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05-02 魔法創造?/ガンツ

これまでのあらすじ:女好きグレンが来た、ウザい。

 クエスト王国でドワーフ冒険者四人と、グレン達に出会った夜。

 僕達はミートスパとスープを、食べ終わる。尚、グレン達は黒パン・干し肉・クズ野菜のスープという、冒険者御用達メニューだった。


 さて…………就寝の準備を始めると、予想通りの展開になった。

「皆さん、私のテントにいらっしゃいませんか。素晴らしい夜をお約束しますよ」

 グレンの下心満載な誘いである。コイツ、下半身と脳が直結してるんじゃないのかな。


 しかし、それに対する女性陣の対応は冷淡そのものだった。

「なぜ私達があなたと一緒に寝なければならないのか、全く理解出来ません」

「アークヴァルド公爵家の人間として、あなたのような冒険者と同衾するなど末代までの恥です」

「同じくヴォークリンデ公爵家の娘として、あなたの発言は看過できません。身の程を弁えなさい」

「あなたの元に行く理由はありません、私はユート様の所有物です」

 姉さん、激おこ。普段から考えられないくらいに、声も表情も冷たい。

 そしてアリスとリインの、滅多に表に出さない身分を明かしての拒絶。よっぽどグレンが嫌みたいだな。

 更に、自分は僕の物だと言い切るアイリ。僕はアイリを物扱いなんてしてないからね? アイリはアイリのものだからね?


「我々は自分達のテントがあるから不要だ」

 そう言って、設営を済ませたテントに入っていくジョリーンさん。リリルルさんとクラリスさんが、無言で僕達に一礼して続いた。

 残されたのは、夜番らしいエルザさんだけだ。

「私達は交代で夜の番をするけど、アーカディア卿達はどうするの?」


 いつもの遺失魔道具アーティファクトは、人の目を気にするならば使えない。そうなると夜番をしなければならない。

 そうなると、真実の目プロビデンスを持つ僕がやるのが一番だろう。


「僕が担当するよ。姉さん達は休んでいてね」

「ユーちゃん……獣王国の時みたいに、一人でずっとやる気じゃないですか?」

 流石姉さん、よく解ってる。

「その分、明日は少し仮眠をとらせてもらうよ。夜は危険がいっぱいだからね」

 直結野郎グレンとかな。


「解りました、ユート君。でも、辛くなったら言って下さいね?」

「そうです。ユート様は無茶をする事がありますから」

「何かあれば呼んで下さい、約束ですよ?」

 心配性だな、皆。

「解ってるよ、無理はしないからさ」

 微笑みかけて、皆に就寝を促すと渋々従ってくれた。さー、夜番だ。


 ……


 ……とはいかず。

「君達のテントは随分と大きいのだな。中が気になるのだが」

「夜這いか? 懲りないヤツだな」

「ふっ、流石にそんな事はしない。無理矢理は趣味じゃなくてね」

 あぁそう、口ではそう言うがチラチラうちのテントを見てるけどね。


 ……っと、マップに反応だ。

 僕達のやりとりをボケーッと眺めているエルザさんに声をかける。負け犬グレンは知らん。

「エルザさん、魔物だ。多分火に気付いたんだろう」

「えっ、どこ? どこ?」

「あっち、後三分ぐらいで来ると思う。こっちで対処するが、構わないかな?」

「え、大丈夫?」

 付与魔導師の僕が対処するという言葉に、エルザが不安そうな顔をする。

「ま、見ててくれ」


 馬車から荷物を取り出すフリをして、宝物庫ストレージからライフルを取り出す。ついでに周囲の魔物を呼び寄せたり、寝ている連中を起こさないようにサイレンサーを取り付ける。

「食える奴だといいんだけどな……あぁ、ハズレだ」

 三つ目熊だった。ゴム弾の材料にするくらいだ、コイツの肉はかたくて食えない。殺して埋めよう。

 ——バスッ!!

 空気が抜けるような音と共に放たれた弾丸が、三つ目熊の眉間に命中する。走る勢いのまま、三つ目熊は前に倒れて地面に伏した。


「何その武器! もう死んだの、あれ!」

「これは銃だよ、ライフル銃。眉間に一発入れたからね。脳を破壊されて生きていられる生物はいないよ」

「……まだ、そんな武器を隠し持っていたのか、君は」

 隠していたわけじゃない、お前相手に使う必要が無かったんだよ。


 ……


 テントの入口に陣取り、武器を手に警戒している僕を睨みながら、グレンは自分達のテントに戻った。

「あいつらは夜番置かないのかよ……」

「ねー、神経を疑うね」

 本当にクソ野郎だな。


「そう言えば、アイツの事を知っていたみたいだね?」

 確か、クエスト王国の王都で女性を口説きまくっていたとか。

「そうなんだよねー。ドワーフは小さくて可愛らしいとか言って、色んな女の子に声をかけてたよ」

 女を口説きにクエスト王国に来たのかな?


 そんな事を考えていたら……何か声が聞こえる。

 俗に言う嬌声というやつだ……それも、複数の女性の。声の発生源は、確認するまでもないな。

「うん、あり得ないな」

「ほんとに最低だー」

 野営中に他のパーティに夜番をさせて、自分達はお楽しみとはクソ中のクソだな。


「……ユートさん、ちょっといいですか」

 テントの入り口を少しだけ開けて、リインが眉を顰めていた。

「黙らせてきて貰えませんか」

 目がマジだ。

「真っ最中に乗り込むのはなぁ」

「……それもそうですね」

 あの野郎のお楽しみ状態なんぞ見たくねぇ。

「すまないが、今夜だけは辛抱してくれ」

「はぁ……ユートさんにそう言われては仕方ないですね」

 ところでリイン……下に何か履こうよ……下着姿だよ、ごちそうさまです。


 ……


 ドワーフ組、最後の夜番はジョリーンさんだった。

「アーカディア卿は、ずっと起きておられるのでは?」

「えぇ、その分日が昇ったら仮眠を取ろうと思っています」

 なるほど、と頷くジョリーンさん。


 そして彼女は、未だに聞こえて来る嬌声に顔を顰める。

「どういう神経をしているのでしょうね」

「全くです、しかも自分達は見張りも立てずにですからね。こういうのは、冒険者としてはマナー違反だと父に教わったのですけど」

「へぇ、御父上も冒険者だったのですか?」

 はい、聖金級オリハルコンの冒険者で、魔王討伐の勇者です。んな事言えるはずも無いな。


「ええ、父は剣士であり魔導師でもありました……母も魔導師でしたね。それなりに実力のある冒険者だったそうです。だから、僕が付与魔法しか才能が無いと解った時は……落胆させてしまったかもしれません」

 これは本音だ。勇者と聖女……そんな風に呼ばれている二人だ。自分の子が付与魔法しか使えないなんて知った時……どう思ったんだろう。

 それでも、剣等の武器の扱いや魔法の知識を教えてくれた。僕が願ったのもあるだろうけど、もしかしたらなんて思ってくれていたんじゃないだろうか。

 そう考えたら、今の僕は二人を安心させられているんだろうか? そうだったらいいなぁ……。


「アーカディア卿も銀級冒険者に上り詰め、爵位を賜っているではありませんか。御両親も、きっと喜ばれておいでですよ」

 ……ジョリーンさん、いや、彼女のパーティは皆気の良い人達だな。

「ありがとうございます、そう信じて精進します」

 うん、もっと頑張ろう。


************************************************************


 まぁ、何というか……翌朝も揉めた。

「君達の馬車に相乗りさせて貰うくらい良いだろう」

「昨夜、見張りも立てずにお楽しみだった奴がそれを言うのか? いい加減にしろよお前」

 要するに、出発しようとした僕達に対してグレンが図々しい事をほざいたのだ。曰く、自分達も馬車に乗せろと。

 こちらは当然、その気は無い。他のメンバーや、ドワーフ組も嫌そうだ。


 しかし今回はグレンだけではなく、パーティメンバーの女性達もそれに追従した。歩きの旅はうんざりなのだろう。目の前に餌ならぬ馬車があるのだ、彼女達も必死になる。

「どうかお願いできませんでしょうか」

「私からもお願い致します」

「図々しいのは承知だけど、どうか一つ……」


 ……うーん。

『ユート様、悩んでいらっしゃいますか?』

『ユートさんなら、バッサリ断ると思いましたが……』

 よく解っていらっしゃる。

『いや、グレンは論外だけどさ。他の人達はちゃんと”お願い”してるから、なぁ……』

 ちなみに、女性である事は一切関係ない。相手が女性でも、愚かなヤツには容赦しないのが僕だ。


 ……あ、いいのがあるじゃないか。

「僕達の馬車の荷台には荷物も乗っている。だから悪いが馬車そのものには乗せられない。代わりの折衷案だ」

 こういう時は、魔導師のアリスにお願いするのが一番だろう。

 そこで、念話を使ってアリスにある提案をする。

 適当にでっちあげた詠唱で、魔法を使っているってフリをして貰う。そして宝物庫ストレージを開いて、以前盗賊を乗せるのに使った荷台を出して貰うのだ。

『ユート君のお願いなら、構いませんよ』

 アリスは仕方ないな、という顔で了承してくれた。苦労をかけるねぇ。


「えーと……”来たれ空と時の精霊よ、我が声に耳を傾けたまえ。我が求むは狭間の鍵、狭間の扉を開く鍵。扉を開き、我が求める宝物ほうもつを此処に。宝物庫ストレージ”」

 ちなみに伝えた詠唱は適当だ。グレンのパーティには魔導師も居るからな。

「……っ!?」

 ……あれ? アリスの表情がおかしい。

 追加用の荷車は確かに出せた。でも……アリスの魔力が、大きく減っている?


 それに開かれたのは”宝物庫の指輪ストレージ”によるものじゃないんじゃないのか? 

 宝物庫の指輪ストレージは、”空間収納”と”時間停止”が付与された遺失魔道具アーティファクト

『アリス、大丈夫か!?』

 僕達は、思わずアリスに駆け寄る。アリスは魔力を大量消費した影響で、少し辛そうだ。

『は、はい……相当な魔力を消費したんですけど、まだ大丈夫です。それより、今のは……』

『アリスさんが今した詠唱は?』

『僕が念話で伝えた、適当な詠唱だ』

『魔法を創造した……のかもしれません』

 僕は慌てて”真実の眼プロビデンス”でアリスを見る。しかし、技能にそれらしきモノは存在しない。

『……何だって言うんだ?』


 何故こんな現象が起こったのかは解らないが、とりあえずアリスを休ませてあげなければ。

「あなた……大丈夫?」

 ドワーフ組のクラリスさんが、アリスを気遣う。

「水を用意するかい? それとも、毛布か何かを?」

 流石のグレンも、アリスの様子にただならぬものを感じたらしい。

「水も毛布もあるから問題は無い。とりあえず馬車の荷台の後ろに、アリスを寝かせられるようにスペースを作りたい。グレン、手伝ってくれ」

「無論だ、手早く済ませよう」

 こいつと方針が合うと、変な気分だな。


 ……


 馬車に揺られる最中、少し休んでいたらアリスは無事に復帰した。流石にアリスの事があったのか、グレン達は大人しく追加の荷車に乗っている。

「大丈夫か、アリス?」

「はい、もう問題ありません。あれは魔力の欠乏による症状でした」

「魔力欠乏……それだけ凄い魔法を使ったのですね。えぇと……アリス様でよろしいでしょうか?」

「ええ、すみませんジョリーンさん。御心配をお掛けしました」

 ドワーフ組も心配そうにアリスを気遣う。


「普段は大丈夫なのですが、どうやら寝不足で魔力が思うように回復していなかったみたいです」

 実際には魔力は十分だったのだが、想定外の事態でアリスの魔力は枯渇寸前までいった。

 しかし、”何故か知らないけど、偶然新しい魔法を創っちゃって、それで魔力を持っていかれました”なんて部外者に言えるはずも無い。


 という事で、昨夜やらかしたグレン達のせいにしたようだ。まぁ、寝不足は事実だからね。

 考察は、皆を交えて後でじっくりやろう。

「アリス様、何かあれば遠慮せずに言って下さい」

「そうですよ、アリスさん。私達は仲間なのですから」

「アイリさん、リインさん、ありがとうございます」

 後部座席でそんな会話をする三人。

 前の座席にはジョリーンさん、リリルルさん、クラリスさんが乗り、御者台に僕、両脇に姉さんとエルザさんが座っている。余計な荷物グレンたちが増えた分、スタリオンに付与してあげないといけないからね。

 キツキツのこの状態に乗ろうとしたグレンは、阿呆なのか? 阿呆だろう。阿呆だ。


************************************************************


 やがて馬車はクエスト王国の王都カルネヴァーレに到着した。

 ドワーフ達はこの門を通ったら、拠点に戻るそうだ。そしてグレン達は……。

「私達が泊まっている宿に来ませんか、中々いい宿ですよ」

 相変わらずである。


「悪いが知り合いに会う予定があるので先を急ぐんだ、じゃあな」

 さっさと撒こう。

 ドワーフ達に挨拶する為に、荷台から降りたグレン達を無視して走り出す。ドワーフ達には馬車の中でそれを伝えておいたので、問題はない。

 何か喚いているが、気にしない。


 ……


 ドワーフ達から、少し情報を貰ってある。

 この王都にいる腕のいい鍛冶職人・マルクというドワーフ族の工房の場所と、ドワーフ族の英雄で勇者レオナルドの仲間・ガンツ爺さんの居場所だ。

 両者はすぐ近くに居を構えている事が解った。なので僕達はまず、ガンツ爺さんを訪ねる事にする。


「ドワーフ族の英雄様ですか……どんな方なのですか?」

「例によってドワーフらしく酒好きの爺さんだよ。機嫌が良いときは優しいんだけど、機嫌が悪いと絡み酒」

「ユーちゃん以外は大丈夫ですよ、ガンツ様はフェミニストですから」

 女性には甘いのだ、爺さんは。でも、別にエロ爺じゃない……何気に紳士である。だからフェミニスト。


「酒好きで気分屋でフェミニスト……なんか凄いですね」

「物語では、大槌で勇敢に戦う特級鍛冶職人と言われていますね」

 リインの言う通り、ドワーフ族の鍛冶職人も階級が定められている。初級・中級・上級・特級だ。

 つまり、爺さんは鍛冶職人として最高峰と認められている訳だね。

 英雄であることは関係ない、ドワーフらしく純粋な鍛冶の腕だ。父さんも、鍛冶の仕方を爺さんから教わったらしい。


「ま、悪い人じゃないよ。今回はお土産にイングヴァルト・ミリアン・ヴォルフィードのお酒を持って来てるし、歓迎されるんじゃない?」

 酒好きの爺さんなら、喜んでくれるだろう。


 ……


 馬車を走らせ十五分程すると、僕達は鍛冶職人の工房が並ぶ区画に着いた。

「おぉー、これぞ鍛冶の本場! みたいな雰囲気だな」

「鉄を鍛えている音がひっきりなしに聞こえますね」

 石造りの建物の煙突から煙が昇り、金属音が鳴り響き、ドワーフ達の怒鳴るような声があちこちから聞こえる。これが鍛冶職人達が工房を構える区画なんだな。

 さて、ガンツ爺さんの工房はと……お、あそこだな。


 工房の扉を開け、呼び掛けてみる。

「爺さん、いるー? ユートだけどー」

「ユートさん……相変わらずですね」

 知り合いだからね。

「ユートだと? お前、旅に出たとは聞いたが来るのが遅くはないか? 大体お前はな……」

「ほら、土産の酒。イングヴァルト王国とミリアン獣王国、ヴォルフィード皇国の酒持ってきたよ」

「よく来たなユート! 流石お前は気の利く奴だ!」

 変わり身の早さは相変わらずか。


 ガンツ爺さんはドワーフ族らしく、身長は百センチメートルちょい。長髪の白髪頭に加え、顎にも長く白い髭がある。

「む? キリエ以外にも連れているのか。えらい別嬪揃いで」

「目にも心にも優しいメンバーなのは事実だな。紹介するよ」

 アリス、アイリ、リインの順で紹介していく。

「イングヴァルト王国アークヴァルド公爵家が長女、アリシアでございます。お会い出来て光栄です」

「ミリアン獣王国より参りました、アイリと申します。特級鍛冶師と呼ばれるガンツ様にお目にかかれて、光栄です」

「ヴォルフィード皇国ヴォークリンデ公爵家が次女、リイナレインと申します。ガンツ様にお目にかかれる栄誉、ありがたく思います」

 三人の挨拶に、爺さんは顔を綻ばせた。


「いいのぉ、この殺風景な工房が華やかで喜ばしいわ。それにしても他種族とは、お前段々レオに似てきたんじゃないのか?」

「そりゃ最高の褒め言葉だな」

 世界中で慕われる、偉大な父親に似ていると言われたら嬉しいよね。


「今日の宿は決まっとるのか? 夜ならどこも仕事なんぞせんから、家に泊まっていきゃあいい」

「そりゃ助かるよ、色々話も聞きたくてね」

「ははは、いいぞぉ! 今夜の酒は美味くなりそうだ」

 良い酒持って来たから、期待してくれていいのよ。


「そうだ、爺さんはマルクって人知ってる? ジョリーンって女性冒険者のパーティのリーダーから、爺さんの次に腕が良いって聞いたんだけど」

「マルクか、すぐ斜め向かいの工房に居るぞ。あまり話した事は無いが、気の良いヤツだ」

 そしたら、挨拶だけでも行ってみようかな? 四人に聞いたら了承してくれたので、ガンツ爺さんにその件を伝えて外へ出る。


 ……


「ごめん下さい、こちらはマルクさんの工房でしょうか?」

 すると、奥からスキンヘッドに髭を短く切り揃えた男性が現れた。

「何だぁ? また人間族の客か、それも女侍らして……人間族ってのはそういう種族なのか?」

 グレンもここに来たのかな、もしかして。


「冒険者のユートと申します。ドワーフ族の冒険者、ジョリーンさんからマルクさんのお話を聞きまして、伺った次第です」

 ジョリーンさんの名前を出すと、マルクさんが眉をピクリと動かした。

「ジョリーンが俺を? ふぅん……て事は、あのグランだかグリンだか言う冒険者よりは、マトモって事だな」

 ほんと、グレンのお陰で人間族のイメージ下がってない?


 そこで、僕はマルクさんの作業台に置かれている物を見て、ビックリした。

「マルクさん、そちらにあるのは……もしかして、ポンプですか?」

 井戸から水を汲み上げる為の、手押し式ポンプがあった。

「おっ、知ってるのか! コイツはな、昔ドワーフ族に勇者ショウヘイ様が伝えて下さった物なんだ。色々試行錯誤して、完成してからは生活が劇的に変わった物なんだよ」

 出たなショウヘイさん、そしてやるなショウヘイさん! うんうん、生活の助けになる物は伝えていきたいよね。


「流石はショウヘイ様ですね」

「ショウヘイ様が伝えた道具の内、その多くが生活の助けとなる物だと聞いています」

「武器より、生活の助けだよね。僕もそうありたいもんだ」

「解ってるじゃねぇか、お前ら! そうだよなぁ、お偉いさんの贅沢より、庶民の生活だよなぁ!」

 マルクさんは庶民派らしい。


「僕達は今夜、ガンツ爺さんの所で酒盛りなんですが、マルクさんもどうです?」

 爺さんも文句は言わないだろ、気の良い奴って言ってたくらいだし。

「……ガンツ様と、知り合いなのか? ってか、爺さんってお前……」

 ドワーフ族の英雄を爺さん呼ばわりする僕に、マルクさんは表情を引き攣らせていた。

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