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00-06 謁見/叔父さん

これまでのあらすじ:左目あぼーん。

 毎度どうも、ユートです。

 たまに顔を合わせる、親戚の職業とかを気にしないタイプです。なので、どんな職業なのか知った時に、随分と驚いた事もありました。

 まさかそんな性格が、異世界でも発揮されるとは思っていませんでした。


************************************************************


 僕達は王城に入ってすぐに、謁見の間へと連れて来られた。

 アルファルド殿下の後ろに控えて跪いていると、玉座の後ろの扉が開く。そこから歩み出て来たのは、金髪の美丈夫。そして、僕と姉さんは子供の頃から何度も顔を合わせていた人物だった。

「よく来たなユート君、キリエ君!」

「って、やっぱりアンドレイ叔父さんじゃんか!!」

 現れたのは、このお使いの訪ね先であるアンドレイ叔父さんその人だった。


「貴様、陛下に向かって……」

 僕の無礼な発言に、一人の貴族が顔を憤怒に染めて歩み寄ろうとする。他の貴族達もそれに追従しようとする。

 最も、それは止められた……至上の存在によって。

「良い、下がれ」

「ですが陛下!」

「余は下がれと申したぞ」

 叔父さんの圧力に、異を唱える貴族っぽい人が気圧されて下がる。

 おぉぉ……叔父さん、いつも一人称は私じゃなかったっけ?

「ツッコむところはそこじゃないですよ、ユーちゃん……(小声)」

 心を読むなよぅ……。


「お使いの話は聞いていたが、まさかアルファルドと共に帰ってくるとは思わなかった……話は聞いたよ、ユート君。レオに似て整った顔立ちだったのに、なぁ……」

 先程の威厳のある姿は嘘だったかのように、穏やかな表情でこちらに向き直る。そして、失われた僕の左目を見て残念そうな、悲痛そうな表情を浮かべた。


「大丈夫かい?」

「うん。まぁ、自業自得だからさ。それよりも、やっぱり叔父さんは王様だったわけ?」

「うむ、私は王様だぞ?」

「父上、ではこの二人はまさか……」

「そう逸るなアルファルド、改めて紹介しようではないか」

 そう言って、叔父さんが僕達を手招きする。


「えっと……そっちに行っても良いって事?」

「そうだ、こちらへおいで」

「あー、じゃあ失礼します」

 周りの貴族の視線が痛いけど、叔父さんが良いって言ってるし行く事にする。だってほら、国王陛下の直々のお呼びってヤツでしょコレ。

 そして、前に行って僕はもう一度跪こうとしたのだが、叔父さんがそれを止めた。


 僕達をアルファルド殿下や貴族の方に向き直らせ、よく通るバリトンボイスで告げた。

「紹介しよう。この二人は余の甥と姪……姉上アリア・フォルトゥナ・イングヴァルトの子だ」

「「「「「なっ!?」」」」」

「やはり、そうでしたか……」

 驚く貴族達。うんうんと頷くアルファルド殿下。


 そんな周囲を残った右目で眺めながら、僕は溜息を吐いた。

 やっぱそうだったのか……途中からそんな気がしていたんだよなぁ。まさか、普段はほわほわしてて、怒ると怖くて、料理の天災で、父さんとラブラブ新婚感を未だに失わない母さんが、王女様だったとは。たまげたなぁ。

 そういう大事な事はもっと早く教えといて頂きたい。島に帰ったら家族会議だ、議題は報連相の重要性について。


 しかし爆弾の投下は続く。

「そして彼らの父親は、レオナルド……そう、世界を恐怖に陥れた魔王オルバーンを討伐した、勇者レオナルドだ」

 ん? 今なんて?

「……は?」


 呆気に取られた僕の様子に苦笑して、叔父さんが話を続けた。

「その様子だと、レオからは何も聞いていなかったようだね」

「え、父さんが? 勇者? マジで?」

「うむ、マジだな。まぁ、その辺りの話は後ほど時間を取るとしようか」

「アッハイ……マジなのかぁ……ってそうだ、これを叔父さんに」

 そう言って、僕は手紙を差し出す。

「レオからの手紙か。ふむ……」

 手渡した手紙を読む叔父さん。


 顎鬚を撫でながら、目を通す様子は……新聞読んでるオッサンに見えるんだけど、絶対口に出さないで置こう。

「ふむ、手紙の内容は理解した。後ほど返事を書くとしよう」

「ではアンドレイ叔父様、私達が責任を持ってお父様とお母様にお届け致します」

「頼むよ、二人とも。では、後ほどゆっくり話をしようか。では宰相、彼らをそちらへ」

「ハッ」

 叔父さんに促され、宰相さんの方へ向かう。


 ……


 宰相さんに連れて行かれた先で、治癒魔法が使える魔導師のおばあさんが目の雑菌を洗い流してくれた。

「これを付けておいで」

 そう言って、手渡してくれた眼帯を付ける。


 治療を終えて、宰相さんに案内された先。その先に待っていたのは、アンドレイ叔父さんとアルファルド殿下、そして四人の美女・美少女だった。

 桃色ロングヘアの美しい女性……ジュリアンナ王妃。その横には、四歳のシルビア第一王女。

 公爵閣下の奥さんで、蒼銀色の髪の女性、ティアナ様。同じ蒼銀色の髪をした、十歳で同い年のアリシア嬢。


 僕達を案内してくれた宰相さんは、アンドレイ叔父さんの弟だという、アレックス・クラウディア・アークヴァルド公爵閣下だ。

「改めて、アレックス・クラウディア・アークヴァルドだ。君達の話は兄上からよく聞いている」

 アンドレイ叔父さんと比べて身長が高いが、線の細い感じの男性だ。満面の笑顔で、握手を求めて来た。


「ユートと申します、お会い出来て光栄です」

「アークヴァルド公爵閣下、お初にお目にかかります。キリエと申します」

 僕達の挨拶に笑みを浮かべつつ、僕達の肩を叩く。

「畏まる事は無いよ二人とも。私の事も、叔父さんと呼んでくれたまえ」

 この兄にしてこの弟ありだな、これでいいのかイングヴァルト王国。

「わかりました、アレックス叔父さん……で宜しいですか?」

「良いとも、あぁ良いとも!」

 上機嫌な様子のアレックス叔父さん。


「では、私の事はジュリア叔母さんと呼んでくれるのかしら?」

「母上……ハァ」

 アルファルド殿下が呆れた表情で王妃様を見る。

「お若い王妃様に、叔母さんと呼ぶのはちょっと抵抗がありますよ。お姉さんでも通じそうじゃないですか」

「あら、お上手ね。将来はモテるわよ、ユート君」

 サムズアップするの止めましょうよ……この国の王族、砕けすぎじゃないか? 


「私はイングヴァルト王国第一王女、シルビア・フォルトゥナ・イングヴァルトで御座います」

「アークヴァルド公爵家が長女、アリシアで御座います」

 カーテシー……っていうんだっけ? スカートの裾を摘まみ上げて、挨拶する美少女二人。ぶっちゃけ、子供達の方が貴族らしいってどうよ。

「ユートと申します。どうぞ宜しくお願い致します」

「レオナルドとアリアの娘、キリエで御座います。お会い出来て光栄です」

 姉さんも負けてないな、さすが天使。


 無作法にならないように、美味しい食事に舌鼓を打ちながら味わって食事をする。そんな中、アルファルド殿下が僕に声をかけて来た。

「ユート、キリエ。君達に改めて礼を言いたい。私達への助力、感謝している」

「勿体無いお言葉です、殿下」

 そう返すと、アルファルド殿下は僕の顔をジーっと見て、溜息を吐いた。


「ユート、私は確かに第一王子だが、その身分を今は忘れろ。私達は従兄弟なのだから、堅苦しい言い回しは不要だ。そうだな……父上に接するように、肩の力を抜けば良い」

 いやぁ……そんな事言われましても。

「そう言うならば、アルファルドもその堅い言い回しを止めたらどうだ?」

「これが地ですから」

 アンドレイ叔父さんにも固い口調だ。


「そうだな……ふむ、今後は私をアルファと呼べ、それで少しずつ慣れていけばよい」

 アルファか、なるほど……愛称なのかな?

「解ったよ、アルファ……これで良いのかな?」

「あぁ、ユート。それで良い」

 アルファルド殿下……いや、アルファの口元が微かに緩んだように見える。


 すると、斜め前の少女から声がかかる。

「あの……」

 視線を向けると、アリシアさんがこちらを見ていた。

「何でしょう、アリシア様?」

「……アリスです」

 ……ふむ?

「私の事も、アリスと呼んで下さいませんか?」

 アルファと打ち解け始めたのが、羨ましくなったのだろうか? 年の頃も僕達と同じだもんな。

「アリス、これで良いかな?」

「……はい!」

 アリスは、花が咲くような笑顔を見せた。


「私の事もシルビアとお呼び下さい! それで……キリエお姉様、ユートお兄様とお呼びしてもよろしいでしょうか……?」

「もちろんだよ、シルビア。お兄様でもお兄ちゃんでも、好きに呼んでね」

「わぁ……ありがとうございます!」

 うん、イトコ同士で仲良くなるのっていいね。

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