「君達、何故ここに?」
「それをアンタに話す義務は無いだろう?」
相変わらず、小生意気な少年だ。すると、ドワーフ族らしい女性が少年に話しかける。
「横から失礼します、アーカディア卿。この銀級冒険者と知り合いなのですか?」
アーカディア卿とは誰の事だ? まさか、彼の事か?
卿と呼ばれるのは、爵位や勲功爵を叙せられた者だ。まさか、馬車があるのをいい事に、貴族と偽ってドワーフ女性に手を出そうとしているのでは無いか?
そんな事を考えていると、少年がドワーフ女性に返答する。
「ミリアン獣王国を旅していた時に、ちょっとありましてね」
ふん、私のような覇者となる未来が約束された者との出会いを、ちょっとだと? 相変わらず、物分りの悪い少年だな。
「ユーちゃんと決闘して、私達を自分のパーティに引き抜こうとしたんですよ」
むっ……相変わらず麗しいキリエさん。天使の如き容貌は、遠征で疲れた私の目を癒してくれる。
「ユート君が勝ちましたけどね」
ぐっ……アリスさん、あれは何かの間違いでしょう。しかし相変わらず素敵な声だな、私の耳が幸せだ。
「圧勝でした」
うぐっ……仔兎ちゃん、それは流石に言い過ぎでは無いかね? しかし奴隷とは思えぬ整った容姿、兎の耳と尻尾も相俟って実に愛らしい。
「そんな事があったんですか?」
「ぬぅ……って、また女性が増えているね。エルフ族とドワーフ族の冒険者ですか? 私は銀級冒険者にして、魔法剣士のグレンと申します」
金髪を項から三つ編みにして垂らしている少女は、どうやらエルフ族のようだね。整った美貌、滑らかな肌、つぶらな翡翠の瞳、ツンとした耳の先……ふむ、エルフというのはやはり美の象徴か。
更にドワーフ族の冒険者達の格好が実に良い。ドワーフ族は服装が解放的だが、冒険者としての装いまで開放的だとは。
美しい肌が目に触れる面積は多く、四人のドワーフ達に囲まれて愛を囁かれたら、一晩二晩では治まらないかもしれないな。
「初めまして、リインと申します」
「銅級冒険者パーティのリーダー、ジョリーンと申します。この度はアーカディア卿のご厚意に甘え、王都までご一緒させて頂いています」
おや、やはり緊張してしまっているのかな? 無理もない、そこの少年等と比べてしまえば雲泥の差だろう。パッとしない少年と違い、私は実力・品位・魅力の三拍子が揃っているからね。
「ふぅ、君は麗しき女性を誑かすのが得意なのかい? 銅級付与魔導師君」
「アンタに言われたくはないな、獣人女性が増えてるじゃないか。それに、僕達は銀級に昇級したんでその呼び方やめてもらえるかな」
……少年が取り出したのは、確かに銀級ライセンスだ。ライセンスカードの偽造は重罪、まさか……。
いや、それは無いか。そんな手段を取るならば、キリエさん達がそれを止めるだろう、私の天使達ならば。
つまり、彼は実際に銀級に昇級したのだろう。
しかし、才能溢れるこの私でさえ、銅級からの昇級に二年ほどかかったのだ。となれば、彼は常では無い手段を使って昇級したに違いない。
「……どんな卑怯な手を使ったのか、気になるね」
私の言葉に、バカにしたような視線を向けて来る少年。
やはり、口には出来ないような方法を使ったようだな。更に、真面目に依頼を達成して銀級に昇級した私を、見下しているに違いない。
やはり、彼は彼女達に相応しくない……だが、卑怯な彼の事だ、またあの武器で私を圧倒するのだろう。今はまだ、我慢せざるを得ない……なんと口惜しい事か。こうしている間にも、私の天使達に彼の毒牙が迫っているかもしれないというのに。
何て私は無力なのか……!
私の嘆きを知らずか、少年が視線を外して言葉を投げてくる。
「悪いが僕達はこれから食事でね。姉さん達が真心込めて作ってくれた料理が冷めるのは勿体無い」
キリエさん達の作った食事! 確かにそれが冷めるのはよろしくない。
「むっ、それは確かにその通りだ。良いだろう、話はその後にしよう」
そう言って座る私に、少年が呆れたような表情をしている。何だね、その目は。
すぐに少年は視線を戻し、食事に向き直る。
「じゃあ食べよう。いただきます」
「いや待て、なぜ君達だけ食べるのかね」
私達を差し置いて食事にするなど、どれだけ無遠慮なのだ。
「言っておくが用意したのは僕達の分の食事だぞ? アンタらは自分達で食事の準備しろよ、火は使っていいから」
ふむ、確かに一理あるな。しかし天使達の食事を逃すなど愚の骨頂。ならば仕方があるまい。
「仕方ないな、君の分を寄こしたまえ」
「人の食料を奪おうとするなんて、あなたは盗賊ですか?」
待ってください、キリエさん。決してそのようなつもりでは! 余りにも哀れなので、黒パンくらいは恵んでやろうと思っていますとも!
「それは誤解ですキリエさん、私はただ、貴女の手料理を口にしたいだけです」
「問題外です、自分達の食料はあるのでしょう? それでお腹を満たして下さい」
うっ……キリエさんにここまで言われては仕方が無い、ここは引き下がるしか無いな。
……
やむを得ず、私達は用意していた食事で夕食を済ませた。
さて、ここからは夜の時間だ。やはり野営で荒んだ女性達の心を癒すには、愛溢れる私の腕の中が一番だろう。
そう思ってキリエさん達を誘ったのだが、色よい返事は貰えなかった。
これはあれか。私の下に来るのではなく、自分達の所に来て欲しいというメッセージなのだね。
ならば……と思ったのだが、私達の逢瀬を邪魔するのはやはり少年だった。
テントの前に座り込み、私を睨んでいる。なんて見苦しいんだ、彼女達の気も知らずに。
やはり、彼とは決着を付けなくてはならないようだな。そうだ、ここは少年よりも私の方が彼女達に相応しいのだと、共に行動して理解して貰うのが一番だろう。
「エルザ、魔物だ。多分火に気付いたんだろう」
「えっ、どこ? どこ?」
何、私より早く魔物を察知しただと?
当てずっぽうか……いや、確かに魔物がいる。少年が指差した方向、魔物らしき影がこちらに迫っている。
ここは、少年に私の剣の腕を見せ、格の違いを……。
——バスッ!!
「何その武器! もう死んだの、あれ!」
「これは銃だよ、ライフル銃。眉間に一発入れたからね。脳を破壊されて生きていられる生物はいないよ」
確かに、頭を撃ち抜かれた大熊は息絶えているようだ。
何という事だ、彼はまだ武器を隠し持っていたのか。それも、卑怯な武器を……!
止むを得ず、私は自分達のテントに戻る。
「グレン……その……」
「解っているとも。彼らが夜番をしてくれるようだからね。存分に愛し合おうじゃないか」
キリエさん達が居ないのは残念だが、私に付いて来てくれる彼女達への愛は揺らがない。今夜はキリエさん達の分まで、心行くまで愛してあげる事にしよう。
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翌朝、心の狭い少年は私達を馬車に乗せるのを拒否してきた。
確かに狭いだろうが、少年が御者をして女性達が私を囲めば多少狭くても誰も困らないというのに。
本当に察しの悪い少年だ。
すると折衷案だと言う少年が、アリスさんに視線を向けた。おいおい、そんなに睨んではアリスさんが可愛そうだろう?
「えーと……”来たれ空と時の精霊よ、我が声に耳を傾けたまえ。我が求むは狭間の鍵、狭間の扉を開く鍵。扉を開き、我が求める宝物を此処に。宝物庫”」
……何だと? アリスさんが行使した魔法は、私も知らない魔法だった。
何も無い空間から、荷車が出現したのだ。何という事だ、アリスさんは私の知らない魔法を扱えるのか!
その力を活かすならば、やはり彼女は私の下へ……いや、様子がおかしいぞ? アリスさんが疲労を表情に浮かべ、肩を落としている。これはすぐに休ませなければ!
「水を用意するかい? それとも、毛布か何かを?」
「水も毛布もあるから問題は無い、とりあえず馬車の荷台の後ろにアリスを寝かせられるようにスペースを作りたい。グレン、手伝え」
「無論だ、手早く済ませよう」
むぅ、彼と気が合うとは、変な気分だ。
少し休んだアリスさんは顔色がよくなったようだ。アリスさんが召喚した荷車に乗っているので、声をかける事は出来ない。
それにしても少年よ、アリスさんがあんな風になると解っていて、魔法の行使を強要するとは……やはり彼は女性達を虐げ、弄ぶ許されざる人間らしいな。
一刻も早く彼を打ち倒して、我が彼女達を癒してあげねばなるまい。
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王都カルネヴァーレに到着した私達は、ドワーフの冒険者達に再会を約束する挨拶を交わす。
やはり、ドワーフ達は照れているのか、うまく言葉が出ない様子だったけどね。
そして私が泊まっている宿にキリエさん達を誘い、側で私の魅力を存分に伝えようと考えたのだが……。
「悪いが知り合いに会う予定があるので先を急ぐんだ、じゃあな」
そう言って、馬車を走らせる少年。
「待て、待ちたまえ少年! キリエさん達との話はまだ……! おのれ、少年……やってくれるじゃないか」
走り去った馬車を睨みながら、私は改めて誓う。あの邪悪な少年から、キリエさん達を救い出すと。
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あれから王都で少年達の行方を捜しているのだが、一向に見つからない。彼程度の男なら、その辺りの安宿にいると思ったのだが。
仕方が無いので、ドワーフの鍛冶職人に私達の武器の強化を依頼する。
ぬぬぅ……武器一つにつき、銀貨五枚とは……。
しかし、彼等の鍛冶の腕は高い評価を得ている。止むを得ず、私は四人分の武器を強化するよう依頼した。
武器の性能で、私の愛しい恋人達の実力と生存力は上がるのだからね。彼女達の命は、金貨二枚より重いのだ。
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何でも、クロコダイルオオトカゲという大型の魔物を討伐した者が現れたらしい。
確か銀級の依頼書だったな。ドワーフ族の冒険者達も、中々やるようだ。最も、私も負けてはいないだろうけどね。
ドワーフの鍛冶職人に強化して貰った武器は、使い心地が良い。やはり武器はドワーフ製に限るね。
最も、あの少年ではクロコダイルオオトカゲを前にすれば、一目散に逃げ出すんじゃないだろうか、ハッハッハ!
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ある日の昼下がり、ドワーフの女性と愛を交わしている時の事だった。外から警鐘が鳴り響いて来たのだ。
「な、何でしょう……」
「異常事態が起こったようだね。ダリア、いいかい。私はこれから行かなければならない……愛しい君を、守る為にね」
「グレン様……」
待っていておくれ、ダリア。必ず君は、私が守ってみせるからね。
王都の門の方に、武器を持ったドワーフ達や僅かなエルフ族達が居た。あぁ、そういえばエルフ族とドワーフ族は交流があるんだったな。
ふむ? 私には劣るが、やはりエルフ族は整った容姿の持ち主が多いね。
リインさん、だったか……あのエルフの女性は実に美しかったな。もう一度、彼女の翡翠の瞳を独り占めしたいものだ。
さて、周囲のドワーフから話を聞くと、どうやら魔物が王都に向けて侵攻して来ている様だ。
銀級冒険者として、ここは私が前に出なければなるまい。
すると、私の裾が引っ張られた。そこに居るのは、ダリアだ。
「グレン様、私を守って下さるのであれば、私がグレン様をお守りします……!!」
あぁ、なんて気丈な! ダリアの愛に、私は応えなければならないだろう。
「いいだろうダリア、私に付いてきたまえ。私の側が、この世界で一番安全な場所なのだと、君に教えてあげようではないか」
「はい、グレン様!」
三人の恋人達にダリアを加え、私達は魔物の討伐に乗り出した。
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混戦を極める戦場、私はその中で魔法と剣を駆使して魔物達を討伐していく。
しかし数が多く、キリが無い。仲間達の体力も魔力も、限界が近いようだ。
そんな中、周囲で戦うドワーフ達を援護するように颯爽と戦う人達が居た。
あぁ、天使達よ! やはり君達は、神が私に遣わしてくれた天使だったのか!
キリエさんはレイピアで魔物を貫き、アリスさんは魔法で魔物を薙ぎ払い、仔兎ちゃんは両手の剣で魔物を切り裂き、リインさんは弓矢で魔物を狙い撃つ。なんて凛々しく、美しいのだろう。
正に戦場に咲く四輪の花、地上に舞い降りた天よりの遣い。いや、戦乙女なのではないか!?
そんな中だった、見た事も無い鎧を身に纏った者が現れたのは。
体付きからして男性だろうが、彼から発せられる威圧感はこれまで感じた事の無い程のものだった。
体躯は人間族と変わらないので、ドワーフ族ではないだろう。
他国からの遣いか? だとしたら、あの見事な鎧からして騎士なのでは? 黒い鎧騎士か。
その鎧騎士は、ゴブリンを殴っただけでその頭部を粉砕した。
「おぉ……っ」
あれだけの重装備であの素早さ、そしてあの破壊力。さぞかし鍛え上げた戦士なのだろう。
更に黒騎士は見た事も無い大きな鉄の塊を手にし、魔物達に攻撃を加えていく。
騎士の近くに寄る魔物達は、独りでに起こる爆発に飲み込まれて息絶えていく。
その上、空に巨大な建造物を呼び出した黒騎士。その建造物から光の柱が降り注いだ。
私には解る、あれは……あれはきっと神の創り出した物だ!! 彼はもしや神の遣いなのか?
キリエさん達が、彼を呼んだのでは無いだろうか。彼女達自身が神の使いならば、もしやあれは神では!?
更に黒騎士……いや、神の怒りは熾烈を極める。
逃走を開始した魔物達に向けて、神は手に持った何かから裁きの光を放った。おぉ、神よ……なんと神々しいのだろう。
……
戦闘終結後、神の元へ私は馳せ参じる。
「失礼、貴殿のご活躍を少しばかりですが拝見致しました」
神は何も言わず、私に視線を向ける。いや、目は残念ながら拝見出来ていないのだけれどね。
「さぞかし名のある戦士か騎士とお見受けしました。一騎当千の貴方の名を、このグレンめにお教え願えませんでしょうか」
恐らく御身は神という身分を隠して、我々を救う為に降臨召されたに違いない。なれば、せめてその御名だけでも伺っておかねば。
しかし、中々名乗りをあげられないな。まさか私は神を困らせてしまっているのだろうか?
すると、神は口を開かれた……勿論、見えないのだけれども。
「私の名は……そうだな、“バハムート”とでも呼んで貰おうか」
「……バハムート」
それが、我が神の名か。なんて素晴らしい名前なのだろう。
御名をお聞かせ願えた栄誉、歓喜に打ち震えていると、神は再び口を開いた。
「……まだ行かねばならない所がある、私はこれで失礼する」
そう仰った神は、金属の塊を何処からとも無く召喚なさった。黒い光沢を放つその塊に跨り、轟音を轟かせて走り去る神。
「待って下さい、バハムート様! 神よ、お待ちをっ!!」
私の声は轟音に掻き消されたのか、神はそのまま走り去ってしまった。いつかまた、我が神にお目にかかれる日が来るだろうか。
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神にお目に掛かった後、私達は事後処理に奔走していた。
あの少年やキリエさん達の姿もあったな。
それにしても、あの少年は何処にいたんだ? 大方、キリエさん達に効果の薄い付与魔法でもかけて、自分は後ろで震えていたに違いない。
全くどうしようもない、我が神とは正反対だな。
第一、彼はキリエさん達を魔物の素材の剥ぎ取りに付き合わせている。そこが全く配慮に欠けている。
彼女達の咲き誇る花のような芳しい香りを、血の臭いで台無しにしてしまうではないか。
だからこそ出来る男はそんな作業に女性を就かせず、こうして素材の仕分け等の負担の少ない作業を任せるべきなのだよ。
そう思っていたら、既に日も暮れて夜になってしまった。屍獣化した魔物の死体を、処理しながら作業をしなければならない。
ドワーフに強化して貰った新装備のお陰で、私達はそう苦も無く屍獣達を倒していく。
本来ならばキリエさん達の元に向かって差し上げたいが、今行くのは野暮と言うものだろう。
血の臭いがする状態で、私に会うのを彼女達は躊躇うだろうからね。魅力溢れる私は、女心にも聡いのさ。
……結局、作業が難航して私達も素材の剥ぎ取りに狩り出されてしまった。済まない、愛しい恋人達よ。
どうせ、あの少年がノロノロと作業をして、回りの足を引っ張ったのだろう。
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あれから、少年達を探したのだが姿が見当たらない。
私に天使達を返したくないが為に、無理矢理彼女達を連れて旅立ったのではないか?
仕方ない、私もまだまだ実力を身に付けなくてはならない身だ。
いずれ、天使達を私の腕で抱きしめる為に。そして、傍らの愛する四人の恋人達の為に。
そう、ダリアが私達のパーティに加わったのさ。愛故に、ね。
私は武者修行の為に、次の旅の目的地を定めた。
聞けば、魔王討伐の為に十四人もの勇者が召喚されたらしい。勇者達は、魔王討伐を掲げオーヴァン魔王国へ向かうだろう。
勇者と肩を並べ、戦う事ができるとしたら? それは私だ。
そうだ、オーヴァン魔王国へ行こう。
 




